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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1229 施設の情報

「……で、戻って来たわけだが、ここで少しばかり情報を整理しておこう、まずは……マゾ狩りハンター神は完全にアレなのか? もう終わったのか?」


「えぇ、バッグひとつと財布がふたつ、残った部分は繋ぎ合わせてブックカバーにして、そこそこの値段で競り落とされました、お金はここに」


「購入者のリストはちゃんと把握しているわよ、あとで襲撃して口封じして、ブツを回収してもう一度売ることは容易いわ」


「……何だかそのようなことを繰り返していたらいずれ、呪いのアイテムだとして誰も買わなくなりそうだが……まぁ、どうせそういう物品のマニアが買うだろうな」


「それよりも主殿、女神様はっ、女神様を救出するための作戦はっ?」


「まぁ待て、そう焦るんじゃない……で、ここからは本題のその件なんだが……まずは『情報源』をここへ連れて来てくれ、カレン頼んだ」


「はいっ、行って来ますっ!」



 飛び出して行ったカレンはすぐに先程の天使さんを、俺達の料理にとんでもない毒を混ぜ、戦闘不能に陥れようという忌々しい行動に出てしまった……者であって、かつマゾ狩りの被害者でもある天使さんを連れて来た。


 そしてなぜかその後ろには、2体の女性天使が俯き加減で付き従っているのだが、この天使さん達は一体どうしたというのであろうか。


 カレンは何か事情を知っている、というか聞いていそうな感じであるが、その内容を理解してはいないのではないかといったところ。


 ひとまず話は話として聞いてみるべきだが、おそらくはカレンの説明よりも、こちらで直接その2体の天使さんから話を聞いた方が早いに違いない。


 だが天使さん達はあまり積極的に事情を話したいような雰囲気ではなく、ここはカレンに聞いてみるのも止むなしといったところであろう……



「えっと、その、この天使さんを連れて来たらこの天使さん達が自分も自分もって言って付いて来ました」


「わけがわからんぞマジで、結局何が『自分も』なのかわからんからなそれじゃ」


「……私にもわかりません、残念です」


「そうか、だがわからないということがわかっただけでも成長したと思う、テーブルにスペアリブの焼いたのがあるからそれを食べて待つと良い」


「わうっ、やったやった! ご褒美は貰えるんですねっ!」


「……とまぁ、あんな馬鹿に話を聞くのも無駄だからアレだが……おい、その後ろの天使さん達は……もしかしてお仲間ってことなのか?」


「……えぇ、私達はお互いにそのことを知らなかったのですが……どうやら同じようにマゾ狩り収監施設から出されて、神界の様々な町で役人などをしながら情報収集や、マゾ狩りに否定的な者を見つけ出して通報や暗殺していたようで」


「なるほど、ルビア、すまないがちょっとこの天使さん達も縛り上げてくれ」


「わかりました、ではこちらへ来て、そこに跪いて下さい、大丈夫ですから、ちゃんと翼も巻き込まないようにしますから、こんな感じで……」


「あうっ……こっ、これは予想していたのと違う……」

「こんな上手な縛り方があるなんてっ!? まるで痛くありませんっ」


「というと、何か違うのか今までの、マゾ狩り収監施設の縛り方とルビアの自分で実験して探求した縛り方と?」


「えぇそれはもちろん、あのどうしようもない施設では、もう翼のことをまるで考えないグチャグチャな縛り方で、しかもそれを臭くて汚いハゲのおっさんみたいなクリーチャーがやってくるので、もうイヤでイヤで」


「天使なのにそのようなことをされすぎて、翼が痛んで飛べなくなったりした方も居るとか居ないとか、そもそもそんな痛みのせいで、肝心の鞭の痛みに集中出来ないという、それはそれは最悪な状況でした」


「急に喋り出したな……ドM的な内容の会話になると饒舌なのか……」



 僅かなキッカケでまともに話をしてくれそうな感じになった、マゾ狩り関係で潜入していたことを自ら認めた2体の天使さん達。


 これでこちらが捕まえているマゾ狩り関係者は天使3体となったわけだが、もちろん人質交換のようなことをしようとは思わないし、敵もそのようなことを望まない、受け入れないことであろう。


 しかしこちらとしては、情報源として利用可能な者を確保し、しかもその信頼を得ている状況になったことから、そもそも人質交換などを考えるべきところではない。


 今はとにかく、そのマゾ狩り収監施設とやらの場所と内部の詳細な間取り、どのような神がそこに常駐していて、どのような敵が出現して、そして神々がどのような感じで囚われているのかなどを確認しておきたいのだ。


