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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1049 情報交換へ

「我はな、もう50年以上このグレート超合金について研究をしている、グレート超合金専門の仙人なのだ、それはわかって貰えるかな?」


「わかるけど、おじさん歳いくつなの? 不潔極まりないけど、とても50年研究したようには見えないのよね……年齢的に……」


「うむ、我はまだ38歳である、50年というのは前世の分も含めてそうなのであって、我が我になってからの期間ではないのだよ、わかって貰えるかな?」


「わかんないけど、前世の記憶があるのね、凄いわね……キモいけど……」


「ちなみに前世はどちらの世界で?」


「それは我にも答えようがない、どこか科学技術が発展した、しかし魔法のない極めて遅れた世界で、しかもゴミのような連中が偉そうに……まぁ、その記憶も凄い勢いで薄れているのだからな……」



 何だか知っているような知らないような、そんな世界の記憶について話をする転生者のおっさん。

 にわかには信じ難い話だが、もう何でもアリなこの世界においては特別なことでもなさそうである。


 どうしてこのような場所に、このようなかたちで住んでいるのか、そしてどうして前世でグレート超合金など研究しようと思ったのかについては、もうかなり昔のことなので忘れてしまったという。


 だが自分が仙人として半人前で、未だ研究対象であるグレート超合金の真理に至っていないことを悔やみ、一方で現在あるだけの知識を、丸ごと俺達に教授しようという、そんな心意気は伝わってくる……きめぇけど……



「……それで、我の前世についてはもうそんなところで良いにして、まずはこのグレート超合金のサンプルだが、誰か受け取るのだぞ」


「いや、あなたが触れていたものを直接触れようと思う者はここには居ないはずだぞ、さすがに不潔すぎる」


「なんと、巨乳のお姉さんにそのようなことを言われる日がくるとは、ありがたや~っ、ありがたや~っだぞい」


「いやディスられて喜んでんじゃねぇよこの変態野朗、とにかくそのグレート超合金サンプルは、この透明なビニール袋の中に入れてくれ、直接触るなんてマジでもってのほかだからな」


「ほいほい……ビニール袋? どうしてそんなものがこの世界に、それは前世の記憶では……ダメだ、頭が痛くなって来たぞい」


「はぁ? どうしたのかしらこのおじさん、急に苦しみ出したわよ」


「きっとグレート超合金以外の謎について考えてしまったのが原因であろうな、数十年間そのことしか考えていなかったのに、突然他のことに意識を向けてしまって、頭がどうにかなってしまったということだ」


「頭がどうにかなっているのは最初からだと思うがな、おいおっさん、ションベン仙人、とっとと復活して俺達に重要な情報を提供しろ、さもないとブチ殺すぞ、研究の方はまた来世でみたいな話になるぞ」


「……うっ、あっ……グレート超合金は最初からその姿でこの世界に存在しているものではない……いや、『この世界』には存在すらしていない未知の金属なのだ、持ち込まれ、そして神界の神々に酔って回収されることなく存在しているものが、この世界におけるグレート超合金の全てであって……それを精製することは不可能であるぞ」


「何か急に喋り出したな……」



 やはり染み付いた習慣なのであろうか、グレート超合金の話題に触れると、たちまちまともな意識を取り戻して語り始めるおっさんであった。


 だがその内容は俺達にとって絶望的なものであり、特に世界中を探し回り、それに関する手懸かりを手に入れんと躍起になっていたゴンザレスにとっては、非常に残念なものでもあったとも言える。


 グレート超合金はそもそもこの世界には存在していない、存在してはならない合金であるということ、そしてそのベースとなる謎の金属も、やはりこの世界のものではないということだ。


 つまり、それを手に入れるためには、女神の奴に隠れてコッソリと持ち込まれたそれを、バレないようにコッソリと収集して、最後には一気に使い切って証拠を隠滅する必要があるということ。


 さもないと途中で見つかってしまい、これはダメだから回収……などということは絶対にさせない所存であるが、それはどちらかというとこの世界の理に反する行為である。


 ゴンザレスも、そしてその他国の直属となる機関においても、そういった行動を取ることは非常に難しいことであって、女神の意思に反するとわかればなおさら禁忌に該当してしまうであろう。


 これについては上手くやる方法など存在しない、というか存在しないはずのものを存在させるに当たっては、人族程度の知識や経験では到底不可能ではないかと……と、そこで闇の勢力か……



「おいおっさん、俺達はな、既にこんなちょびっとじゃない大量の……とはいっても10t程度なんだが、とにかくグレート超合金を確保しているんだ、ちょっとすげぇ魔界の勢力との関与によってな」


「ほう、となるとそれを有効活用する方法を考えたいというのか、つまりその用途や加工方法の話をして……いや、それならその魔界の勢力に聞けば良いぞい」


「そうじゃねぇんだよ、向こうは向こうで情報を秘匿する義務があるらしいからな、バイトの分際で口が固いんだよ凄く」


「だから『こちらもそのブツについてわかっている』という感じを出すためにも、ここでグレート超合金の詳細を、わかる限りで伝えて貰いたいのだ、どうだ?」


「う~む、この悪しき者が言うと拒否したくなるが、そちらの巨乳お姉さんのご命令……頼みとなると聞かざるを得ぬかもな……よかろう、少し場所を移動して、ゆったりくつろげる場所で全てを話そうぞい」


