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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1151 転移先確保

「おいっ、とっとと歩けやゴミクズ共がっ! せっかく頂いた命なんだから俺様のために有効活用しやがれボケェェェッ!」


「なななっ、何でこんな奴に命令されなくてはならないのだっ? 俺は最下級とはいえ堕天使で、こんなどこの世界から来たのかもわからないチンパンジー野朗に命令される筋合いは……」

「よせっ、上級の堕天使様があの有様なんだ、しかも隣でハゲ散らかしているお方、明らかに神だぞ、俺達が逆らうべき相手じゃない」


「ゴチャゴチャ言ってねぇでとっとと地下に移動しやがれってんだこのクソボケ! さもねぇとこの場でブチ殺すぞオラァァァッ!」


『ひっ、ひぃぃぃっ!』


「全く、こんな連中との会話でエネルギーを消費しなくちゃならんとはな、本当に魔界ってのはクズばっかりで良い所じゃないぜ、俺様が改革してやらないとだな」


「精霊様、勇者様がまた調子に乗っていますよ、メチャクチャをし出す前に止めた方が無難じゃ……あ、面白そうだからこのままにしておくんですね、わかりました」



 雑魚の馬鹿神が砦の地下の一室に設置した俺達の世界へ繋がる転移ゲート、王都に繋いだのは間違いないと思うのだが、その詳細な場所がわからないため、まずは無限に創り出せる堕天使(最下級)を用いて実験をしてみることとなった。


 何やら文句を言いたげな感じでありつつも、敵わないということを悟ってか指示に従う堕天使(最下級)共。

 もしここで生き残ったとしても、その場合には俺達が神界クリーチャーを召喚するための『素材』にすれば良いものだ。


 そう考えるとこの馬鹿な神や、いつもの雑魚神よりは役立つ存在なのかも知れないなこのゴミ共は。

 だがまぁ、それを褒めてやる必要などなく、ひたすらに扱き使って消費してしまうのがこいつ等の扱いとして正当なのであろう。


 と、そんなことを考えている間に地下室に到着した俺達は、明らかにおかしな雰囲気を醸し出している転移ゲートを指差し、ここを通って、その先で生きていることが出来たのであればすぐに帰還して、その向こう側に関する情報を提供せよと命じる。


 もちろんではあるが、人質として堕天使ちゃんを縛り上げた状態で見せ付けているため、その堕天使として下に位置するこの連中が命令違反をして、向こう側である王都で暴れることなど出来はしない。



「オラァァァッ! サッサと行けやこのクソボケ共がぁぁぁっ!」


「ぐぇぇぇっ!」

「ぎゃぁぁぁっ!」


「チッ、モタモタしやがってからにウジ虫が、さて、どんな感じで帰って来るかな、ズタズタで会話不能とかじゃないと良いんだが」


「じゃ、このまましばらく待てば結果がわかるのね……と、もう戻って来るわよ……しかも臭いわねちょっと」


「ホントだ、便所みたいな臭いがしてんな、もしかして行き先は……おいっ! どうだったんだこの先はっ?」


「便所! リアル便所でしたっ!」

「何か変な酒臭いおっさんがウ○コしていて、しかも金の便器で……『おぉ勇者よ……あれ? 何か違うなコレ』とか言ってたっす!」


「堕王の便所じゃねぇかぁぁぁっ! おいこの馬鹿! なんて所に接続してんだっ? 王都は王都でもその中でもっとも不潔で汚らしい場所だぞっ!」


「あ、え……でもほら、金の便器がどうのこうのということは、それなりに身分の高い者が使用する便所であって……」


「残念ながら高いのは身分だけなんだ、人間、というか人族としての格は最低どころか失格するレベルのゴミが使っている便所なんだ……もう一度別の場所に接続し直せ」


「そんなっ、苦労してやったのに……や、やります、やらせて頂きます、はい」


「よろしい、じゃあサッサとしろ、死にたくなかったらな」



 指の骨をゴキゴキやって『アピール』してやると、馬鹿神は再び転移ゲートの接続作業に取り掛かった。

 駄王の奴は後で殺そう、いくら直視しなくて済んだとはいえ、あの臭さは堕王のウ○コを嗅いでしまったことによるものだからだ。


 で、馬鹿神の方の作業は、新たに転移ゲートを作成するわけではなく、単に場所をチェンジするだけ、しかも王都内という比較的近い場所であるため、そう時間は要さないらしい。


 それゆえ俺もセラも後ろで監視しながら待つこととして、ついでに今実験に使った、そしてとんでもないモノを目の当たりにしてしまい、精神的ダメージを受けた堕天使(最下級)も、一旦潰さずにそのまま使用を継続することとした。


