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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1233 計画の始まり

「ひぃぃぃっ! 気持ち悪いですよあなたっ、やめっ、やめて下さいっ、そんなことをしても私は喜びませんっ、やめなさいってこのっ! いやぁぁぁっ!」


『この雌豚がっ! この雌豚がっ! これでも喰らえっ、これでも喰らえこの雌豚がっ!』


「クッ、やめて、お願いだからやめて下さい……あっ、ゆ……いえ、やめてぇぇぇっ!」


「・・・・・・・・・・」


『この雌豚がぁぁぁっ!』


「ひぎぃぃぃっ! で、でもいずれ助かる……ようで安心しました……ひゃぁぁぁっ!」



 気持ちの悪い顔面をしたハゲのおっさんクリーチャーに鞭打たれつつも、それとほぼ同じ風貌の俺が俺であると気付いたらしい女神。


 その場で助けを求めようかどうしようか、迷った感はあるがグッと堪え、ひとまず救出作戦が進行しているということの確認だけで満足し、しばらく耐えるという選択肢を取ったようだ。


 思えば前回、茨の道がある境内でゴーレムのCHING-CHINGを狙った際にも攫われ、また今回も攫われているという状況の女神は、神にしてはなかなか悲惨な眼に遭っているのではないかと思える状況。


 しかしまぁ、普段から馬鹿なことばかりしている報いを受けていると考えればそれは仕方のないことであって、ここでもうしばらく反省させるのも良いことかも知れない。


 と、それではこのマゾ狩り収監施設の結界の強化に役立ってしまう、『M』の力を供出してしまうだけではないか。


 やはり可能な限り早く救出してやって、お仕置きするとすればこの俺様直々に、普段の行いの分も含めて罰していくべきなのであろう。


 ということで悲惨な目に遭い続ける女神の隣を通過して、その後も何度かウロウロしているクリーチャーやマゾ狩り団体所属の天使とすれ違いつつ、ひとまずの目的地である倉庫へと移動する。


 移動の間にも窓から外の様子を見て、どうやら結界の元となっている、それを発生させているのは施設入口から建物の間にあるグラウンドのような場所の、地下深くに存在している何かであろうなと、おおよその見当を付けておくことも忘れない。


 最終的にはそこを襲撃して、存在しているのであろう装置か何かを破壊して、ということをすべきなのだが……そういえばロボテック女神はその装置か何かに関する労働を科せられているらしいし、後で事情を聞いて見るべきだな。


 と、倉庫のような場所に到着した俺は、目の前でおっさんクリーチャーがやっていたのと同じ所作で、扉のようなものを開けて中へと入る。


 ズラッと並んだ三角木馬がまず目に付くのだが、どうやらそれを清掃したりなど、維持管理を担っているのもクリーチャーのようだ。


 壁には鞭が掛けられ、その下には何に使うのかさえわからないような拷問器具の類が所狭しと並んでいて、中には確実に死んでしまうような、拷問ではなく処刑に使うような装置まで存在しているのを認めた。


 まるであまり片付いていない体育倉庫のような、、そんな雰囲気を醸し出しているその倉庫なのだが……そこにあるものがまるで健康的ではない装置や物品ばかりであることから、どこか暗鬱とした空間であるようにも思える……



「ちょっとそこのクリーチャー! ウロウロしていないで必要だと思うものを取って、サッサと持ち場に戻りなさいっ! 処分するわよあんたっ!」


「・・・・・・・・・・」


「チッ、ホントに気持ち悪いビジュアルねこいつ等、こんなのに責められて喜んでいるとか、どうなってんのかしらドMってのは? あぁ気持ち悪い気持ち悪い」


「・・・・・・・・・・」


「……見ているとマジで殺したくなってくるわね、ひとまず蹴っとこっと、オラッ!」


「・・・・・・・・・・」



 何があって何がなくて、結局何を持って帰ろうかと悩んで歩き回っていたところ、どうやらマゾ狩り団体所属のドSらしい女天使に絡まれてしまったではないか。


 可愛らしい顔をして、どこか子どものような感じであるのに、言い方はキツく、それでいて全力を出したと思しきキックは非常に軽い。


 おそらく自分がそこまで強くない、その攻撃ではハゲのおっさんクリーチャーを破壊することも叶わないと知っていて放った攻撃なのであろうが、そこでイラッと下表情をした瞬間を見られなくて本当に良かったと思う。


