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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第二十三章 正体不明の敵
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130 狼の里へ続く道

「ハイそれでは皆さん、ここから登山道に入ります、準備はよろしいですか?」


「……どこに道があるというのだ、ただの藪にしか見えませんが」


「ここですよ、ここ、ほら、言われてみれば道のような気がしてきませんか?」


「しねぇよっ!」


 狼獣人の里に続く道、確かに登山道だと言っていたはずだが、これは獣道の間違いである。

 そうか、狼獣人は獣みたいなものだからな、獣道こそ道なのであろう。


 ひとまず、勝手に解釈して納得した……



「しょうがないな、皆はぐれないように付いて行くぞ」


 狼お姉さんの後を追い、獣道を進んで行く。

 300m程歩いたであろうか? ふと立ち止まるお姉さん……




「じゃじゃん、では早速第一の試練です、対戦相手はこの私、では始めます!」


「ちょまっ! どういうことだよ? それならこんな所に入る前に……」


 ぴょんぴょんと木の間を飛びながら、アホみたいにデカい剣2本で攻撃してくるお姉さん。

 そういうことか、足場の悪いところで戦いを有利にするつもりだな。



 だがそうはいかない。

 いくら狼獣人のお姉さんが強いとはいえ、素早さ以外はこのパーティーの誰にも敵わないのだ。


 一番前を歩いていたミラがあっさりと剣を受け止め、お姉さんの襟をひょいと掴む。

 そのまま地面に押し付けた……力の差は歴然である、もうお姉さんは身動きが取れない。



「あたたっ! 凄い力ねっ! 降参です降参、第一の試練はもう突破で良いですから、痛いので早く離して下さい!」


「どうしましょうか、そうだ、金貨1枚くれたら離してあげます」


「ミラ、くだらないことをしていると拳骨を喰らわせるわよ」


「……怒られてしまいました」



 ようやく解放された狼お姉さんは咳き込んでいる、どれだけ強く押さえつけていたというのだ?

