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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1181 豚が欲しい

「……と、いうことになってんだ、マグロ拾いの天使連中の情報によるとな、その豚野郎使いとやらがこの町の労働者を連れ去ったと見て良い、そしてうっかり1匹落としてしまったのがあそこで片付けられているマグロだ」


「え~っと、連れ去られた労働者の神界人間はやっぱり……豚野郎にされてしまったということなのでしょうか?」


「わからんが、だが仁平によるとだな、その豚野郎使いは昨今、豚野郎よりも雌豚に興味が行っているらしいんだよ」


「うっかりルビアちゃんとかが攫われないように気を付けないとならないわね、それと戦うにしてもそうじゃないにしても」


「まぁそれもある、それからあそこでのた打ち回っているマグロ拾いの天使なんだが、奴等はもう順番でああいう目に遭うことが確定しているんだよ」


「彼等に施された術式は私にも解除することが出来ませんでした、かなり強力なものです」


「なるほど、ドSというキャラもそうですけど、やっぱりそういう系の攻撃をしてくるタイプですわねその女神は……」



 最後にそのようなことを、本当にボソッと漏らしたのはユリナであったが、その視線の先に居たサリナはイマイチ自信がなさ気な表情をしている。


 もちろん幻術を使ったり、精神攻撃で相手を支配したりというようなことをやり合う戦いになった際には、サリナが前に立ってメイン攻撃役にならなくてはならないのだが、そこで相対する敵は神なのだ。


 そしてこれまでブチ殺してきたような野朗の神ではなく女神、当然野朗キャラよりは優秀で強く、そう易々と倒してしまえるものではないことが確実。


 今回は相当に苦労するに違いないと、それと戦うのかどうかさえ定かでない状態にありながら予想してしまうのは致し方ないことであろう。


 で、もちろんこの町の労働者を連れ去ったのが確定している以上、ここでその神の情報を集めずにスルーしてしまうということだけは出来ない。


 すぐに動いて調査を始め、具体的にどのようなキャラであって、どういう意図で動いているのかというところから知っていかなくてはならないところだ……



「とにかく今その豚野郎使いの情報を持っているのはホモだらけの仁平だけです、少し詳しい話を聞きましょう」


「そうねぇ~っ、豚野郎使いは自分自身がそんなに強いってわけじゃないのよぉ~っ」


「というと? 使っている豚野郎が強いのか?」


「強い……というよりも数の多さが厄介だと思うわよぉ~っ、あの子と戦うなら基本的に両者が代表の豚野郎/雌豚を1匹ずつ出して、それにターン制バトルをさせるような感じになると思うしぃ~っ、それで向こうが出してくる豚野郎や雌豚は5億匹を超えるのよぉ~っ」


「そんなもんっ、どれだけ倒しても終わらないじゃねぇかっ!」


「そっ、だからあの子の豚野郎総大将を倒した神って未だにないのよねぇ~っ、というか豚野郎気持ち悪いからチャレンジする者も稀ねぇ~」


「なかなかに恐ろしい敵だな、出来れば戦いたくない……」


「しかし主殿、そのままにしておいてもし敵の方から攻めて来たらどうなると思う?」


「そりゃ5億匹の豚野郎が俺達の拠点に放たれて……汚物を撒き散らされたのと似たり寄ったりの状況になるな」


「壊滅じゃないのそんなの……戦うしかないわね、この町の労働者を取って何をするつもりかは知らないけど、敵には変わりないわ」


「そうですの、ババァの神の一派というだけでもう攻撃対象ですし、実際に動いているのがそれとなるとやはり戦うしかないですのよ」


「だがどうする? 5億匹の豚野郎を1匹ずつ、しかもターン制バトルで殺していかないとならないんだぞ」


「……無視……して大殺戮したらどうかしら? 所詮は豚野郎だし、雌豚に被害が行かないよう気を付けていてもほら、たぶん一撃で5,000万匹は殺せると思うのよ」


「何かめっちゃ怒られそうなやり方に思えるんだが……どうだろうか?」


「う~んっ、ブフォッと……またこいちゃったわぁ~っ、で、私が提供した豚野郎使いの情報はあくまで数万年前の話よぉ~っ」


「数万年前か、梃子とは現在だと……」


「そっ、さっきも言ったけど、今は豚野郎よりも雌豚にご執心みたいだからぁ~っ……5億のうちどのぐらいの割合でそれが含まれるとかぁ~っ、変わっている可能性があるというかぁ~っ、まぁそんな感じ?」


