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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1164 合流

「ここです、普段ですとこの場所へ神々がお越しになって、それからこちらで必要な場所までご案内をして差し上げるのが通常です」


「あら、凄く豪華な部屋なのね、画鋲でも撒いておこうかしらなんて言ったけど、このフカフカのカーペットじゃそんなの埋まっちゃってしょうがないわ」


「精霊様、撒菱なら結構沢山持って来たぞ、魔導地雷もルビアが勝手に発注していたのを没収しておいたからかなりある」


「勇者さん、そんなのじゃ神に対してはノーダメージですし、そういう殺意を感じるものよりも、殺意はないけど悪意だけ感じる何かの方が効くと思いますよ、嫌がらせ的に」


「なるほど、どうせダメージ効果がないのであれば、精神的にというかイラっとさせるというか、そっちに着眼した方が良いってことか……誰か、犬のウ○コを大量に持って来てくれっ」


「どうしてそういう汚らしい方向に走るのかしらこの異世界人は……」



 などと文句を言われてしまったのであるが、エリートで偉そうにしている神がこの町へ、もちろんそれなりの歓迎を受けるつもりでやって来るのだ。


 これがいきなり犬のウ○コの上に降り立ったなどということになればそれは大問題であり、こちらとしては作戦成功である。


 きっと冷静さを失い、キレ散らかしてそこら中を破壊、ついでに本来は自分の下に付けたはずの、この町の神界人間を無差別にブチ殺して回るに違いない。


 もちろん、可能性としてはウ○コを踏まされても冷静で、怒りつつも表情は変えずに対応してきたりして、こちらが本当に気持ち悪い奴が来たものだと思わされるパターンもあるが。


 で、そういうわけだから大量の犬のウ○コを用意させるべく、広場で大パニックに陥っている『もう実質死んだ馬鹿共』に声を掛けさせる。


 だがその馬鹿共が動かないということだけでなく、犬のウ○コ集めにはもうひとつ問題があった、というかその問題のせいで無理なのであった……



「やっぱり、町を見渡す限りそのようなモノは落ちていませんよ、絶対に無いとは言い切れませんが、大量になんてそんな……」


「はぁっ? お前市長の娘だからってアレだぞ、この町のクリーンさにつきウソ言ってんじゃねぇぞ、わかってんのかオラッ!」


「いてててっ、本当ですってば、この町、以前はその、本当に追い詰められていたので、あの……」


「まさか、犬を捕まえて喰ったのかその辺のっ?」


「そんなことは出来ませんよ、一部はそうしようとしていたみたいですが、犬の方が先に察知して逃げました、神界では神界人間よりも神界犬、神界猫の方が遥かに賢くて上位の存在ですからっ」


「そうなのか、残念な奴等だなお前等神界人間ってのは……で、その犬が逃げた際に放置されたウ○コは……まっ、まさかのまさかぁぁぁっ⁉」


「……食べてしまった……方々が多いようです、発見されたカッサカサのそれを取り合いをしていたという目撃情報も、もうあの攻撃の際に逃げてしまった天使の方々から頂いています」


「哀れすぎて何も言えないわね、毒とか麻痺で行動不能にしてあるこの町の指導者連中、処刑する前に汚物でも食べさせて屈辱を、とか思っていたけど狂喜乱舞して貪り食いそうね、気持ち悪いわ」


