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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1209 手薄な厳重警備

「え~っと、この大穴はそのまま……この間魔界に通じていたあの井戸と同じシステムのようですね、まぁ少し広いぐらいです、他は……どうなんでしょうか?」


「そうですね、まずこの大穴はその、とんでもないモノが通過して出来たということはご存知かと思います、そしてそのとんでもないモノが魔界に移動した先で、向こうの神、つまり悪神がそれを支配しているとかいないとか」


「……って、あのババァ神が言っていたってところか?」


「はい、どうやら魔界のホネスケルトン神という悪神が、この神界の上層部と通じて悪巧みをしているらしくてですね、まぁそれ以上のことは単なる雇われの私にはわかりかねます」


「マジでろくでもねぇ連中だな、ババァ神にしろ魔界のホネスケルトンとかいう奴にしろ、この神界も俺達の世界の魔界も、どうにかして手に入れて支配しようと躍起になっているってことだな」


「まぁ、そんな計画は余裕で阻止しますが、それで、どんな神が向こうで敵になるのかってことまでは……さすがにわからないですよね……」



 当初の計画ではここで目の前のロボテック女神と戦って、それで大ヒントを得て穴の向こう側、つまり魔界の側では楽勝で目的物をゲット……という予定であった。


 だがその計画からは大きく乖離してしまったのが現状で、むしろこちら側の『敵』はそう呼ぶことに支障があるほどに敵対心のない者であって、逆に魔界の側の敵が問題となるらしい。


 もちろん神である、魔界の神が向こうに待ち構えていて、それと戦うことになるであろうということは考えるまでもないのだが、その正体も何もかも、たいした情報は得られないのが現状だ。


 一応そこへ向かうためのルートなどはキッチリ把握することが出来たため、まず向かう分には問題がないものかと思うが、その先で何が起こるのかといったところ。


 それにこのロボテック女神をここに残した状態で俺達が穴の先へと向かえば、異変を察知したババァ神派のもっと敵対的で凶暴な神々が後を追ってやって来て、挟み撃ちにされてしまう可能性がないとは言えない。


 となるとこの場所を完全に破壊することなく、さも平静を保っているかのように装っておかなくてはならないし、それ以外の偽装もしておかなくてはならないであろう。


 例えばロボテック女神が、これからババァ神派の他の神々、もっと上位の神に対して提示報告などしたりといったことをしない場合に、『異常なし』を伝えさせるなどといったことだ……



「うむ、じゃあとりあえず行くだけ行くってのは確定なんだが、ロボテック女神の処理と、それからここの何事もなさを保つための方法だが……おい、この場所の警備等に関して、他に情報を伝えるようなことは普段からしているのか?」


「普段は特にそういうことは……しかしここのところですね、やはりバラバラに保管されているゴーレムのパーツが狙われていて、すぐに敵の方々がここへやって来るという話は入っていまして、その件で何かあれば連絡を、何もない場合はやられてものとして様子を見に行くとか何とか……面倒だったのであまり話を聞いていませんでしたが」


「適当ねこの神様、でも、やっぱり敵は私達が動いているのを後ろから追っていて、間違いなくこの場所のチェックにも来る……ということよね」


「そうなったらやべぇな、どうにか誤魔化してスルー出来るようにしておかないと、いくら俺達が最強のスペシャル勇者パーティー様であるからといって、背後から襲撃されて目の前にも……みたいなことになったら厄介だからな」


「ではどうしましょうか? ここに私が残って、仕えている天使にもニコニコで……いえ、そういえば全滅してしまったのでしたね」


「やれやれ、あんな雑魚を殺してしまったことが結果としてこうまでアレなことになるとはな、仕方ない、何か取り繕う方法を考えよう」


「具体的にはどうするの?」


「そうだな……死んだ4匹の天使? あのハゲ共、サイボーグにでもして復活することが出来ないかな? もうグッチャグチャだろうが、ほんの少しでも本体のカスが残っていればいけるんじゃないのか?」


