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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
1301/1360

1200 アレが好き

「死ねっ、死ねっ、死ねっ、死ねぇぇぇぃっ! クソがっ、何度も元に戻りやがって、本当に何も条件なくして再生するってのかコイツは?」


「間違いありませんね、その蘇生、というか再生の方法を見る限りですが、『元からそういう仕組みである』という以外に説明のしようがないかと」


「勇者様、一旦殺すのをやめて話を聞いてみたらどうかしら? もしかしたらちゃんとした殺し方を教えてくれるかも知れないわよ」


「んなわけあるかよ、だがまぁ、物理的に殺せないってんならアレだ、罵倒しまくって心を殺すしかないな、パワハラを司る神になる予定のこの俺様が本気を見せてやろうじゃないか」


「勇者よ、そんな神は使い物にならないので神界には置いておけませんよ、もっと別の神を目指すか、そもそも神になろうとなどしないかのどちらかにして下さい」


「うるせぇボケ、女神の分際で俺様に指図しようなんざ2兆年早いんだよ……で、おいハゲ、お前元に戻ったならとっとと事情を説明しろや、その臭い口を開かずにな」


『ほう、ここまでやってまだ何かしようというのかこの下賤なる害獣めが』


「うげぇぇぇっ! 頭の中に直接語り掛けてくるんじゃねぇよ気持ち悪いな、自分がハゲだってことぐらい弁えたうえで行動しろよな全く……で、お前どうすれば死ぬの? 殺したいんだけど、世の中の平和のために、無能でホテルのエッチなアレ見る以外にすることがないクズであらせられるお前のようなクズを殺したいんですけどっ!」


「フンッ、まだわからんのか、我を殺すことなど出来ない、我は永遠の神也、決して消滅することなく、この神界を去ることもないのだ、わかったか?」


「えっと、この人さっき『殺さないでくれ』とか何とか言っていましたよ、だから頑張ればやっつけられるんじゃないですか?」


「おいそこの何だ? ドラゴンかお前どこかの世界のっ! 余計なことを言うんじゃないよこのクソガキがっ! ざっけんじゃねぇぞオラァァァッ!」


「え? 何か怒られたんですけど……」


「ってんじゃねぇっ! マジでブチ殺されてぇのかこのガキ! 舐めんじゃねぇぞボケがっ!」



 クソガキであるリリィから真っ当な指摘をされ、激昂して本来のキャラを忘れ、そしてチンピラのような口調になってしまったデブでハゲの神。


 もちろんそんなビジュアルで凄んでも怖くはないし、そもそも『死なない』以外で俺達に勝っているポイントがひとつもないというのが残念だ。


 そんなデブハゲ神が先程口走り、そしてクソガキに指摘されてしまったひと言を思い起こすことによって、決して何とかならないわけではないということもまたわかってしまっているのだからどうしようもない。


 しかし一体どうすれば良いというのか? 俺達がどうこうしたところで死にはしないであろうし、ここはやはりヒントの提示を受けるしかあるまい。


 そしてそのヒントの提示を、コイツから進んでさせるための方法としてはひとつ、やはり精神的に追い詰めて、もうサッサと死にたいと、この神界から消え去りたいと思わせることだ……



「……で、クソガキのリリィさんにコケにされて気分上々であらせられる不死のデブ、しかもハゲ、それが今のお前のステータスなんだが……それで生きていたいと思うのか本当に? 死んだ方が良くないか普通に?」


「相変わらずムカつく下等生物だ、我は生きた方が良い、生きている価値があるからこそ不死にして不滅なのだ、そのぐらいわかれよボケ、少なくとも貴様よりは我の方が存在価値を有している」


「弱いのにか? デブでハゲで皆から嫌われて、しかも臭くて死なないだけが取り得のゴミなのにか? おいおい、自己評価高すぎんぞお前、ちょっと部屋戻って鏡見てから発言しろよな……あ、もうあそこお前の部屋じゃなくて、清掃して毒抜きをしたうえで俺達が使うんだったな」


「だからそれがおかしいと言っているのだっ! どうして貴様等に部屋を譲って、しかも我が管理しているダンジョンの安置物を奪われなくてはならないのだっ? そこへ至るまでの流れが掴めぬというのだっ!」


「お前のような奴にそれを教えてやる義理はないし、そもそもこれから死ぬんだからさ、もう何も考えることも出来なければ、殺られて獲られて悔しいと感じることもないんだからさ、別に構わないだろう? 黙って死ねよこの神界のために、いいや全ての異世界に生きてお前のことをキモいと思っている存在のためにっ!」


