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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1152 ゴミのような抽選

「……ってことなんだ、堕天使(最下級)とかいう空気から無限に抽出することが出来る雑魚キャラを潰して、それから『素材』を剥ぎ取って来たからよ、神界クリーチャーってのを早く出せ、あの缶詰野朗みたいな雑魚じゃなくて戦える奴な」


「そう言われましても、神界クリーチャーは召喚してみるまで何が出るかわかりませんし、もしレアなのが出てもそれが強いとは限りません、普通に低確率の詐欺ガチャみたいなものですから」


「なるほど、だが引きまくればそのうち強いのが出るんだろう? それがかなりの数揃うまで、魔界の方で堕天使(最下級)を処理してこっちに運んで……みたいなことを繰り返せば良いだろうよ」


「なかなかハードな作業になりますね、低確率だというのは例えばですよ、あなたが嫌っているあの缶詰の生物、あのぐらいになるともう0.0000001%程度の出現率で、まともに戦うことが可能なクリーチャーとなるともう出現したことがないんじゃないかと思えるほどに伝説の……」


「おうちょっと待て、それ低確率っていうか普通に詐欺……と言っていたもんな、ちなみに1回引くのにこの『素材』がどれぐらい必要なんだ?」


「この『素材』ですと……まぁ、100個で1回は抽選を受けられるんじゃないかと、そんな感じです」


「いい加減にしろやこの詐欺ガチャめがっ!」


「ひぃぃぃっ! 私に当たるのはやめなさいっ、いでっ」



 以前は簡単に受け取ることが出来た、というか『肉』をこことは別の世界の加工業者に手渡しただけで、普通に作って貰えた缶詰野朗。


 しかしそんなモノであっても、神界クリーチャーを召喚するためのガチャでは0.00……というような詐欺的抽選確率なのであった。


 しかもひとつにつき1回程度抽選を受けられるものだと期待していた今回の『肉』というか『素材』、最下級とはいえ魔界の堕天使のものなのだから、いくら何でも100個で1回はボッタクリが過ぎる。


 女神曰く『素材』の質が低すぎるのが原因だそうだが……堕天使」で質が低いというのであれば、一体どんな生物を『肉』にして持って来れば良いというのか。


 もちろんもっと上級の堕天使を、という考え方もあるのだが、正直なところそれでは数が揃わないであろうし、上級といってもそれこそ雑魚の、実質中級程度の奴以外には生きる価値があるかも知れないので、そう簡単に生贄のような扱いをするわけにはいかないのだ。


 だがもしそのような堕天使を集めるとしたらどうするか、罠を仕掛けて一網打尽にするのが早いのであろうが、そのやり方が問題である。


 餌を用意してそのまま放置し、集まって来たところを一気に捕まえるという方法が真っ先に浮かぶのだが、それはどうであろうか。


 子どもの頃にやった夜の森に色々と昆虫の好きそうなものを仕掛けて、それでおびき寄せて……というのと同じだが、実質カブトムシやクワガタなどに掃討する堕天使は殺すべきでないな。


 生贄とする、つまりその場で〆て素材化するのはその上位の者以外、目的でないのに集まってしまった雑多な虫けらのような連中であって、逆に今回はそちらが目的となるということだ。


 早速その提案を皆にしてみるのだが……反応の方はイマイチである、そもそも上位の堕天使を素材に下からといって、詐欺的抽選確率を突破することが可能となるわけではないのだからというのが皆の主張である。


 なるほど、そんなクソガチャをいくら効率良く引いたところで中身はたかが知れているな。

 大量に出るであろう『コモン』のキャラをいくら寄せ集めても、魔界のそこそこ強いクリーチャーには敵わないであろうし……



「う~む、どうするのが一番ベストなのかな……そもそもガチャ自体がゴミだからどうしようもないか……」


「そういえば女神様、その神界クリーチャーを召喚するためのガチャ、1種類しか存在しないのでしょうか? 他にもっとこう、課金ユーザー向けのものとかがあったりとか」


「そうですね、一応プレミアムガチャがあるにはありますが……今あなた方が持って来たこのゴミ素材では、いくら集めようともその抽選を受けることなど出来ません」


「ほう、ちなみにそっちの方はどういう確率なんだ?」


「プレミアムの方は凄いですよ、1回抽選を受けるだけでも『レア』以上のクリーチャーが確定で召喚されますし、11連をチョイスすれば『SR』以上のバケモノが必ず1体は召喚されますから」


