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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第二十三章 正体不明の敵
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133 組織から国へ

「ただいまぁ~っ」


「あらおかえりなさい、カレンちゃんの実家はどうだった?」


「なんと美味しいお酒を3樽、お土産として購入して来ました!」


「まぁっ! それは大収穫ね」



 馬車から酒樽を降ろし、食糧庫に搬入する。

 捕虜は檻に入れたままリリィが王宮へ運び、押収した資料は後で取りに来て貰うこととなった。


 俺達は今日明日ぐらい休憩しても構わないであろう。


 と、その前にメルシーを捕まえて協力者リストを見せてみる。

 上位者は肖像画が載っているからな、それでハゲの判別が出来るかも知れない。



「メルシー、この中にお前を新聖女にしたハゲは居るか?」


「う~ん……たぶんコイツなのじゃ、このハゲが妾を連れて来たのじゃ」



 やはりトップのハゲだったか、名前はカミナシ、見た感じ髪型とかではなく正統派のハゲだ。

 きっとコイツが自分のハゲを目立たなくさせるために新生大聖国の協力者にカッパハゲ化を要求したのであろう。



「勇者様、王宮の輸送部隊が来ましたよ」


「わかった、中に入って頂くんだ」


 仰々しい部隊が来た。

 重要とはいえ単なる連絡網や住所リストなのである。


 そんな金属の箱に何重にも入れていくつも鍵をする程ではないと思うんだがな。

 鎖まで持って来てぐるぐる巻きにしているし……



「おう勇者殿、なかなかの戦果を上げてきたみたいだな、苦労しただろう」


「まぁな、ところでゴンザレスは何をしに来たんだ?」


「俺は輸送部隊の護衛に頼まれた護衛、がちょっと不安だというのでそのまた護衛をしに来たんだ」


 厳重すぎてもうよくわからん。

 だがゴンザレス曰く、今回の件で王宮はかなりピリピリしているのだという。


 確かにウラギールのせいでかなりの数の兵を失ったばかりだし、ここで新生大聖国が勢力を伸ばしたら本気で危ない。

 それでやりすぎなぐらいに警戒しているのだな。



「じゃあ捕虜の拷問と併せてそっちの調査も頼む、出来れば敵のアジト一覧を地図に表示して渡してくれると助かる」


 拷問ならまだしも、そういう細かい作業は俺達勇者パーティーには向かない。

 王宮の方でやらせて、結果だけ受け取るのがベストでろう。



 輸送部隊が去って行き、これでようやく本格的な休憩が出来る。


 まずは久しぶりの温泉からだな、狼獣人の里では俺だけひとりで入らされていたし、その鬱憤を晴らしてやろうではないか。


「よっしゃ、本当に全員で風呂に入るぞ、マーサ、デフラ達も連れて来るんだ」


「じゃあ行ってくるわ、畑で作業しているから先に少し洗った方が良いわね」



「頼む、それとメルシーも一緒だな」


「妾も皆と入るのが良いのじゃ、リリィちゃん、早く準備をしようなのじゃ」



 マーサがデフラ達を数珠繋ぎにして引っ張って来る。

 カポネやコハル、ボッチーナも一緒だ。


 コハルは地下牢でグダグダしていたため、シルビアさんが引き摺り出して働かせたという。

 ちなみに全然役に立たないそうだ。


「勇者さん、私はもう働きたくない、処刑の方がマシ」


「じゃあ処刑だな、シルビアさん、やっちゃって下さい」


「濡れタオルで100叩きの刑にしてあげようかしら」



「……これからは真面目に働く」


 改心したようだが油断ならない、もともとグダっていたわけだし、監視の目は光らせておくべきだ。



「しかし汚い奴等だな、俺達が居ない間一度も洗ってないんじゃないか?」


「そういえば1週間まるごとお風呂に入らせていなかったわね」



 シルビアさんは働かせるだけ働かせて、風呂も、そして食事の提供もしていなかったようだ。


 その間デフラ達は屋敷に居た魔族が投げ込んだ残飯や、畑に落ちている野菜クズを齧って生き延びていたらしい、なんとブラックな環境だ……



「服も別でお洗濯しないとですね、あと虱とかのチェックもしておきましょう」


「頼んだぞミラ、他も何人か手伝って洗ってやってくれ」


 ミラ、マーサ、ジェシカ、ウシチチの4人に洗浄を任せる。


 なぜその4人かって? 風呂場ではおっぱいが大きい方が見応えがあるからだ。

 ちなみにルビアは俺が抱えている。


 湯船にゆっくり浸かりながら、タオル1枚の4人が素っ裸にされたデフラ達を洗っているのを眺めておいた。

 素晴らしい光景だ、やはり風呂はこうでなくては!