「黙れボケェェェッ! 大神界ボディーアタァァァック!」


「単なるデブの突進じゃねぇかよ、しかもその脂ギッて毛のない頭でぶつかって来るのかよ気持ち悪りぃな」


「デブのパキケファロサウルスみたいになっているわね」


「セラはどうしてそんなマイナー恐竜を知っているってんだよ……」


「昔近所で飼っていたし、野生のも結構居たわよ」


「改めてヤバいなお前の村」


「我を無視するなぁぁぁっ!」



 どうせ効果がないとわかっているのに、頭を突き出して突進してくるパキケファロ……ではなくデブでハゲの神。


 そのスピードは極めて遅く、その程度の勢いで突進してもせいぜい高層ビルひとつを粉々に打ち砕く程度の破壊力にしかならない。


 つまり今の俺であれば、小指の爪先だけで跳ね返してしまうことが可能なのだが……指先だけとはいえさすがに触れたくないため、回避してどこかにぶつかるのを待った。


 だが遅い分、方向転換は容易に、しかもクイックな動きで可能になっているようで、キュッとキモめの動きを見せつつ、またしても俺の方へ突進してくる。


 どこか違う方向へ行けば良いのに、俺ではなく対外的にはこの組織のメインを張っていることになっている仁平を狙えば良いのに。


 そんなことを言ってやりたいところでもあるが、怒り狂っている以上それは無駄であって、殺して止めたところでまた元に戻って無限に攻め立ててくることであろう。


 そして、それを完全に殺し去る方法を発見しない限り、これからは毎日、何があっても常にコイツの攻撃と怒鳴り声に晒されることとなってしまう……一生涯だ。


 当然明日のダンジョン攻略もコイツと戦いながらになるし、そもそもこの後、夜通し攻撃を回避し続けなくてはならないこととなる。


 もちろんうっかり眠ってしまって、急所にコレがクリーンヒットしたところでノーダメージだし、最悪勇者パワーを全開にして、攻撃自体が触れない、雑魚が近寄ることなど出来ない状態にして無効化することも可能だ。


 だがまぁ、そのままの状態で明日それを忘れて行動してしまった場合には、きっとすれ違った神界人間や天使などが弾け飛んで死亡したりなど、気付くまでに多少の被害が出ることは想定出来るが……



「ぬぉぉぉっ! ぬぉぉぉぉぉっ!」


「しつこい野朗だな、誰か、ここまででで何かヒント的なものは……そうか見つからないか、ひとまず一旦死んでリセットされろこのハゲ!」


「ギョェェェッ!」


「本当に雑魚なのにね、あ、一瞬で元に戻ったわよ、勇者様、まだ狙われているから気を付けて」


「気を付けてって言われてもな……っと、どうしたジェシカ? 何か考え込むのは気付きがあったときだろう?」


「……うむ、やはりこの神が使用していた部屋を捜索してみるべきではないかと思うのだが……そこにヒントがあったり、場合によってはアレだ、急所そのものが置いてあるかも知れないからな」


「馬鹿な女よっ! 我が急所、即ちこのトレジャーは分厚い脂肪の下に隠れてはいるが、正真正銘ここにあるのだっ! 見るが良いっ!」


「見せんじゃねぇよボケ!」


「ギャァァァァッ!」


「それでジェシカ、1人だと大変だから……そうだな、カレンとマーサと、それから役に立つかは知らんがルビアも連れて行け」


「わかった、いくぞ3人共、きっと部屋の清掃が進んでいるだろうからな、早いうちに何か手懸かりを探さなくてはっ」


『うぇ~いっ』


「待てっ、行ってはならんぞっ! ここを離れるのはそこのチビ狼だけで十分では……」


「……おいお前、よっぽど部屋の捜索をされたくはないらしいな、何かとんでもない秘密でも隠しているのか? それともやっぱりコア的な何か……だからCHING-CHINGじゃなくてっ、見せんなボケェェェッ!」


「ひょげぇぇぇっ!」



 どういうわけか部屋の捜索をしに行く4人を引き留めようとしたデブでハゲの神、カレンだけならば行って良いような感じであったが、馬鹿そうなので何も見つけられないと踏んだのか。


