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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1226 実質的な呼び込み

「なるほどな、つまりその施設から出たいがために、こんな危険な潜入みたいなのを受け入れていたってことなんだなお前は?」


「だって、収監施設からは永久に出ることが出来ないと言われていましたし、そこではイヤだと言っているのに、毎日のように知らないハゲによる責めを受けることになっていて、やめてくれないんですよ、『喜んでいる』とか何とかで、そんなことなんて絶対にないのに……」


「この天使もマゾ狩りの犠牲者であったようですね……あなたはかなりかわいそうですが、今度はこちらで拘束させて貰うことになるでしょう」


「ひぃぃぃっ! せっかく解放されたのにっ、今度はこっちで知らないハゲによる責めを……え? そんなことしない? ハゲは使用しないんですか知らない?」


「それをやるのはマゾ狩りの団体? だけだ、俺達は普通に話をして、情報を共有してくれればそこまではしないし、永久にどこかに閉じ込めておくというようなこともない」


「一連の事件が解決したら私と同様、一定の処罰を受けてから解放されることになりますね、ただ……yったことがやったことですので、何をされるのかまではちょっと……」


「いえ大丈夫ですっ、本来はマゾ狩りで狩られるぐらいのドMなので、知りもしない薄汚いハゲのクリーチャーに蹂躙されることと比べれば、多少死に掛けるような罰程度はどうということもありませんしむしろご褒美です」


「……何か最近歪んだキャラばかり登場するわね」


「いや精霊様、実際のところアレだぞ、当初から歪んでいないキャラの方が珍しいぐらいだぞ、この天使なんぞまだマシな方だ」


「そう……なのかしらね? まぁ良いわ、とりあえずこのまま捕まえておいて、敵が襲来するまで事情聴取でもしておきましょ、それからこの件に関して、敵の何だっけ? マゾ狩りハンター? そいつへ何か報告することとかはあるのかしら?」


「いいえ、首尾良くやるようにとの指令以外は何も受けていません」


「なら良いわ、じゃあちょっとそこで大人しくしていなさい」


「はい、雌豚の分際で申し訳ありませんでした」



 敵が放った仕込みキャラであって、俺達の貴重な時間と食事を台無しにしてしまったことについては相応の報いを受けて貰わなくてはならない。


 だがそうであってとしても、この天使がマゾ狩りの被害者であるということには変わりなく、その件に関しても考慮が必要だし、最終的な救出の必要もある。


 ひとまず精霊様と俺達の世界の女神の何やら聖なる力をもって、食事に混ぜられた血糖値爆上げのトラップは解除され、これで食べても気絶するように眠ってしまうようなことはなくなった。


 料理としては多少冷めてしまったのであるが、神界の高級かつ厳選された食材を使用し、また忙しい神々が時間を見つけて食べられるよう、そのような状態でも、たとえ弁当箱に詰めて半日置いておいたとしても美味なるものばかり。


 あっという間に何も載っていない、多少ソースやその他調味料が残ったのみの皿が並ぶようになり、天使の代わりにミラとジェシカが片付けをして、まるで出前の食器でも返すかのように儀式場の外に積み重ねた。


 これで腹拵えは完了、あとは実際に敵が来るまでの間にキッチリとした準備をしておくべきところなのだが……まずはユリナで実験した磔装置を、ミラ、ついでにサリナの分も用意しておくこととするか……



「ロボテック女神、すまないがこれと同じものをあと2台用意してくれ、それから他のメンバーにも何らかの装置を……どうする?」


「それなら普通にここへ正座しておけば良くないかしら? 勇者様はゴーレムと一緒に前で戦うことになるのかもだけど、私達は後方で待機してエネルギーが本格的に足りなくなったときに供給するみたいな?」


「そうですね、ユリナちゃんとかサリナちゃん、あとミラちゃんの分があれば、おそらく私達のエネルギーをそこまで使わなくても敵に対抗することが出来そうですし、よっぽどのイレギュラーがない限りはですが」


「そのイレギュラーが生じない可能性って、今までの経験上あまり考えられないんだが?」


「確かに、では念のため私達はここで正座しつつ、いつでもゴーレムに『M』の力を与えられるように、手枷で接続して待機していましょう」


「しかしマリエル殿、その状態でもし、万が一敵の攻撃が逸れるなどしてこちらに飛び込んできて、直撃を喰らってしまった際、場合によっては……」


「あまりの気持ちよさにMが発散されて、ゴーレムがオーバーヒートしてしまうかもですね……しかし正座の状態ですと足が痺れて攻撃を回避することも叶いませんし……困りましたね」


