1218 完成させて
『信じられないっ! 私達今までずっと騙されていたんだわっ!』
『まさかオッサァァァンッの神の本体があんな感じのアレだったなんてっ!』
『許せないっ! これまで信じていたのにっ!』
『殺せぇぇぇっ!』
『まっ、待つのだ信者共よ! 我の本当の姿はこの御珍体を装備したものであって、今現在は極端に弱体化して……』
「そうでしょうか? 私達が神界より持ち込んだこの真実を映し出す鏡には、あなたの今現在の姿が真実として映り込んでおりますが?」
『貴様いつの間にっ⁉ 貴様もっ、貴様もかぁぁぁっ!』
「……とりあえずそのメガホンみたいなので話すの止めない? やかましいんだよ普通に」
「……フンッ、もうこうなってしまっては致し方ない、ここで、この村ごと貴様等を始末してくれるわっ1 ふぬぬぬぬっ! ハァァァッ!」
「粗珍体が1.5倍ぐらいになったな……その分ボディーの方が縮小しているみたいだが……っと、俺は戦わない方が無難だな」
「私達も武器を使うと何をされるかわからないわよっ! 茨の道でゲットした茨ボールで……あら?」
「フニャフニャになっていきますね、どういうことでしょうか? 茨の道の力が……カットされて?」
本性を暴かれたオッサァァァンッの神と、それと対峙する俺達敵性組織の面々であったが、ここでひとつ不可解なことが起こったのであった。
茨の道から続く御珍体の山の、その力のひとつとして存在している『茨』が、どういうわけか力を失ってしまっているように見えるのだ。
というか、宿の屋根の上からすっ飛んで来て磔にされた仲間達を救出したリリィが見せたそれは、一度彼果てた後に復活したような、そんな見た目である。
それがもう一度、徐々に枯れて灰色になり、明らかに弱体化、というか何の力もない状態に近付いているのだが……これがどうしてこうなったのか、全くの不明だ。
だがその茨ボールの状態を見て何かに気付いたらしいのはオッサァァァンッの神であって、どういうわけか後ろの参道に目をやった。
直後、あまりにも驚いた表情を見せたそのオッサァァァンッの神が目にしていたものを、俺達も目にして……これまでそこに存在していた、茨の道からステージ上まで続いていたレッドカーペットのようなものが撤去され始めているのだ……
「おい貴様等ぁぁぁっ! 何をしているというのだっ? それを片付けてはならぬっ! 決してそこから動かしてはならぬのだぁぁぁっ!」
『うるせぇバーカ! お前なんか死んでしまえっ!』
『このカーペットで繋がっていないと、村のエリアで境内の力が使えないのは皆知っているのよっ!』
『どんどん片付けちまえっ! そうすればこの詐欺みてぇな神は力を失うぞっ!』
「クソッ! だが我が力を失ってしまったとしてもっ! 所詮は神と人の間柄! 貴様等如きが神である我に勝てると思ったかっ?」
「神と人との争いならそうよねぇ~っ、でもぉ~っ、神と、それから神界より顕現せし強大な神との争いだったらどうなのかしらぁ~っ?」
「なっ? 貴様は……えっと、めっちゃキモいではないか、何なのだマジで?」
「だからぁ~っ、神界の強大なる神よぉ~っ、御存じない? ならばその力を示すことでしか実力の差を知らしめる方法がないわねぇ~っ」
「なっ……なぁぁぁっ! 御珍体は……御珍体はどこへ消えてしまったというのだぁぁぁっ⁉」
スッと動いたかどうか、本当に一瞬の動きでオッサァァァンッの神の足元に落ちていた御珍体、つまりゴーレムのCHING-CHINGとして俺達が求めていたブツを回収し、すぐにポケットにしまった仁平。
どうやらこの馬鹿野郎が茨の道、いや御珍体の山から出た力を失ったということは事実らしく、これで俺も仁平もまともに戦うことが出来るし、ついでに言うと皆武器を使用することが可能になったのだ。
磔にされていた仲間達は全員救出済みで、残雪DXもGUNの状態でエリナに装備され、そしてオッサァァァンッの神の元々は御珍体に覆い隠されていた部分、今はチャック前回のその場所から粗珍体がひょっこりと顔を出し、モザイクが掛けられている場所をロックオンしている。
まぁ、そんな物騒なモノを使うまでもなく、単なるオッサァァァンッに等しくなったこの魔界の神をしh末するのは容易で、かつ目的物に関してももはやこちらの手の内にあるのだ。
