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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1084 敵情報

「……あのな、もっとわかり易いよう、今度は言葉で説明してやるがな、このちょっとドクロっぽい顔の神、これは確かに魔界の神の1柱だ、それだけは間違いない」


「あっそう、で、それがどうしたってんだ? もうここまできたらそいつを相手に一発ブチかますしかねぇだろうよ」


「わかっていないようだな、ところでだ、この邪神像、どうしてこんなにハイウエイトなのかわかるか? わからんよなその知能では」


「え? 何か凄い未知の物質とかじゃねぇのか? 魔界にある、というか魔界にしかないような金属で……」


「うむ、なかなかの素材ではあるが、この中は空洞になっている、そしてその空洞部分には、この世界の生物から搔き集めた夢と希望と信仰心が詰まっているんだ、凄まじく圧縮された状態でな」


「マジかハッピーじゃんそれ、ちょっと開けて俺達でその夢だの何だのを頂いてしまおうぜ、しばらくハイになれるかも知れないぞ」


「馬鹿を言うなっ! そんな開けるなんてことしたらとんでもねぇことになんだぞっ! 爆発だよ爆発、エネルギーだからなそれ、いきなり叩き割ったらこの世界の消滅どころか魔界まで影響を受ける規模の大災害が起こるぞ」


「また消滅の危機に瀕してんのかこの世界は……いつものことだからもう慣れたがな……」



 邪悪な像があり得ないほど重い理由について語る魔界の神、もちろん本体だけでなく、下の台座の部分にも凝縮したそういう系のエネルギーが充填されているようだ。


 なお、それらを集めて何に使うのかということについては言及がなかったのだが、どうせ魔界のことだ、またろくでもないことをしでかすつもりなのであろう。


 ちなみに俺達はこの像を押し倒して地面に落下させてしまったのだが、どうやらそのような状況になることを想定した作りのものではなかったらしく、実に危険な状態であったらしい。


 きっと像の提供者は、間に挟んだ指令書ぐらい普通に抜き取ることが出来るであろうと、この世界の脆弱な生物である人族のパワーを見誤っていたようだな。


 もちろん、その何者かは指令書が遂に取り出され、それに伴って出現したギガンティック無職の動作開始と、続いて撃破されてしまったことに気付いているはず。


 もしかしたら様子を見にここへ来たり、人族最大の都市である王都の様子を確認したりするかも知れないな。

 だとしたらここに留まるのは危険だ、すぐに像を元の位置に戻し、俺達が何かをやらかしたことにつき気付かれないようにしなくてはならないであろう……



「ちょっとアレだ、コレ重いからさ、お前頑張ってその台座に戻しておいてくれよ、詳しい話はここを離れて、安全が確保出来た後に聞くから」


「そうね、今は隠蔽工作が大切よ、さもあの雑魚キャラ達がちゃんと指令書を受け取って読んで、そのうえでギガンティック無職を使った作戦に失敗したかのような感じにしておくの」


「いや神使いが荒いなっ、こんな重量物をまたこの我が持たなくてはならないとは、ふぬぬぬぬぬっ、フンッ!」


「おぉ~っ、凄いパワーですっ、私にもやり方を教えて下さいっ」


「やり方などあるかこんなことに、純粋にパワーなのだ、そんなことよりも早くバックれんぞ、こんなところを他の魔界の神に見られたらタダじゃすまねぇからな」


『うぇ~いっ』



 ということで屋敷へと戻った俺達、今のところほとんど情報は得られていないが、とにかくあの像の危険性も含めて、なかなかにヤバい事態であるということだけは理解しているつもりだ。


 かなりの強者、もちろん俺達など足元にも及ばないような戦闘力の持ち主であって、しかも悪い考えを持っていて、さらには権力も有している神がこの事件の背景に見え隠れ、どころかモロに関わっている。


 それがいったいどのような存在で、どんな名称なのかはこれから聞き出すとして、その内容に応じてこちらがどう動くべきなのかを判断していくこととしよう。


 屋敷に到着した俺達は、まっすぐに2階の大部屋に向かってそこで作戦会議を始める。

 そこで未だにイヤそうな顔をしている魔界の神に対し、あの像のモチーフとなった神について詳しく語るよう促した。


 重い口を開こうとする魔界の神、一瞬ためらいはしたのだが、言わないよりは言っておいた方がまだマシだと判断したのであろう、再び口を動かし、俺達に語り掛けたのである……



