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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1058 工程終盤

「だからっ、グレート超合金のプレートがあるだろう? それをどうやって建物の基礎の代わりにして、さらにどうやって外壁を覆う防御板の代わりにするのかってところが問題なんだ、わかるだろう?」


「え~っと、ちょっと耳クソが詰まっていて良く聞こえないんだぞい、ガラス越しだから、もう少しハッキリと喋って……」


「お前は耳クソどころかクソそのものだと思うんだがな、まぁ良いや、グレート超合金プレートの使い道を教えろっ!」


「……よかろう、ではまず現場へ行かなくてはならないぞい、そこで実演して、確かな方法を伝授するぞい」


「実演すんのかよ……ホンモノじゃなくて使い捨てのレプリカプレートで良いか? お前が触るともう汚れてしまって使い物にならないだろうからな、節約のためだ」


「構わんぞ、ただしそれだと正確なやり方というのは……」


「ごちゃごちゃ言ってねぇで早く行くぞっ」



 一応、情報を提供してくれるらしい感じのブラウン師であったが、一緒の馬車に乗ることは出来ないし、コイツが触れたものには触れたくない。


 また、簡単に加工することが出来るようになったとはいえ、まだまだグレート超合金のプレートは数が足りず、それを使用方法の実演のためとはいえ、1枚ないし複数枚無駄にしてしまうというのは、計画の遅れを招くことになるから、決して認めるわけにはいかないのだ。


 もちろんこんな奴が触った、染み付いた臭いが100年は落ちないであろうその素材を一部に用いて建っている邸宅など、何度競売に掛けようが決して誰も買うことがないであろう。


 よって現地でのブラウン師の行動には要注意だ、これが勝手にそこら中を触れば、その都度新興住宅街である『変形合体ロボニュータウン』の価値が毀損されていくのだから。


 で、再び馬車を走らせて到着した元の場所、プレート量産作戦が行われている現場の空き地なのであるが……うむ、緊張感を与えただけあり、比較的良い感じで作業が進んでいるようだな……



「おいブラウン師、ちょっとコレ見ろ、近付くなよ汚ったねぇから、ほら、遠くから見てもわかるだろう? これを敷き詰めて建物の基礎にするって話だが……俺達には正直どうやるのかさえわからん、死にたくなかったらとっとと教えろ」


「……ふむ、この世界ではその方法を選択したのか、なかなかスマートな方法であるぞ、同時に難易度も高いが」


「あら? この方法は普通より難しいんですの? そしたら普通はどうするのかも教えて欲しいところですわね」


「姉様、そもそもこんな世界規模の大プロジェクトに普通って……」


「普通か、普通……これは最終的に敗北して、物体に滅ぼされてしまった世界のことであるが……」


「何か語り出したわよ、しかも失敗例って、役に立つのかしらそんなもの?」


「わからんが、ちょっと聞いておこうぜ、あと臭いからちょっと風上に移動しよう、クソ暑いのとクソみてぇな臭いがするのでもうわけがわからんぞ」



 グレート超合金製プレートの用途について、少しばかり話が逸れてしまうことにはなると思うが、ブラウン師の語る『敗北してしまった世界』についてそのまま聞いておく。


 その世界は変形合体ロボを用意するところまでは間に合ったものの、アホの王様が自分で操作したいと言い出し、訓練不足のまま勝手に乗り込んだことによって転倒、全てが台無しになって終わったものだという。