「えぇ、あの程度の存在でしたら1時間ほどあれば細胞ひとつから全部培養して、ダメになっている部分はロボで、みたいなことが可能かと」


「よしっ、じゃあそれでいこう、早速死体を集めるぞ、ひとつはこのハウスの下だがな」



 殺してしまったハゲの天使4匹をこの神界に呼び戻す、というか新しく『同じもの』を確保するための行動に出る。


 記憶だの何だのはどうなるのかわからないが、むしろ俺達に殺されたという事実は、新しく完成した『同じもの』が記憶していない方が好都合であろうといったところ。


 すぐに作業に取り掛かるべく、外で死体のサンプルを集めてロボテック女神に渡したところ、どうやらハウスの地下で作業をしたいらしい。


 ここは一見してプレハブのような施設なのだが、中は亜空間であるためそこそこ広くなっている。

 ロボテック女神は既にギチギチに縛り上げてあるため、こちらで手伝ってやってその部屋へと移動した。


 地下……というか下の空間はそこまで広くなく、液体の入ったありがちな培養セットが並んでいて、そこに天使の死体サンプルを放り込むと、すぐに培養が始まったようだ。


 僅かであった肉片が、ウネウネと気色悪い動きを見せながら変化し、次第にあの殺してしまった天使の見た目となっていく。


 所々欠けてしまっているようだが、そこをこの女神のロボテックとやらで補ってどうにかするということなのであろう。


 これで体裁だけは取り繕うことが出来るし、ロボテック女神に命じて『何も知らない・誰も来ていない』ということを言わせておけば、おそらくババァ神一派からの追求は……普通に考えたら免れることなど出来ないのであるが、関係者がほぼ馬鹿なのでどうにかなるはず。


 予想よりも早く天使の素体は完成し、それに何やら見たこともないマシンを取り付けて完成らしいが……なるほど、確かに元々のハゲ共そのままの見た目、力の波動なども完全に同じだ。



「……こんな感じでどうでしょう? あとは私がウソを付いて誤魔化せばどうにかといったところです」


「それ、ちゃんと出来るんですか?」


「大丈夫なはずです、何といっても私、まだロボテック化する前はかなりの小食で、毎日給食のパンをコッソリと持ち帰っては隠して、というような隠蔽工作をし続けていたものですから……この度遂にバレてしまったわけですが……」


「ロボテック女神よ、その件に関しては相当程度の反省をしなくてはなりませんよ、どのみち給食のパン残した罪で逮捕、厳しい罰を受けて頂くことになります」


「どんだけ重罪なんだよ給食のパン残すの……で、今現在もう逮捕してあるわけだが、誤魔化すためには一度釈放しないとならないな……絶対に逃げないと約束出来るか?」


「えぇ、どうせ私には戦う力がありませんし、せっかく敵同士の状態から元に戻った親友のドM雌豚尻の神を裏切るわけにはいきませんから……そうですね、一応仕掛けをしておいて貰いましょう」


「仕掛け……とは?」


「はい、私がホモだらけの仁平一派を裏切ってもう一度オーバーバー神に付くようなことがあれば、そのときにはこの造り直したロボテック天使が私に襲い掛かり、その臭い口を開いてペロペロしてくる……というような感じでどうでしょう?」


「さすがに過酷すぎると思うんだけど……まぁ、逃げないようにしてくれるなら何でも良いわよ、そうよね勇者様?」


「うむ、じゃあそれをやっておけ、ドM雌豚尻の神の力でな」



 これで完璧……なはずはないのだが、相手が相手だけにどうしてもこの程度で完璧になってしまう隠蔽工作の準備が整った。


 あとは俺達がこの穴の先の魔界でゴーレムのCHING-CHINGをゲットしている間、ロボテック女神がどうにか上手くやり繰りしてくれれば良い。


 ババァ神派の何かが来た際に追い返すことが出来ればベストだが、それが出来なかったとしても時間を稼いで、俺達が向こうに居る間に襲撃を受けないようであれば作戦は成功。


 敵となる神界の神はこちらに戻って来た際に潰せばそれで大丈夫だし、むしろその方が敵の撃破数が増えるので好都合かも知れない。


 で、そんな感じで準備を終え、ロボテック女神の縄は一旦解いてやって出発することとしたのだが、ついでに向こうでの食料なども確保しておこう。


 万が一、魔界でそのままになっているわけのわからない事件が俺達に襲い掛かり、それによって食料を確保することが出来ないような状況に陥った場合への対処だ……



「これとこれと、それからこのハムも貰って行こう、おいリリィ、今食うんじゃない」


「だってお腹空いちゃって」


「ここで食いすぎてデブになって、魔界へ移動する際に穴に引っ掛かったりしたらどうするんだ? 上からハンマーとかでガンガン叩いて通るようにするぞ、それでも良いのか?」