「いや別に正座しなけりゃ良いんじゃないのか?」


「……確かに、主殿の言う通り、特に正座している必要はなかったようだ」


「えぇ、私達がこのような面倒なことになった原因につき反省している、イコール正座しなくてはならないという固定化された考え方があって……」


「じゃあ、普通に壁沿いに並んでいましょ、それで、もしもの場合には勇者様か精霊様が後ろに跳んで、それから私達を鞭でビシバシ、ゴーレムに『M』のエネルギーを送り込むのよ」


「うむ、そういうことであればそれでいこう、お前等とっととそこの壁沿いに並べ……いや壁の方をむいていなくて良いから、ルビア座るなっ! ちゃんとしろちゃんとっ!」


「え~っ、座っちゃダメなんですか~っ?」



 以降もくだらないやり取りがいくつかあったが、ひとまず襲来する敵を迎え撃つための配置に関しては完了したように思える。


 しかしここからずっとこの状態で待つのもアレなので、俺とその他の戦闘メンバー、つまりカレンにリリィ、精霊様と仁平に関しては、その辺に椅子というかソファでも用意して待機することとした。


 また、ゴーレムが使用すべき残雪DXを直接的に操ることとなる、つまり丸ごとゴーレムに装備されることとなるエリナは、まだ何やら調整めいたことをしているのだが、一体どんな内容の調整をしているのであろうか。


 それが気になってしまったのは俺だけではなく、カレンも……リリィはもう他の面白いことを発見してしまったらしいな、とにかく2人で様子を見に行くこととしよう。


 近付いてみると、どうやらエリナはゴーレムの左腕付近に何か施しているらしく、肘部分から少し下を開けて、中の配線の類を弄繰り回しているではないか。


 というか最初は単に組み上げただけの、プラモデルのようなショボいゴーレムであったというのに、どうして覚醒トランスフォームした後はこの完全なるロボの、各所に機械的な何かが埋め込まれたものになっているというのだ。


 とまぁ、それに関しては『覚醒』したうえで『トランスフォーム』したような存在にとって良くあることか。

 現実的、物理的には一切あり得ないことだが、ここは神界でわけのわからない神々が跋扈しているトンデモ世界なのだから……



「よいしょっと……エリナちゃん、何をしているんですかこれ?」


「あら? あぁ、カレンちゃんですか、これですね、これはここに黒い線があるじゃないですか? それが魔力をゴーレム全体に伝える……血管のようなものですね、これを引っ張り出しています」


「血管……ですか? え? 切っちゃうんですか?」


「そうです、あ、でも今は魔力がガンガン流れているわけじゃないし、むしろもっと上の方でストップしてありますから、ここをチョンッと切って引っ張り出して……私が作ったこの台座に繋げる……」


「おいエリナ何だそれ? 台座? というよりかはアレだぞ」

「跨って乗る乗り物みたいです」


「そうなんですよ、あえてそういうデザインにしてみました、ほら、馬上から狙い撃ちする高度なスナイパーみたいなノリってカッコイイじゃないですか、ここはバランスが悪そうですし、ここからこう、狙って……バンッみたいな?」


「・・・・・・・・・・」



 エリナがゴーレムの左腕、肘から下の部分に取り付けていたのは、どう見ても大型バイクのような、しかし車輪はなく、純粋に跨るだけの座席部分のみのような、そんな感じのモノであった。


 つまり、戦闘中に突入したらエリナはそこに、残雪DXを装備した状態で跨って待機し、時がきた状況下においては、まるでバイクに乗りながらショットガンで射撃するハードボイルドな何かのような、そんなムーブを見せ付けるつもりなのであろう。


 これに対して得られる感想としては、当然のことながら馬鹿ではないのかと、もっと普通に出来ることがあるのではないかと、そういったもののみだ。


 だが試しにバイク部分に騎乗して、残雪DXの銃口をクイクイと動かしてその姿勢におけるバランスをチェックしているエリナは自信満々の様子。


 会心の出来だと、自らそれに太鼓判を押したうえで、それに跨ったまま戦闘に突入するつもりだとそう言いながら引き続き残雪DXを振り回している。


 なのでもうエリナのことは諦めて、ひとまず危険ゆえ残雪DXを振り回すな、銃口を人に向けるなとだけ注意しておいたのであった。


 奥の方で磔にされているユリナとサリナも溜め息を付いているような状態であるが、残雪DXは頑丈に作られているし、エリナも不死なので特に問題が生じることはないであろう……