 しかしどうしてこんなに可愛らしい天使の子が、このような腐った団体に何の疑いもなく所属しているのかと疑問に思ってしまうところだが……ひとまずここで事情を聞いたり、捕まえてどうこししたりというわけにはいかない。


 蹴られたことは覚えておいて、後で団体を壊滅させた際にこの天使の子を見つけ出し、同等とまではいかない者のそれなりのお仕置きをしてやろうと心に決め、すぐに適当なアイテムを、適当に手に取って倉庫を出た。


 というか、どうやら奴はこの倉庫の番人のようだな、何かを探しに来たとかそういった様子ではなかったし、俺の次にもその辺のハゲを見繕い、怒鳴り散らして蹴飛ばしていたようだ。


 で、改めて持って来たものを見てみると、壁に掛かっていた革の板と木の板、それから革の鞭がそれぞれひとつ……ルビアが喜びそうなアイテムばかりだが、無意識にそのようなモノを選んでしまったのかも知れないな。


 そして帰り道、どうやらグルッと円を描くように独房が並んだフロアが回廊になっているらしいとの情報から、反対側の道を通って元の場所へ戻ることとする。


 だがどこもかしこも同じ風景であって、女神が独房に収監されているということに変わりはない。

 違うとすれば既に解放されて寝ている者と、まだまだビシバシと、ハゲに責められている者が居るというこぐらいか。


 ちなみにハゲを同じポジションに就いている天使の方はもう完全に帰ってしまったようで、きっと寝ているのは天使が専属の監視役として付いている、比較的ラッキーな収監者ということなのであろう。


 そんな様子を見つつ、特に見知った顔の女神も居ないということを確認しつつ、ルビアが待っている独房へと戻った俺は、もはや完全に寝ていたそのアホを叩き起こしてやる……



「このっ、サッサと起きろっ、俺がここに居るのに何もしていないと不自然じゃないかっ」


「あうっ……大丈夫ですよ、ほら、向こうの方を見て下さい、ハゲがもう寝てしまったどこかの女神様をガン見しながら佇んでいますから、寝るときにはきっとそのようにするんじゃないかと」


「つまり俺はひと晩中突っ立ってねぇとならんっってことじゃねぇかっ! それは無理だぞ絶対に、いやひと晩ぐらいならどうにかなるかも知れないがな」


「だったら、ご主人様は見えないようにこの豪華なお布団の中に潜り込んでしまえば良いんですよ、ほら、フッカフカですよ」


「呑気な奴だな……だがまだまだ夜も更けていないからな、一旦起きてもう少し粘るぞ、今見てきたことも報告したいからな……そっちも起きているか?」


「えぇ、私はまだまだ寝られません、マイ枕の持込が出来なかったので、慣れるまではちょっと睡眠不測気味になってしまいそうです」


「神でもそういうことはあるんだな……それからえっと、『ロボテック女神、お前はどうだ?』っと……」


『大丈夫です、まだまだ起きていられるかと』


「よし、ならばここからは筆談で、このルビアに俺のあり難い言葉を代弁、いや代筆させる感じでいくから、おいルビア、ここに腹這いになってそのデバイスを持て」


「わかりました、それで、もちろんそんなモノを持って来たということは、お仕置きの続きをして貰えるということなんですよね?」


「あぁ、まずはこの革の板で尻叩きの刑だ、どうだ嬉しいだろうこの雌豚がっ、喰らえっ!」


「ひゃんっ! なかなか効くっ、あぁっ! こんなデバイスを使う余裕がないぐらいには効いていますっ!」


「しょうがないな、しばらくオアズケにしてやるから、デバイスを使ってこう伝えるんだ、まずは目的の女神を発見」


「目的の女神を発見っと、それからどうしますか?」


「もうひとつ、外の運動場らしき場所、その中心の地下深くに、この施設への侵入及び収監者の脱出を阻む結界の大本となる何かがあるようだが、ロボテック女神はそれに関してどこまで知っているのか……という内容のことだ」


「わかりました、えっとえっと……長くて大変ですね書くのが、え~っと」


「相変わらず鈍臭い奴だな、このっ、おっぱいと尻ばかりでなくて頭にも栄養が行くようにしろ今度から、この尻がっ」


「ひゃんっ、自分じゃどうにも出来ないですよそんなの~っ」



 ムッとしたような表情でこちらを見返すルビアであったが、そのような可愛い系の仕草を見せ付けている暇があるのなら、とっとと伝達すべき内容をデバイスに書き込んで欲しいところだ。


