1228 完全にやられた
「ふんぬっ……ぐぬぬぬぬっ! ようやくっ、ようやく抜け出すことが出来そうな感じになってきたようですなっ、このままこの邪魔なゴーレムの手をっ、指を破断させてっ、ウォォォッ!」
「ちょっとちょっと! 抜けてきちゃうわよっ、もっとゴーレムに力を与えないと、かなり消耗しちゃっているじゃないのっ!」
「まぁ待て、精霊様、とにかくこの2人から『M』を抽出するんだ」
「そうね急ぎましょっ、ルビアちゃんジェシカちゃん、まずはこっちを向いた状態で壁の前に立ちなさい」
『へへーっ』
「そこへ強烈な鞭打ちっ! ほらあんたもやりなさいっ!」
「おうっ、喰らえこの雌豚共がぁぁぁっ!」
『ひぎぃぃぃっ! ありがとうございますっ、ありがとうございますっ!』
「くっ、なぁぁぁっ! また掴む力が強くっ、ギョェェェッ!」
「良いですよっ、目玉が飛び出しそうなぐらいグチュッとなってきましたっ!」
「完璧だなっ、このっ、それっ! 今度は反対を向けっ! もう仰向けでもうつ伏せでも寝られないぐらい厳しく打ち据えてやるっ!」
満を持して投入したルビアとジェシカの『M』の力、これがゴーレムにチャージされ、これまでとはまた違う、凄まじい力でマゾ狩りハンター神を締め上げる。
チラリとその様子を見ると、確かにリリィが言ったように潰れる寸前の状態……まるで小さな生魚でも丸ごと握り締めているかのような状態だ。
やがて圧力に耐えかねた神の目玉はポンッと飛び出し、ぶら下がってとても口に出しては言えないようなビジュアルで終了した。
あとは内臓が飛び出して、完全に人間のような形状を保てなくなればそれでお終いであって、急速な自己ん再生でもしない限り、もはや動いて逃げたり、もちろん戦ったりすることは叶わないことであろう。
そのマゾ狩りハンター神を救出しようと、どうにかしてゴーレムの足から登り、手まで辿り着こうとしている雑魚キャラの天使共は、カレンとリリィが完全にそちらをターゲットとしていることで目的を達することが出来ない。
また、どこからともなくワラワラと、新たに湧いてくるその天使軍団に対しては、マゾ狩りハンター神を掴んでいるのとは反対の腕、エリナが残雪DXごと装備された左腕の方をその発生源に向けて、登場と同時に薄汚い肉片へと変化させている。
……と、ここでその天使の発生が一瞬だけ落ち着いたように思えるな、歪んだ学習をしてどうにかなってしまったとはいえ、ゴーレムのAIはその機を逃さない。
パッと移動したそちらの腕、というか手をもって、掴まれて頭だけはみ出しているマゾ狩りハンター神の頭を掴んだ。
いや頭ではない、まるで角のように尖った両サイドの髪の毛を、思い切り掴んで引っ張り出したではないか……
「ギャァァァッ! 何をしているのだっ? もしや私の豊富な髪の毛をそうやって……ブチ抜いてしまうというのではない……ひょげぇぇぇっ!」
「どこが豊富な髪の毛だよ、頭頂部はもう後退し切って不毛の大地になってんじゃねぇか」
「そんなことはどうでも良いのですよっ、君達! 神であるこの私に対してこのようなことをするのはやめるのだっ! すぐにこのゴーレムを停止させて、どっか行ってしまった目玉を探して返却を……」
「申し訳ないわねぇ~っ、その目玉、もう拾って食べちゃったのよぉ~っ、今は消化している最中だけどぉ~っ……もし良かったら吐くぅ~っ?」
「そんなぁぁぁっ! 神の一部を喰らうとは……というかその声はホモだらけの仁平ではありませんかっ、このようなことをして、オーバーバー神様の逆鱗に触れてっ、てそれどころじゃないギョェェェェッ!」
「全く騒がしい奴だな、最期ぐらい静かに迎えたらどうだ?」
「ご主人様、もうあと一押しなのでほら、最後に強大な力をゴーレムに、私のお尻を使って」
「うむ、じゃあルビア、それからジェシカは精霊様にお願いしろ、これから尻100叩きの刑に処す」
『お願いしますっ』
「じゃあ喰らえっ、渾身の連続お尻ペンペン(秒速3,000回転)だっ!」
「こっちは秒速5,000回転よっ! これを受けて全てのMを解き放ちなさいっ!」
『ひぃぃぃぃぃっ! きっくぅぅぅぅっ!』
「なぁぁぁっ! ぬわぁぁぁっ! さらにゴーレムの力が……もう……ぶちゅぽっ!」
最期のチャージ、俺はルビアを抱え込んで、その鞭で打たれたことによって衣服が破れ、丸出しになった尻を手で引っ叩いてやった。