 早速縛り上げた天使さん達を……食事と同じテーブルに上げるのはマナー違反になりそうなので、部屋の隅の天井にある謎のフックを用いて、そこから吊るしてやることとしよう……



「さてと、これで良いと思います、苦しくはありませんか?」


「はい、大丈夫です、このまま拷問して下さいませ」


「いや、今はまだ食事が残っているからな、お前等はしばらくそこで大人しくしていろ、後でたっぷりと鞭打ちをくれてやる」


『へへーっ!』


「さてひとまず食べるだけ食べるわよ、情報を引き出すのはそれから」


「うむそうしよう」



 ひとまず食事を終えて、その間は天使さん達を吊るしたまま放置する……それだけでもなかなか喜んでいるようだな、さすがはマゾ狩りに遭うだけのドMといったところか。


 で、食べ終わってその同僚が吊るされている状況にドン引きする天使さん達によって食器が下げられたとことで、いよいよ『情報収集』の方をスタートしていく。


 3体共部屋の隅に吊るしたまま、精霊様が鞭を持ち出して来てそれを振り回すと、ビシバシと音を立てながら、少なくとも肌の露出した部分に蚯蚓腫れを形成していった……



「それっ! どうかしらっ? このっ!」


「ひぎぃぃぃっ!」

「ひゃぁぁぁっ!」

「気持ち良いぃぃぃっ!」


「もう大喜びじゃないか……で、何から聞いていこうか、まずは……マゾ狩り収監施設の場所からかな? マップで指し示して欲しいから1体降ろすぞ」


「良いわよっ、このまま鞭打ちを続けるからっ、当たらないように上手く中へ入って降ろしなさいっ」


「そんな長縄跳びじゃないんだから……セラ、お前鞭に当たりながら1体降ろしに行け、そこの、最初に捕まえた天使さんで良いから」


「わかったわ、それっ、あっひぃぃぃっ! きっくぅぅぅっ! あぁぁぁっ!」


「何をやっているんですのマジで……効率というものをもう少し考えた方が良いですのよ」


「これは効率とかそういう次元の話じゃないと思うんだよな、もう人として終わってんぞ色々……」



 そんな感じで鞭にヒットされながらも、どうにかこうにか天使さんを、最初に捕まえてあった1体を吊るし状態から降ろして来たセラであったが、もはやルビアの回復魔法が必要な程度にはボロボロである。


 そしてそれはもちろん、降ろされた天使さんに関しても同じことが言えて、残りの2体もこのままだと失神してしまって、情報を引き出すことが出来なくなってしまうではないか。


 精霊様には少し控えるようにと告げて、その降ろしてきて、しかも回復させた天使さんの縄を解いて、床に広げた『神界全マップ』の上に乗らせる。


 しばらくの間ここがこうとか今がどことか、そういった感じで悩んでいた天使さんであるが、やがてひとつのエリアに集中して地形などを見始めた。


 その調べる範囲はどんどんと狭まっていって……そして遂に、その6畳ほどもあるかと思える巨大なマップのなかからひとつの場所を指し示す……



「ここっ、ここに私達が捕まっていたマゾ狩り団体の施設があります、間違いありませんっ」


「ふ~ん、結構な山奥にあるような気がするんだが、隠されるようにして存在しているってことで良いのかな?」


「そうですね、周囲には強力な結界が張られていて、ネズミ1匹逃がさないようになっているはずです」


「ちなみに、その結界を張っている奴はどんな奴なんだ?」


「どんな奴……とは言い切れませんね」


「というと、どういうことなのかしら?」


「それが、この施設はどうも神々の力だけでなく、捕まっている、マゾ狩りの被害に遭った全ての者の力を結界の力に変換しているようなんです、なのでどれだけの力を持った強神であっても、簡単にそれを破ることは出来ないかと」


「……ほう、それはかなりのものなんだろうな、そこまでして逃がさないってのも凄い意志だと思うが」


「逃がさない、というよりも侵入させないって意味の方が強いんじゃないですの? マゾ狩りだか何だかをやっている神々が、他者から恨まれて襲撃を受けることがないようにしている、みたいな感じだと思いますわよ」