 で、モタモタしながらもどうにかこうにか、書くべきことを書いて、主としてロボテック女神に伝えたのであるが、どうやらそれを受信すると同時に返答を書き始めた様子。


 だが返ってきた答えは期待していたようなものではなく、何やら装置があるのは見て触って確かめたので知っているが、大本のパワー、というかこの施設内で掻き集められた『M』の力が集積されているのはそれよりもさらに下で、そこまでは入ることが出来ていないというものであった。


 つまり何らかの結界維持装置自体がそこにあることまではわかっても、肝心のそれを動かしているパワーの源がまだどこにあるのかさえわからないということ。


 もしその地下にある装置を上手く破壊したとしても、おそらくはマゾ狩り団体の所属している神々が、その神の力をもって修理したり、そしてその修理が完了するまでの代役をしたりなどで、結界を完全に打ち破り、仲間の侵入の手引きをすることは難しいことであろうな。



「う~ん、どうしましょうねこの状況は? もしその結界の元? を完全にダメにするなら、やっぱり力がそこに集まらないようにしないと……ならないってことですよね?」


「そういうことだ、だがロボテック女神がそういう技術を持っているとはいえ、そもそもとっ捕まえて来た被害者なわけだからな、誘拐犯がその武器を被害者にメンテナンスさせるなんてことはないだろうから」


「でもご主人様、相手側の方が何もわかっていないのなら、『うわ~っ、このままだと壊れる~っ』みたいな演技をすれば、ビックリしてその大事な場所も見せてくれたりするんじゃないですか?」


「なるほどな、ということで早速ロボテック女神にこのことを……っと、聞こえていたのか今の会話が……」



 すぐにロボテック女神、ふたつ向こうの独房に放り込まれているその神からの通信があり、ルビアと話をするには声が大きすぎたなと反省させられる。


 そしてそのロボテック女神によると、どうやら上の装置部分をメンテナンスしたりグレードアップしたりということは自分がやらされることになりそうだが、その下の部分は、明らかに協力者の神が何かしているとのこと。


 つまり既に誰かがそこに関与していて、このままだと壊れてしまいそうだとロボテック女神が主張しても、少しばかり調べればその関与している神の力でウソバレしてしまうということだ。


 そうなればロボテック女神の立場が悪くなる……とまぁ、これ以上どう悪くなるのかということに関しては想像も付かないのだが、とにかく最悪な事態になるのと、間違いなくそれだけでは済まされないであろうという予想が立つ。


 きっと様々な方面で反乱や、その反乱を手引きしているのではないかと思しき外部からの侵入者を、施設をリアルにひっくり返してでも見つけ出すようなことになってしまうであろう。


 よってこれは作戦としてのリスクがあまりに大きく、もし上手くいった場合の効果と釣り合わないのではないかと、ロボテック女神がこの施設の重要な部分を『見る』だけの結果では物足りないのではないかという結論に達した……



「やっぱりダメでしたか、え~っと、それじゃあその、この施設の中で地道に味方になる人……じゃなくて神様を集めていくというのはどうですか?」


「どうやってだ? 身動きが取れないような状況下にあるのは変わらないのに、どうやってこのフロアに収監されている他の神とコンタクトを取るってんだ?」


「あのっ、それでしたら私に考えが……その、あのようなことをしている私の天使ですが……上手く改心させることが出来れば、もしかしたらお役に立てるかと思います」


「あのドSっぽい天使をか? しかもマゾ狩り団体にどっぷり漬かっているような奴なんだが……大丈夫なのかよ?」


「彼女、本当は凄く良い子だと考えています、考える……というよりも私の力で看破していました、このような団体に属してしまっているのは一種の気の迷いで、本当の彼女の気持ちではないのではないかと、そう思ってしまって仕方ないのです」


「なるほど、本心とかじゃなくて建前でこんなことをしているから、看破の女神の力でも看破出来なくて現在に至る、ということなのか……しかしな……」



 どのような事情があれ敵は敵であって、現時点では警戒すべき、決してこちらの情報など漏らしたりすべきではない存在である。


 例えばこちら側に引き込もうとして迂闊に作戦の概要を伝えたりして、それで反発されてしまった場合にはもうお終いだ。


 こちら側が、ルビアやロボテック女神、看破の女神の側が囚われている側であるというのに、逆にその監視者の側を捕らえておくというようなことは出来ない。


 あっという間にマゾ狩り団体の上層部に報告され、、この神々とルビアは危険分子としてもっと酷い場所に隔離、当然のことながら俺は殺意を持った天使や神々、ハゲのおっさんクリーチャーに追い立てられることとなるであろう。