 なるほど、敗北したといっても1匹の馬鹿が調子に乗ったせいであったか、その事例であれば俺達が成し遂げる『成功例』にも生かすことが出来そうだ。


 念のため、その『アホの王様』がこの世界でも発生しないように……既に発生しているのが気掛かりなのだが、余計なことだけはさせないように監視しておくべきだな。


 で、馬鹿のせいで転倒して、そのまま起き上がることが叶わず、世界ごと物体に蹂躙されてしまったその世界の変形合体ロボはどのような外壁を有していたのかということだ。


 ブラウン師曰く、それは基礎として置かれていたプレートが移動するような仕組みではなく、逆に屋根の部分をグレート超合金ぶきにするシステムであったのだという。


 なるほど、下からせり上がってくるよりも、上から降ろす感じで移動させた方が遥かに楽である。

 瓦のようにしておけば、ザザザッとスライドする動きで壁面に移動して、素早くスマートに外壁となることが可能だ……



「……なるほど、ここからこう、スライドして……というかこのプレート、思ったより軽いですわね」


「そんなことよりサリナ、ブラウン師がお前のパンツをガン見しているぞ」


「それはそっちで『処理』しておいて欲しいですの、そんなのを攻撃したら魔法が汚れてしまいますわ」


「わかった、おいブラウン師、殺すぞお前」


「も、もう死んでしまっても構わんぐらいには堪能したぞいっ!」



 キモくて臭くて鬱陶しいブラウン師だが、さすがに今この場で殺害してしまうのはアウトである。

 まだ俺達はこの変形合体ロボにおける調合金プレートの、一般的な使用方法についてしか聞くことが出来ていないのだ。


 肝心なのはここから、俺達がこの世界で再現しようとしている方式、つまり建物の下に基礎部分として使用するプレートを重ねたもの、それを上にスライドさせて外壁とする方法である。


 それについて聞き出すまでは、たとえこの場で心臓発作を起こされたとしても、隕石が降り注いで、それがブラウン師を集中的に狙ったとしても、確実に生かし通さねばならない。


 で、上からスライド方式の実践はこのぐらいにして、いよいよその本題に入るわけだが……グレート超合金のプレート以外にも、必要な物資がいくつかあるらしいということが、まずブラウン師の口から語られた……



「まず、これを下に差し込むための『工具』が必要なんだぞ、常にこの場に置いておける、可能であれば筋肉がムッキムキの工具が……そこの強大な筋肉生物なら適任か」


「それ、工具じゃなくて人間の類じゃね? そんな者を用意しなくても、俺達ぐらいの戦闘力があればほらっ」


「なんとっ、いやその持ち上げ方ではダメだぞい、もっとこう、力を込めたような雰囲気を醸し出して、変形合体時のモーションの一部に組み込まれるような……(どうのこうの)……」


「わけがわからんからもう喋るのはよせ、とにかく持ち上げたんだから、早くそこに用意したグレート超合金プレート・ザ・レプリカを使って実演をしてみろ」


「……ふむ、ではまずこのプレートを下に敷き詰める、もちろん隙間のないように、そして基礎として十分に力を発揮し、建物の耐震性を向上させるように、キッチリと固定する感じで並べて……完成だぞいっ!」


「ってこれ、ただただ敷き詰めただけじゃねぇかぁぁぁっ!」


「もちろんそうだが……もしかしてもっと特殊な方法を用いるとでも思ったのか? だとしたら相当な馬鹿だぞい」


「ブチ殺すぞテメェェェッ! おいっ、ちょっともう一度この持ち上げた建物の下へ入れ、プチッとやって、二度とその舐めた口を効けなくしてやるからよっ!」


「ご主人様、そんなモノを潰したら建物が汚れてしまいますよ、Gを討伐した際に使用したスリッパのように、すぐに捨てないとヤバいです」


「……確かにな、だがこのウ○コションベン仙人め、後で確実にブチ殺してやる……で、本当の本当にこの方法なのか? これじゃあ何の特殊性も有していない、単に希少な素材を用いただけの基礎だろうに」


「そりゃまぁ、基礎が勝手に動いてどうのこうのなんて、そんな夢のような話はないぞ、魔法でどうにかするにしても、莫大な魔力を変形合体だけで浪費してしまうことになるぞい」


「だからその莫大な魔力とか、あと強大な筋力とか、こっちには多様でかつ無限に近いようなエネルギーが存在しているんだってば、それを踏まえてどうにかしやがれ、今日中にだ」



 知識はあるものの、俺達が有している力について見誤っているようすのブラウン師、パワーで建物を持ち上げるのは簡単だし、魔法の力でどうにかすることももちろん出来る。


 それを踏まえたうえでもう一度、どのようにしたら上手くいくのかについて考えて欲しいところなのだが……やはりどうしてもマッチョの力を借りたいと、可能であればスキンヘッドのやべぇ奴の方が良いと、そう主張するブラウン師。


 仕方ないので筋肉団員のうち、スキンヘッド(ハゲ含む)にしている者を全員呼び出し、すぐに集合したのを確認してブラウン師の前に……臭いので少し離れて並んだようだな。


 これをどうするのかと思いきや、ブラウン師はそのスキンヘッド連中に対して、建物の四隅に腕組みした状態で立つようにと指示をしているではないか。


 これはつまり4人で一棟の建物を持ち上げるということなのか? この程度のサイズであれば、1人で軽々と持ち上がってしまうというのに、その必要はないのだと教えてやりたいところだが……