「ちょっと勇者様、鼻の下伸ばしてニヤニヤするのはよしなさい!」


 そう言われて振り返ると、そこにはセラのまっ平らな洗濯板があった。

 鼻の下は縮み上がり、笑顔が消える……見ているこっちが悲しくなるな……



 ようやく湯船に入って来たデフラ達は飯を食わせろとうるさかった。

 仕方が無い、今日は全員参加のバーベキューにしよう、良い酒もあるし、おれもそろそろ野菜を食べたい。



「じゃあそろそろ上がって肉と野菜を焼く準備をしようか、マーサ、畑で良いニンジンを選んで来てくれ」


 30名を越えるバーベキュー大会、もはや会社のイベント並みだ……



 ※※※



「は~い、お肉を焼き始めますよ~っ」


 大焼肉奉行様であるミラが鉄板に油を敷き、そこに肉を載せる。

 俺達は平気だが、ひもじい思いをしていた連中には堪らないであろう。



「そういえばメルシーは肉とか食べても良いんだよな?」


「当たり前じゃ、聖女様は雑魚ハゲと違って何でも食べることが出来る決まりなのじゃ!」


 どうやら新生大聖国の連中、下っ端には精進料理みたいなのを押し付け、上位層は肉も魚も食べて良いなどという歪んだルールになっているらしい。


 そういえばこの間攻めた廃城にも高級そうな肉のストックがあったしな。

 どうせ新たな協力者から巻き上げた金で買ったのであろう、クズ共めが。



「でもメルシーちゃんが贅沢をするためのお金はどこから出ていたのかしら? 最初の金貨3,000枚は狼獣人を雇うために出そうとしていたんでしょ?」


「セラ、それは金貨2,000枚分だっただろう、残りの1,000枚で最初の立ち上げ、そこからは協力者の寄付ってとこだろ」


「寄付か……そうなるとスカンピンの聖職者には無理ね、他国にもかなりの数の協力者が居そうよ」


「だよなぁ……」


 正直言ってまだ新生大聖国の全容は把握出来ていない。

 もしかすると地下に根を張るように、この王都の中まで侵食しているのかも知れないな。



「ところで妾もお酒を飲んでみたいのじゃが?」


「ダメに決まっているだろう」


「リリィちゃんは飲んでいるのになぜ妾はダメなのじゃ!」


「人ならざる者は良いの、メルシーはダメ!」


「……異世界勇者はハゲ共と違ってケチなのじゃ」



 というかハゲ聖職者は子どものメルシーに酒を飲ませていたのか。

 ビールの泡を啜らせる親戚のおじさんよりタチが悪いな。



「そういえばマリエル、その聖都に居たハゲ共の逮捕はまだなのか?」


「ええ、伝令兵が言うには片っ端から捕まえたので移送に時間が掛かるとのことです」



 どうやら俺達が狼獣人の里に行って帰って来る間には終わらなかったようだ。

 だがもう移送中ということは、明日か明後日には戻るということであろうな。


 その日はバーベキューと酒を楽しみ、夜遅くになってようやく布団に入った。



 ※※※



 翌朝、俺はマリエルがばたばたと部屋に走り込んで来る音で目を覚ます……



「大変です勇者様! 移送中だった聖都の聖職者共が逃げたそうです」


「なぁにやってんだぁ~っ!」


「それが、中級魔族の集団による攻撃を受けたそうで、さすがに勝てなかったとのことです」


「……うむ、それはどうしようもないな」


 移送部隊が大ポカをやらかしたのではなく、敵が強すぎただけのようだ。



「それで、全員聖都に戻ったのか?」


「いえ、魔族に付いて行ったのは半分ぐらいだそうです」


「つまりそいつらは魔族が味方だと知っている、新生大聖国の関係者、ということだな」



 残った連中はそのまま移送を続け、今日の昼過ぎには王都に到着するという。

 早めに詳しい話を聞かなくてはならない。



 そこへ、マリエルを遥かに超える勢いで伝令兵が入って来た。

 いつ屋敷の中に入ったというのだ?



