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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1234 堕ちた天使

「おはようございます神様、独房の寝心地はどうでしたか? もっと悲惨で不衛生な場所に放り込まれたいというのであれば、そのように掛け合ってみますが、どうでしょう?」


「いえいえ、これで十分ですよ、食事のグレードもかなり低い粗末なものでしたし、ベッドも硬くてとても神が寝るようなものではないですから、十分に酷い目に遭っています」


「全く贅沢な神様ですね、ところで隣は……もう起床して今日の責めを始めていましたか、やはりこのクリーチャーはどこか他とは違いますね、昨日の『M』の力供給量も凄まじかったと報告が……いえ、もしかするとそちらの神様がとんでもないドMなのかも知れませんね」


「あ、私ですか? 褒めて頂いて嬉しいです、それと、お仕置きされてとても嬉しいです」


「……まさかそんなキモいハゲにそのようなことをされて、演技ではなく本当に喜んでいるとは、ここの神様方、いえ天使や神界人間もそうですが、ドMの気持ちは察しかねますよリアルに」


「あの、別に皆あのようなハゲに責められて喜んでいるわけではないと思いますし、むしろイヤだと感じている方が大半で……」


「何か仰いましたか神様? 今、私があなたに発言を求めたのですか? そうではないでしょう? 勝手に喋る雌豚がどのような罰を受けるのか、わかっていますね?」


「む、鞭打ちの刑に処されます……お願いします」


「わかっているようでよろしい」



 本当に神と天使の関係とは思えないのだが、とにかくこのドS感漂う女をこちら側に引き込まなくてはならないし、そうすることによって行動が容易になるのだ。


 しかし現状、どう足掻いてもコレに俺達の作戦を伝えるべきとは思えないし、その断片でも露呈してしまえば、あっという間に『報告』をされてしまうことであろう。


 自らが仕えているはずの神を、薄笑いを浮かべながら鞭でシバき倒しているそんな天使女を見て、俺もルビアも、そして反対側の隣に居るロボテック女神もそう感じたに違いない。


 ちなみにそのロボテック女神なのだが、看破の女神が酷い目に遭わされているのを見るのに夢中になっていて、その収容されている独房に、向こうからハゲのおっさんクリーチャーが接近していることに気付かない様子。


 おそらくは今日も地下へ、このマゾ狩り収監施設の防御の根幹を成している装置のメンテナンスおよび強化に従事させられるようだ。


 すぐに連れ出され、ハゲに引き摺られるようにして去っていったロボテック女神を見送りつつ、俺とルビアと、それから看破の女神は計画を実行に移すべきかどうかの見極めを始める……



「全く! どうしてあなたはそんなにMなのですかっ? このっ、変態がっ!」


「ひぃぃぃっ! もっとぶって下さいっ! もっとぶって下さいっ!」


「……ふぅっ、しかしどうしても隣の部屋のハゲ、というか神様の発散する『M』の力を超えることは出来ないようですね、見て下さいあちらを、お尻をペチンッとされただけで、凄まじい力が溢れ出しているのですから、あの神様を見習うとか、そういうことが出来ないのですかあなたには?」


「えっと……ちょっと難しいかなと……ひにゃぁぁぁっ! いったぁぁぁいっ!」


「どうしようもない神様ですねっ! ほらあっ、もっと良い声で鳴きなさいっ!」



 どう考えても『こちらの味方』にはなってくれない、余計なことを話せば確実にとんでもないことになるとわかってしまうような天使の態度。


 しかも自分が責めている神から、ルビアのように膨大な『M』の力が抽出されないことに憤りを感じているらしいということも良くわかる。


 そのまましばらく正座させた状態の女神をビシバシとやっていた天使であるが、ふとこちらを、もちろん俺ではなくルビアの方を向き、ピタッと手を止めた。


 そのままツカツカとこちらに近付いて来て、ルビアの顔をジッと見つめているのだが……もしや何かおかしなところに気付いてしまったのであろうか。


 いや、どうもそうではないようだな、むしろルビアに興味があるというか、そういう感じの視線を送っているように思えてならない。


 しばらくして口を開いた天使は、どうやらこちらの独房にやって来るようで、看破の女神を完全に放置したまま扉を開け、そして移動して来たではないか……



「……ちょっとよろしいですかこちらの神様、少し試してみたいことがあるのですが……というかそこのハゲ、早く退きなさい」


「・・・・・・・・・・」



 ハゲであって気持ちの悪いクリーチャーである俺が無言で天使の指示に従うと、そのまま立ち上がらせたルビアの手を引っ張ってグイッと引き寄せるのを確認した。


 何をするのかと思いきや、近付いたルビアの服を一気に、ガバッと脱がせて奪ってしまった天使。

 素っ裸にされたルビアは特に反応することなく、その場に突っ立ったまま何をされるのか告げられるのを待っている。


 天使によっていきなり素っ裸にされたというのにそのような反応のルビア、逆に服を脱がせた天使の方が驚いてしまう事態となったわけだが、気を取り直したらしくベッドに座り……そこでもルビアを引っ張った……