「え? じゃあ最初からそっち目指した方が良くね? 何でもうひとつのノーマルがチャの方だけ提示してんだよこの馬鹿」


「いえ勇者よ、プレミアムがチャはあなたのような社会の底辺に沈む貧乏人が手を出すべきものではなくて……あ、すみません何でもありません、頑張って目指して下さい、11連の『SR』確定を……」


「うむよろしい、じゃあそれに使える素材なんだが……何を使えば良いんだ?」


「それは私にもわかりませんね、魔界に直接行ってその生物のランクを確認したわけではありませんから、少なくとも今ある『素材』はアウトということだけがわかります……とまぁ、適当に持って来て頂ければそこで判断することは容易ですが」



 とにかく『素材』を持って来いということらしいが、それにしても指定等がないと曖昧すぎて、どの程度の堕天使を〆て持って来れば良いのかわからないではないか。


 いや、もしかすると堕天使である必要はないのか? 魔界へいった際に見た、あの遠くで蠢いていた生物のような何かや、そもそも魔界に居る普通の生物、堕天使以外の人間的な存在など、種類は豊富であるはず。


 それらを適当に捕縛して、処理したうえで持ち帰ってみて、では実際どれが良いのか、どの生物を『素材』にするのが最も効率が良いのかを確かめるのだ。


 そして確認後、もう一度魔界へ行って当該生物の乱獲を始めるのがベストな行動であろう。

 知能のある生物なら騙して集めたり、そうでなければ少し面倒だが、地道に狩をしていくのである。


 まぁ、おそらくは前者、つまり比較的賢さの高い高等な生物を『素材』として用いた方が良いのであろうし、もしそのような知能を有する存在であっても、堕天使(最下級)のような簡易な生物というのはあまり価値がないと、そういうことであると考えておくべきか。


 で、早速そのような生物をいくつかブチ殺して『素材』にし、王都へ持ち帰るために転移ゲートがあるボッタクリバーへと移動しようとすると……女神が何かに気付いたような顔で俺達を呼び止める……



「あの、勇者よ、この研究所? ですか、ここにある『素材』であれば、おそらくノーマルガチャを1回引けるのではないかと思いますが……どうなさいますか?」


「どうするって言ってもな、どうせ雑魚しか出ないんだろうし……どうする精霊様?」


「まぁ、この『素材』は雑魚クリーチャー専用のガチャにしか使えないみたいだし、試しにひとつ引いてみるのもありかも知れないわね、良いわ、やってあげるから準備しなさい」


「わかりました、では勇者よ、料金は後で請求書を送っておきます」


「金取んのかよこんなもんに……俺は払わねぇぞ絶対に」



 料金は支払わない旨の宣言をしたうえで、どうせどこかから回収することが出来るであろうと考えている様子の女神に対し、早く神界クリーチャーを召喚してみるよう促していく。


 しばらく何やらブツブツと、薄気味悪い呪文のようなものを唱えていた女神であったが、いつも自信が登場するのと良く似た魔法陣のようなものが、『素材』を保管してある研究所の一室の床に浮かび上がった。


 その魔法陣から徐々にせり上がってきたのは……ナナフシのような人間のような、いやむしろカンフー映画で主人公が修行するときに使う木製のアレのような、そんな感じのモノである。


 これは明らかに弱い、生きて動いてはいるようだが、そもそも枝のように細く、カンフー映画の主人公の攻撃には、きっと一発も耐えることが出来ないであろうその脆弱さ。


 完全に召喚されて地上に出現し切ったそれは、特に何をするでもなくその辺をフラフラと行ったり来たり、どうやら知能の方も極めて低い雑魚キャラのようだな。


 最初、召喚する際には興味津々であった仲間達も、その弱そうなクリーチャーの出現にガックリ、既に興味を失った様子で他のことをし始めている……



「……で、何なのよコレ? ホントに神界クリーチャーなわけこんなのが?」


「ただの魔物のようにしか見えないし、缶詰野朗みたいに喋ることも出来なさそうだし、やっぱこの程度のモノしか召喚出来ないってことだな、さすがにノーマルガチャじゃ……」


「そうですね、残念ながらコレは最もポピュラーな雑魚キャラです、棒人間って奴であったかと……ちなみに手の部分の棒が長いですよね? それで叩いて攻撃することしか出来ません」


「せめてビームぐらい出せよな神界クリーチャーなら……まぁ良いや、ひとまずコレはサンプルとして持って帰ろう……っと、一応魔の者に対しては攻撃の効果がデカいようだな、マーサ、ちょっとこっち来てみろ、比較実験もしたいからマリエルもだ」