「ひぃっ! ごめんなさい後で食べますっ!」


「よろしい、じゃあ出発だ」


『うぇ~いっ』



 こうしてロボテック女神の拠点? を出た俺達は、ひとまず地面に空いた大穴へ飛び込むようなかたちで神界からも出て、目的物が存在しているのだという魔界へと足を運んだ……



 ※※※



「……っと、ここで天地が逆になったか、ということは魔界に入ったってことだな……俺と仁平だけ」


「ちょっと勇者様、壁にへばり付いている私達のパンツを見るのはやめて下さいっ、有料の視界ですよそれはっ」


「黙れこの守銭奴が、そのままケツから飛び降りて来い、下でカンチョーの構えにて待っていてやるからな、ほら早くしろミラ」


「クッ、なんと卑劣なことを、カンチョーして貰うことによってプレイ料金を支払わなくてはならない私と、パンツを見た分の勇者様のプレイ料金を相殺するつもりですか」


「そこまでは考えていないんだがな……というかカンチョーしてやるとミラから金が貰えるのか俺は?」


「逆のような気がするわねそれ……まぁとにかく、早く降りて来なさい」


「はーいっ、すぐに行きまーっす」



 順次降りて来た仲間達、ある一定のラインでなぜか重力が逆転し、それが魔界へ入った証拠であるということは、この間の毒ガスが吹き出す井戸の件で学習してある。


 順次そのラインに到達して来る仲間達のパンツを反対側から眺めつつ、全員が揃ったところでそこから先へと動き出す。


 この先の魔界はどのような地域なのであろうか、まさか俺達が魔界拠点としている地域などということはないし、そこにそのような目立つものがあれば既に知っていなくてはならないので、それとは違う場所なのであろう。


 少しだけ先行した仁平がその先、穴の魔界側の出口にはいくばくかの敵影があるということだけを伝えてきたが、大軍団ではないようなので安心しておく。


 そいつ等を一撃でブチ殺してしまうのはそこまで難しいことでもなかろうが、安易にそのようなことをしてしまうとまた騒ぎになり、収拾が付かなくなる可能性がないとも言えない。


 よってここは慎重に、最初は可能な限り発見されない方法で穴から出て、もし見つかったりしたら静かに、迅速にその俺達を見つけてしまったかわいそうな敵だけを始末する方法を取るべきだ。


 そのようなことを話しつつ、相変わらず上に見えるパンツのチェックをしつつ、どうにかこうにか大穴の壁を登って魔界側の出口へと移動した……



「あらぁ~っ、もう何かウジャウジャ居るわねぇ~っ、思ったより数が多いのよぉ~っ、雑魚ばっかりで感じ取ることさえ出来なかったのも含めてぇ~っ」


「マジか、どれ見せてみろ……なるほど、堕天使(最下級)のカス共が群れを成してこの周辺を守っているのか」


「というか、穴の周りを警備しているはずなのに、その穴からひょっこり顔を出している私達に一切気が付かないというのは……」


「そんなもんなんじゃねぇのか堕天使(最下級)なんて、イモムシとかカマキリとか、その程度の知能しかないと考えておいた方が良いはずだぞ」


「イモムシでもこの状況であればさすがに気付くと思うのだが……まぁ良い、これからどうするんだ? 気配を消して出てみるか?」


「そうだな、被って移動するためのダンボールでも落ちていれば良いんだが……さすがになさそうだな、よしっ、だるまさんが転んだ方式で良い感じにやり過ごして、警備が薄い所まで移動しよう」


「そんなので上手くいくと……いや、いってしまいそうなのが怖いのだが……」



 穴の外を警備していたのは堕天使(最下級)の群れであったのだが、その数だけは予想を遥かに上回るものであった。


 これら全てに見つからないようにするのは通常困難なことなのだが、それでもどうにかして見せるのが俺達ゆしゃパーティーだ。


 可能な限り気配を消して、仁平を先頭にして順番に穴から出る……この期に及んで誰もこちらを見ないのは凄いな。


 全部の堕天使(最下級)が『穴の周辺に出現する敵』を警戒しているようで、まさか穴の中から敵が出現するなどとは思っていないらしい。


 どう考えても神界、魔界とは敵対関係にあって、しかも規模的には比べられないほどに大きいその場所からやって来る何かに警戒した方が良いと思うのだが……まぁ、この連中に何を言っても無駄だ。