「なるほどな、そういう意味合いが強いってことになれば、そこまでして施設に結界を張ってあるのも納得がいくし、それに……」


「それに、このわけのわからない団体に敵が、あのババァの神の一派が接近している、というか取り込もうとしているのもちょっとわかるような気がしなくもないわね」


「あぁ、そんなに強力な結界の中にあのババァ神が入り込んで、そこから指示を出して……みたいなことになったら誰も手出し出来ないわけだからな」



 徐々に見えてきたマゾ狩り収監施設の全貌と、そこにあるという、捕まっている神々の力を利用した結界のヤバさ。


 これがババァ神一派に利用されようとしているのだから、それはそれでかなり危険な状況であると言わざるを得ないな。


 この腐った団体が完全にババァ神一派に取り込まれる、つまりこんな奴等が『体制側』に回ってしまう前に、どうにかして滅ぼすなどしなくてはならないところだ。


 だがそのような結界があるということで、真正面から突撃してこれを打ち破り、内部に侵入して暴れ回るという作戦は現実的ではない。


 ならばここは搦め手で、どうにか潜入して破壊工作をするという方向性でいくべきではなかろうか……



「……ということで潜入作戦になるわけだが、そのためにはまず内部の様子を把握しておかないとならない、どうなんだ実際?」


「内部の様子ですか……まずはひとつ、収監されているのは神界人間、私達天使、それから神々となっていますが、その……それぞれがフロア分けされてしまっていて、他の種族の様子はわからないというか……」


「……あのっ、それでしたら私、何度か見たことがあります、神界人間のフロアも、そして神々が閉じ込められているフロアも、清掃をさせられていたことがありましたので」


「おぉっ、それは有力そうな感じだな、ちょっと精霊様、その天使さんも降ろしてこっちへ」


「わかったわ、じゃあ、そっちで正座して喋りなさい、反省の気持ちは忘れずに、礼儀正しくしなさいよ、特にこの私に対して」


「へへーっ、畏まりましたーっ」



 ということで収監施設の内情を良く知っているという、施設内の清掃をさせられていた天使さんから話を聞くこととした。


 まず、先程最初の天使さんが話したように、収監施設はフロアがいくつかに分けられ、神界人間と天使、そして神々が別々に収容されていることはそれで良い。


 もちろんのこと、俺達が目指すのは神が収監されているフロアであって、そこで捕まってしまった俺達の世界の女神と、それからロボテック女神を救出することになるのだ。


 それゆえ侵入するのであれば神々が、女神ばかりが囚われているフロアの情報を重点的に調査しておく必要があるのであって、今回聞ける話はかなりの勝ちを有するもの。


 どんどんと話を進めていく中で、まず女神達が収監されたのであろう神専用のフロアは、巨大なマゾ狩り収監施設の建物の最上部に位置しているということ、そしてそこへ入ることが許されるのは、マゾ狩り団体の関係者と収監されている神、そしてその神に対して『懲罰』を加えるハゲのおっさんクリーチャーのみとのこと。


 マゾ狩り関係者の中には気持ちの悪い野郎の神も存在している、というかそういう神ばかりなのであろうが、俺がそれに化けるのはかなり難しいと言わざるを得ない。


 俺が神でないということぐらい、そのオーラなどを探ればすぐにバレてしまうことになるわけだし、そもそもの動きが不自然であったりなど、どうしようもない、避けようのない要素がいくつも存在しているのだ。


 となるとやはり、俺が何かに化けて潜入するためには……そのわけのわからんお仕置き専用のハゲおっさんクリーチャーに身を窶すしかないということになってしまうではないか……



「……なぁ、俺がそんなモノに化ける以外にさ、どうにか潜入する方法が……ないよね、ですよね知ってます」


「まぁ、それ以外は難しいわね、あんたが行かないってなら、誰かが収監されている神様に化けて……ってのも難しいかしら?」


「どうだろうか、もしかするとルビア殿であればどうにかなるのではないか? ほら、神を宿している存在なわけだし、キチンとドMでもあるから最適だと思うのだが?」


「なるほどな、ルビアを使うのは効率が良さそうだな、捕まった神々のうちの誰かとして、新しく収監されるみたいな感じでいけばどうにかなりそうだ」


「そんな簡単に敵を欺くことが出来るかしら? もしキッチリ調べられたら、ルビアちゃんが神のオーラを持っているだけで実際には神ではないということぐらいわかっちゃうような気がするけど?」