『はーいっ』



 マーサとマリエルが一緒に遊んでいたため、ひとまずこの棒人間のクリーチャーがどの程度の力を持っているのか、普通の対象と得意とする魔の者である対象で実験してみることとした。


 マーサとマリエルの2人をそれぞれ四つん這いにさせ、棒人間のクリーチャーに命じてその腕の部分の棒で尻を引っ叩かせてみる。


 マリエルは全くこの程度では何も感じないという顔、対するマーサは……少し痛そうに尻を擦っているな、もちろん目に見えるようなダメージが入ったわけではないようだが……



「いててっ、なかなかやるじゃないこの変なの、もう1回お願いします……あうっ」


「私の方へはそんなに強い攻撃がきませんね、となるとやはりその魔の者というのは……堕天使とか魔界の神とか、そういったものも含まれるのでしょうか?」


「そうですね、基本的にそういった者も対象となっているとは思われますが……あ、もちろんもっとレアな神界クリーチャーであれば、敵がそういった者であった場合の効果も抜群です」


「なるほど、ちなみに向こうが魔界のクリーチャーで、神界クリーチャーがその攻撃を受けた場合には?」


「……効果は抜群です」


「ダメじゃねぇかそんなもん……だがちょっと面白そうだから、この棒人間クリーチャーを使って色々と実験してみようか、『魔の者』ってだけなら事欠かないからな俺達の屋敷は」



 すぐに棒人間を抱えて屋敷へと戻り、実験のための準備を始めることとした。

 魔の者であれば何でも良いのであろうから、少なくとも『攻撃しても申し訳なくない者』を掻き集めることとしよう……



 ※※※



「おい魔王、お前ちょっと出ろ」


「何よ藪から棒に、また何かおかしなことをするわけ?」


「うるせぇ黙れ、ちなみに副魔王も連行するから準備しておけ」


『あ、は~い』


「アイツは素直でよろしいな、ほら魔王、サッサと来いっ」


「いでででっ、無理矢理引っ張るんじゃないわよっ、あっ、耳が取れるぅぅぅっ!」



 棒人間クリーチャーを運び込んだ2階の部屋へと強制連行したのは魔王に副魔王、それにその辺でサボって日光浴をしていたらしいエリナの3人。


 あとは魔界から連れ出した捕虜の1号と2号である堕天使さんと堕天使ちゃんをその場に正座させ、ついでにオブザーバー参加としていつもの魔界の神を呼び出しておいた。


 なお、もう1匹確認しているあの魔界の神、つまり石像の状態から復活させたハゲの方なのだが、あんなモノを屋敷に上げるわけにはいかないため、奴に関しては魔界に放置したままである。


 まぁ、放っておいても特に問題が生じることはないであろうし、もし俺達の不在を良いことに調子に乗ったとしても、次に魔界へ行ったときに滅ぼしてしまえば良いものだ。


 ということで棒人間クリーチャーの実験を始めるのだが……まずは油断し切っている、まさか自分が何かをされるとは思っていない様子の魔界の神から試していこう。


 他人様の屋敷で茶を啜ってみかんなど喰らいやがって、しかも足を伸ばしてボーっと座っているエリナのパンツを見てやろうと必死になっているのがバレバレだ。


 そんなクズを成敗すべく、俺は棒人間クリーチャーに命令を出し、その座ったまま倒れ込むようにして床付近に目線をやっているところの後頭部へ、魔の者に対して効果を有するその棒切れで一撃入れてやるよう促した……



「いけっ、棒人間クリーチャー! 魔の者を討伐せよっ!」


「はっ? いでぇぇぇっ! 何をしやがるのだこの……何だコレ実は動くのかっ?」


「当たり前だ馬鹿が、てか壊すんじゃねぇぞ、今それひとつしかないんだからな」


「ぐぬぬぬっ、どうして魔の者に対抗する力を持つこの……いやマジで何だコレ?」


「神界クリーチャーだ、というかやっぱり魔界の神にも効果を有しているようだな……で、もうそれがわかったからな、お前この先一切必要ないし帰って良いぞ、てか帰れボケ」


「・・・・・・・・・・」



 魔界の神を帰らせると同時に、それ以外の『魔の者』およびそれに類似する者に対しても実験を執り行うこととした。


 もっとも、マーサの件で魔族に対しては『効果抜群』であることがわかっているのだが、いつもダラダラと無駄な時間を過ごしているどこかの不死の悪魔を折檻するため、知らなかったこととして実験の対象に加える。