 何やら気持ちの悪い呪文をブツブツと唱え続ける馬鹿神、しばらくするとゲートの向こうから溢れ出していた禍々しい、正か負かで言えば明らかに負の方のオーラが徐々に消失していく。


 そのまま駄王の方も消失して、或いはどこか別次元へでも飛ばされて居なくなってくれたらどれほど良いか、などと期待してもどうせ無駄であるし、万が一消失したとしてもしぶとく復活するのであろうなということを考えつつ、馬鹿神による作業の完了を待つ。


 そしておよそ5分後、『完成だっ!』という気合の入ったひと言と共に、どうやら転移ゲートの再接続が完了したらしい……



「おいこの馬鹿、今度は大丈夫なんだろうな? また地獄みたいな所に繋がっていたら承知しねぇぞコラ」


「そんなことを言われても困る、我にとって下等生物が暮らしている貴様等の世界などどこも地獄同然、どの場所に繋いだら良いのかなど推し量ること能わず、ただただ再接続を試みたのみである」


「うっせぇハゲ、調子乗ってんじゃねぇよ、で、堕天使(最下級)共、早くもう一度ゲートの向こうへ行け、さっきと同じようにな、さもないと……堕天使ちゃんを天井から吊るして棒で打ち据えるぞ」


「ほらっ、そういうことだからサッサと行きなさいっ! あんた達が失敗したら私が痛い目に遭うんだからっ! 失敗したら承知しないよっ!」


「御意ぃぃぃっ! 大堕天使様の仰せのままにーっ!」

「へへーっ! 畏まりましたーっ!」


「やかましいから早く行きなさいよね……」



 ゴチャゴチャとうるさい堕天使(最下級)共をもう一度蹴飛ばし、転移ゲートの向こうへと放り出す。

 5秒、10秒待っても変化はなく、そろそろおかしいなと感じ始めたおよそ30秒後、ようやく向こう側から何かが……いくつも放り出されて来たではないか、しかもメッセージ付だ。


 で、もちろんそのいくつかの何かは元々堕天使(最下級)であった何かであって、辛うじて判別出来るのは頭であった部分や、手足であった細長い部分などである。


 大半が焼け焦げ、ふたつある頭部であろうパーツに釘で打ち込まれたメッセージの紙切れだけが白く目立っているような状態。


 雑魚とはいえそこそこの力を有しており、人族などでは到底敵わない、というか数万人の軍勢で襲撃したとしても、一瞬で消し炭にされるぐらいの力の差はあったはずなのに……一体誰がこのようなことを、しかもたった30秒程度でやってのけたというのか……



「しょうがねぇな、こんなにアッサリ死にやがって、えっと、メッセージの主は……誰だ?」


「わからないわね、でも何か知らないけど達筆な字で書いてあるわ、ちょっと読んでみてよ勇者様」


「そうだな、えっと……『この度はご来店ありがとうございます、鉄貨1枚も持たずにご入店されるとは良い度胸ですね。当店は常にボッタクリを志しており、金のある客からは全てを吸い尽くし、なくなったところでポイと捨てるのを通常の業務としております。よって、お客様方のような初めから何も有していないゴミ共に対して、何かサービスを提供することはございません。ですがご来店頂いた以上、何かしてあげられることがないかと検討した結果、ブチ殺して差し上げることに決定致しましたので、そのまま死んで頂きました。なお、ご遺族の方々には、無駄に強かったこのゴミ共との戦いにおいて負傷した店員7名(重傷2名・軽傷5名)分の治療費として、金貨2万枚を請求する次第です。サキュバスボッタクリバー店員一同』だって……ってアンジュのとこのやつじゃねぇかぁぁぁっ!」


「ご丁寧に角印まで打ってあるわね、金貨2万枚なんて払えないわよ普通に……」


「まぁ、さすがに払う必要がないんじゃねぇか? そしてアレだ、この間もアイツの店は亜空間とかと接続されたりしていたからな、きっと何かあるんだろうが……っと、向こうから『請求部隊』が来る勢いだぞコレ……」



 メッセージの主がわかったと同時に、その中の誰かが転移ゲートを通過して、こちら側へやって来るらしいということが感覚でわかった。


 元魔王軍四天王のサキュバス、アンジュが経営していて、堂々とボッタクリを標榜している夜の店であって、その被害者は悪徳商人や悪徳貴族など数多。


 普段から休日の朝方には全てを吸い尽くされ、真っ白になった死体が店の前に転がっているような危険な場所なのだが……当たり前のように転移ゲートを通過しようとするとは、あそこの従業員はどれほどまでの度胸を有しているというのだ。