 それで今回の潜入作戦は完全に失敗、どころかより状況を悪化させてしまうこととなるのだから、この個別の行動についてはもう少しキッチリと検討したうえで、本当にそのようなことが可能なのかどうなのかを見極めていかなくてはならない……



「……よしっ、この辺りの調整なんだが、そこは看破の女神に任せておくこととしよう」


「えぇ、もし上手くいきそうなタイミング、私達の作戦を打ち明けても大丈夫そうな機会があったらすぐにお伝えします」


『それで、もしその作戦が失敗というか、あの天使の方が怒り出したりして上に報告を、みたいなことになった場合はどうするべきでしょうか? 万が一のことですが』


「……っと、その場合には……どうするべきだ? とっ捕まえる、気絶させてエッチな悪戯をすることによってそれをネタに脅迫、或いは純粋に金を握らせて静かにしていて貰うなどの対処法が挙げられるが」


「ご主人様、どちらも勇者としてやって良いことでは……」


「ルビア、お前ジェシカみたいなこと言い出したな、良いんだよ俺様の方が正義なんだから、この際だから手段なんか選んでられるかってんだ、で、このことをロボテック女神に送ってと……」


『極めて卑劣であって、そのようなことをする者はハゲてしまえば良いとも思いますが、現状ではそれ以外に方法がないかと存じます、仕方のないことかも知れませんね』


「うむ、どうしようもないんだ、俺達が正義を成すためには、多少なりとも天使に恥ずかしい思いをさせることが必要になるかも知れない、それだけのことだ」



 天使を脅迫したり、賄賂を掴ませたりといったことをしなくてはならない状況、それが起こり得ることであるのは仕方のないことであるが、可能であれば避けて通りたい道でもある。


 計画が上手くいき、あの天使をこちら側に取り込むことが出来れば、誓約ばかりの俺の行動だけという現状を打破し、捕まっている神々と様々な会話をし、それでここを壊滅させる計画を進めることが出来るのだ。


 その日はそれで話を終えて、俺は早く起きて『ひと晩中そこに立っていた感』を出さなくてはならないということで、サッサと布団に潜り込んで就寝した。


 すぐにルビアも潜り込んで来たのであるが、さすがに疲れていたらしく、余計なことをするまでもなくすぐに眠ってしまったようだ。


 そしてしばらく、まだ日が昇らないうちに隣の女神から声を掛けられ、そろそろ起床しないと身バレの危険が伴う時間だということを告げられる。


 仕方なく布団から這い出して、ベッドの横に控えるような格好で立って時間の経過を待っていると……そういえばまだ風呂にも入っていないことを思い出してしまったではないか。


 たとえ見かけがハゲのおっさんクリーチャーであったとしても、実際にあまりにも汚らしい状態になるのが良いとは思えない。


 だがそんなクリーチャー風情が、単独で神のシャワールームに向かうというのは不自然を通り越してもはや意味不明な行動であるから、少なくともルビアを伴ってにしなくてはならないであろう。


 まぁ、どうせルビアも朝シャンの類をするはずだから、もうとっとと叩き起こして誰かが来る前にそうしてしまおうと、無理矢理布団を剥がして引き摺り出してやった。


 まだ眠たいだの何だのと、半分起きたような状態で文句を言っているルビアの尻を数発引っ叩き、目を覚ましたのが確認出来たところでシャワールームに引っ張り込む。


 一応、この間に昨日の天使がやって来ても良いように、風呂場で『お仕置き』という雰囲気を出しておこう、ルビアもそれに関しては協力してくれる、というか普通にお仕置きされたいと思っているに違いないから……



「あうっ、ひぃっ、もっとぶって下さいっ、そこっ、あぁぁぁっ!」


「・・・・・・・・・・」


「黙られるとちょっと怖いですね……」



 というような感じでどうにかシャワーを済ませ、外へ出てみると……どうやらそのタイミングで看破の女神の監視役である天使がやって来たようだ。


 廊下の向こうから聞こえてくる足音は、どことなく楽し気な、これから始まる今日という日を期待しているように聞こえなくもないものであった……

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