となるとあとはゆっくりとこの馬鹿を痛め付けて、絶望と苦痛を与えながら殺害していくという方法をとるのが正解の選択肢であって……最後は村の民衆に始末を着けさせるのもアリだな……
「おいお前、もう終わりだってことぐらいはだいたいわかるよな? 見苦しく足掻いていないでとっとと死ねよ、可能な限り無様にな」
「黙れっ! 貴様のような神でも人でもないゴミにそのようなことを言われたくはないわっ!」
「いや一応人間なんだが……」
「人間の知能水準に達していないであろうが確実にっ! とにかく貴様が死ねいっ! ハァァァッ! ハァッ!」
「うわ何か体液飛んで来たっ、気持ち悪いなおい」
「汚い神ねぇ、さすが魔界の神だわ、私達にこんなはしたないハイレグTバックレオタードまで装備させて……まぁ、もう呪いの力もなくなっているみたいだし、OFFしようと思えばすぐに出来るんだけど……動き易いからしばらくこれで良いわ、ということで大精霊様ハイキィィィック!」
「ギョェェェッ! くっ、首がおかしな方向に曲がって……後ろが見えるではないかっ!」
「言っておくけど今の大精霊様ハイキックは全力の10億分の1程度のものよ、本気で蹴ったら痛みを感じる間もなく死んでいるはず、でもそうはさせないっ! ハァッ!」
「ギャァァァッ! なぜかキック1発で両腕と両脚がぁぁぁっ!」
これで完全なる戦闘不能状態に陥ったオッサァァァンッの神、腕と脚は完全に吹き飛ばされ、首はおかしな方向に曲がってしまっている。
その状態でもなお、御珍体の下から現れた粗末なモノは健在なのであるが……これに関してはもう、恨みを持ったこの村の人間や、それから御珍体の力で魅了されてわけのわからないモノを崇めていたリピーター参拝客に始末させるべきか。
ステージの横には既に、これまで騙されていた分の『清算』をしようという勢いの魔界人間が大量に集まっていて、出番はまだかと大騒ぎしている状態。
俺達はそこでこのオッサァァァンッの神が完全に終わり果てたこと、もはや反撃の能力を有していないことなどをその連中に告げる。
するとたちまちにステージ上へ殺到する魔界人間達、先程までは宿の上で暴れるユリナ達を捕獲しようとそこへ群がっていたのに対し、今度はオッサァァァンッの神を痛め付けようと、またしてもアリのように群がって来たのであった……
『ウォォォッ! 死ねやこのボケェェェッ!』
『神とはいえこれは許せんぞぉぉぉっ!』
『殴れっ、蹴れっ、石を投げ付けて火を放てぇぇぇっ!』
『お前のせいでこの村は魔界中の笑い者だぁぁぁっ!』
『責任取れこのクソがぁぁぁっ!』
「ギョェェェッ! やめっ、やめろっ、あぎゃぁぁぁっ!」
「……全く、本当に良い気味ね、元々神界にあったはずで、それがたまたまこっちに来ちゃっただけのあのブツを使って調子に乗るからこうなるのよ」
「まぁ、この馬鹿が単体で考え出してやったことじゃないとは思う、というか明らかにそうなんだがな、裏にはあのババァ神とか、魔界の敵であるホネスケルトンとかいう奴もキッチリ隠れているはずだ」
「勇者よ、それを追求するのはまた後程と致しましょう、今は早く神界に戻って、来るべき儀式の日に備えるべきかと」
「だな、余計なことをしているとタイミングを逸してしまうから、まずは本来の目的を先に達成してからということにしようか、神界の儀式場で、生贄とかもキッチリ供えてウチの雌豚であるルビアとこの神なる雌豚を融合させるんだ」
「楽しみですね、どのような感じになるのか早く見てみたいです」
「強くは……なるんだよな確実に?」
「それは間違いありません、なぜならば私のこの力が丸ごと引き継がれることになるわけですから、尋常ではありませんよもう」
「まぁ、それならそれで期待しておくこととしようか、で、ブツの方もキッチリ確保したわけだし、あとは神界へ戻るだけ……その前にお前等着替えたらどうだ?」
未だにハイレグTバックレオタードを、こんな公衆の面前で装備したままの仲間達に対し、もう呪いは解けているのだから着替えをしろと促し、ひとまずそのようにさせる。
その間にもうひとつ、仁平がスケルトンのボディーを与えた元幽霊の連中を呼び出し……といってもどこに居るのかはわからないのだが、仁平の反応を見て近くにやって来たことを察し、ポルターガイストが生じたことでそれを確信した。
この連中は元々バックアップ要因であったのだが、俺がOFFし損ねた御珍体をオッサァァァンッの神から完全に外し、下に落とすという活躍をしたのだ。