 ちなみに調子に乗ったミラは今、セラから拳骨を貰っている最中である。



「けほっ、けほっ、ではこのまま進みましょうか、次はちゃんとした戦士が出て来ますから、こうはいきませんよ、けほっ」


「というか大丈夫ですか?」




 さらに獣道を進む、1kmも歩いたところで、今度は矢が飛んで来た。

 しかも1本や2本ではない、数十本がほぼ同時に襲いかかったのである。


 とっさに反応したのはセラ、風防を全面に張り、全ての矢を防いだ。


「あの木の上に1人、それからあっちと……そこにも居るわよ」


 山慣れしているセラ、次々に敵の場所を言い当てる。


 遠くの木の上にいた2人は精霊様が掴んで引き摺り下ろす。

 残りの1人、近くの木のだいぶ下の方に居た女性は俺が聖棒で突いて落とした。



「凄いな、たった3人であれだけの矢を同時発射したんですか?」


「ええ、でも見つかっちゃったら意味無いけどね、矢も全部防がれちゃったし」


 俺が落としたすらっと背の高い狼獣人の女性、矢を10本も掴み、それを弓に掛けて一度に放ってみせる。

 一体どうやっているのだろうか? 狙いも正確だし……


「ん? というかこの矢、何か塗ってあるんですね、変な臭いもするな」


「それは掠っただけで三日三晩悶絶する猛毒よ、まともに刺さったら1週間は動けなかったわね」


「げぇぇっ! ちょっと触ってしまったぞ、おいルビア、何とかしろ!」


「ご主人様、私の服で拭うのはやめて下さい、あ、臭っさっ!」


 まだ手に臭いが残っている、完全には落ち切っていないということだ。

 怪我などして体に入ってしまわないように注意しよう。



「とにかく私達はもう負けみたいね、先に進んで良いわよ」


「あ、どうも~っ」


 とにかく第二の試練、クリアであるとのことだ。

 ちょろいな、手は臭くなったけど。




「それでは皆さん、先に進みますよ~」


 案内のお姉さんはいつの間にか『勇者パーティーご一行様』の手旗を持っている。

 観光ガイドか何かのつもりなのだろうが、やっていることが危険すぎるのだよ。



 今度はそのまま10分程歩いた、お姉さんが立ち止まり、口笛を吹く。

 何かがガラガラと動く音……木の上からビルの窓拭きに使うようなゴンドラが降りて来た。


 乗っているのはマッチョの狼おじさん。

 この種族にしては珍しく、武器を持たずに素手で戦うようだ。



「やぁ、勇者パーティーの諸君、それからカレンちゃんはお久しぶり」


「あ、この人は近所のおじさんなんです、里一番の力持ちなんですよ」


「はっはっは、もうカレンちゃんには勝てないと思うがね、では早速勝負といこう、そちらの代表者と素手で一騎打ちだ!」


「ホイ来た! 私の出番のようね、野菜を食べるとどれだけ強くなるか見せてあげるわ!」


 誰からも異議はなし、ここは間違いなくマーサの出番であろう。

 野菜が提供されない鬱憤はここで全部晴らしておいて欲しい。



「では審判はガイドでもある私が、両者見合ってぇ~っ……のこったぁっ!」


 どうやら殴り合いではなく転ばせ合いらしい。

 お互いが相手のベルトを持ち、放り投げようと力を込める。


 マーサめ、パンツ食い込んでるじゃないか。


「取ったわよっ! どりゃっせぃぃっ!」


「ぬわ~っ!」


 何だ『ぬわ~っ』って、どこかで聞いたことがあるような負け方をするおっさんだ。

 だが大丈夫である、死んではいないようだからな。


「いやぁ~っ、完敗だよ、上級魔族とはいえ狼がウサギに負けるなんてな」


「これからは野菜パワーを軽んじないことね」


「どうでも良いがマーサ、スカートが上がってパンツ丸見えだぞ、そして食い込みすぎだ」


「あら、でも勝利の証としてこのままにしておくわ」


 恥ずかしいからやめなさい……



「さ~て、次は第四の試練ですよ、ちなみにもう始まっています」


 また10分かそこら歩いたところで、唐突に告げられた試練の開始。

 何が始まっているというのだ?



「あっ! ご主人様、サリナが消えてしまいましたわっ!」


「どういうことだ? 意味がわからんぞ、幻術でも使われたか?」


 まさかの幻術使いが幻術で消されたとかそういうパターンであろうか?

 などと考えていたら今度はルビアが消えた、おかしいな、今何の前触れも無かったぞ……


「ご主人様、凄く速かったですけど、女の人がシュンッて通りましたよ、その人がルビアちゃんを連れて行きました」


 リリィには何かが見えたようだ。


 ちなみに完全に見えているであろうカレンはニヤニヤしている。

 今回は手伝ってくれないということなのか?


「おっと! 主殿、今私も連れ去られるところだったぞ、腕を掴まれた!」


 確かに、ジェシカが一瞬宙に浮きかけたのは確認出来た。

 どうやら連れて行こうとしたものの、鎧や両手剣が重くて持ち上がらなかったようだ。


「クソッ! 次は誰が……マリエルっ! 後ろだっ!」


「へっ? あっ、えいっ!」


 薙ぎ払ったマリエルの槍は空振りであったものの、とっさに方向を変えた敵の姿が見えた。

 ようやく発見出来たのである、見つかったことに気付いたのか、すぐ横の木の枝に止まる敵。


 あの大剣……カレンママじゃねぇか!