「うむ、この雰囲気が良いぞ、いかにもな連中が、合図と同時に建物を持ち上げて……あと2名、プレートを移動させる役目の者が必要だぞい」


「いやブラウン師お前さ、人力でどうにかしようとか考えていないか? 普通に持ち上げて下のプレートを剥がしてきて、それを外壁に貼り付けようとか思っていないか?」


「……その通りだが?」


「あのさ、そもそも変形合体ロボなんだぞ、建物自体が飛行して、オートでトランスフォームしてこその存在だぞ、それをマッチョなんぞ引っ張って来て暑苦しい方法でどうにかしようなんてどうかしているとしか言えないからな」


「じゃあ、四隅のマッチョは建物が飛ぶから要らないということか……では余った人員を壁に貼り付ける役目に割り振って……」


「だから人力に拘ってんじゃねぇよ……」



 全く話にならないブラウン師、知識はあるのだがセンスはない、結局のところ、馬鹿が単に長期間研究を重ねただけの凡人ということなのであろう。


 そんなブラウン師には、やはり今日中に『人の手を加えずにトランスフォームさせる方法』を発見して確立しておくようにと、失敗したら殺すし成功してもそのうちに殺すと脅して、どうにかその部分をクリアさせることとした。


 クソめ、意外なところで時間を喰ってしまいそうな感じだな、となるともうひとつ、建物のビルドアップによってロボ自体をどうにか組み上げる工程なのだが、これについても並行して進めないとならないな。


 考えるべきはどうやって建物を飛ばすかということと、それからその飛行する建物を、どのようにして空中で合体させるのかというところか。


 これも並大抵の努力では成し遂げられないのことなのだが、やはり魔法の力を使ってどうにかするというのが、この世界における基本的なやり方となるであろう……



「う~ん、ただ飛ばすだけなら火魔法と風魔法を組み合わせればどうにか……」


「その後任意の動きを、しかも空中でさせるための魔法技術が必要だな、セラ、どうにかしろ」


「無理に決まっているじゃないの、ひとつやふたつならどうにか操作出来るかもだけど、この色んなのを色々な方向にってなると、きっとどこかでクラッシュしたりして終わるわよ」


「主殿、合体の際にその場で任意に動かすのではなく、最初からそのように動くよう、調整をしておく以外に方法はないのではないか?」


「私もジェシカと同じ考えですの、プログラムが重要ですことよ」


「プログラムか……難しいことを言うもんだな……てか魔法でそんなこと出来るのか?」


「移動コースを確定させていれば或いは……かなり難易度は高いと思いますわよ」


「こっちも高難度なのかよ、こりゃもう今日からずっと徹夜コースで頑張らないとならないかもな、最終的には変形合体ロボを動かすための訓練も必要になるわけだし……」



 面倒事が面倒臭すぎてもう辟易してしまう、特に自分達で考えなくてはならないことに関しては、知能レベルの極めて低いメンバーが役に立たない分、天才であるこの俺様の負担が増えてしまうのだ。


 などという冗談はさておき、魔法によって変形合体ロボを組み上げる際に、それぞれの建物がどう飛行すべきなのか、どのようにすれば一切ぶつかることなく、綺麗に接続し、合体することが出来るのかを考える。


 ……もちろん考えても考えても、地面に枝で絵を描くだけではなにもわからない、もっと正確に、すん分の狂いもなく座標を決めて、そこへ至るまでの導線も確保しなくてはならないという、極めて何度の高いミッションなのだから。


 これはもうあの魔界の神の力を借りるしかないか、そう考えたところで、悩んでいる俺達の方を目指して進む謎の集団が目に入る。


 明らかに真っ当な人間ではない、普通にそのような形で存在している人間など居るはずがない見た目であって、しかも全部が画一化された姿を有しているその集団。


 その時点で考え得るのはそれが敵であるということなのだが、そう思わないことには理由があった。

 集団の先頭には、日傘を差した状態でダラダラと、やる気なさげに歩く研究所の、時空を歪めるコーティング研究室の新室長が居るのだから……



「……今日は何をしにこんな所まで来たんだ? というか何だその後ろの集団は? 顔が明らかにおかしいんだが」


「見て下さいご主人様、この人達、顔がほとんど目みたいな……ガラス?」


「カレン、近付いたらダメだぞ、きっとそこからビームを出して攻撃してくるんだ、きっとそういう兵器に違いない、新室長、お前一体どういうつもりだ?」


「どういうって? コレ、犯罪に関与していたとされてこっちに回された役人の成れの果てなんだよ、改造人族ってやつ? この現場で使えるかなと思って持って来たんだよ」


「……何に使うんだこんなもん」


「建物を動かして、というか飛ばして変形合体ロボをビルドアップするんだろう? そのそれぞれが動くべきルートを策定して、行き先の座標まで調べるのがこの『測る君(改造人族)』なんだ、頭には分度器をいくつか仕込んでおいた」