 全員が穴から出たところで、押さない、走らない、喋らないなどの原則を守りつつ、そろりそろりとそこから歩き出す俺達。


 目標とするのは警備が最も薄いと思しき、木々に覆われた山を背にした警備エリアの境界がある場所で、そこまで辿り着けばもう逃げ切ったも同然である。


 しかし、暇そうにキョロキョロしている堕天使(最下級)もあることから、間違いなく『一度も見られずに』その場所まで到達することは不可能。


 ならば見られてしまった際にあっても、俺達が穴から出てきた敵であるということを認識させないで、そのまま通過することが出来る状態を保つしかないのだ……



「……ゆっくり、ゆっくりだぞ」


「勇者様喋らないで、バレちゃうわよこっちの……見られたっ、止まって!」


『……おい、誰かちょっと来てくれ、アレは何だ? 見たことのない何かが置いてあるぞ』

『本当だ、何かオブジェのようなものが並んで……魔界人間や魔族、その他の生物のように見えなくもないが……全く動かないな……隊長、どう思いますか?』

『むっ? 誰があんなモノ持ち込んだんだ? 1分の1フィギアは仕事には関係ないだろうに、心当たりのある者は今日中に片付けておけ、明日まで残っていたら処分するぞ』

『俺じゃねぇから知らねぇな』

『俺も知らん、放っておこうぜ』


「・・・・・・・・・・」


「こんな簡単にスルーしてしまって良いのか本当に?」


「興味を失ったわよ、また動き始めましょ」



 どう考えてもおかしいだろうと、強烈なツッコミを入れたくなってしまうような展開でスルーされてしまった侵入者の俺達。


 ここまで見事に無視されると逆に悲しくなってしまうのであるが、作戦としてはこれで上手くいっているのだから仕方ない。


 そのまままたそろりそろりと進み出し、もちろん周囲を警戒しつつ次に見られた時に備える。

 というか、しばらくしてその『1分の1フィギアの列』が移動していたらどう思うのであろうかここの連中は……



「……またこっち見たわよっ、ストップ!」


『……なぁ、さっきの1分の1フィギアだがよ、ちょっと移動してねぇか?』

『馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ、フィギアが移動するかってんだ』

『でも隊長、明らかにさっきの場所と違うっす、あとポーズも地味に変わっているっす』

『……そのようだな、もしかしてコレは……ゼンマイ式で動くフィギアなんじゃねぇのか?』

『なるほど、ブッ壊れているから止まっているように見えただけで、本当は動いているてことっすね』

『そうだ、だから見ていればそのうち動き出すぞ、ちょっと待っていろよ……』


「どうする? 一定の速度で歩き出すか?」


「それしかないようね、じゃあいくわよ、1、2の3……」


『オォォォッ! 動いたぞ、馬鹿みたいな動きでどっか行くぞっ!』

『持ち込んだ奴は気付いてねぇみたいだな、仕事サボってフィギアで遊ぼうとしていたら、そのフィギアが自走してどっか行っちまったってか』

『そりゃ面白れぇ、戻って来て俺のフィギアは? みたいなこと言ったら笑ってやろうぜ』

『ギャハハハハッ!』


「……良いのか本当にこれで?」


「良いんじゃないかしら? 見逃してくれたわけだし」


「・・・・・・・・・・」



 もはや頭が悪すぎて掛ける言葉もない、というか今この場で普通に戻って言葉を掛けたところで、あの馬鹿共は『フィギアが喋った!』ぐらいのことしか思わないのであろう。


 こうして穴の周辺の警備エリアから無事脱出することに成功した俺達は、隣接する木々に覆われた小さな山の中に入り、そこから周囲の様子を見渡してみる。


 魔界はどこも同じような感じなのかも知れないが、かなり広い平野が広がっているのがわかる……遠くに町が見えるな。


 こちらにその入口らしきゲートを向けた魔界の町であるがそのゲートに何と書いてあるのか、目の悪い俺には到底読むことが出来ない。


 仕方ないのでリリィを肩車してやり、そのゲート上の看板のようなものの字を読ませることとしたのだが……どうやら『ようこそ御珍体の町へ!』との記載があるようだ。


 御神体ではなく御珍体、その『珍』が何を意味するものなのかということは、これまで異世界の馬鹿共をさんざん見てきた俺にはわかってしまう。


 間違いなくあの町にこの穴から出現したゴーレムのCHING-CHINGがあるということであって、それが何やらあり難いモノとして祀られているということである。


 まぁ、町を丸ごと滅ぼすか否かはさておき、とにかくそこまで移動して、目的物がどのようなかたちでどう安置されているのかを確認しておくべきか……

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