「本当だよ全く……じゃあしょうがねぇ、画鋲より目立つように曲げた釘でも撒いておこうぜ、あとここの戸を開けたら猛毒のパウダーをふんだんに吸わせた黒板消しが……」


「このいかにも神々が使いそうな高級ティーカップにも猛毒を、それから椅子の背もたれに有刺鉄線を巻いておきましょう」


「おう、座面にも何か欲しいな、そうだ、使わなかった画鋲を大量に、ちゃんと上を向けて並べておこうぜ」


「……あの、それをやったと思われるのは私達この町の神界人間なのですが……というかむしろ唯一生き残りそうな私なのですが?」


「知ったことか、疑われるような立場にあるのが悪いし、もしとやかく言われるようなら裸踊りでもして許しを乞うてみるんだな」


「そんなっ、ちゃんと助けて下さいね、神々の怒りに触れてしまっては私が……ひゃっ⁉」



 ここでも助かりたいアピールをしてきた市長の娘は、すぐに精霊様が抱え上げて、というか持ち上げて良くわからない関節技をキメている。


 悲鳴を上げつつも少しは反省したようだが、また時間が経過すればそのうちに調子乗り発言を繰り返してくることであろう。


 もちろんそれに応じてお仕置きを与えていくのであるが、この女がまともに更生し、こちらの役に立ちそうなキャラになることは未来永劫ないと考えておいた方が良さそうだ。


 で、エリート神が実際にこの地の訪れたときのための『悪戯』を仕掛け終えた俺達は、もう一度広場へと戻って虐殺の続きなどしておく。


 日程的には今日明日程度、いや今日はさすがに何も起こらないか、明日辺りで情勢に動きがあると考えて良いであろう。


 それまでにこちらの仲間がどの程度動くことになるのか……などと考えていたところ、先程『悪戯』を仕掛けたばかりの『神来訪ルーム』の方で異様な力の発揮が。


 まさかそちらが先に来てしまったのか、俺と精霊様と、あとエリナの3人だけで敵の神に対処しなくてはならないのか。


 だとしたらかなりのピンチであって、ここは一旦退いて立て直しを図るなどしなくてはならない……のだが、どうもそうではないらしい。


 感じ取ることが出来る神の力はふたつ、そして片方は良く知っているもので、もう片方も最近は常に感じ取っているものではないか。


 そしてそれ以外にも感じ取ることが出来る力、明らかに俺達の仲間のものであって、それ以外である可能性は微塵もない。


 つまり、『神来訪ルーム』にやって来た神々は俺達の世界の女神と仁平であって、そして同時に勇者パーティーのメンバーも、向こうの町での戦いを終えてこちらへやって来たということだ……



「……ちょっとヤバいわね、かなり適当なことしちゃったけど、アレ、仲間の皆が引っ掛かっているってことよね?」


「間違いない、だからそこへいく前に少し対策を考えているんだ……第一候補は『全部この町の連中がやったことにする』だな」


「待って、釘とか有刺鉄線とか画鋲とか、全部私達のものとしか思えないアイテムばかりよ、さすがに誤魔化し切れないんじゃないかしら?」


「じゃあ、全部エリナのせいにしよう、悪魔だからこういう悪質なことをしても仕方ないということで、皆許してくれるんじゃないのか?」


「ちょっと待って下さい、どうして私がそんなっ、イヤですよ叱られるのっ」


「なら仕方ない、精霊様がノリでやってしまったことにしよう、単独で、誰の意見も求めずに勝手にな……いや、精霊様が勝手に計画して、それをエリナに実行させたっていうシナリオがちょうど良いかな……」


「それ、どう考えてもあんただけ助かろうとしている感じじゃないの、ひとまず行って、事情を説明して『仕方なかった』ということにするわよ」


「……まぁ、もうそうするしかないかもな、というかもし引っ掛かって痛い目を見たのが女神ぐらいのものだったら、特に謝罪する必要もないんだからな、そしたら引っかかる方が悪いと指摘して、指差して笑ってやろうぜ」


「かわいそうな女神ね、ついでに蹴飛ばして曲げた釘の海にでも沈めてやろうかしら」


「またそうやって調子に乗る……とにかく行きましょう、ここでダラダラしていても仕方ないですから、あと向こうは向こうで私達が来るのをそのまま待っているみたいですから」


『うぇ~いっ』



 俺達3人がこの広場に居るということぐらい、雰囲気だけでわかってしまうことだとも思うのだが、どうしてそれをせずにそのままあのルームに滞在しているのかが気になるところ。


 だが向こうから来ない以上、こちらから行ってお出迎えをしてやる以外にないのであるが、もしかしたら仕掛けたトラップにガッツリ引っ掛かって、怒り心頭の様相を呈した仲間達が待ち受けているのかも知れない。


 一部の仲間は凶暴だからかなり危険だな、カレン辺りは齧り付いてくるであろうし、ミラに至っては斬りかかって来る可能性さえもある。


 そのような状況になっても困らないよう注意しつつ、ひとまず庁舎の方へ向かった俺達を待ち受けていたのは……至って普通の感じの仲間達であった……



「お、おうお前等、こっちへ来たってことはアレだな、向こうの町の方は滞りなく終わったってことだよな?」


「えぇもちろん、ノーダメージで切り抜けて、すぐに女神様の転移を使ってこっちへやって来たのですが……」


「何だマリエル?」


「やって来たと同時にそこそこ辛い目に遭ってしまいましたね、特にほら、先頭でゲートを潜った……」


「先頭で……あっ、これはヤバい……」



 まるで気付かなかったのであるが、和気藹々と全てのトラップが片付けられた部屋で談笑する仲間達と、その後ろ、部屋の隅で1人、まるでゴゴゴゴゴッという闇の音が聞こえてきそうな感じで影になっているミラ。