「大丈夫だろうよ、どうせ確認する奴もその周りの奴も馬鹿ばっかりなんだ、じゃなきゃこんなマゾ狩りだの何だのなんぞしようとは思わないからな普通」


「確かに、そこまで見ることが出来るような能力、常人が通常持ち合わせているべき力を持っていないからこそ、このようなくだらないことを本気でしていると……そう考えると悲しくなってくるぞ、私達は何を相手にさせられているのだとな」


「まぁ、相手はろくでもねぇ馬鹿さ、それで俺はその馬鹿の一員のうち……」


「はい勇者様、町で売っていたチョビ髭ハゲズラです」


「しかもメガネ付きじゃねぇか、ハゲメガネでしかもチョビ髭とは……うむ、サイズはピッタリだな」


「凄く似合っていますよ勇者様、もう日頃からその格好で過ごしたら……いえ、良くないですよね、数歩おきに職質されそうですから」


「憲兵のエンカウント率高いなおい……」



 もうこれを装備して、チョビ髭のハゲとして施設に潜入するしかないということが明らかな状況であって、ここからそれを拒否することなど出来ようもない雰囲気である。


 とはいえ、それで正体がバレてしまった場合には大変に危険なことになるのであって、敵だらけの、しかも結界の力によって出ることも入ることも許されないような場所に、おそらくはルビアと2人で取り残されることとなってしまう。


 そういった状況を極力回避するためにも、まずは女神とロボテック女神の救出よりも先に、結界の破壊というか解除というか、そういったものを優先してやっていく必要がありそうな予感だ。


 むしろそうしない限り、外の仲間達の援護を受けられないのであって、やはり何よりも優先してやっていくべきことであると思料する……



「じゃあそういうことで、潜入するのは勇者様とルビアちゃんで、残りは外で、結界の外になっちゃうけど、とにかく近くで待機ね」


「これ、かなり危険な気がしますわね、本当に捕まっているような女神とか、その女神に酷いことをするハゲのおっさんクリーチャーに寄せていかないと、簡単に正体バレして囲まれてしまいますわよ」


「あぁ、ちなみにそのさ、まぁ何だ、捕まっているマゾ狩り被害者の神々は良いとしてさ……ハゲのおっさんクリーチャーってのは実際どんな感じなんだ?」


「えっと、まさしくそんな感じです、あと服装はスラックスにワイシャツで、しかも脇がかなり臭っていて口も臭くて……というような雰囲気ですかね」


「なるほど、とにかく最低の中の最低、汚くて気持ち悪いおっさんを追求した感じのビジュアルなのね、勇者様にピッタリの役割じゃないの」


「むしろもう、おかしな変装などせずにそのまま、もちろん頭だけハゲにして突入しても良いような気がしますよ、勇者様なら」


「セラ、ミラ、お前等アレだぞ、俺がこの神界を支配した暁には新たなマゾ狩りの最初の犠牲者として収監すんぞマジで、毎日お仕置きだかんな」


「フンッ、望むところね、100万年でも耐え抜いてみせるわ」


「そんな100万歳のババァなんぞお仕置きしたくないんだが……まぁ良いや、とにかく準備を完璧にしようぜ、ハゲのおっさんクリーチャーの臭さの方もキッチリ再現しないとだからな」


「ご主人様、そんな臭いのと一緒に行動するのはちょっと……もうちょっと何とかなりませんかね?」


「そう言ってもな……う~ん、それならサリナの魔法か何かでどうにか出来ないか?」


「激クサ魔法ですねわかりました、素材を調合して、ポーションのようなかたちで『激クサの素』を服用して、一定の者に対してのみ臭いと感じさせるドリンクを作っておきます、臭っさいのを」


「ドリンクそのものは臭くなくて良いからな……」



 ということで準備を始めた俺達であったが、やるべきことの大半が俺を改造し、ハゲのおっさんクリーチャーに寄せていくということだ。


 あとはルビア『捕まった神』を演シじなければならないのだが、それに関してはもう、素のドMでも発揮しておいて貰えればそれで良い。


 準備を終え、もう一度場所を確認した俺達は、次いで長距離移動の準備を始めていく。

 食料やその他生活必需品、潜入する俺やルビアとの通信のために使用するアイテムなどを持って行こう。


 で、既に眠りこけている仲間達はサッサと馬車に積み込んでおいて、転移ゲート……を作成するためには神々の力が必要なのだが、ここはもう、仁平に頼んでやって貰うしかないところだ……こちらの動きがかなり目立ってしまいそうだが、こればかりはさすがに仕方がない……

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