 というかそもそも、いくら魔王軍四天王が付いているとはいえ、通常であれば束になっても堕天使(最下級)との戦いに勝利することなど出来ないはず。


 地の利を生かしたにしてもさすがに複数体を、たった7名の負傷者で討伐し尽くすというのはさすがに……まぁ、やって来た誰かに話を聞けば詳細がわかることであろう。


 まずは手を出してみて、こちらの安全を確かめてみてから今度は足を、ピンク色の、悪魔のものに近い尻尾を出してみてさらに様子を窺うサキュバスの誰か。


 その尻尾をガッと掴んでやりたかったのだが、驚いて攻撃してきたり、ビックリして引っ込めようとして大怪我を……などということになれば厄介だ。


 おそらく訴訟に発展し、金貨2万枚どころの賠償額ではなくなってしまうことであろう程度には、サキュバスにとって大事な部分である尻尾をどうこうするわけにはいかないため、そのまま様子を窺うかたちで待機したのであった……



「……んっ、よいしょっ……あっ、どうしてこんな場所にその、異世界勇者パーティーが居るんでしょうか? アンジュ様ーっ! 勇者居ますよ勇者! ちょっと来て下さいっ!」


「……あっ、ホントね勇者さんね、どうしてこんな所に……てかさっきのとんでもなく強い雑魚、というか堕天使のようだったけど、もしかして勇者さんが送ったとか?」


「その通りだ、王都のどこにこの転移ゲートが続いているのか確かめたくてな、あ、殺してしまったのは別に構わないぞ、どうせ捨て駒だったからな」


「そうなんだ、じゃあ早く慰謝料、金貨2万枚ね」


「それは国にでも請求書を送っておいてくれ……あとほら、コイツでも良いぞ、魔界の神なんだよこの変なハゲ、今復活したばかりだし、魔界の存在だからそっちの世界の金とかは持っていないだろうがな」


「我に何をせよというのだ? この者、下界の魔族ではないか単なる、貴様のような下等生物が魔界に来て良い道理などない、立ち去れいっ!」


「え? 何このハゲ? きも~い」


「貴様! 我は神だと言っておろうがっ! 魔族の分際で魔界の神をリスペクトしないとは何事かっ?」


「いやだってあんたお金ないでしょ?」


「そんな低俗なものは持ち合わせておらぬが……」


「きも~い、ハゲでお金ないとかマジできも~い、死んでよ」


「・・・・・・・・・・」



 ハゲで金がない、しかもこの場に居る面子の中では、いくら神とはいえ雑魚なので俺とセラに戦闘力で敵わないという状況の馬鹿。


 急に現れ、事情を知らないサキュバスに対して調子に乗ろうと試みたのだが、すぐにその正体を見透かされてあえなく撃沈、、普通にディスられるに至った。


 で、そんな金のないハゲはどうでも良いとして、そして怪我をしてしまったサキュバスについては後でルビアの回復魔法をたっぷりくれてやるうえに、税金を用いて店への不正な利益誘導をしてやることなどを約して和解し、ついでに転移ゲートの使用に関する交渉をしていく。


 今回のゲートも、前の架空間騒ぎと同様に店のひと部屋を占有してしまっているrしく、そこが使えなくなってしまうというデメリットは補償しなくてはならないものだ。


 だがその保障についても、先程の怪我をしてしまったサキュバス従業員に対する賠償の中に含まれるのではないかというこちらの主張は……それとこれとは別だということで跳ね除けられてしまったではないか。


 ならばさらなる利益誘導を……とも思ったのだが、ずっとその場所を使い続けるとなればそれなりの賃料が発生するわけであって、そんなおおっぴらにやってはならないようなことをずっと継続するわけにもいかない。


 となると一発で、かなりの利益をこのサキュバスの違法すぎる店に供与してやるべきだということになるのだが……何かの権利をくれてやるのはどうであろうか……



「なぁアンジュ、それならさ、お前の店をアレだ、この後俺達の活躍で魔界を観光することが出来るようになった際のプラットフォームにしてやろう、必ずそこからしか転移出来ないようにして、その通過に掛かる料金だとか、あとは営業している店を通過する際の客引きとかもさ、条例に違反していても目を瞑らせるぞ」


