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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1182 別の感覚で

「それで、このガンメタルはどのようにして使うってんだ? この辺に突っ込んでしまえば良いのか? それとも溶かしてブッカケしたりとかそんな感じで使用するってのか?」


『そんなはしたないことしないで下さいっ! ガンメタルを溶かしてドロドロにしてブッカケとか、こんな所に突っ込むとか、それはもう伝説の武器に対してすることではありませんからっ!』


「お前、いつ最強から伝説にクラスチェンジしたんだ……とまぁ、じゃあこのガンメタルとかいう素材の具体的な使用方法を教えるんだ、さもないとマジでブッカケすんぞオラッ、もちろんアッツアツのをなっ」


『ひぃぃぃっ! 変態ですっ、変態が居ますっ! 誰か助けて下さいこの動くことさえままならない私をっ!』


「動くことさえままならないって……さっき空飛んでたじゃないの普通に……」



 馬鹿で調子に乗っていて鬱陶しい伝説の武器である残雪DXではあるが、そのパワーアップのためのガンメタルを集めて、どうにか新機能を解放したらどうなるのであろうか。


 もしかしたら賢くなったり、少し落ち着いたりもするのかも知れないのだが……まぁ、そのような武器としての性能に必要ない部分に関してはきっと後回しにされてしまい、なかなか進歩しないような気もする。


 となると、それをどうにかさせるためにはガンメタルをガンガン……ガンメタルとガンガンを掛けたギャグではないのだが、あまりの寒さに凍り付きそうな仲間達には申し訳ない、というか特に口に出してはいないのに思っただけでこの反応とは。


 で、そんなことよりも、とにかく大量のガンメタルを獲得して、それを残雪DXの進化素材だかレベルアップ素材だか、そんなことに使っていくというこれからの行動は確定だ。


 もちろんこれについては実戦を重ねながら、魔界のクリーチャーを相手に残雪DXの性能テストをしながら、同時進行的に進めていくべきサブイベントではある。


 しかしながらその効果次第では、それがむしろメインのイベントになってくるようなこともなくはないため、あまり疎かにしているとそれだけで時間を無駄にしかねない。


 とにかくやれるだけのことはやって、集められるだけのガンメタルを集めて……と、そもそもどのようにしたらガンメタルを収集することが出来るというのだ……



「え~っと、このガンメタルってのさ、どこでどうやって手に入れたんだっけ? 生まれつき持っていたわけじゃないような気がしなくもないんだが……」


「勇者様、そんなモノを生まれつき持っていたら気持ち悪いとかそういう次元じゃないですよ、それで、どこでそのアイテムを……忘れてしまいましたね、非常に残念なことに」


「はいはいっ! 私覚えているわよっ、変なでっかい堕天使をやっつけたらドロップしたんじゃなかったかしら?」


「そうでしたか……イマイチ思い出すことが出来ませんが、マーサちゃんが自信を持ってそういうのであればそうなのでしょう」


「なるほど堕天使か……じゃあ今後も堕天使狩りをすれば、もしかしたらガンメタが沢山手に入るかも知れないってことで良いのか?」


「そのようね、ひとまずそこら中に居る堕天使を片っ端から殺して、それでどのぐらいのドロップ率を有しているのか探りましょ、目標は1人につき3,000KILLってところかしら?」


「あの、現役の堕天使である私が居る前でそのような話をされるのはちょっと……気分的にほら……ね?」


「あんっ? じゃあ堕天使さんは代替案を提示することが出来るのか? 出来ないならこの場でケツからガンメタがはみ出るまでシバき回すぞ」


「ひぃぃぃっ! そもそもそんなモノ出ませんって! 何かの間違いとか、相当なレアドロップですってホントにっ!」


「そうなのか、堕天使を狩ってもそんなに落ちないアイテムなのか……こりゃ根を詰めて大量虐殺しねぇとだな」


「どうしてそこでパワー押しになるんですか? もっと効率の良い集め方を考えるとか……出来そうな顔をしていませんね……」


「うっせぇな、黙ってねぇとコブラに乳首噛ますぞオラッ、それで、マジでどうしようかこれは……」



 どうしても堕天使狩りをさせたくないらしい堕天使さん、だが堕天使といっても色々な種類が存在しているのだ。


 そしてこの堕天使さんより、もちろん砦を守らせている堕天使ちゃんよりももっと無能なハゲで馬鹿で、クソ以下の堕天使は多い、というかそれがスタンダードなのであろうといったところ。