「あ、そっか、雌豚は女性キャラなわけだから、中には可愛い子も居るわけで……むやみやたらに殺してしまうわけにもいかないな……」



 ルールを無視して攻撃してしまうという邪道であってかつ外道な作戦も、現在の敵の状態次第では通用しない可能性がある。


 そもそも名称が『豚野郎使い』であるものの、現在の状態が『雌豚使い』である可能性は低くないのだから、そこを考えて動かなくてはならないということだ。


 だが豚野郎が雌豚に変わったからといって、正攻法でどうにかなる性質のものではないであろう。

 そのかずが5億匹で変わっていなければ、1匹ずつ順番に勝っていかなくてはならないのであれば同じなのだ。


 となると攻略方法としては……もっとスムーズに勝負が進む方法を、簡便で時間の掛からない方法を提案して、どうにかしてそれを認めさせるしかない。


 もちろんその提案に当たっては、こちらではなく相手側が得をするような、何かインセンティブのようなものを提示していかなくてはならない。


 さもなくばこちらが時短でどうにかしてしまいたいと考えているのに乗っかってくるようなことはないはず。

 そんなことをするのはあえて負けたいドMキャラであって、今回のようなドSには通用しないのだ……



「……ということになると……せめて5対5とか6対6とか、そのぐらいで戦っていくぐらいにしないとならないわね、1匹ずつだとしたら」


「3匹のモンスター……じゃなかった豚野郎を同時に繰り出して、それが全滅した方が負けみたいな方法でも……てかいずれにせよアレか、豚野郎は用意しないとならないのか……きめぇから無理だな」


「いえご主人様、豚野郎じゃなくて雌豚でも構いませんことよ、その候補であれば仲間内にいくらでも居ますの、ねぇルビアちゃん?」


「あ、雌豚と呼ばれることは吝かではないんですが、その……さすがにちょっと気持ちの悪い豚野郎の方と直接対決するのはもう……」


「まぁイヤだよな、下界の雑魚豚野郎と違って、神界のはそこそこにタフな豚野郎かも知れないし、場合によっては直接手を触れて、締め上げて殺さないとならないみたいなこともあるだろうからな」


「じゃあ勇者様、相手にも雌豚の、しかも気持ち悪いのじゃないのを出して欲しいって要請したらどうかしら? それならルビアちゃんだけじゃなくて、私とかも戦うことが出来るわよ」


「セラも雌豚をやりたいのか……だがここでそんな話を進めてもな、本当に相手が受けてくれるかどうかだぞ問題は」


「まぁ、そこに行き付きますね結局は……でも戦いを通告するに当たって要請してみるのは良いかと思いますよ、さもないと拠点とかに破滅的な攻撃を加えるって脅して」


「それさえも聞いてくれるかどうかって感じね……」



 作戦の大枠は決まってきたものの、どう考えても敵次第な部分が多すぎて上手くいくようには到底思えないものだ。


 そもそも敵がどの程度雌豚を用意していて、豚野郎がどの程度残っているのかということを見てからでないと始まらないではないか。


 となればまた偵察科、それとも直接乗り込んで戦いながら、攻撃を加えながら確認するのかといったところであるが、やるべきは後者であろう。


 どうせ攻め込むのに最初は偵察、これまではそうしてきたのであるが、今回に関しては偵察などしたところで、豚野郎が凄く沢山居た、雌豚も多かった……程度のことしかわかってこないに違いない。


 ならば最初から攻めて、多少なりとも豚野郎を殺したり、雌豚を解放したり捕らえてこちらの駒にしたりといったことをした方が、戦いが早く終わる可能性が高まるという意味では得策だ。


 しかし敵の拠点を攻めるにしても、その理由をどういったものとするのかが問題となってきそうなところだな、あまりムチャクチャな、難癖を付けるようなものだと明らかにこちらが悪くなってしまう……



「……なぁ、やっぱりこの町の労働力になりそうな神界人間を拉致ったのはその何だ? ドSの豚野郎使いで間違いないんだよな?」


「それはもう確定で良いでしょう、残念ながら死んでしまったあのマグロ拾いの天使に死の呪いを施したのもそうでしょう、このふたつについては女神である私が保証致します」


「そうか……だから敵とみなして攻撃する、町の労働力を返せ……ってのは一応正当な理由になるのかな? ほら、労働者の同意を得て雇用したとか言われたりして」


「しかもその労働者も豚野郎化していて、完全に向こうの、豚野郎使いの味方として証言してきそうね」


「そうなるとつまり、今度こそこっちが完全な悪者になっちゃうってこと?」


「うむ、だがまぁ、それでも本当の巨悪であるババァ神を失脚させるためであれば必要悪であると、いやそうであったと後世の研究等で認められるかどうかが今回の作戦のキモだ、せっかく勝ってもそんなこと言われたら寝覚めが悪いからな」