 で、魔界の神にでもダメージが入るということは、おそらく確定で喰らうのであろう堕天使という存在……の2人は運命を悟り、部屋の隅で小さくまとまっているではないか。


 ひとまずそこから引き摺って棒人間クリーチャーの前で取り押さえ、大人しくしない場合には小一時間コレに暴行を加えさせるという脅しをもって精神的に制圧する……



「おらっ、わかったら正座しやがれ、あっちを向くんだ、お前等には罰として100叩きの刑を与えないとだからな、それをこの棒人間クリーチャーを用いて執行する」


「ひぃぃぃっ! やめて下さいそんなことっ、絶対痛いですから、普通に1回ぶたれただけで相当に痛いですからっ!」

「そうよっ、さすがにそこまでされるようなことはして……ひぎぃぃぃっ! せ、背中が雷で撃たれたみたいな……」


「ほう、やっぱり効果絶大だな、おいエリナ逃げんな、副魔王みたいに大人しく正座しておけ、魔王もだぞ」


『イヤァァァッ!』



 往生際の悪いエリナと魔王に対しては、尻を丸出しにしたうえでビシバシと攻撃を加えさせてみる……うむ、エリナは当然として、俺と同じ異世界人であっても魔界由来である魔王、それに対しても効果は抜群のようだ。


 だがこの実験体の中で1人だけまるで戦闘力を有して居ない魔王は、こんな雑魚の棒人間クリーチャーの攻撃によってであっても、普通に痛そうな傷を負ってしまっている。


 そろそろかわいそうだという意見も出てきたため、魔王のみならず他の連中も許してやることとして、一旦ルビアの回復魔法を部屋全体にバラ撒いておく。


 この棒人間クリーチャーは戦闘では使えそうもないし、この屋敷の地下などを巡回させておくこととしよう。

 そうすれば未だしっかりした罰を受けていない魔王と副魔王が、元部下の協力を得て脱出する、などということを未然に防ぐための助けとなるはずだ……



「とまぁこんな感じでクリーチャーを召喚して使うんだな俺達は、だからその『素材』になりそうな生物を……捕虜第1号の堕天使さん、何か適切なのが居ないかあのエリアに?」


「そう言われましても……毒剣の神が導入しておられた変な生き物とか、あとは魔界の堕天使でない住人とか……それと、あのエリアは大平原なんですが、ちょっとした森もあって、そこにはかなり強力なモンスターが存在しているはずですよ、行ったことなどありませんが」


「強力なモンスターが? ちょっ、その森の場所を教えろ」


「そのためにはマップが欲しいんですが、まぁ、エリアの北の端ですので最悪そちらに向かってまっすぐ、あの砦から進んで行けば何とかなるかと」


「で、その森を反対側へ抜けるとどうなるんだ?」


「それはもちろん他のエリアに、まだそこ専属の神が統治している場所へ移動することが出来ますよ、見つかったら即戦闘になると思いますがね」


「なるほど……まだあのエリアで陣を固めたいところだが、場合によってはちょっとだけ侵入してみるのもアリかもな……」


「どうかしらね? 一応危険には危険だし、その移動した先のエリアの神がどのぐらい強い奴なのかにもよりそうね、三倍体以上だったらちょっと大変と言えば大変よ」


「うむ、先に調査してからだな、その森とやらの向こう側へ行くのは」



 色々と濃い情報であるが、とにかくあのエリアから出て先へ進むことについて情報が出たのは初めてであるような気がしなくもない。


 そしてエリア内のことに関しても、やはり存在しているらしい堕天使以外の住人やその他の生物、それについても初確認であったな。


 当然のことながら最終的には目で見て、肌で感じてエリア外の空気を、そしてそこを支配している神の力を感じることになるのだが、今はまだ早い。


 ひとまず目的としているレアな神界クリーチャーの軍団、というか小規模な集団でも良いから、とにかくまともに魔界の戦力と渡り合えて、勝手に防衛をしてくれるような連中を用意しなくてはならないのである。


 それさえ、その防衛システムさえ構築してしまえば、俺達は安心してエリアの外に、拠点でありこちらの世界への接続口でもある砦を任せて侵攻することが出来るのだから。


 そのためにはまず、今ある堕天使(最下級)のようなくだらないゴミ素材で引くことが出来るノーマルガチャではなく、もっと高級で課金者向けのガチャを11連出来るだけの『素材』を集めて来なくてはならない……

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