 どうやら最初にゲートを潜り、そして何かの設定がしてあるのか、神々によって構築されたゲートはこの部屋に、まるで沸くだけの巨大な鏡の場所に繋がるようになっていたのであろうが、その場所に降り立ったのはミラであったらしい。


 当然床には曲げた釘が敷き詰められ、それが突き刺さった後、慌てて座った椅子には画鋲が、背もたれには有刺鉄線が……というような悲惨な状況であったのだ。


 また、室内から室内に転移したことによって、いつもの癖で靴下のみ、そして装備もない薄着かつスカートが短い状態でそんなことをしてしまったものだから、そこそこ大変な目に遭ったのだということはその瞬間を見ていなくとも容易にわかる。


 で、そんな感じで静かに、本当に何も言わないまま怒りに満ちているミラであるが……これは何を与えてやれば機嫌を直してくれるのであろうか……



「……大丈夫かミラ? すまんな精霊様のせいでこんなことに」


「……いえ、別に良いです、精霊様も謝らなくて良いんで、せめて『誠意』をお願いします」


「ちょっ、結局私のせいになってんじゃないのっ! 違うのよっ、これはその……敵がっ!」


「敵って、精霊様のことですか?」


「こ……これはかなり怒ってんんだな……精霊様、銅貨を与えてみたらどうだ?」


「そ、そうね、ちょっと銅貨を……消えたっ!?」


「もう回収させて貰いました、これで受けるべき賠償の100分の1程度は済んだので、怒りパワーを99%に収めたいと思います……が、今時間の経過と共に利息が付いて100%に戻りました」


「なかなかに手強い怒りね……」



 というか、この場でミラに金貨を手渡しさえすればそれで終わりなのだが、精霊様もケチなのでそこまではしないらしい。


 むしろ今しがた取り出し、そして奪われた銅貨の分が無駄になってしまったと、そのような考え方をしているに違いないのだ。


 まぁ、俺としては全ての責任を精霊様に押し付けることが出来て万々歳なのであるが、だからといってこの状況を放置して良いようには思えないところ。


 セラにコソッと話し掛け、ミラが本格的に拗ねてしまった際の対処法を尋ねるのだが……どうやら『何かで儲けが得られる』ことによって怒りの原因を忘れる以外に対処法はないのだという。


 本当に面倒臭い奴だ、だが儲かる原因となる『何か』であれば、この町の中心である建物、しかも神々による物資の提供を受け、それで潤っているのであろう町の富が分配前に集積されている場所であるここから、それこそ無限に発見されるのではないかと思うのだが……