 こういったゴミ野郎共であればどれだけブチ殺してしまっても構わないし、むしろ足手纏いを減らし、逆に魔界を発展させることになると思うのだが、その辺りはどうなのか。


 まぁ、堕天使さんも立場上あまりそういうことを是とすることは出来ないということなのであろうが、しかしそもそもの『ドロップ率』が低いということであれば、そこまで無理を押してやってのける作戦でもない。


 ならば他のことを考えるべきか、もっと効率良くガンメタルを獲得する方法につき調査して、片手間であっても残雪DXの進化に十分な量を搔き集めることが可能な方法を取るべきか、という感じで話し合いを進める……



「じゃあとにかくさ、本人……じゃなくて本GUN? に聞いてみた方が良いと思うのよ、どうなのそこのところ?」


『え? 私に何か用でしょうか? 今はちょっと魔界最強で伝説で、誰もが欲する究極武器の称号を得た、そのことを実感して喜びに打ち震えているところですので、もしどうでも良い話であれば後程で』


「いやあのね、残雪DXさんの進化? パワーアップ? それについて話し合ってんの、それで、『ガンメタル』っていう素材はどこで手に入れるのが基本なのかしら? それを聞きたかっただけよ」


『ほうほう、やはりガンメタルを私に献上することが最も効率の良い戦い方であると、そのことに気付きましたか。まぁ一段階だけでも成長していれば、今よりももっともっと凄い機能が無数に解放されますし、形態だって別のものになることが出来ます。あと攻撃力も高まりますし、それから各モードにおける攻撃の精度も格段に……それで、何の話でしたっけか? ガンメタル? あぁ、それならその辺のクリーチャーワームとか何とか、あとこの町で戦っているらしい大蟯虫クリーチャーなんかからもドロップしそうな気がしますね、ごく低確率だとは思いますが。それで、そんなことよりこの私の能力の高さをですね、この町の魔界人間やその他下等な皆様にも身近に感じて頂きたくて、先程のようなイベントを、今度はターゲットの選別などせず無差別に殺戮していくかたちで開催したりして……あの、話聞いてます? 聞いてませんよねその感じ? ねぇ?』


「あ、ちょっとやかましいから黙っておけ、話も無駄に長くて内容が一切ないし……しかしガンメタはクリーチャーワームとか、それこそ大蟯虫クリーチャーからでもごく稀に落ちる……って今までそんなことなかったじゃねぇかっ! ホントに出んのかそれっ? おい残雪DX! お前に聞いてんだっ!」


『ぷぷっ、内容がないようというネタがちょっとツボッてしまって、今はまともにお答え出来そうにありませんが、とにかくまぁ、そんな雑魚相手だと2,000年戦い抜いて1個、今そこで持っている量の半分ぐらいのがドロップするかどうかぐらいですね、ぷぷっ……』


「どういう笑いのツボをしているんでしょうかこの人……この武器は……しかしとにかくですよ、その確率では埒があきませんし、普通に却下案件だと思うんですが今回の進化? というのは」


「俺もそんな気がしてきたんだが……いやそれならだぞ、どうしてこの間はこのガンメタが簡単にドロップしたってんだ? 偶然にしちゃ出来すぎだぞちょっと」


「それもそうですね、いくら私達に都合良く回る世界であったとしても、そこまで上手くいくようなことは稀かと……あ、もしかしてその敵がそもそも『ガンメタ』だったから、とかじゃないでしょうか?」


「敵がガンメタ? あ、もしかするとそういうのと戦ったことがあるのかも知れないぐらいの感じにはなってきたぞ、知らんけどな」


「賢さがマイナスだとその程度の記憶力なんですね……」



 何だかミラにディスられているような気がしなくもないし、確実にディスられているのであろうが、とにかく最初にいきなりガンメタルを獲得したことについては、その仮説、つまり『敵がガンメタだったから説』というのが有力そうである。


 つまり、これからは敵を討伐しつつその中からガンメタのもの、或いは普通の色違い強クリーチャーに見せかけて、ガンメタルでコーティングされているような特殊な個体を見つけて優先的に始末するという感じであろうか。


 そのことを残雪DXに伝えてみると、何だかまたわけのわからない無駄話を交えつつ、というかほとんど無駄話に終始しつつ、それで良いのではなかろうかというニュアンスの返答を得た。