「まぁ、ひとまずこんな感じかしらね? ちょっと、座るところが硬いわよ、誰かこっちへ来て椅子になりなさい」


「おいジェシカ、精霊様の椅子になれ、ルビア、お前は俺の椅子だ、カレンとリリィはそっちのソファを2人で使って良いぞ、仁平は……どこ行ったんだ?」


「さっき出て行きましたよ、またお腹が減ったので、神界人間でも襲って食べて来るとのことでした」


「人喰いもほどほどにしろよな神なんだから……まぁ、すぐに戻って来るか、ひとまずこれで休憩としよう」


『うぇ~いっ』



 休憩、とはいってもミラやユリナ、サリナなどは磔にされたままだし、スイッチひとつで拷問を受け、その『M』の力をゴーレムに伝達することが出来るスタンバイの状態だ。


 そして今、俺と精霊様がルビアとジェシカを四つん這いにさせ、椅子にしているところで、僅かにではあるが2人の『M』も発散され、ゴーレムにチャージされているのであった。


 この状態であれば常にゴーレムを万全な状態、その瞬間に戦い始めることが可能な状態にしておくことが出来るので、もはやいつ敵が襲来しても大丈夫である。


 なのでそのまま、特にやることもなく時間を過ごし、マゾ狩りハンター神なる敵を待つのだ……



 ※※※



「あっはぁ~いっ、帰って来たわよぉ~っ」


「……敵じゃなくてバケモノだったか、それで、外では何か情報を集めてきたのか?」


「情報どころじゃないわよぉ^っ、どうも敵の神、もうこの町に入っている感じよぉ~」


「マジか、じゃあすぐにやって来て攻撃を……」


「いやぁ~っ、それがこの場所がわからないみたいでぇ~っ、探すのに四苦八苦しているというかぁ~っ」


「どうして神なのにこんな場所さえもわからないんだよ? というか協力者は? このほら、食事に毒を混ぜようとした天使さんみたいなのが他にも居るはずだろうに」


「実はその子だけだったみたいなのっ! まぁこの町ではねぇ~っ、ほら、私達が制圧したから、それで偵察というか仕込みというか、そういうキャラの存在が明るみに出ないように、ほとんど下げてしまったってことよねぇ~っ」


「なるほどな、となると敵は町の中を彷徨って疲弊して、それから干乾びてミイラに……なる前にはさすがに諦めそうだな」


「ご主人様、迎えに行ってあげないんですか? 少し薄情な気もしますよ」


「何言ってんだルビアはっ、敵だぞ敵!」


「はうんっ、もっとぶって下さ……あっ」


「やべぇ、尻なんか引っ叩いたからゴーレムに凄まじい力が……大丈夫、爆発はしないらしいな」


「非常に上質で不純物の少ない純粋なMですから、ゴーレムにとっても凄く良いモノなんだと思いますよ、その方のMは」


「そうなのか、でも今ので間違いなく……」



 会話の中で椅子にしているルビアがわけのわからないことを言ってしまったため、ついいつもの癖で尻をペチンッとやってしまった。


 その瞬間にルビアから発生した『M』の力は、その手に嵌められた手枷を通じてゴーレムに伝達され、チャージされてしまったのである。


 本来であればもっと身長に、少しずつ注入していくべき力ではあるが、今回に関してはそこまで一気にというわけではなかったため、ゴーレムそのものに問題は生じていないようだ。


 だがこの瞬間、間違いなく儀式状の外にまで、もちろんこの町全体、どこに居てもわかってしまうような力の発散があったのは確実。


 せっかく儀式場の位置がわからず、町の中を彷徨っていたらしいマゾ狩りハンター神がそれを察知し、イチを特定してここへやって来るのも時間の問題だ。


 もちろんその過程で、亜空間であるこの儀式場への接続を無理やりしなくてはならないので、そこで相当な力を使う分もあるとは思う。


 だがその程度で疲れ切って、もはや戦う力さえも残されていないような状態になるほど、神というのは脆弱な存在ではないのだから、そのことに関してはあまり期待しない方が良いであろうなといったところ。


 なお、仁平が確認した所によれば、襲来したマゾ狩りハンター神は部下を引き連れ、俺達が支配するこの町の中で勝手に神k内人間を対象としたマゾ狩りを始めてしまっているらしいので、むしろここを見つけ、早々に突撃してくれた方が良いのではないかという意見もあった……