「人間トータルステーションみたいなもんなのか、他に機能は?」


「三角定規を手裏剣みたいに飛ばす攻撃が出来て、あと頭の天辺が日時計になっていて時間も正確にわかる、それから乳首の透け具合で現在の明るさを知ることも出来るな、優秀なんだよこの作品は」


「ちなみにチーンBOWは放てるのか?」


「それもやってみようとしたんだがね、やはり何と言うか、スペックオーバーになってしまってな、仕方ないので諦めて、その部分には『やたら伸び縮みする直定規』を付けておいたよ、1mまで測ることが可能だ」


「どうして伸びるのかは気になるが説明は要らんぞ」



 とにかく、この『測る君』という、かなり適当に名前を付けたことがバレバレの改造人族を用いれば、正確な合体すべき場所の座標と、さらにはそこへ至るまでの飛行経路、建物を飛ばすタイミングまで、かなり正確に導き出すことが可能だとのこと。


 それであれば、あとはもう建物の下に魔力の発生装置を付けて、それによって任意の方向に飛ぶようにすれば良いだけである。


 もちろん飛び出しの際に建物が崩壊してしまわないような、そんな慎重で精密な魔力の発生に努めなくてはならないのだが、それはそれでまた考えれば良い。


 ということで、その改造人族による様々な場所の計測が始まった……のであるが、それに関して俺達が手伝うべきことなど何一つないというのが現実であった。


 そもそも何をしているのかさえわからないのだ、いや、座標を用いて何かしているのは確実なのだが、平面の軸だけでなく、いわゆる『Z軸』も関与してくるのが変形合体の特徴であるため、まともな人間の脳ではそれを考え、構築することが難しい。


 それゆえ、こちらに出来ることと言えば専ら建物を飛ばすための機能作りであって、それもなかなかの技術を必要とするため、どう考えても『装置に魔力を込める』という作業では役に立たないのであった。


 そして、その魔力さえも凡人の雑魚以下である勇者様の俺様は、全く一切役に立たないことが確定したため、あまりやる気のないルビアと木陰で休んでいることとした……いや、ルビアは魔力が高いのだから手伝ってやって欲しいところである。


 で、サンプルとしてまず完成したのが一番小さな1棟の建物なのであるが……なるほど、下の四隅を少し凹ませて、そこに魔法を噴射する玉が入った装置を埋め込んだのか。


 この方法であれば、今行われている計算によって弾き出された、どの建物をどの向きで飛ばすのかという結論に対し、その4つの噴射口について強弱を設けたり、魔法発動のタイミングを変化させることなどで調整を掛けることが可能になるのだ。


 早速これを飛ばしてみようということとなり、安全のために精霊様とゴンザレスが空中で待機……ゴンザレスはどういう原理で飛んでいるのであろうか……まぁ気にしないことだ、とにかくまっすぐ上に向けて飛ばしてみよう。


 まるで理科の実験で作ったペットボトルロケットでも飛ばすかのような、かといってスケール的には極大であり、しかも非科学的な力で行われることとなった実験を、少し離れた場所から見守る……



「3……2……1……発射!」


「……おぉっ! 結構良い感じに浮かび出したぞっ」

「最初は凄いゆっくりなんですね……あ、速くなってきた」

「これの方向を調整して、変形合体させるのを目指すんですね」



 魔法力を炎に変えて噴射し、徐々に高度を上げて高く飛び上がった1棟の建物、最初なので小さなもので試した、かつ着地などは考慮されていないため、上空でエネルギー切れを起こした後、精霊様とゴンザレスがキャッチして地面に降ろすという作業が必要であった。


 だがこのまま方向等の調整さえしていけば、最終的には必ず任意の方向へ、変形合体に向かう感じで飛ばすことが出来るであろう、それは今行われている計測の結果次第だ……

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