「後世の研究って、神界なんだからそんなものストップ掛ければ良いじゃないの、大丈夫、そういう話が出てくる頃にはこの私が神として君臨しているはずだから、どうにかして阻止するわよそんなくだらない評価は」


「頼もしいが精霊様、現実を見た方が良いと思うぞ……いや、見向きもしないで突き進むというのであればそれで構わんのだが……」



 神にはなれそうもない、というか神になるための試験を受験する資格さえ獲得出来そうにないことを精霊様はまだ知らないしこれからも気付かないはず。


 見ているだけであれば滑稽で良いのであるが、こういう状況においてはツッコミが入れ辛くなるため早く話題を逸らしてしまいたい。


 で、そのような感じで話し合いを進めるのだが、やはりこちらから攻撃を仕掛けることには慎重にならざるを得ないのではないかという意見が相次ぐ。


 そもそも、今回のターゲットとなり得る豚野朗使いは、今のところではあるが『ババァ神のため』だとか、『ババァ神に命じられて』何かをしているというような石の表明をしていないのである。


 もちろん裏では、というか表面の薄皮を1枚剥き取ったその内側には、ババァ神との濃厚な関係がひと目でわかってしまうような毒々しい果実が育っているのであろう。


 だがそれが表に出てこない限りはこちらから何も言うことなど出来ない、こちら側が反体制派であるという現状を鑑みれば、疑わしいという理由で攻撃を仕掛けることなど出来ないのだ……



「……まぁ、そういうことになるわね、こっちからはちょっと無理よ、迎え撃つしかないかも」


「挑発して向こうから攻めてくるのを待つってことか? でもどうやって攻めさせるのかってことと、どうやってこっちのやり易いように誘導するのかってとこが……どうだ?」


「ねぇ、こっちでバトル場を作ったりしたらどう? そこに来て貰って戦うの、1対1で5人連続とか、もちろん私もやるわよっ」


「なるほど、むしろこっちが主催者になってルールありのバトルを……って、なかなか難しいことを言い出すな、どうやるんだよそれ?」


「挑発するところからそこに至らせるまでのプロセスも難しいわよね、敵が相当に単純じゃない限りは……」



 先に手を出させる、それに関しては普通にありだと思うが、こちらでバトルの会場とそのルールを用意してそこへ引き込むというのは難しい。


 というか、罠の可能性があるそんな場所に、本来は来なくても良いのにわざわざ乗り込んで来るのはよほどの馬鹿か、或いはこちらの提案を受けてしまうのと変わらないドMキャラであろう。


 それゆえ今回の戦いとはマッチしないというか、おそらく無理なのではないかといったところであるが……いや、もしかしたらそこに引き込む手があるかも知れないな。


 例えば養殖した自慢の豚野郎や雌豚が、こちらの有能な雌豚に負けているかも知れないと、そんな疑念を抱かせるようなアピールをして、それが誤りであると証明する場を提供するような方法だ。


 こちらに来て、それで勝負に勝てば自分の豚野郎や雌豚が神界最強かつ最高品質のものであって、それが即ち全ての異世界のそれに関してトップであると証明することが可能である、そんな勝負を提供する。


 もちろん罠の可能性を考慮してそんなくだらない催しには参加しないのが賢い選択であって、敵も賢ければそうするであろう。


 だがそれに関して『奴は逃げた、豚野郎使いの風上にも置けない臆病者だ』などという主張をばら撒いて自尊心を傷付けて……そうすれば次はブチギレしながら出て来るに違いない。


 しかも形振り構わず豚野郎を突撃させるような、そんな無謀で損しかしない作戦を取って、それで自分の強さのアピールをしてくる可能性もないことはないはず。


 そして場合によっては本体が、あまり強いわけではないというドSの豚野郎使いが前に出て来て、それを叩けば一撃でゲーム終了となるボーナスステージに移行する可能性さえある。