「報告があります、王城牢屋敷で捕らえていた元聖国人の奴隷候補、一部が脱獄したとのことです!」


「どうやって? 助命したのは女のばかりのはずだぞ、鉄格子を曲げるようなゴリラを助けた覚えはないぞ」


「それが、地下からモグラのような魔族が穴を掘ったようでして」


 こっちも魔族かよ、もう形振り構わず協賛の魔王軍を前に出してきたようだな。



「勇者様、先に地下牢の様子を見に行きましょう」


「そうだな、俺とセラ、マリエルで行こう、他はここで連絡待ちだ、まだ何かあるかも知れんからな」


 魔族と遭遇する可能性はあるが所詮は雑魚、この3人でも十分に仕留められるはずだ。



 急ぎ、王宮近くの牢屋敷へと向かう……



 ※※※



「……凄いな、全部の独房に穴が空いているぞ」


「きっと途中まで先に掘ってあって、最後にまとめて開通したんでしょうね」


 なんと壮大な計画だ、脱獄を扱った海外ドラマでもここまではしないはずだぞ……



「勇者様、こっちに逃げなかった聖国人をまとめてあるようです、話を聞きましょう」



 洗脳されてレーコの計画に加担したものの、奴隷としての価値が高いとして助命した聖国人達。

 そのほとんどは既に販売されてここには居ないものの、一部、非常に高い値がついたものが売れ残っていたという。


 その数は100名程、そして今日逃げたのがそのうち33名だという。

 とりあえず残った連中のところへ向かった。



「勇者殿、これらが逃げなかった連中です、話をしても構いませんよ」


「おぉっ! なんという美人揃いだ!」


 大部屋に集められ、並んで座らされている元聖国人。

 早速話を聞いてみよう……一番前に居るおっとり系の顔の子をターゲットに選定した。



「で、どうして逃げなかったんだ?」


「あ~、急にモグラが出て来て付いて来いなんて言われても困ってしまって」


「モグラは他に何か言っていたか?」


「聖国は魔王軍と協力して再興するとか何とか、それを聞いて出て行った子も多かったですね」


 やはりもう魔王軍のバックアップを隠すつもりはないらしい。

 さらに話を聞き、どうやら真っ当な生活も保障されるといわれていたことも発覚した。




「で、この子達はこれからどうするんだ?」


「ハッ! この事件で脱獄しなかった点をセールスポイントにし、値を変えずに販売を続ける予定です」


「ならすぐに売れそうだ、脱獄した連中はどうなる?」


「既に6人捕まえてありますが、拷問した後に格安で売り払うことになるはずです」


「捕まえてあるのか、じゃあちょっと連れて帰って良い? こっちでもそいつらから話を聞きたいんだ」


「ええ、ここだといつまた救出されるかわかりませんから、場所を移して頂けるならこちらとしても幸いです」



 ということで、脱獄を図ったものの、鈍臭くて捕まった6人を屋敷へ連れ帰ることにした。

 逃げなかった連中を拷問するわけにはいかないが、脱獄未遂犯なら何をしても構わないであろう。



 牢屋敷の方で牢付き馬車を出して貰い、馬車2台で屋敷へ戻る……



 ※※※



「あっ、おかえりなさい勇者様、こっちでも事件がありましたよ」


「どうしたんだ? 犯人は?」


「地下牢に穴が開けられたんです、犯人、というか人でなくモグラでしたが、そいつは既に捕まえてあります」


 どうやら牢屋敷に穴を空けたのと同一人物、いや同一モグラのようだ。

 聖国人を救出した後には、俺達が捕らえた魔族も助けて功績にするつもりだったらしい。



「じゃあそのモグラは後にして、先にこっちの6人を拷問しよう、シルビアさんを呼んで来てくれ」