「こっちに来て下さい、あなたにはこれから素っ裸のままお仕置きをします」


「お仕置きというと……お尻ペンペンでしょうか?」


「そんなの当たり前です、ほら、早くこちらへ来て、その既に真っ赤に染まったお尻をここへ」


「あ、はいどうぞ、お仕置きして下さいませ……ひゃんっ! 痛いっ! ごめんなさいっ!」


「このっ、このっ、どうですかっ? っと、さすがに『M』の力が凄いようですが……どうもそこのハゲに責められたときのようなパワーは感じませんね、どういうことなのですか?」


「それはご……じゃなかったハゲのお仕置きの方があなたにされるより良いからです」


「どういうこと? つまりこのハゲが凄まじく出来の良い有能なハゲであると……いえ、ハゲのおっさんが有能なことなどあり得ない、多少個体差があるとはいえ、こんなクリーチャー如きが私よりも上手く『M』の力を……」


「混乱してしまったようですね、ですがそれが本当のことなんです、ちょっとご……じゃなかったハゲを見習ったり、むしろこのハゲに弟子入りとかしたらどうですか? そうすればそっちの女神様も喜ぶと思いますよ」


「まさかそんなっ! 私は自信を持ってこのマゾ狩り団体に入団して、私の主たる神を満足させるべく専属の監視員に……それがこのようなハゲに教えを請うなどっ! 言語道断!」


「ひぎぃぃぃっ!」



 ベシッとルビアの尻を叩いた天使は、そのまま俺の方を見て凄くイヤそうな顔を、まるでゴミでも見るかのような視線を送りつつ、独房から出て隣へと戻った。


 どうやらこの天使、ドSキャラであること以外はかなり真面目で主君思いで、ドMである看破の女神を喜ばせるために、あえてマゾ狩り団体に所属してその主たる神を連れて来て……ということであるようだ。


 しかし普通に考えてそんなことをしなくとも、神の居城などに拷問部屋だとかお仕置き部屋だとかを設置し、そこでビシバシと鞭を振るえば良いではないか。


 もし神のため、看破の女神のためを純粋に思ってこのような行動に出ているのだとしたら、おそらくこの天使は相当な馬鹿である。


 また、これによって看破の女神が看破することが出来なかった、天使のマゾ狩り団体所属の件についても、やはり悪意を持ってそうしていたわけではないことから、裏切りの兆候などなかったのが頷けると言えよう。


 そしてそうなると、もしかしてこの天使を仲間に取り込むのは容易なのではないかと、そう思ってしまう次第なのだが、果たしてどうなのであろうか……



「やれやれ、何だかわけのわからないことになってしまいましたが……そろそろ運動の時間です」


「運動の時間? とは?」


「運動と言っても引き回しのようなものです、首輪を付けて収容者を引き摺り回す、もちろん四つん這いで這って貰うのですが、それが1日に1回ありますので」


「なるほど、外へ出られるということなのですね」


「そうにはそうなのですが……まぁ、神様に関しては良いと思います、私が付いていますから、問題はそちら、というかほぼ全ての収容者がそうなのですが、ハゲに引き摺り回される屈辱を味わって……どうしてそれで喜んでいるのか、私にはどうしてもわかりませんがね」


「あの……それ絶対に喜んでいないと……いえ、余計なことを口にしてしまいましたね、その運動とやらに参りましょう」


「……そうですね、気晴らしにもなりますし、ほらそこのハゲ! 優秀なハゲなのかも知れないけれど、とっとと準備しない無能は処分対象になるわよっ! グズグズしてないで急ぎなさいこのハゲ!」