これによって相当程度の『M』の力が発散され、もちろんそれは無駄なく、完全にゴーレムによって取り込まれて……そのロボ感溢れるボディが黄金色にか輝き出したのである。
それと同時に、先程まですさまじい悲鳴を上げていたマゾ狩りハンター神が少しばかり大人しくなり、最期はバンッという音を立てて完全に潰れてしまった。
ゴーレムの掌に残ったのは、もはや最初の段階でハエのように叩き潰した雑魚キャラ天使のものなのか、それともたった今握りつぶしたマゾ狩りハンター神のものなのかさ判別が付かない赤黒い液体のみ。
と、良く見ればその中にベチョッとした感じの皮のようなものが……ズルンッと滑り、そのまま地面にビタッと落下したではないか。
これが先程まで粋がっていた、そしてこれまで散々この神界のMやドMを苦しめてきたのであろう、マゾ狩りハンター神の中身が全部出てしまった抜け殻である。
その抜け殻に対し、近付いた仁平は手でなく足を使って踏み付けるような動作をして……どうやらこの状態でなお、マゾ狩りハンター神は生存しているらしい……
『……クッ……カハッ……このような、このようなことになるとは……まさか神である私がこんな状態になってしまうとは……』
「何で喋ることが出来るんだよ気持ち悪りぃな、中身が全部ないってのに、どうなってんだ神界の神ってのは? まぁ、それはどこの敵キャラも同じことか」
「というか、主殿だって捻じり鉢巻きのような状態で普通に会話していたではないか、キモいというのであれば主殿も……」
「精霊様、あと2万回ぐらいジェシカの尻を引っ叩いてやってくれ」
「合点! 覚悟しなさいっ!」
「ひぃぃぃっ! ひゃぁぁぁっ! こっ、これは予想外でっ、嬉しすぎるっ!」
「ご主人様、私もお願いしますっ」
「しょうがねぇ変態共だな、じゃあルビアも……っと、ちょい待った、このまましたらゴーレムが暴走どころか爆発して……セーフなようだ、危なかったなしかし」
敵が生存しているとはいえ、明らかな戦闘不能の状態にあることから、そのままいつものノリに戻ろうとしたのがいけなかった。
今回はヒヤリハットで済んだのだが、このまま気付かずに遊んでいたとしたら、結局この神界人間の町は完全に滅び去ってしまったことであろう。
で、その事なきを得た今回に関しては、これ以上何かが起こるようなことはもうあり得ない、何も起こりえないような状況である。
なぜならば敵として登場したマゾ狩りハンター神は、皮だけになった戦闘不能の状態から復活することが出来ないということを、その場で確認した仁平が皆に伝えたのだ。
薄汚いそれを素手で掴んで、ベロンッと地面から剥がしてこちらに見せる仁平……気持ち悪いとかどうとか、そういう次元のシロモノではない物体だなこれは……
『……君達……この私に勝利したからといてtいい気にならないことだ……世の中にはまだまだ、マゾ狩りを志す同志が、そのような神々がいくらでも居るのだからな』
「でも俺達がお前に勝利したという事実は変わらないだろうよ、せいぜい悔しがりながら、絶望しながらこの後の処刑を待つんだな……というか仁平、それは喰ったりしないのか?」
「あのねぇ~っ、いくら何でもアレでしょぉ~っ、ほらっ、中身が飛び出して残ったブドウの皮だけ食べたりはしないでしょぉ~っ? それと同じことなのよぉ~っ」
「なるほど確かに、ブドウなら中の果肉だけ食べたいよな、近年においては皮ごと食べられる品種も存在しているようだが、それでもその皮だけ食べるってことはしなくて……」
「何? ブドウあるの? どこどこっ?」
「今はないですよマーサちゃん、後で買ってあげますから、その、汚い汁が飛び散った所に近付いてはいけません」
「あ、うん、ブドウないならそんな所行かないっ」
「……余計な馬鹿が余計なことを言って話が途絶えたが……まぁ、もうお前如きのようなゴミと会話する意味はないな、処刑してやるから喜べ、二度とこの神界において復活出来ないようになっ」
『……クッ、私とて神であるゆえ、しかもドSキャラという特性を一切発揮せずに敗北してしまったため、このまま引き下がるわけにはいかないのだが……何か良い方法はないものかt、今必死になって考えているのだよ、この中身のない頭を使ってな』
「脳味噌全部ぶち撒けたのにどうして思考出来るのかがが知りたいよ俺は……」