「良いか? あの像の元となった神は魔界の№……5位ぐらいか、とにかく強力で残忍で、自分以外の神などウ○コぐらいにしか思っていないような変なガイコツだ、性格も非常に悪い」


「まぁそうだろう、魔界の神だしそんな奴だろうとは思うよ、お前もだがな……で、何ていう名前なんだ?」


「破壊の神と混沌の神と闇の邪神を兼任していると言われる、名称はホネスケルトン2世だな」


「名前ショボッ! どう考えても雑魚でしょそんなのっ! 今から倒しに行きましょ、きっとワンパンで撃破出来るわよそのおかしな名前の神はっ」


「いや、名称はもう適当らしい、全てを創造した神が面倒臭かっただけだと言い伝えられている……だがその実力は折り紙付きだぞ、なんと闇の接骨院も経営しているらしい」


「ガイコツが接骨院なんかやってんじゃねぇよ……」



 どうしてこんなにわけのわからない敵ばかりが登場するのかということに関しては、もう考えても仕方がないことなのでスルーしてしまうべきであろう。


 しかしそんな弱そうな感じのガイコツ野郎が、どうしてそんなに強く恐ろしいのかという点については良く考えておきたい。


 まぁ、ふざけた感じの奴の方が実は強いということもあるし、俺のように普段は心優しく慈愛に満ち溢れたナイスな人間が、実は最強の勇者様であるというような例もあるから、きっとその類だと思っておくこととしよう。


 とにかく見た目は単なるガイコツで、しかし邪悪な闇の神であるという、しかも魔界の№いくつかに位置するというかなりの強者が、どういうわけかこの世界の魔界への併合を狙っているということだけは確かなようだ。


 そのガイコツと直接渡り合うのはかなり先になるであろうし、可能であれば向こうがこちらの存在、というかこちらが動いているという事実を察知するまでにもかなり時間が経過して欲しいところだが、どうであろうか。


 少なくとも今頃、ガイコツはギガンティック無職が討滅されたことを知り、その現状についての確認をしている頃であろうし、少し緊張感を持って行動し、少しでも目立たないように振舞わなくてはならない。


 もちろんこちらの、この世界の最高最大の戦力である俺達の動きは確認してくるであろうし、どうにかして『その意図に気付いていることを気付かれない』という難易度の高いミッションをクリアしたいところだ……



「それで神様、そのガイコツの神様には弱点とかありませんの?」


「弱点か……もちろん戦闘中における弱点のことだよな? めっちゃ痩せているとかそういう内容ではなくて」


「痩せてるってかホネなんじゃないの、もっと野菜を食べないとお肉が付かないわよ……っと、そうじゃないのね……」


「うむ、確かにそこのウサギ魔族が言うように、あの神にとって痩せているとかぶっちゃけホネであるとか、そういうことはあまり戦闘力に関係しないし、戦闘上の弱点とは言い難いな」


「じゃあ他には? 戦っていて、喰らうとダメージが大きい属性とかないのかしら?」


「確か……そうだな、ホネスケルトン神は聖、というか光系の攻撃に弱いと聞いたことがある、直接光に触れるとヤバいので、めっちゃ金持ちなのに家ではレーザープリンターではなく安物のインクジェットプリンターを使っているとか」


「めっちゃ庶民派だな、てか魔界のレーザープリンター、どこにレーザー照射してんだよ」


「我もインクジェット派なので知らないが、とにかく徹底的に強い光を避ける傾向があるらしいということだけは聞いている……今わかるのはそのぐらいか……」


「ろくな情報がねぇな、やっぱ使えねぇよお前」


「貴様のようなチンパンジー野郎に言われたくはない、文句を言っている暇があるのなら、少なくとも我を越える程度には力を身に着けろ、まぁ、賢さの方はどれだけ頑張っても無理だろうがな、フハハハッ!」



 たいした弱点情報も持ち合わせていない分際で偉そうにする魔界の神、もし俺達が自分を大幅に超えるような力を手に入れたら、それこそ真っ先に殺られるのが誰なのかということを理解していない馬鹿だ。