「・・・・・・・・・・」



 ハゲである俺に対しては相変わらず辛辣で、本当に見下したり軽蔑したり、ゴミであるとしか思っていない様子の天使であった。


 だがその実力を、お仕置き力を認めたのは確実であって、もしかすると本当に弟子入りを希望してくるかも知れないと感じている。


 いや、その方が本当のことを打ち明けるに当たって有利になるな、そして俺がハゲのおっさんクリーチャーではなく、本当にイケている大勇者様であるということも、より一層受け入れ易くなってくれることであろう。


 そのためにはこの運動の時間、というかドM引き回しお散歩のようなイベントで、さらに俺の力を見せ付けなくてはならない。


 すぐに壁に掛かっていた鎖付きの首輪をルビアに装備させ、四つん這いにさせて……と、そういえばルビアは素っ裸のままであったか。


 念のためベッドの上に捨てられていたシャツだけを装備させ、四つん這いになれば、そして後ろからその姿を見れば尻が丸出しになっていることに気付く程度の恥ずかしいスタイルで、これから施設内を引き回してやるのだ。


 もちろん俺が後ろに立つことによって、他からはほとんどその丸出しであるということがわからないようになっているのだが、ルビアはそれでもかなり喜んでいる様子。


 もしかすると本当に、その辺に居る野朗のマゾ狩り団体構成員、それから特にやるべきこともなくウロウロしているハゲのおっさんクリーチャーに見られてしまうことを想像しているのがその喜びの原因らしい。


 そんなルビアの姿を見て、やはりこの神は只者ではないと感じている様子の天使であったが、同じように自分の主君にも尻を出させ、同じようにして引き回すことを決めたようだ……



「ひとまずこの鞭を持ってと……ほらっ、行きますよこの雌豚神!」


「ぶっひぃぃぃっ! は、早くお散歩に連れて行って下さいぃ~っ」


「それからそちらの神様も、これから外のグラウンドに出てひと回り、さらに建物の中に戻って天使フロアと神フロアの廊下をグルッと回りますのでそのつもりで」


「わかりました、さぁ行きましょう、私も鞭でビシッと打たれて……ぶっひぃぃぃっ!」


「やはり凄まじい『M』の力が……この秘密、すぐに暴いて私も神様を喜ばせるように……」



 などと言っている天使を先に行かせつつ、ルビアを促す感じで鞭を入れて『お散歩』をスタートしたのであった。


 しかしこのイベント、単に天使に対して俺の実力を見せるというだけデなk、施設内の間取りやその他の情報を集める良い機会にもなりそうだ。


 また、特にコースが決まっているわけではなく、明日からはルビアや看破の女神に順路の希望を出させ、俺が見たいと思っている所を見に行くというのもアリなのではなかろうか。


 そう考えつつ、目の前でクネクネと動いているルビアの生尻を時折鞭でシバきつつ、俺はここに来て初めて、外の様子をその場で、ジックリと確認する行動に出たのであった……



 ※※※



「鳴けっ! この雌豚!」


「ぶっひぃぃぃっ! ぶひっぶひっ、あぁっ、作業をさせられている神界人間がこちらを見ていますっ、神としてこれほどの屈辱を味わうことになるとは」


「ゴチャゴチャ言っていないでとっとと歩いて下さいっ、それと、ただ引っ張られているだけのあちらの神様と比べて、どうしてあなたからはその半量程度の『M』の力しか抽出されないのですかっ?」


「それはその、まぁ……元々のポテンシャルの違いがあるのではないかと……」


「なるほどそうですか……ではそこで少し止まって下さい、このようなことは本来したくなどないですし、私の大切な神様が汚れてしまうことになるのですが……そこのハゲ! 今から私の神様を少しばかりお仕置きしなさいっ! もちろん手を触れずに、その鞭で叩くのですよ、良いですね? 聞いてんのかオラァァァッ!」


「・・・・・・・・・・」


「チッ、あまりにも気色悪いのではしたなく怒鳴ってしまいましたが……どうやら命令の方は伝わったようですね」


「あの~っ、このハゲによる鞭を受ければ良いのでしょうか……あっ、ひやぁぁぁっ! こっ、これは……効っくぅぅぅっ!」


「まっ……まさかそんなっ、そんなことがっ!」



 ルビアほどではないもののドMであるということを公言し、自他共に認めている状態の看破の女神。

 それをお仕置きマスターであるこの俺が鞭で打ったのだから、当然『M』の力が一気に抽出されることとなる。


 そしてその発散された『M』の力は、当然ドSというだけのゴミ素人である隣の天使が同じことをした際よりも遥かに大きく、ドMである看破の女神も大変に満足してくれたようだ。