 いや、だとしたらマーサもルビアも、見るからに頭が悪そうで実際に頭が悪いのがバレバレの存在なのだ。

 引き留めるとしたら真っ当……かどうかは知らないが、ある程度の思考力を有しているジェシカだけになると思うのだが。


 だがまぁ、この馬鹿の実力で捜索に向かう4人を停止させることは出来ないし、それに着手する前に俺が殺害してストップを掛けるのだ。


 よって捜索の邪魔にはならないし、むしろこの場で、何かを発見されるのに焦ってしまう分、こちらが少しだけ楽をさせて貰えるということ。


 あとは4人が頑張って、何でも良いからこの神を処断し、この神界から消し去るためのキッカケとなり得る情報ないしアイテムをゲットしてくることに期待するのみである……



 ※※※



「失礼するっ! 清掃は一旦ここまでで良いので、私達に部屋の中を見せて頂きたいっ」


『あっ、さっきのヤバそうな男の仲間の……神様の配下?』

『ちょっと、めっちゃ可愛い子いるじゃないっ!』

『ホントだ可愛いっ、こっちおいで~っ』


「わぅぅぅ、何か凄く馬鹿にされているような気がします」


「仕方ない、カレン殿は少しその方々の相手をしてやってくれ、その間に私達がやるべきことをやっておくから」


「うぅぅぅっ……」



 部屋を清掃していたのはホテルの従業員らしいメイド部隊、だが突然入って来た4人の中で、最も注目されたのは発言をしたジェシカではなくカレンであった。


 小さくてモフモフで可愛い、ということであっという間に取り囲まれてしまったカレンは、清掃を中断したメイド部隊の餌食となったようだ。


 カレンが取り囲まれて触られまくっている間に、残りの3人で部屋の捜索を始める……のだが相当に汚らしく、あまり触りたくないようなブツがまだまだ散乱している状態。


 きっとメイド部隊もかなり苦労して清掃をしていたのであろうと言うことは、その場で作業に着手した3人全員が感じたことであった。


 持って来ていた手袋などを装備し、ひとまずそこまで汚くないであろう場所から捜索を始めた3人であったが……やはり部屋全体がおっさんの臭いに包まれていることには対抗出来ない……



「もうイヤよこんな臭い、お風呂入っていたのかしらあのデブ?」


「入っていても臭うタイプのデブなんでしょうね、ひとまず窓と扉を全開にしましょう、話はそれからですよ実際……」


「どうしたルビア殿、窓を開けた向こうに何かあったのか?」


「引き伸ばされて印刷されたおっぱいがお出迎えしてくれました……」


「ヤダ本当だ、何コレマジで気持ち悪いじゃないの、どうしてこんな所におっぱい画像が……ねぇ、他の窓も開けてみましょ」


「だな、しかしやはり全ての窓に……少なくともここもおっぱいだぞ、こっちもだ」


「というか全部おっぱいですね……あら、しかもこのおっぱいはどこかで……私達の世界の女神様のおっぱいじゃないですか?」


「ルビアちゃん良くわかるわねそんなの……いえ、羨ましいとかじゃないけどさその能力……それで、どうしてこんなことになっているのかって、誰に聞いたらいいの?」


「そうだな……すまないが清掃をしていたメイドの皆さん……少し質問を良いか? 答えてくれれば……そうだな、ここに居るマーサ殿もモフモフして構わないぞ」


「あ、私カレンちゃんみたいに触られちゃうのね……」



 マーサをダシにして、どうしてデブでハゲの神が宿泊している部屋がおっぱいだらけなのかということを、ホテル従業員で清掃班のメイド部隊に問うジェシカ。


 その答えは至極単純で、デブでハゲの神はこの町にあるダンジョンの管理者であるから、頻繁にこの町に、そしてこのホテルに泊まりに来ているのだが、おっぱいが好きすぎて毎度毎度部屋をこのような状態にしていくのだという、つまり馬鹿だ。


 しかもおっぱいの中でも特に巨乳に対する反応が良いらしく、メイド部隊はその証拠として、ホテルの部屋で500神界通貨を支払うと見ることが出来る、ちょっとエッチな動画の閲覧履歴をジェシカに見せた。