 しかし唯一の情報であるとはいえ、そのホネの神が光を避ける傾向にあるというのはなかなかのヒントになり得るかも知れないな。


 光といえば聖なる力、もちろんこの世界にもそういう属性の魔法を使う者が僅かに居るわけだし、俺達もガキではあるが1人知っている。


 そして何よりも、神界の力を借りることが出来れば、そのような術式の使い手など、それこそ星の数ほど派遣して貰えるはずだ。


 となると女神の奴に頼んで……いや、奴は自分の責任から逃れるために、神界上層部にはナイショでこの件を片付けようとしているのであったな。


 ならばもう、奴を呼び出して奴の力でどうにかさせる以外に選択肢はなさそうだ。

 あんな馬鹿でも神界の神である以上、少なからずそういう系の技を持っているはずだから。


 ということで使えない魔界の神にはここでお引き取り願い、次は神界の神、女神の奴の方を呼び出して作戦会議に加えることとした……



 ※※※



「……ということなんだ、わかったな? とにかくお前は光の攻撃でそのホネ野郎を撃破すれば良い、簡単すぎて屁も出ないお仕事だろう?」


「無理ですよっ、ホネスケルトンといえば見た目に反して相当な使い手であると噂される魔界の要注意神ですから、私の力ではもうどうにもなりません」


「じゃあ、いきなり背後から抱き着いて自爆しろ、そうすればちょっとは死ぬだろ、お前も死ぬがな」


「その程度、私の全エネルギーを暴走させた程度だと、おそらく骨折さえしないと思いますよあの邪悪な神は」


「いや骨折させたらほぼ勝ち確だろ、ホネしかないんだからな」


「そんなの秒で再生してくるんじゃ……とにかくそんなの無理ですっ、イヤですよそもそも自爆なんてっ」


「ピーピーやかましい奴だな、お前が喚くのを聞くぐらいなら豚の鳴き声でも聞いていた方がマシだ、ケツをブッ叩かれたくなかったら何か妙案を出せっ」


「いでっ、そんなぁ~っ」



 魔界の神に続いて呼び出した女神、もちろん帰ったあの馬鹿にはこのことを伝えていないのだが、女神には魔界の神もこの件に一枚嚙んでいるということを黙ってはいないため、奴が残していった飲みかけの茶と邪悪な気配はそのままだ。


 しかし女神に光関係の術を出させれば、そんな最強のホネ如き一撃だと目論んでいたのだが……どうやらコイツの無能さを過小評価していたようだな。


 喚き散らすばかりで何も考えようとしない頭の悪い女神、本当に自爆させるのはかわいそうなので、ここでもう少し作戦を煮詰めていこうとも思ったのだが、どうやらこのまま敵に投げ付けるぐらいの用途しかないように思える。


 しかし女神の奴もその名を知っているような最悪の存在であったのかそのホネ野郎は。

 となると本当に強い、どころかいつまで経っても勝負にならないような敵であるのは確実。


 これは今までのような強化の方法ではなく、もっとこう、凄まじいペースでパワーアップしていくような作戦を考えなくてはならない。


 そのためには具体的に何をすべきなのかというところだが……ここはせっかくなので女神と相談しておこう、それが一番の近道だ……



「おい、もう自爆は良いから、俺達をそのホネ野郎と同等の、いやそんな奴など圧倒するレベルの強さにする方法を考えてくれ、さもないと勝利はないし、この世界が魔界に取り込まれて人族も魔族も魔界のもの、お前はブチ怒られて酷い目に遭うのが確定だ」


「ひぃぃぃっ! そんなことにはさせませんっ、でもそうですね、皆さんを強くするための方法としては……走り込みなんかどうでしょうか?」


『暑いから無理』


「・・・・・・・・・・」



 どうせそんなことであろうとは思ったが、ろくでもない策しか提案しない女神であった。

 何かと戦うことによって強くなるのにも限界があるはずだし、はてさてどうしたものか。


 と、これからのことについて思いを馳せているところで、入って来たエリナから魔界の神よりの通信があったことが告げられる。


 あの馬鹿、関わりたくないような素振りを見せつつもキッチリこちらに情報を提供するつもりではないか。

 そしてその通信の内容は……敵のホネ野郎が派遣したのであろう、魔界の力を借りた実働部隊についての情報であった……



「えっと、つい先程倒した馬鹿な連中以外にも、魔界から力を授けた者がかなりの数居るようだ……みたいな話です、もちろん人族で、魔王様を廃して新たな魔王を呼び出して、みたいな破滅願望のある連中の中からチョイスしているのだとは思いますが」