 ということで早速ではあるのだが、次の実験も考えつつ、そのガンメタが手に入りそうなレアキャラ雑魚の討伐、およびガンメタルのドロップを目指して作戦を開始する。


 などと思ったのだが、今日はもう疲れてしまっているため、作戦開始は明日としてここで休息を取ることとした……



 ※※※



「は~い、じゃあ今日はこちら、町の中で大蟯虫クリーチャーを捜し出して、それをリアル討伐する作戦をしま~すっ」


『うぇ~いっ』


「じゃあエリナちゃんを先頭にして、私達はバックアップってことで良いわね? 後ろから付いて行けば上等かしら?」


「まぁそんなところだろうよ、頑張るのはエリナであって、そのやかましくて鬱陶しい馬鹿武器を上手く制御出来るかどうか、ムカついて放り投げたりしないかどうかが作戦成功のカギだ」


「えっと、さすがに放り投げたりとかはしませんが……ちょっと、その、何というか『これ以上お話は伺わないモード』に突入することはあるかも知れません、もしかしたらですが……」


『……そんなことしたら許しませんし、即死攻撃モードで暴発を起こしますよ、きっと不死の存在であってもそこそこ痛いでしょうし、イヤなら大人しくしておくか、諦めて絆創膏を箱買いしておくことです』


「あ、絆創膏でどうにかなりそうな感じの負傷で済むんですね……」



 適当なことばかり言っている残雪DXと、それに付き合ってやっているエリナはともかくとして、今日は俺達も作戦の方に参加していくスタイルで、ついでに実験もしていく感じだ。


 エリナは自らの力を頼りに、そして俺達はカレンとマーサの鋭い聴覚を頼りに、町の中に潜んでいるはずの大蟯虫クリーチャー、および寄生されているものの完全には乗っ取られていない、ステルス大蟯虫クリーチャーにやられている奴を中心に捜索し、討伐していくこととなる。


 もちろん、既に昨日も『町に入って来た知らないおっさんがいきなり破裂した』だとか、『裏路地で死んだおっさんから何かがニョロニョロと這い出していた』など、ステルス大蟯虫クリーチャー、或いはまた別の新型である可能性が高い目撃情報が、俺達の居る仮設庁舎にも寄せられていたらしい。


 なお、そこで大蟯虫クリーチャー情報の受付をさせているのは、最初に使い始めたご当地闇堕ち勇者パーティーの生き残りの女2人だけではなく、助命してやったPOLICE的な組織の有能連中も加え、そこそこの大きさのコールセンター程度の規模にはなっている。


 で、そんな場所に寄せられている目撃情報は他にも様々であって、かなり信憑性の高いものから疑わしきものまで多種多様だ。


 もちろん近所の奴を陥れるためにウソの通報をするような、そんな魔女狩りに発展しかねないことをする奴も現れたようなのだが、それについては面白そうなので取り締まっていない。


 むしろその魔女狩り的な行為を助長するような態度を行政の方で取って、それでどうなるのかというリアル社会を用いた大規模実験をすることが出来そうであるためだ。


 だんだんと疑心暗鬼になっていき、さらに拷問されたりして、自分が助かるために無関係な他者の名前を……というような連鎖に陥った際、一般のモブ共は果たしてどういった行動に出るのか。


 そんな気掛かりで、かつそれによって『敗北者』となった奴が、苦しみ悶えながらこの世を恨み、その呪いと共に絶命する姿を、俺は指差して笑いながら眺めていたいのである。


 ……と、それはともかく、出発の準備が整った俺達は、先頭に立つエリナを見失わないよう注意しつつ、仮設庁舎を出て魔界人間の町へと繰り出す。


 いつも通りの町、いつも通り……ではなく大蟯虫クリーチャー検査システムの制度を変えたため、地区ごとにバラバラの検査日となっていることから、一定の方角からちょくちょく爆発音が聞こえてきているその町のどこかに、大蟯虫クリーチャー共が待ち構えているのだ……



「スンスン……やっぱり臭いだとわかりませんね、煙臭いだけです」


「皆ちゃんと料理に火を通しているからでしょうね、そういうお触れが出ていますから疫病をレジストする女神の名の下に」


「クソめが、今度から煙でカレンの鼻を利かなくさせた奴は死刑にしてしまおうぜ、つまり調理は禁止、漢だったら肉や魚ぐれぇ生で食えってんだよ全く」


「勇者様、それ最初に言っていたのとかなり矛盾していますよ」


「あと大蟯虫クリーチャーだらけになりそうよねこの町が……」



 タイミング悪く、というかこの比較的いい加減な時代感の世界においては、1日のうちのかなり長い時間において、家々が調理の煙を放っているのだ。


 そしてそれが風によって地上に流れ、滞留して町中を煙たくさせているのであるが、最初は『煙で燻されて寄生虫対策にちょうど良い』などと思っていたところ、実際にはそうでもなさそうな感じである。