 そこにあったのは『神界巨乳100選』だとか、『超巨乳4時間』だとか、『奇怪ではない、美しい巨乳の女神』などといったタイトルのものばかり。


 もちろんこの部屋に勇者パーティーが訪れた際にも、巨乳限定のその動画を見ふけっていてまともな対応をしなかったのであって……つまりそういうことだ。


 デブでハゲの神は外からディスられまくって、それに神としての威厳を持って対応することよりも、巨乳動画を見る方を優先していたのである。


 だからどうしたとしか言えないようなことに感じるかも知れないが、これは奴の弱点を突くチャンスではないかと、その場でジェシカはそう感じたのだという……



「……ふむ、これで『カレン殿だけは行っても構わない』の理由がわかったな、残念なことだが」


「ホントに残念なんですけど……」


「え~っと、じゃあアレですか? あのデブでハゲの神様は巨乳攻めしてしまえばどうにか出来るということで……そうですよね?」


「そう……かも知れない、とにかく今のところ把握出来た弱点? はそれだけということだな、引き続き捜索をしよう」



 その後も捜索を続けた4人、というかメイド部隊にモフ羅列付けていたマーサを除いた3人であったが、結局『巨乳好き』以外のポイントを発見することが出来なかった。


 仕方ないのでその線で攻めるということにして、ひとまず戦いが行われている現場へと戻るべく部屋を出る。


 臭くて敵わない部屋はきっとこの後メイド部隊がどうにかしてくれることであろう、だがその前に、巨乳好きでデブでハゲのどうしようもない神を始末しなくてはならない。


 ジェシカはルビアと相談して、巨乳攻めとして有効な方法を編み出すつもりでいたのだが……さすがにあんな奴に自分のおっぱいを触らせるわけにはいかないという結論に至った。


 ではどうするべきか、2人の巨乳は正真正銘、ガチの巨乳であることには間違いないので、それをどうにかして間接的にアピールする方法があれば勝ちなのであるが……



「……あの、もしかしたらですけど、私達の持つ『真実の美巨乳』を見せ付けたりしたらどうでしょうかね?」


「なるほどそういう感じでいくのか……女神様にも相談して決めよう、もしあの窓に貼ってあった巨乳が女神様のものであるとしたら、それこそその協力が不可欠になるからな」


「何か面白そうだし私もやるわよ、ミラちゃんと、それからマリエルちゃんも誘ったらもっと面白いと思うの」


「私は……たぶん意味ないので見ています……」



 カレンだけ悲しい思いをしてしまったのだが、仲間と合流すればきっとセラやリリィなど、同じ気持ちを持つ仲間が慰めてくれるのであろうと期待はしていた。


 そんな感じで元の場所へと戻った4人は、まず全員に調査結果を報告して、それからすぐに取るべき作戦を説明したのであった……



 ※※※



「……なるほど意味がわからんな、わかろうとも思わないが」


「しかし主殿、このくだらない方法以外にこの、ほらまた突っ込んで来ているそれを始末することが可能になる策が見つかりそうにはないぞ」


「でもそれ、喜ばせるだけで別にダメージは……まぁ、でも他に方法がないみたいだからな、とりあえずやってみようぜ」



 いつもの如くではあるが、特に考えもナシに『やってみる』という方法を採用した俺達であったが、ひとまず女神が恥ずかしそうにしているのでそれを解消してやらなくてはならない。


 といっても、まじめにやらないと暴力を振るうぞということをアピールするだけであるから簡単で、ついでに『鏡』を用いて作戦を決行するということからも、直におっぱいを見られるわけではないというアピールポイントもあったので余裕であった。


 で、早速真実を映し出す鏡(強化版)を取り出させ、突っ込んで来る敵の方はカレンとリリィ任せ切りにして……リリィの奴、殺しまくっているが大丈夫であろうか、途中で飽きたり疲れたりしないと良いのだが……



「へぇ~っ、こんな仕切り板の中でおっぱいを出せば良いんですか? まぁ普通に考えたらアレなことですけど」


「ミラ、単におっぱいを露出するだけでは足りないぞ、エッチなポーズも決めて、あと音声も入れるからそのつもりで」


「わかりました……うっふ~ん……こんな感じでどうでしょう?」


「何かわざとらしいが別に良いか、で、この顔の部分に目線などで加工した画像を大量に用意して……ほら、他の皆もやれよ」


「とんでもないことをさせますね女神であるこの私に……いえ、文句があるわけではありません、必要なことだと思っていまして……ホントですってば! だから叩かないで下さい勇者よ……ひぎぃぃぃっ! なんと乱暴なことを」


「文句がないならとっととやれ……ほう、いつもの如く良いおっぱいだな、どれどれ俺様がテイスティングを……あげぽっ!」


「そういうことをしているから無駄に時間が経過していくんです、勇者様は外へどうぞ」


「へ、へいです……」



 血を吐きながら追い出され、カレンがいなしていた突進する巨乳好きでデブでハゲで、しかも気持ち悪い神をもう一度引き受けることとなった。


 しばらくするとおっぱい連中がカーテンの向こうから出て来て、もちろんそれぞれの手には現像というか印刷というか、とにかく量産した自身のおっぱい画像が大量に保持されている……なお、もちろん全部につき目線入りで、パッと見では誰だか……普通にわかりそうだ……

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