「う~ん、でもまだその観光で魔界に、みたいなのは先の話なんでしょ? だったらダメよ、今すぐに儲かる何かを見つけて提供して貰わないと」


「そうだな……わかった、これから『国の権限』でこのゲートを物資だの兵士だのが頻繁に通過することになる、その際に勝手に課税して構わんぞ、それでどうだ?」


「そういうことなら良いわよ、黙っていても儲かるわけだし、あと給料を使う場所がない兵士から存分に搾り取れそうだし」


「おうっ、ただ兵士を全部骨抜きにしたりとかはやめてくれよ、生かさず殺さず、むしろ兵士としてもっと活躍しないと生きていけない程度に搾取するんだ、そうすれば国にもメリットがあるからな、知らんけど」


「たぶんないと思うわよ……で、それじゃあ早速このゲートを使うのね、使用料が金貨1枚で、運ぶ物資は1kgにつき銀貨1枚ね」


「高っけぇなオイ、ま、請求書は王宮にでも送付しておいてくれ、あとそれでババァとかがキレたら殴っておいてくれ」


「はいはーいっ、それじゃあねーっ」



 儲かることが、しかも絶大な不労所得を獲得することが確定し、上機嫌のままゲートの向こうへと消えて行ったアンジュ。


 しばらくはあの店に厄介になることになるであろうが、そこで掛かる費用は俺達の負担になるわけではないためどうでも良い。


 むしろこの場で、セラが見て居る場でこれまであの店で溜めてきたツケについて減給されなくて良かったと思うし、もしこちらがあまり良い条件を出さずに渋っていたら、アンジュはそのことをカードとして切ってきたことであろう。


 で、交渉も成立し、ゲートも使用可能になったことを仲間に伝えるために2階へと戻り、遅かったではないかと口々に言っているところに事情を説明してやる。


 なるほど納得したという顔をするキャラと、そうではなく、イマイチ意味を理解していないキャラ、そしてミラだけはその絶大なる金の匂いに反応し、どうにかしてサキュバスに転生し、あの店の社員になることは出来ないものかと模索している様子。


 そのミラにはセラからくだらないことを考えていないで仕事をすべき旨の忠告が入り、さすがにいつもサボってばかりのセラにそのようなことを言われて目が覚めると同時に頭にきたらしいのも確認した。


 ミラがセラの尻を思い切り抓っているのを眺めつつ、外に積み上げてあった『素材』につき、堕天使ちゃんに命じて転移ゲートまで運ばせようとしたのだが……さすがにキモいので触りたくないらしい……



「う~む、そういうことであればしょうがないな……どうする?」


「主殿、この場合にはまたあの装置を使って堕天使(最下級)を生み出せば良いのだ」


「それでどうするってんだよ?」


「その堕天使(最下級)に『素材』を運ばせて、もちろん向こうへの転移作業もさせる、そこまでは良いな?」


「うむ、で、その作業させた堕天使(最下級)はどうするんだ?」


「それをその場で肉……というか『素材』にしてだな、あの掘っ立て小屋の中に積み上げておくのだ、で、次の機会にはまた堕天使(最下級)を出してそれに作業させてまた『素材』に……」


「なるほど、それを繰り返していけばずっと作業員が居て、ついでに『素材』の方も手に入ると……聞いたか堕天使ちゃん? すぐに実行してくれ」


「わ、わかった、そういう感じでやる」


「ダッシュでやれよ、遅くなったらお尻ペンペンだかんな」


「はっ、はいぃぃぃっ!」



 堕天使ちゃんにはそのまま全ての作業をさせ、もちろん危険、というか知らぬ間にこの砦を奪還されているなどということがないよう、監視の下全ての堕天使(最下級)を処分させる。


 こうして出来た新しい『素材』はそこにストックし、その『素材』がかつて天使であった頃に運んだ『素材』はゲートの向こうへ……と、なかなかシステマチックな感じだな。


 で、堕天使ちゃんは捕虜2号として捕縛したものであるから、そのまま縛り上げて俺達の世界へと連れ帰る。

 まぁ、その分の輸送コストが生じてしまうのだが、まだ反乱したり、逃げ出したりという可能性が否定出来ないため仕方のないことだ。


 サキュバスボッタクリバーへと帰還した俺達は、そこで兵士を呼び、『素材』となった堕天使(最下級)を屋敷へ……いや、こんな汚いモノは運び込みたくないな。


 ひとまず研究所へ運ぶよう指示して、自分達は普通に帰還することとしよう、そして女神に依頼して、『素材』を『神界クリーチャー』へと変化させるための手続を取るのだ。


 そうすればこちらの戦力は一気に増大、俺達が直接動くことなく、クリーチャーで敵のクリーチャー及び堕天使を始末して、魔界の他のエリアを蹂躙してしまうことが出来るのだから、もちろん神とは直接戦わなくてはならないであろうが……

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