などと疑問に思ってしまったのであるが、この状態から何かが出来るなどとは到底思えないし、出来たとしてもなぜか言葉を発することが可能なその口で、処刑しようとするこちらに対して罵りの言葉を投げるぐらいのものであろう。
もちろん体を動かすことなどは普通に出来ないようであるから、その際に口を、というか皮の口であるべき部分をガムテープなどで塞いでしまえばそれで終わりだ。
だがそうなると処刑の際にサイレントで、しっかりその表情を見ていないとどれだけ苦しんでいるのかが把握出来ないような状況となってしまう。
それだとさすがにつまらないし、マゾ狩りの被害に遭いそうになったロボテック女神も、そしてルビアに取り込まれているドM雌豚尻の神も納得がいかないはずだ。
このような馬鹿は公衆の面前で、可能な限りの苦しみと屈辱を与えて、さらに下々からの罵倒や嘲笑の言葉も浴びせて、そんな中で命を奪うべきものである。
そんな簡単に、しかも最後に無様な叫びを上げさせてより一層評価を落とさせることなく、神としてそのまま死なせてしまうわけにはいかない……
「よしっ、じゃあとっとと処刑しようぜ、町の神界人間を可能な限り集めて、そこで引き裂くとか何とかして」
「そのままバッグに加工してしまうのも良いわねぇ~っ、ギリギリ生きたまま、痛みを感じるまま、神ではなく雑に使われるバッグとして使い古すのよぉ~っ」
「なるほど、こんなんでも革製品ではあるからな、しかしそんなモノを使っていたら確実に呪われて……動くことは出来ないものの何やら力のようなものは残っているみたいだからなコイツ」
「そうみたいね、何というか、神の力? ってのは抜けていないみたい」
「勇者よ、この状態で生かしておくと、そのうちに何か厄介な事件を起こさないとも限りませんよ、私達の目が届いているうちに、ササッと処分してしまうべきです」
「あぁ、だからそのために……んっ? その神の力が妙に……しまった!」
『フハハッ……私の最後の力はこれに使おうと、使ってしまえばもう二度と戻らない神の力を、最後の最後でもう一度、私が志していたマゾ狩りに貢献するために使い果たそうと、今、この場で決めたのだよっ! フンッ!』
「やっ、ちょっと、何なんですかこの……聖なる光の縄でギチギチに縛られて……まさかこれはっ、イヤですっ、そんなマゾ狩り施設送りなんてっ、イヤァァァッ!」
「えっ? ちょっと私も巻き添え……というか狙われていたのですかっ? 勇者よっ、どうかこの光の縄を……あぁぁぁっ!」
「女神! ロボテック女神もっ! どこへ……消されたんだっ?」
『消したのではないよ送ったのだよ、無限に脱することの出来ない牢獄、マゾ狩り収監施設へねっ! ハハハハハハッ!』
「そんなことが出来たなんて……やられたわね、でもまずコイツ、極めて残虐な方法で始末するわよっ、救出作戦に関しては後で……情報源もあるわけだし」
「……そうだな、悔しいがまずはこのクズの処刑が先だ、もう力を失っているから単なる革製品に加工することが出来るな、外でやろう、一般的な処刑としてっ!」
「女神様……どうかご無事で……」
突如として起こった連れ去り事件、最後の最後で、本当に最後の力を振り絞った皮だけのマゾ狩りハンター神によって、俺達の世界の女神、そしてロボテック女神が連れ去られてしまったのである。
送り先はこのマゾ狩りハンター神も所属しているマゾ狩り団体の、神界内のどこかにある収監施設だというが、俺達はそこの場所を知らない。
ただ、この大馬鹿野郎との戦闘の前にあったひと悶着でひっ捕らえた天使さん、俺達の食事に毒を入れ、血糖値爆上がりで戦うことが出来ないようにしようと試みた天使さんが、まだこちらで捕らえたままの状態でここに残っているのだ。
当然この連れ去り事件の一部始終を見ていたわけだし、自らもマゾ狩りの被害者であって、その作戦に利用されることになるまではその施設に、マゾ狩り団体の収監施設に捕まっていたものである。
皮だけのクソ大馬鹿野郎はそのことを知らない、作戦を部下任せにして自分の関係者がどこでどういう動きをしているのかさえ知らなかった様子であって、それで彼女をスルーしてしまったらしい。
今更になって気付いても、もう力が残っていないため遅いとは思うが、念のためこの天使さんの存在はコイツには伏せたままにしておくこととしよう。
ひとまず皮だけのそれを仁平がズルズルと引き摺って、予め人々を掻き集めてあった町の広場へと向かった……