「まぁ、そりゃ居るだろうなそういう奴等が……となると目下の敵はその連中であって、その討伐と同時並行的にもっと強くなる方法を考えなくちゃならないのだな」


「えぇ、そんな奴等、たとえあのギガンティック無職みたいな強敵を相手にしていても、神を越えるとかそんな力にはなれないわ、やっぱり別の作戦は必須になると思うの」


「う~む、面倒な走り込みでもなくて雑魚狩りでもなくて、それでいて強くなる方法か……」


「それでしたら勇者よ、私からあまり干渉するのは良くないことですが、この世界における権力者、例えば王などから何か特別な祝福を受けたらどうでしょうか?」


「あのな、この世界の権力者なんぞろくでもない連中ばかりだぞ、特に駄王、あんなもんから特別な祝福を受けたら、それこそミジンコレベルまで弱体化しかねない、却下だ」


「いえ、本人からその力を使った祝福を受けるのではなくてですね、何というかその、王なら王の権限に根差した一般的なボーナスとかそういうのを……わかります?」


「わからんでもないが……どうする皆?」



 女神から直接、というわけではなく駄王辺りの権力者から、何かボーナスのようなものを受ける。

 そしてその効果によって効率的なパワーアップをしていくという作戦なのだが……肝心の権力者がゴミばかりなのがネックとなるのは確実。


 だがこのまま何もしないよりもマシだということもあるにはあるので、念のため王宮へ行って、少し話をしてみることとしよう、もちろんあまり期待はしていないが……



 ※※※



「……ということなんだこの馬鹿野郎、何かボーナス的なものを出せ」


「おぉ勇者よ、それだけでは何を出したら良いのかまるでわからぬではないか、もっと具体的に言うのじゃ」


「チッ、話のわからない奴だな、そんなんだから毎日酒ばっかり飲んで酔っ払うことになるんだよ……でだ、例えばだな……毎日1時間程度、倒した敵から得られる経験値が1億倍になるとか、そういうデイリーボーナスが欲しいな」


「……デイリーボーナスとは?」


「そこから説明しなきゃならんのか、えっとな、う~ん……例えばお前さ、毎日ウ○コすんだろ? アレもデイリーボーナスの一種なんだよ、わかるか?」


「おぉ勇者よ、わしのウ○コならいくらでもやろうぞ、便所にあるから好きに持って行くが良い」


「ブチ殺すぞテメェ、もう話にならん、ちょっと女神をこの場に顕現させるから待っとけ」


「勇者よっ、こんな準備もしていない場所に女神様を……あっ、へへーっ!」



 こうなると思って予め上空に滞在させてあった女神、その足に付けておいた長い紐を引っ張り、テラスのある窓から王の間へと引き込む。


 その場はたちまちパニックに陥ったのだが、俺にとってはそのようなこと何の関係もない。

 すぐに女神を小突き、頭の悪い駄王ではなく総務大臣のババァに対して、俺の要請を改めて伝えさせる。


 ……どうやらすぐに理解したようだな、俺達がごく短期間で凄まじい強さを得なくてはならないということ、そしてそのためには何か特別な『ブースト』のようなものが必要になることなどだ。


 すぐにその件について検討し始めるババァ、もちろん他の連中はまるで役に立たないので1人で、宙を見つめてウンウンと唸りつつ何かを考えている。


 そして一定時間の経過後、どうやら方向性が定まったようで、俺に対してひとつの提案をしてきたババァ。

 どうやら国家的規模の作戦をしつつ、そのメインとして俺達を使う代わりに、駄王の権限で何やら凄いボーナスを提供するとのことだが……



「んで、どういうボーナスがどのように提供されるんだ? くだらない内容のものだったら駄王を殺すぞ」


「大丈夫じゃ、ちょうど研究所で開発が進んでいる、雑魚兵士を短期間で強兵に育て上げるための術式が、今まさに実験段階を終えるところとのことじゃったし、それを使用すれば良い」


「……ちなみにそれの安全性は?」


「えっと、確か今は人体実験をしておって、昨日受け取ったレポートには10人への使用で8人が即死、1人が成功、1人が行方不明になったとのことじゃ」


「何で行方不明者が出てんだよ危なっかしいな、もっと安全なものはないのか?」


「勇者よ、この人族の大臣が提示したもの、おそらくあなたであれば大丈夫ですし、あなたの仲間も同じだと思いますよ、きっと被験者が雑魚キャラすぎてそのような結果に終わっただけかと存じます、断言は出来ませんが」


「いや、断言してくれないと非常に困るんだが……」



 根拠のない、実にいい加減なものを掴まされて酷い目に遭うのはもうこりごりだと、声を大にしてそう言いたい。


 だがそれが唯一示された道である以上、やっていくしかないのが現状の辛いところだ。

 まぁ、なにはともあれ、ここから国を挙げての勇者パーティー強化大作戦がスタートするのでであった……

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