仁平の力でないとそれは出来ないのだが、本格的に新しい肉体を、魔界人間としてもう一度生きられるだけのものを、褒美として与えてやるということで、協力関係は以上となった。
オッサァァァンッの神はもう魔界人間達によってかなりボコボコにされ、見る影もないというかなんというか、ひとまず本来のブツである粗珍体が切除され、槍に突き刺されて掲げられているのは確認出来たのであるが……あまり見ていて気分の良いものではないな。
で、そのまま俺達は帰ると、後のことはこの村の連中と、それから御珍体の魅了から脱することに成功したリピーター参拝客達に任せたということで、元幽霊達にもそのことを伝え、村の近くの地面の大穴に向かった。
そこでは相変わらずやる気のない堕天使(最下級)の連中が、遊びなのか仕事なのかわからないような態度で番をしていたのだが……もう何が起こっても構わないのだからということで、一撃で全部を始末して大穴へと向かう。
来たときと同じように穴を通過して、ようやく、1日以上も費やしてゲットした最後の目的物、ゴーレムのCHING-CHINGを神界へと運んだ……
※※※
「おかえりなさい、オーバーバー神の配下の者は上手く誤魔化しておきました、ロボテックで再生した天使……はちょっと腐ってきていますが、目的は達したようなのでお役御免ということで良いでしょうか?」
「うむ、そうなるとお前ももうここに居る必要はないな、誰か縛り上げてやってくれ、それからそっちのちょっと臭い天使……儀式の生贄には使えそうだな、付いて来るように命じてくれ」
「畏まりました、ではこのままハウスだけ地中に隠蔽して……OKです、行きましょう」
神界側の出口、元々はダンジョンとして用意された大穴の入口でもあるのだが、そこを守るべく配置されていたロボテック女神を改めて捕縛、これからは俺達の管理とすることを告げて連行する。
そして、あまり時間がないようなのでこのまま転移を、女神の転移ゲート……は使用出来ない状況にあるため、ドM雌豚尻の神に用意させて拠点の町へと戻った。
そこではもう、ほぼほぼ組み上げられ、立った状態で準備されていた巨大なゴーレムが俺達の使う庁舎の前に存在していて、あとは今回ゲットしたCHING-CHINGを装備させるだけという状態。
というか30m程度ではないかというゴーレムのサイズに対して、およそ10mもの長さ(伸縮可能か?)を誇るのではないかと見られるそのブツを装備するのは少し、見栄を張りすぎになるのではないかという気もしなくはない。
だがこれを変更することは出来ないし、そのためにはかなりの労力を要するのではないかというのもまた考えられることであるから、そんなことは気にせずにとっとと完成させ、起動してみるのが重要ではないかと、そういう意見も仲間内から出ている。
ということで、まずは仁平がポケットからヌッと取り出し、作業に当たっていた神界人間を驚愕させたゴーレムのCHING-CHINGを……触りたいと思う者はあまり居ないようだが、とにかく協力してその本来あるべき場所に設置していく。
ガチャンッと、金属のそれが装備される音が鳴り響くとともに、何やら全体がひとつの何かとしてまとまったような、そんな一体感を醸し出すゴーレム。
もはや動力炉は内蔵されていて、これから起動しようと思えばすぐにでも起動することが可能な状態にあることは、その醸し出す雰囲気からも判断することが出来た……
「……よしっ、じゃあこれで完成ってことだな?」
「そういうことになります、あとは起動して自走させて、儀式場まで運ぶこととしましょう」
「うむ、それから生贄になる奴を追加で釣るのにも、この目立つボディーは使えそうだな」
「じゃあ、闇バイト……じゃなくて聖バイトの募集と一緒に、少し待ちの中を歩かせましょう」
「だな、じゃあ起動を……どうやってやるんだこれは?」
「任せて下さい、動力炉はキッチリしていると思うので、あとは少し神の力を送ってやるだけで……起動したようです」
「おぉっ! 動き出しましたよっ! 凄い凄いっ!」
ゴーレム然としたその見た目で、ゴーレムらしい生命感のない両目を光らせたそれは、ギギギッという音と共に背筋を伸ばし、明らかに起動した風の動きを見せた。