「見つかっちゃったみたいね、でもウスノロさんを2人も捕まえたわよ」


「お久しぶりです、というかよくそんな剣を持って高速移動出来ますね」


「鍛えているのよ、ま、この剣の重さがあったからさっきの子は持ち上がらなかったのよ」


「普通に200㎏ぐらいありますもんね、それ」


「まぁ、そんなところかしら、さて、それにしてもこの子達はスピードがまだまだのようね、お仕置きよ」


 ルビアとサリナは縛り上げられ、その木のひとつ上の枝に引っ掛けられていた。

 カレンママはそれを抱えて降りて来る。


「むがぁーっ、むごーっ……ぷはぁ、まさかあの一瞬で猿轡をされるとは思いませんでした」


「ふぅっ、私もびっくりでしたよ、急に姉さまが目の前から消えたと思ったら、実は私が消えていたなんて」



「ハイハイ、2人共静かに、縄を解いてあげるからお尻を出しなさい」


 手頃な枝を拾って来たカレンママ、言われるがままに突き出されたルビアとサリナの尻をピシピシと叩き始める。


「はいお終い、あまり効かなかったようね、防御力は高いのかしら?」


「鍛えていますから」

「左に同じです」



 戻って来た不甲斐ない2人、サリナは精霊様から追加のお仕置きを受けている。

 ルビアは第四の試練が終わるまで正座だ。



「さぁ、じゃあそろそろ本格的に試練を始めようかしら、さっき持ち上がらなかったあなた、ちょうど両手剣使いみたいね……」



「ではここは私が、主殿、それで良いか?」


「良いぞジェシカ、だが気を付けろよ、その辺の魔将なんかよりもよほど強いはずだぞ」


「心得た!」



「は~い、じゃあ両者剣にこのベトベトを付けて下さい、これで怪我はしませんし、当たったら色が着きますから」


 ガイドさんが何だか気持ち悪いスライム様の何かが入った壷を出してきた。

 洗えば落ちるらしいが、あまり触りたいとは思えない逸品である。


 ジェシカとカレンママが壷に剣を浸し、刀身が完全に青く着色されたのを確認してからの勝負開始となった。


 横にひゅんひゅん跳びながら接近するカレンママ。

 対するジェシカはその場から動かず、振り下ろされる剣を冷静に受け止めている。



「おぉっ! ジェシカも速いじゃないか」


「お母さんの攻撃を受け切るのはなかなかです」


「しかしこれじゃあ打ち込まれるばかりだ、どうしたら勝てるかな?」


「でも何かちょっと変な音がしていますよ、ジェシカちゃんがわざとやっているんだと思いますけど」



 確かに、ジェシカが攻撃を受け止める度に、ガンガンと金属音が響いている。

 しかしお互いの剣はベトベト、音などしようはずもない……



「あれは何の音だ? ジェシカの鎧かな」


「みたいですね、肘当てを脇腹の所にぶつけていますよ、何か策があるんでしょうか?」


 鎧に肘当てをぶつける音は、一定間隔で続くカレンママの攻撃に合わせ、時間でも刻むかのごとく鳴り響いている。



 だが、一度だけ、たった一度だけタイミングがズレた。

 いや、ジェシカがわざとズラしたのである。


 当然その音にピクリと耳を反応させるカレンママ。

 警戒したのか、繰り出そうとしていた攻撃を退く……


「隙ありっ! 捕まえたぞっ!」


 その一瞬を見逃さず、ジェシカはカレンママの胴を両腕でがっちり押さえ込む。

 そしてそのまま、剣の持ち手を脇腹に食い込ませながらギリギリと締める。


「あたたた、痛いわねっ! ギブよギブ、こっちは鎧を着けていないんだから、お腹がどうかなっちゃうわよっ!」


 スピードがものを言う剣での打ち合い、その不利を悟ったジェシカの作戦勝ちである。

 いくら速かろうが捕まって締め上げられたらどうしようもないからな。


「勝ったぞ主殿、褒めてくれ!」


「ヨシヨシ、これで残す試練はあと1つと、里に入るための試験、あわせて2つか……ちょっと休憩しようぜ」