「……何か大きな力が近付いて来ますね、これがロボテック女神の言うマゾ狩りハンター神……なのでしょうか?」


「ちょっと、いえ凄く不快な感じがしますね、どこか公、早く逃げた方が良いと思わせるような、不安になるような力の波動です」


「うぅっ、寒気がしてきたわよ、ねぇ、ちょっと座っても良い?」


「うむ、マーサは座っても構わないぞ、感覚が鋭い分、敵がこっちへ向かっている際に発生する音とか振動とかで不安になったりもするだろうからな」


「ほら、座ってマーサチャン、大丈夫よ」


「……というか、この亜空間でそれを感じ取ることが出来ているのが凄いですね、神ならまだしも……この子達、人族とか魔族とか、その程度の存在であるはずなんですが?」


「まぁっ、そういう子も数多の異世界には存在するってことなのよぉ~っ、本来はそこへ別の異世界から召喚された勇者が頑張るんだけどぉ~っ、そのねっ、必要に迫られて現地の存在が強くならざるを得ないような状況があってぇ~っ」


「なるほど、つまりは召喚された勇者がとんでもない雑魚で、勇者パーティーのメンバーが主体となって戦っている……珍しい世界もあるものなのですね」


「そうなのです、私が管理しているこの世界は魔界の問題などもありまして、それに加えてせっかく召喚した勇者がこの、こんなとんでもない……ひぎぃぃぃっ! すみませんすみませんっ! もう二度とそのようなことは言いませんので許してぇぇぇっ!」


「ってんじゃねぇぞオラァァァッ! 俺のことを言っていたんだな今のはこのクソがぁぁぁっ……と、やべぇ、またゴーレムに凄まじい『M』の力が……」


「完全に察知されましたね、敵、というか不安を掻き立てる何かがまっすぐにこちらへ向かい始めました」


「さすがにな、今の女神から発せられた力が、ゴーレムに流れ込んでしまったんだからな」


「というか勇者よ、その前に掴んだ私の髪の毛を離して下さい、痛んでしまいますので……いててててっ」



 何やらこの大異世界勇者様のことを小馬鹿にしたような会話を耳にしてしまったため、形振り構わず『罰を与える』という行動に出てしまったのであった。


 それによって起こるべきことは当然に起こり、外をウロウロと、このあたりだと目星を付けていた敵がこの場所を完全に把握してしまったのは明らか。


 今は亜空間への接続を無理矢理に試みているところのようだが、どうもロボテック女神がこの空間に、ルビアと融合したドM雌豚尻の神が作成した亜空間の結界を強化するための何かを施したらしく、なかなか開きそうにもない。


 また、ここでゴーレムが動き出して、徐々に敵の力が強まっている、つまり空間に裂け目が生じ、そこから外の敵の力が入り込んでいる状況にあるこの場所を、再び密閉しようと試みたのだ。


 一定の方向、儀式場の入口の扉を目掛けて何かエネルギーのようなものを送っているゴーレムであるが……この『入らせない』というだけのことでは敵を疲弊させることは出来ても、倒すことなどは到底出来ない。


 ならばもっと別の所に力を注ぐべきではないかと……もうこのまま入口は開かせて、その瞬間に攻撃を加えたらどうであろうか……



「エリナ! ちょっとそこでゴーレムにやめさせろその通せんぼをっ、そんなことより最初の一撃だ、入ってきた瞬間に残雪DXで攻撃して、それでブチ抜いてやれっ!」


「わかりましたっ、えっと、命令とかは特に意味はないと思うので……何となくこう、伝わって管最適な感じで……」


『……人間、神、そして……悪魔、了解した、これより神、敵なる神に対する迎撃行動、それに移行する』


「良かった、ちゃんと伝わりましたっ」


『……ターゲット、亜空間の外……あと13.22秒後に障壁を破ってこちら側へ』


「正確な情報をありがとうございます、ではあと8秒と……」


『5.37秒』


「何のやり取りをしているんだお前等は……てか来るぞっ!」



 ピッタリ正確な秒数、もちろんゴーレムの中ではさらにさらに正確な、何億分の1秒辺りまで把握されていたのであろうが、その瞬間は俺達の感覚で秒単位の確度をもって訪れる。


 亜空間の繋ぎ目、儀式場の出入口として利用されていた場所がバンッと開き、そこから現れたのは……残雪DXから放たれた強烈なビーム攻撃によって確認するに至らなかった……

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