そのまま1歩、また1歩と歩み出し、そしてあまりにも長いCHING-CHINGをバインバインと跳ねさせながら、バランス良く、そしてスムーズにその場から動き出したのだ。
見ていた作業員の連中も、集まっていたそれ以外の神界人間も、その光景に歓声を上げながら眺めている。
しばらく歩いたところでミラが『聖バイト募集(誰にでも出来る簡単なお仕事です、資格不要、命だけあれば十分の職場です!)』という看板を立てて馬鹿共を集め、生贄の候補としていった。
そんな連中などそうそう居ないようにも思えるのだが、どうしようもない馬鹿というのはどのような世界にも存在しているわけであって、あっという間に生贄の数が膨れ上がる。
元々用意してあったゴミ共、隣町を襲って自分達だけが重税から逃れようとしていた腐った連中も含めて、もはや別の重大な儀式にまで流用することが出来るのではないかというほどの集まりようだ。
よってこのままゴーレムを歩かせ、儀式場へと入ることとした俺達であったが……まだ少しばかり時間がある、夜を待たなくてはならない状況であるため、少し時間を潰す……いや、準備の最終確認でもしておくべきか。
ちょうど今夜が儀式に最適で、それを逃せばこういったチャンスが訪れるのはまたかなり先になってしまう。
ここでルビアの強化が済むか否かで、この後の冒険というか戦闘というか、その辺りの楽さ加減がかなり変わってきてしまうのだ……
「そこを曲がりましょう、それから広い道に出て、住民にアピールしつつ儀式場へ向けて進むべきです」
「はい、ではゴーレムよ、そのように動きなさい」
「……ちゃんと言うことを聞くのが凄いな、どうなってんだその、回路とか?」
「おそらく私の友、ロボテック女神の技術なのだと思います、もし気になるようでしたら、せっかく捕まえた彼女に聞いてみると良いかも知れませんね」
「そうなんだな、まぁ、それは落ち着いてからで良いか、とにかく今は儀式の準備を始めることとしよう」
「生贄の人達も意気揚々と付いて来ていますからね、これから殺されるなんて思ってもいないことでしょうけど」
「すげぇ馬鹿な奴等が居るよな実際……」
巨大なゴーレムを中心に据え、町中を練り歩くようにして進む俺達は、やがて儀式が行われる地下空間のある施設へと辿り着いた。
ここにどうやってゴーレムを入れるのかということが謎であったのだが、基本的には亜空間による接続であって、どこからでも、どんなサイズのものでも持ち込むことが出来てしまうような場所だそうな。
ということでまたドM雌豚尻の神の力を用いてゲートを開かせ、既にそこそこの準備が完了している状態の儀式場へと移動して、まずはその場に、必要な場所にゴーレムを据え置く。
さらには生贄となる馬鹿共を、そうなることがわかって絶望している連中もそうでない連中も、一様に配置に着かせてしばらく黙っておくようにと命じたのであった……
「よしっ、こんな感じの場所取りで良いのかな? これもうちょっとこっちか? いやこっちか?」
「何だかセンターが取れているような気がしませんね、もうちょっとこっちとか……どうでしょう?」
「おっ、良い感じなんじゃねぇのか? どうだドM雌豚尻の神?」
「えっと、そこまでこだわらなくてはならないようなものでもないかと……」
『・・・・・・・・・・』
案外適当で良かったらしい儀式の準備、確かにドM雌豚尻の神が見せてくれたやり方を指南する書籍にも、『まぁだいたいこんな感じでOK』のようなことが書かれていると、女神の奴がそう言っていた。
そしてルビアとドM雌豚尻の神、つまりは融合というか取り込みというか、それをする両者を着替えさせて、それで準備は完了らしいということもそこでわかる。
なかなかにそれらしい格好をしているルビアとドM雌豚尻の神には、まるで出番を待つ俳優のように、皆で世話をしながら少し高級な椅子に座って待機して貰うこととした。
そのまま時間が経過し、そとはそろそろ暗くなってくるのではないかという頃合で、少し窓……ではなく空間の裂け目なのだが、そこから町の様子を見てみる。
夕暮れ時といった感じで、町中には行き交う人々がバタバタと動き回っていて……ここで生贄のうち、もう自分達がどうなるのかということを知っている連中が、最後に外を見ておこうと勝手な動きを見せたため、こうなったら『生贄の儀』から先にやってしまおうということとなり、それによっていよいよ儀式がスタートを切ったのであった……