 この光景を見て驚く天使、ガタガタと震えていることからも、目の当たりにしてしまったおれとの実力差に恐怖しているのは明らかだ。


 また、ルビアと看破の女神に差があると思い込んでいたその自分の言動を恥じているようでもあり、これは看破の女神に対して謝罪するのではないかと、そんな態度でもある。


 しばらくして立っていられなくなったのか、ペタンとその場に座り込んでしまった天使……俺は何も言えないが、ルビアも看破の女神も大変に困惑しているのが明らかな表情をしているのであった……



「……こんなことが、こんなことがあって良いのかと、いいえ良いはずはありません」


「あの、気分が優れないようですから、今日の『お散歩』はこのぐらいにして、また自信を取り戻して頂いて……どうですか?」


「いいえっ! もう私に神々を、ドMなる神をお仕置きする資格などありませんっ! こうなったらもうこのクスリを一気飲みしてっ! どうにでもなってやりますっ!」


「毒がっ、そんな自決する……わけではないようですね、このクスリは?」


「超強力、効果時間無限で二度と元に戻ることが出来ない、違法な『ドM堕ちポーション』ですっ!」


「ということはつまり……えっと……」


「そう、これで私もドMに、この団体に追われてしまう立場になったわけです、そして逃げたりはしませんし、幸いなことに神を補佐する天使であれば、主である神と同じ部屋に収監されても良いという制度が存在します……さぁっ、そこのハゲ! 早くこの私を捕らえなさいっ、捕まえて連行しなさいっ、ついでにこのまま私も含めて『お散歩』をしなさいっ、良いわねっ?」


「・・・・・・・・・・」



 ここで声を掛けてやろうとも思ったのだが、さすがにこの場所ではまだ喋ったり、ハゲのおっさんクリーチャーと異なる行動を取るわけにはいかないであろうと判断し、まだまだ黙っておくこととした。


 で、自分の神にしたように尻丸出しになり、どこかから取り出した鎖付きの首輪を自分に嵌めた天使は、その鎖の先端と、看破の女神に繋がったものとを同時に俺の方に差し出してくる。


 そのまま四つん這いになって、結局3つの鎖が俺の手許にあって……そういえばコイツは本当にドM堕ちしたのであろうか、試しに軽く鞭を入れてみることとしよう……



「・・・・・・・・・・」


「ひぐっ! ちょっと、何をするのこのハゲ! 気持ち悪いハゲになど叩かれたくありませんっ!」


「あら? あなたはもうそんなことを口にして良いはずがないのですが……というかそのハゲになど何かをされたくない、責められたくないという気持ち、ここに収容されている全ての者に共通していることだとは思いませんか?」


「そんな、だってドMは喜んでいて……いえ、私とてドM堕ちしたというのに、どうしてこのように不快な……相手がハゲだとこうもイヤなものなのでしょうか……」


「そうなのです、だからこのようなハゲを監視役、処罰役に使うのは、収容されている全てのドMにとって良いことではないと、それをわかって欲しいのです……もちろん、こちら側に堕ちてしまったあなたにはもう、何かを改善する権限などないとは思いますが」


「……なんということでしょう、もしや私はこれまでずっと間違っていたのではないかと……ちょっと気持ちを整理する時間が必要です、このお散歩が終わったらすぐに独房へ戻らなくては」


「えぇ、少し考えることは必要かと思いますし、それから……まぁ、この話は戻ってからした方が良いでしょうから、ひとまず残りのコースを全て回ってしまうこととしましょう、お願いしますハゲの方」


「・・・・・・・・・・」



 今更当たり前のことに気付いたらしい天使であったが、時既に遅しというか、どうしようもない馬鹿であることが露呈したというか……まぁ、馬鹿なのはマゾ狩りなどしているこの腐り切ったゴミ団体の構成員全てに言えることなのであろうが。


 とまぁ、とにかく今はサッサと『お散歩』を終えて元の場所へ、他のハゲやマゾ狩り連中に見られにくい場所へ引っ込み、天使にも真実を打ち明けるべきタイミングだということだけは確かである。


 残念なことに収容される側に堕ちてしまった天使には、これ以降この施設内を自由に動き回って情報収集や破壊活動を……ということは出来なくなってしまったのであるが、それでもなお、元々団体に所属していたコイツが持っている情報というのが、かなり有益なものであることに変わりはないのだ……

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