 まぁ、もちろんそんなに上手くいくとは思えないのであるが、なるべくそうなるように、それに近い状況に持ち込めるようにすれば良い……



「じゃあさ、その何だ、挑発して誘い込んで、向こうからこっちに攻めさせる系の作戦でいくって感じで、これで決まりで良いか?」


「まぁ、特に問題はないわね、失敗したら失敗したでまた別の作戦を考えれば良いわけだし、その際には『敵がこっちを攻めなかった』ってことだから何の被害もないわけだし」


「ならばすぐに諸々の用意を始めるべきであろう、まずは……誘い込むにしてもどうやって、どんなルールの『ゲーム』を用意するのかが問題だろうな」


「それは……まぁ相手がやるのに合わせて、豚野郎と豚野朗をお互いに繰り出してターン制バトルにすれば良いんじゃないか?」


「それから、豚野郎だとキモいし観客からの収入も望めないので、参加させることが可能なのは雌豚に限定すべきでしょうね、その方が儲かります絶対」


「雌豚限定であれば私は選手に立候補しますよ、最高品質の雌豚は私だということをこの神界にですね……」


「まぁルビアを出すかはさておきだ、細かいルールを詰めてから色々とそのルール内でやるべきことを考えていこうぜ」


「それから、そのイベントをどうやってアピールするのかですが……まぁ、隣町の住民である神界人間の皆さんを、私達の本拠地に連れ帰って使えば良いですね、もちろん女性キャラのみを雌豚として」


「うむ、その辺りについても募集するなり何なりしようか」



 ひとまず敵である豚野郎使いを挑発し、向こうから攻めてくる、そして俺達の決めたルール通りに簡単で時間を要さない戦いをしてくれればそれで良い。


 豚野郎使いが美しければ打ち負かして、せっかくなので『ドM堕ち』でもさせてしまえば良いし、鬱陶しくてキモいババァなら殺してしまうべきだ。


 それは実際に戦った際に、相対した際に判断することになるから、今はともかくそれを呼び付ける方法を考えて……ここは対抗馬の『雌豚使い』として精霊様を起用していくところだな……



「よし、じゃあこっちのメインキャラは精霊様で、突如として神界に現われた究極のドSみたいな扱いで持ち上げることとしよう、ついでに豚野郎使いはその精霊様と比較してカスだからもう落ち目だみたいな?」


「まぁ、別にウソを付いているわけじゃないからそれで良いんじゃないかしら? で、その挑発に乗って敵が、豚野郎使いが攻めて来たら何をするの?」


「そうだな、俺が知っている伝統的な勝負をちょっとアレンジして……5対5の勝負にでもするか? お互いに雌豚を1匹ずつ繰り出して、勝った方はそのまま戦う、負けた方は引っ込むみたいな感じで」


「それで、最終的に相手の手持ち豚を全部戦闘不能にすれば勝ちみたいな感じなのね? じゃあ選抜する雌豚はかなり強いのにしないと……と、それはこのメンバーの中から選べばOKかしら?」


「あぁ、隣町から連れて来た豚共を調教するのは単なるアピールのためで、手駒である最強の雌豚軍団はそれはそれで……みたいな感じにするぞ」


「じゃあえ~っと……まぁ、選ぶのは簡単ね、あとは繰り出す順番とかを決めて……バトルのときに使う技なんかもバッチリ用意しておきたいわね……」


「うむ、じゃあ俺達はちょっと町で雌豚を集めておくから、その間に……代表者でも選んでおいてくれ、ほぼ決まりだとは思うがな」



 ということで俺は『代表者』に選ばれる可能性のないカレンやリリィ、それにユリナ、サリナ、エリナを連れて町へ、隣町の連中をひとまとめにしてある広場へと向かった。


 既に最初の炊き出しは完了し、ところどころで元気になったこの町の人間が、隣町から連行して来た労働者系のキャラに、身動きが取れないほどの重税を課せられたことによる管理不足でボロボロになった町の修復を命じ始めている。


 一方で、そのような作業には駆り出されることがなく、炊き出しの片付けを終えた後はずっとその場で待機させられ、あとは売られたり公共の奴隷にされるという処分を待っているだけの女共。


 その中心に居るのはやはり市長の娘……とまぁ、その市長はもう処刑されてしまったのであるが、とにかくその肩書きを持つ女と、それから最初に捕らえた、唯一神界人間という身分にない仮免天使であった。


 ひとまずこいつ等を中心に、精霊様に調教させて敵にアピールするための豚集めをしていくこととしよう。


 もちろんのこと、市長の娘と仮免天使は雌豚に含まれることが決まっていて、もはや豚確の状態であって、何があっても逃れさせることはないのである……

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