 ここまでかかった時間は1時間とちょっと、当初5時間と聞いていた里への道程は案外早く終わりを迎えそうだ。

 少しぐらい休憩しても構わないであろう。



「ここからはお母さんも一緒に行くのです、ね、良いでしょうお母さん?」


「あらあら、カレンはまだお子様みたいなのが抜けないのね、お仲間に迷惑を掛けたりしていないかしら?」


「カレンちゃんのお母さん、実はですね……」


 ミラが普段カレンが毎日のように敢行しているつまみ食い作戦についてカレンママに密告している。

 ついでに食糧庫の干し肉を盗みがちな件も伝えて欲しい。


「……相変わらずしょうがない子ね、誰に似てそんなに食い意地が張ったのかしら? 里に着いたら正座ね!」


「わふぅぅ~っ、ごめんなさい」



 で、そのカレンがお腹が空いたと喚き出したため、ここで一旦軽食タイムとする。

 安定のサンドウィッチ……の抜け殻を食べるのは俺、中身の肉はカレンとリリィが持って行った。



「さ~て、では最後の試練に向かいますよぉ~っ、ここまでの流れでほぼ対戦相手はわかっていると思いますがね」


 ガイドのお姉さんが森の奥に向かって手を振る。

 デカいのが出て来た、カレンパパの登場だ。



「おぉ、カレン、ちょっとは背が伸びて……いないようだな、異世界勇者も久しぶりだね」


「あ、どうも、ご無沙汰しております」


 カレンパパは前に王都で会ったときよりも巨大化しているような気がする。


 あのときですら筋肉団と見紛う程の巨躯であったが、現在は既にバケモノを越えた何かとなってしまったようだ。

 もう魔獣と変わらんぞ……



「この試練はどうするんですか? また1対1の戦いですよね?」


「そうだね、ではせっかくだし、槍の王女様と戦わせて貰いたいな、かなり戦闘スキルがあるようだからね」


 このおっさん、マリエルが高い技術を持っていることを見抜いたようだ。

 ステータス的には互角、いや、パワーは圧倒的に向こうが上である、だがスピードはそこまでではないようだな……



「では私がやらせてもらいますね、また武器に青いベトベトを付けますか?」


「そうだな、お互いにちょっと危険だからそうしよう、正直アレはキモいから使いたくないのだがね」


 カレンパパはわりと普通の感性を持っているようだ。

 おかしいのは体型と得物である巨大な爪ぐらいのものか。



「お、そうだ、強敵だからな、これを外しておこう」


 そう言ったカレンパパ、頭から何かを外す。


 超重量のズラだ! どうやら100㎏ぐらいあるようだ、それを地面に落としたカレンパパの素早さが格段に上がる。


 しかしまぁまぁなハゲっぷりだな……



「そういうことでしたら私もそうさせて頂きます」


 マリエルもやってたのかよ!


 しかもお前はパンツか。

 50㎏の精霊様特製パンツを脱ぎ捨てたマリエル、素早さが格段に上がる。


 どうやらノーパンで戦うつもりらしい。



「うむ、では始めるとしようか」


「ええ、どうぞそちらから」


 先制はカレンパパ、巨大な爪をマリエルの頭上から振り下ろす。


 マリエルもきっちりそれに反応するものの、パワーの差は歴然。

 両手に持った槍が大きくしなり、踏んでいた小枝がバキバキと音を立てて粉砕する。


「くぅぅっ! では今度はこちらから!」


 大丈夫であろうか?


 手がジーンとなっているだろうに、あの衝撃では。

 金属バットで電柱ブン殴ったみたいなものだからな。


 それでも、マリエルは連続で突きを繰り出す。

 カレンパパはその攻撃を両腕の爪で払いのける。


 そして今度はまたマリエルの遥か上から一撃……


 マリエルの突きがカレンパパに入るのが先か?

 それとも強力な殴打を受け切れなくなるのが先か?