※※※
「え~っとぉ~っ、ちょっとねぇ、本来はここで喋るべき神々が不在となったのでぇ~っ、今は直接、この私から言葉を掛けるわよぉ~っ!」
『ウォォォッ! 仁平神万歳!』
『何か変なの持っているみたいだけど万歳! 万歳!』
「はいはい静かにぃ~っ、それでぇ~、えっと……ここからはこの精霊に説明をバトンタッチするわぁ~っ」
「はいはい、神がそんな雑魚キャラ向けに喋ってばかりじゃしょうがないものね、え~っと、この何かびろ~んっとなった皮だけの何か、これ、さっきまで神だった何かよ、私達との戦いに圧倒的な差で敗北してこうなったの、しかも卑劣な襲撃をしてきたにも拘らず、大量の部下を連れて来て、この町でも少しばかりおかしな活動をして力を蓄えた? にも拘らずの無様で、救いようのない敗北を喫したゴミクズの神なのっ!」
『ウォォォッ! そんな奴殺せぇぇぇっ!』
『もう神じゃねぇよそんなのっ、最初からゴミを司る神だったんじゃないのかっ?』
『殺せっ! 殺せっ! 殺せっ! 殺せっ!』
「まぁまぁ待ちなさい、こんな状態だから殺すのは簡単だけど……コレ、今からバッグとか財布とかに加工して、『神を素材にしたあり難い革製品』としてこの場でオークションするわよっ! 欲しいのなら一度家に帰って、その家を売り払ってでもお金を用意しなさいっ!」
『ウォォォッ! なんとあり難い革製品なんだぁぁぁっ!』
『欲しいっ、欲しいぞぉぉぉっ!』
『全財産を処分してでもそれが欲しいぞぉぉぉっ!』
……と、最後の方に叫んでいたのは仕込みであってサクラであって、単に集まっている一般の神界人間が無駄な金を使うよう誘導しているだけの者である。
もちろん全ての力を使い果たした、文字通り抜け殻となったこの元マゾ狩りハンター神であった何かには、一切ご利益のようなものが存在しないことは、良く考えればすぐにわかってしまうことだ。
まぁ、信ずる者は救われるということもあらるから、プラシーボ的な何かで購入者が幸せになってくれればそれで良いと、家財産の一切を失ったとしても、その革製品をゲットすることで幸せな気持ちになるのであればそれで良いのだと思う。
もっとも、その全財産をはたいて購入した革製品も、元々神界人間如きがそのようなモノ、神の皮を素材としたモノなど所持しているのはおかしなことであると認められる。
よって後程、誰にも知られないような場所で『難癖を付けて没収』し、もう一度どこか別の町でオークションに出して同じことを……という感じで無限に稼ぐことが出来そうだな。
そのようなことをするためには、まずこの仁平一派で様々な町を攻略し、そこで信頼を得て拠点化していく必要があるのだが、これに関してはまだまだこれからである。
と、早速ステージの上で、やたらと悲鳴を上げる皮だけの元マゾ狩りハンター神をゴリゴリとなめし革にする作業が始まっているようだ。
集まったモブキャラ共はかなり盛り上がっているらしいが、その様子を見て最も喜ぶべき神々はここに居ないし、そしてその神々の仲間の神を取り込んだルビアは、気を使ったのか先に部屋に戻ると行ってどこかへ行ってしまった。
そういえばルビアが取り込んだドM雌豚尻の神は、つい先程連れ去られ、マゾ狩り収監施設に送られて島田tことが判明したロボテック女神とドM仲間、親友であったはず。
そして姿こそは見えなくなったのだが、ドM雌豚尻の神がルビアの中で、完全ない式を保った状態で、先に内包されていた巨乳おっぱいの何とやらという神と共にあるという事実。
もはや気が気ではないその神の力がルビアにも伝わって、或いは直接にそのような不安を語り掛けられて、同じく不安な気持ちを共有することになってしまったのであろう。
また、普段はどうでも良いのであるが、俺達の世界を統治している女神がオマケなのか何なのか、とにかく一緒に連れ去られてしまったことも問題だ。
いくら何でも俺達が付いていながら、『女神は神界のやべぇ奴等に拉致されてしまいました』では話にならない、異世界勇者として、また勇者パーティーとしての信用が失墜する次元の話である。
となれば、もはやこんな処刑のようなものなど見ている暇ではなく、とっととそのマゾ狩り収監施設なる場所へ行って、連れ去られた神々を救出しなくてはならないのであろう、ついでに今後の憂いとなり得るマゾ狩りの連中も殲滅だ……