「……精霊様、ひとまずこの建物にあるお宝を少しミラにくれてやろう、それで機嫌を直すのかも知れないからな」


「わかったわ……ミラちゃん、ちょっとこの建物を探検して来て良いわよ、そこで見つけたお宝は、ひとつかふたつぐらいならポケットに入れても構わないし」


「……本当ですか? 金塊とか、金の像とかでもですか?」


「も、もちろんよ……ポケットに入るだけのものにしなさいよね……」


「ならすぐに行って来ますっ、じゃあちょっと待っていて下さいねっ、他にも食べ物とか、そういうモノが見つかったら報告しますからっ」


『いってらっしゃ~い……』


「ふぅっ、どうにか機嫌を直してくれたようだな、まさか対エリート神用の嫌がらせトラップにミラが引っ掛かってしまうとは予想外だったぜ」


「あっ、やっぱり精霊様じゃなくて勇者様の仕業だったのね、すぐに他人のせいにするんだからもうっ」


「こればっかりは仕方のないことだ、精霊様がやったのであればミラはそこまで言えないだろうけど、俺だったら何を要求されるかわからんからなマジで」


「5年分の収入とかそのぐらいは持って行かれるでしょうねきっと……」


「それは恐ろしいなマジで……」



 機嫌を直して飛び出していったミラを見送りつつ、もし精霊様に責任を押し付けなかった場合に訪れていたであろう恐ろしい未来を想像して恐怖する。


 隣で犯人扱いされた精霊様が、先程の銅貨1枚を請求する素振りを見せているのだが、実質犯人であることには変わりないため拒否してしまっても構わないであろう。


 で、しばらくしてドタドタと、何か重たいものを運んでこちらに向かっているような音が聞こえ始めたのであるが……ミラが戻って来たということか……



「見て下さいっ、見て下さいこれ凄いですっ! とにかく見て下さいっ!」


「何だ子どもみたいに……まぁ、まだギリ子どもみたいなものなんだとは思うが、で、何それデカくない?」


「杯……ではありませんわよね? 何に使うアイテムなんですの?」


「わかりません、でもほら、ここに書いてある文字、ところどころしか読めないんですけど、『鏡』とか、あと『GUN』とかも書いてあるんですよ、面白くないですか?」


「面白いかどうかはさておきとしてだな……エリナ、ちょっと残雪DXがどういう反応をするのか、コイツを見せてみてくれないか……で、ミラは自分では満足したのか?」


「えぇ、この500kgの金の延べ棒を見つけたので、そっとポケットに忍ばせておきましたから」


「またポケットに入るわけのないモノを……まぁ良い、で、どうだエリナ?」


「えっと、何かこんな感じです……」


『う~ん、このフォルム、まさしく魔界最強の武器である私が装備するに相応しいもので……しかしちょっとこれを動作させるにはエネルギーが足りませんね……どこかから掻き集める方法しかないのかと……』


「おい、勝手に何やら喋っているところ悪いがな、何に使うんだよこれ? 杯じゃねぇし、アンテナでもないんだよな?」


『武器ですよ武器、武器に決まっているじゃないですかこのビジュアルは、そんなこともわからないとは、さすが下界の下等生物ですね、とにかく、このほら、丸く窪んだ部分ですね、ここに集めたエネルギーをこの真ん中の突起からドバァーッと』


「あら~、この真ん中の突起はジンギスカン鍋のアレではなかったというのですね、神の身でありながら初めて知りましたよ」


『フンッ、所詮は神界の神などその程度、魔界最強の武器であるこの私の……(どうのこうの)……よってこれからは私を敬い、神界においても伝説の武器として伝承を残しなさい』


「おい調子乗ってんなこのポンコツ、で、お前のようなガラクタだとこの何だろう? とにかく超兵器を動作させるには力が足りないってことなんだな? アホだから」


『え~っと、言い方をもう少しソフトにして頂かないと、さすがの私もカチンときて色々と発射してしまうことになるのですが……』


「黙れお前もう、精霊様、また音声が出る場所にガムテでも貼っておいてくれ……それで、何だか知らんがコレはそこそこ使えそうだな、残雪DXでも動作させられない強力な兵器か……てか何でこんなもんがこの町に?」


「わかりません、食器棚にあったんで、本格的に鍋か杯と勘違いしていたんじゃないかと」


「すげぇバランス悪そうなんだけど……」



 確かにそう見えなくもないが、実際にこういうものを見たことがある俺の感覚では、どこか山の頂上に設置されている巨大なアンテナ、そのようにしか思えない。


 もちろんそれは俺が転移させられる前の知識に基づくものであって、今の俺の世界にはまるで関係がないのであるが、ここは神界であるためそのことについては考慮しなくて良い。


 ひとまず、残雪DXの見解によってこのアンテナのようなものが兵器であるということがわかった。

 おそらくアンテナ部分にエネルギーを集めて、この真ん中の突起から収束したそれを発射するのであろう。


 そしてもうひとつ、GUNではなく『鏡』の方のキーワードからわかるのは、きっとそのエネルギーを収束させたり何だりという行程にそれが関わっているということだ。


 また、ここでようやくひとつ危惧していたこと、面倒臭そうだと感じていたことについて繋がったというか何というかである……



「これで幼女神のところにあった情報に手が付けられたわね、まだ触り部分でしかないけど」


「あぁ、残雪DXが急に神界に来たのも、話の流れ的にそういうことなんだろうな」


「となると勇者様、この後、おそらくエリートの神様を討つ際には……」


「きっとこの兵器と残雪DX、そして鏡が何かキーになってくるんだろうな」


「伝説の鏡の方もこちらに取り寄せておいた方が良いかもですね、それと……明日には私達が追い返した軍勢がここに来るはずです」


「同時に、まぁ少し遅れるだろうがそのことに反応した敵の神もだな」



 制圧し、神界人間共を広場に集めてあるこの町、そして俺達の町からあっという間に追い返され、ボロボロになってここへ戻って来る予定であるこの町の軍勢。


 それに加えて、こちらの町が敗北したことを受けて動き出す神々の、もちろんメインは税庁のエリート神の行動もあって、しばらくすればこの町はとんでもなくカオスな状況になることであろう……

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