 それ次第で勝負は決まる。



 遂に、ガツンとマリエルに叩き付けられた大振りの攻撃。


 何とか耐え切ったようだ。

 全身をフルに使い、ウエイトリフティングのような格好で攻撃を受け止めるマリエル。


 いや、少しだけ頭に爪が触れている……

 あと2発か3発、それ以上はもう力が続かないであろう。




「……マリエルちゃんの勝ち、お父さんの負けです」


「ふむ、カレンはどうしてそう思うんだ? マリエルの方が劣勢に見えるのだが」


「お父さんは次で決めようとしています、まだ早いんですよ、本当はもう少し弱らせてからでないとダメなのです」


 ふ~ん、よくわからん……



「これで終わりにしようかっ! でぇぇぇいっ!」


 よくわからんがカレンの言うとおりであったようだ。

 大きく振りかぶって全力の振り下ろし攻撃を繰り出すカレンパパ。



 マリエルは一歩下がってそれを回避した。

 これまで槍で受けていたのに、ここで初めて回避したのである。



「貰いましたっ!」


 マリエルが次に放った攻撃がラストアタックとなった。


 振り下ろされたカレンパパの爪武器は、柵でも設置されたかのごとく地面に突き刺ささっている。

 その4本の刃のど真ん中をマリエルの槍が通過した。



「ハイ勝負ありっ! 鳩尾にベトベトがついてしまいましたね」



「おうっ……つい先程まで勝った気でいたのだがな、いやはや、見事な読みだ」


「回避を最後に取っておいて正解でした、私もそろそろヤバかったですが、なんとか勝てましたよ!」


 喜び飛び跳ねるマリエル、だが今はパンツを履いていない。

 サリナが幻術を駆使し、必死でモザイク処理を施している。



「よくやったぞマリエル、これで5つの試練は終わりだ、あとは村の入り口で……というかこれより強い奴が出てくるのか、もしかして?」


「はっはっは! 最後の相手はこんなもんじゃないぞ、俺ごとき足の小指一本の第一関節だけでやられてしまうだろうな」


 いやいや、どれだけ強いというのだ?

 どうやってそれで倒すというのだ?



「ご主人様、次の対戦相手については出会ってからのお楽しみです、頑張って下さいね!」


 そしてどうして俺が戦う流れになっているというのだ?



「は~い、ツアー客のみなさ~ん、狼獣人の里はもうすぐそこです、ここからは一気に踏破しますよ~っ!」


 その後は垂直の岩壁を100m程度登り、切れかけのロープが1本張られた50mを越える谷を渡った。


 それでようやく到着のようである。

 なろほど、距離的には確かに近かったな、生きた心地はしなかったが……



「着きましたよ、ここが狼獣人の里です!」


「おぉっ! 結構ちゃんとした村じゃないか、ここには何人ぐらい居るんですか?」


「そうですね……修行の旅に出ている者を除けば300人といったところでしょうか、含めれば500は越えますね」


「いやどんだけ修行の旅好きなんだよ! 4割以上もどっか行ってるじゃないですか!?」


「まぁそういう種族なんで諦めて下さい、で、そろそろ里に入るための試験を始めたいんですが……」



 といわれても対戦相手が見当たらない。

 ここに居るのは今一緒に来たメンバーと、あとは近くの椅子に腰掛けて日向ぼっこしているしわしわのばあさんぐらいだ。


 あのばあさん、もう春だというのにセーターを編んでいるぞ……



「では族長、よろしくお願い致します!」


「あいよ、あぁ~っ、今日も腰が痛いじょ」



 しわしわのばあさんが族長で、今回の対戦相手であった。

 何だコイツは、よく見たら杖だと思っていたのがサーベルだし、編み物をしていると思ったら鎖帷子を作っていたのか。



「どうも、よろしくお願いします」


「うむ、では始めるじょ……」


「えっ?」



 消えた!? 試合開始と同時にスッと姿が見えなくなった。

 どこへ行った……と、こういうときは上に居るのが相場だ、上を見る。




 しわしわの族長は俺の頭上、30mぐらいの高さまで跳び上がっていた。

 おかしいだろ普通に……

第130話到達です。

評価・感想等受け付けていますので、もしよろしければお寄せ下さい

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