 地下牢は全ての部屋に穴を開けられていた。

 しかしその中は魔力を奪う金属で満たされているのだ、穴から出て来たモグラはそこで行動不能になっていたという。



「コハルとボッチーナがちゃんと居るじゃないか、お前ら逃げなかったの?」


「面倒だし、ここは居心地が良い」

「逃げてもどうせ友達なんか出来ませんから……」


 この2人は真面目なのではなく、堕落と卑屈により脱獄しなかったのである。


 まぁ良いや、シルビアさんも執務室に来ているみたいだし、早く馬鹿聖国人の6人を連れて行こう。



「あら勇者様、その子達がきょうの生贄なのね?」


「そうです、おいお前ら、ちゃんと聞かれたことに答えるんだぞ」


 鎖で繋がれたまま青くなって震える6人。

 シルビアさんが服を剥ぎ取り、すぐに鞭で打ち始めた。




「ぎゃぁぁっ! 痛いですっ! どうして何も聞く前に鞭打つんですかっ!?」


「ここのローカルルールだ、我慢しろ」


「いやぁぁっ!」


 大騒ぎしているのは2人、諦めたような表情のが3人、もう1人は叩かれて喜んでいる。



「さぁどうだ? 新生大聖国について何か情報を吐く気になったか?」


「そう言われましても、私達だってさっき初めて聞いた名前なんです、それに加担しようとしたことは謝りますから、どうか許して下さい!」


 よく考えたらそうだよな……こいつらが何か知っている可能性は低い。

 でもシルビアさんがノリノリで拷問しているのを止めるわけにはいかない、このまま放っておこう。



 やはりモグラ魔族から話を聞くべきのようだ……



「おいモグラ野郎、お前を殺す前にいくつか聞いておきたいことがある」


『ふんっ! 俺を殺しても無駄だ、そのうち第二第三の俺が……』


「モグラごときどれだけ居ても構わん」


『・・・・・・・・・・』




 魔族のモグラを聖棒で突っつき回し、情報を得る。


 どうやら脱獄犯や移送中に逃亡した聖職者は全て聖都へ向かう手はずになっているようだ。


 聖都を中心に新たな聖国を興し、魔王軍と連携してこの世界を支配しようという計画らしい。

 となると聖都は……



「勇者様、今伝令兵が来ていたんですが、聖都の近くに居た王国進駐軍が撤退を始めたそうです」


「遅かったか……だが相手は魔族をふんだんに使ってきているんだろう? やられる前に撤退したのは良い判断だったな」


「ええ、あそこに送っていたのは優秀な将軍ですから、それよりも王宮で会議です、すぐに行きましょう!」



 ジェシカに馬車を出させ、俺とセラ、それからマリエルの3人で王宮へ向かった……



 ※※※



 王の間……



「おぉ、ゆうしゃよ、早速だが会議を始めるらしい」


「らしいって何だ、お前が仕切れや、王なんだから」



「勇者よ、王はもう3日寝ておらんのじゃ、今会議を仕切ることなど到底無理じゃよ」


 先程からどうして王の間に即身仏が置いてあるのかと思っていたのだが、総務大臣であった。

 ガリガリじゃねぇか!



「え~、既に敵の支部は30、そして主要な構成員の人数が5,000を越えたことが発覚しておる……」


 会議が始まると同時に衝撃的な言葉を口にする総務大臣。

 どうして誰にも気付かれずにそんなに肥大化したんだ?



 ちなみに今の情報に言う構成員とは人族のみをカウントしたものである。

 魔族の協力者、それから他の生物に関しては調査が行き届いていないという。


 しかも奴等、魔物や野生動物、さらには豚小屋の食用豚まで仲間に引き入れているというから驚きだ。

 ちなみに豚には肉をお布施として献上させているという、普通に喰ってるだけだろそれは!