 カレンもマーサも、これまでのように音だけではなく臭いで大蟯虫クリーチャーを捜し出そうと、その実験をしてみようとしていたのだが、これではどうにもそれが叶わない。


 仕方ないため従来通り耳で聞いて、明らかに通常の人間と異なる動きをしている者をピックアップ、適当に殺してみて当たりが出ればラッキーといったところ。


 もちろん2人の能力であれば、その疑った魔界人間のようなものが『ハズレ』であるという可能性は低く、もしそうであったとしても、おかしな音が出るほどの不審者であるということで、それは結局殺してしまって構わない者なのだ。


 そのような考え方で敵を、大蟯虫クリーチャーを捜していくと……カレンよりもマーサよりも先に、エリナが何かに気付いた様子で駆け出した。


 すぐに後を追う俺達、どうにか見失うことなく走って行ったのだが、エリナが走って行った先はかなり細い裏路地で……止まった場所では酔っ払いらしきおっさん共が、ドブの横に並んで一斉に嘔吐しているという凄まじい光景が……



「……発見しました、ちょっと凄くイヤな予感がして、それで走って来てみたらこの有様ですよ」


「何言ってんだエリナ? 確かに阿鼻叫喚の地獄だが、酔っ払いオヤジがドブで吐いているなど、そんなのはほのぼのとした日常の一幕でしかないだろうに」


「それが単なるゲロであれば、ですが……コレ、このおっさん方が撒き散らしているもの、全部大蟯虫クリーチャー汁ですよ」


「なんとっ⁉ この吐瀉物の中に大蟯虫クリーチャーがっ?」


「えぇ、本当に小さくて、まるでイトミミズのようなものですが、大量に紛れ込んでいますね」


『……チッ、バレちゃあしょうがねぇ、だがこれまでの間にも、こいつ等とはまた違う嘔吐マシンが俺達を大量に撒き散らしたんだぜ、ケッケッケ』


「何か喋ったんだが……ホントだ、ごく小さな大蟯虫クリーチャーらしき何かがドブに流れて……そのまま町の下水を伝ってどこかへ行っているのか……」


「えっと、ひとまずこのおっさんの方々を始末しておきますね、まだ意識があるらしくて、殺して欲しそうな顔でこちらを見ていますから」


「そうしてやってくれ、この戦いの犠牲者として、せめてちょっと見せしめとかにしたかったんだが……そんなことを言っている暇じゃなさそうだな、すぐに殺せ」


「待って……助け……てっ……オェェェッ! 助けてっ……オェェェッ!」


「……あの、やっぱり助けて欲しそうな目でこちらを……」


「気のせいだ、或いはそういう持ちネタなんだろうよ、とにかく殺ってしまえ」



 おっさん共はその場で殺処分され、そこそこの高温らしい炎のモードで焼かれ、苦しみ抜いてこの世を去った。


 また、そのおっさん共が吐き散らしていたドブについても直ちに消毒すべしということとなり、そちらについてはもう、残雪DXを使用するのではなく、ユリナの火魔法を直接ブチ込んで焼き払っておく。


 これでかなりの数の小さな大蟯虫クリーチャーを始末したはずだが……まぁ、これまでに奴等がばら撒いたそれの方がはるかに多いことであろうな。


 これは放っておくとまたあっという間に大蟯虫クリーチャーの攻勢が始まり、せっかく神の命まで弄んで獲得したクリーンな状態が、予想していたよりもはるかに短い期間で失われてしまう。


 このことに関しては更なる対策が必要で、きっとどこかから流入し続けているのであろう大蟯虫クリーチャーの、その大元を断ってどうにか……と、ここでまたエリナが走り出したではないか。


 無言で走り、今度は大通りに出てしまったのだが、その通りさえもガン無視して、むしろ町の外を目指している様子のエリナ。


 何か見つけたのはそちらなのか、もう聴覚だの嗅覚だの、そういった次元のものではない、別のセンスで敵を発見しているとしか思えない行動。


 これが神界クリーチャー召喚の力なのかと驚愕してしまうところだが、あまり露骨に驚いていると、カレンが『自分も召喚して欲しい』などと無茶を言い出すことは確実であって、今はまだ、ひたすらに走るエリナを追い掛けることしか出来ない……

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