「とにかく聖都から逃げた聖職者が支部を作って、そこでさらに協力者を募ってデカくなったということか?」


「左様、そしてそれが遂に旧聖国領の奪還に動き出したというわけじゃ、魔族も使っての」


 厄介なことになってきた……





「ほうこくぅ~っ! 報告があります!」


 おなじみの兵士が飛び込んでくるイベントだ。

 よりややこしいことになる前触れともいう。


「今度は何があったというのじゃ?」



「ハッ! 聖都自治区を魔族が制圧、そこに居た聖職者が新生大聖国の樹立を宣言したとの情報が入っております」


「なんとっ!?」


「さらには魔族の軍勢が旧聖国との国境付近にある村を狙って進軍しているとのことです」


「・・・・・・・・・・」


 総務大臣は立ったまま気絶した、駄王も白目を剥いている。



 そこからはひっきりなしに兵士が飛び込んで来た。


 ある者は王国内にある貴族領の陥落を告げ、ある者は聖職者移送部隊の敗走を告げる。

 もう収拾がつかない状態になってしまったようだ……


「とにかく各地に守りを固めるように伝えるんだ、篭城してしまえばこちらが救援を出すまで持ち堪えるところもあるだろう」


「それから王都内にも敵が紛れ込んでいるかも知れません、それの対処はどうしましょう?」


「駄王は……もうダメだな、マリエル、お前の名前でお触れを出すんだ、インテリノでも良い」


「何をするんですか?」


「ハゲ狩りだ、敵は全員カッパハゲにしているはずだからな、それに該当する奴を根こそぎ検挙するんだ」


 すぐに『おいっ、ハゲ!』のポスターが量産され、王都内のカッパハゲ摘発作業が始まった。


 おそらく関係ない善良なハゲが捕まってしまうこともあるはずだ。

 しかしそれを恐れているとまた王都が内側から陥とされてしまう。


 まぁ、間違って検挙されたハゲには後で高級なズラでもくれてやれば満足するはずだからな。

 ここはひとまず全数調査としよう。



「おい起きろババァ! 俺達は一旦屋敷に帰って戦の準備をする、そっちも動ける兵を掻き集めるんだ!」



 すぐに馬車で屋敷へ戻り、全員武装していつでも戦いに出られる態勢を整える。



「ご主人様、伝令兵の方が凄く焦りながら走って来ますよ、あ、コケた」


「全く忙しい連中だな、あれでいて給料は前線の兵士の半分らしいぞ」


「……かわいそうに」




 膝を擦り剥いた伝令兵をルビアに治療させながら報告を聞く。


「敵国軍、空を飛ぶ魔族を使って地方都市に何かを投下しているようです、間もなく王都にも……」


「おい、アレだろ……」


 空に見えるのは10体の魔族、羽の生えたデビルみたいな奴だ。

 王都の上空に差し掛かると、手に持っている箱から何かを出して落としている。


「リリィ、あの落としているのが何かわかるか?」


「う~ん、見えますが、何でしょうか……瓶みたいなので、先っぽから火が出ています」


「よくわからんな、目的も不明だが、火事でも起こそうってのか」



 やがて、俺達の屋敷にもソレが降って来る。

 小さい瓶だ、確かに火が……地面で破裂して物凄い炎を上げだした!


「ヤバいぞ、焼夷弾だ!」


「これが? その何とかは危険なのかしら?」


「石造りの家でも中には木が使われている、油で燃やしているようだからな、大火事になるぞ」


「それは拙いわね」



 すぐに精霊様、それからセラを乗せたリリィが飛び立つ。

 リリィは飛んでいる魔族の撃墜、精霊様は消火に当たった。


 上空で燃やし尽くせば地表の被害は限定的であろう。


「……しかしこれはもう完全に戦争だな」



 突如樹立を宣言し、その日のうちに攻め込んで来た新生大聖国。

 わからないことが多すぎるのだが、こうなったらもう全力で戦う他ない……

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