「自称ションベンでウ○コのお前がくつろげる場所なんぞ下水処理場ぐらいだと思うんだがな……」



 地面にポッカリと開いた穴の周り、そこで立ち話ではアレだということで、ひとまず小さな森の中の良い感じの場所へ移動することとした。


 物体事変発生前、ここでは木こりが活躍し、王都へ木材を提供していたようであって、切り株がいくつも並んでいる場所がすぐに見つかったため、そこを会談の場所に設定する。


 クソ暑いが、下水処理用の強烈な臭いの中で何かを話すよりはマシであろう、ウ○コ系の場所ではなかったことについて残念に思っているのはきっとこのおっさんだけだ。


 切り株はいくつもあるが、座ることが出来そうなのは4つだけか……俺とセラ、ジェシカにゴンザレスが座るとしてそれで一杯、おっさんには教授らしく、前で立って話をさせよう。


 それから連れて来てしまった魔王については……俺のほぼ真上にくるよう、隣の木の枝にでも吊るしておこうか。

 話に飽きたら上を向けば、リアル魔王パンツがお目見えするという画期的な配置である。


 その他の仲間も場所を決めたため、早速魔王を木から吊るす作戦に入るのだが……何をされるのかを察して抵抗しやがるな、さすがに『パンツ見せ係』はイヤということか……



「おいコラ、大人しくしやがれこのっ」


「それだけはやめなさいっ、この位置だとあの不潔そうなおじさんにもパンツが見えてしまうのよっ」


「そんなの仕方ないだろう、お前が変なおっさんにパンツを見られて不快になる気持ちはわかるが、俺がパンツを見るためにはこの方法しかないんだ、大人なんだから理解しろ」


「大人のやることじゃないわよこんなのっ! ほら、おじさんこっち見てるしっ!」


「……黒のパンツか……ふむ、かつての世界で聞いた、暗黒の物体に対抗する最大の作戦について思い出してしまったぞい」


「っと、どんな作戦だ? もしかして……」


「そう、その作戦とはご存知、『グレート超合金時空を歪めるコーティングエディション造陸屋根100階建非区分建物変形合体ロボビルディング機動作戦』だぞい」


「やはり『グレート超合金時空を歪めるコーティングエディション造陸屋根100階建非区分建物変形合体ロボビルディング機動作戦』か、そうだと思ったぜ」


「だが主殿、ここで新しい話が出てきているぞ、これまでの作戦では時空を歪めるコーティング、それがあるのかないのか曖昧であったじゃないか」


「なるほど、その部分が明確になって、より一層完成型のビジョンが色濃くなったということか」


「ちょっと、他人のパンツの色からそんなものを連想しないでよねっ!」



 俺達が物体との最終決戦、四方から王都を蹂躙するであろう物体城に対抗して発動すると予測しているのはまさにはこれ、グレート超合金時空を歪めるコーティングエディション造陸屋根100階建非区分建物変形合体ロボビルディング機動作戦だ。


 魔王が亜空間から発見された謎の文献から回収した最終決戦に関する知識を参照し、今はどうにか不動産の方を回収し続けている状態。


 そしてそれの改装に用いるためのグレート超合金について、わからないことが多すぎて困っているというのが現状であって、今はそのヒントの獲得のための話をしているのだ。


 で、その話の中で作戦の名前が、しかも俺達の知っているものよりも詳細なかたちで出てきたということは、まさに今やっている情報収集がビンゴであると、そのことを示唆するのであろう。


 そんな状況を無視してジタバタと暴れる魔王は、もうどうでも良いのでジェシカに投げて渡し、キャッチされたのを見届けて無視しておくこととした。


 ここからはこのションベン仙人であるおっさんから、もう少し詳細なグレート超合金の話を聞く時間であるから、魔王になど構っている暇はないのである……



「……グレート超合金は確かに存在する、この世界ではなく、先程言っていた勢力が属する魔界において、そのごく一部の地域、一部の神々が用いているものだぞい」


「てことは魔界の神々でも、この魔王を送り込んできたような連中がそれについて全然知らないってことも考えられるのか?」


「その通り、知っている神は知っているし、知らない神も多いのがこのグレート超合金の特徴だぞ、例えば……魔界の一部地域ではこれを調理器具や窓のサッシ、装備する武器防具や釣竿のガイドリング、さらには撒き菱などにも利用しているとの情報がある」


「用途広すぎて安定してねぇぞ……まぁ、それだけ汎用性の高い金属であるってことだな、他に耳寄りな情報は?」


「そうだな……グレート超合金を精製するためには、魔界にある3種類の金属をカツカツの配合で混ぜて、そこに魔力と邪悪なる神々の力を送り込んで、さらにはフルオーケストラで2時間に渡って呪文を詠唱し続けなければならないということであるぞい」


「凄いわね、それで、その精製行程を完遂すると、どれだけのグレート超合金が出来るわけ?」


「素材それぞれ5tずつとして、およそ3gが精製されるとのこと、極めて効率の悪い精製行程であると、我は評価しているぞい」


「そんな希少なもん窓のサッシにしてんじゃねぇよ、アルミにしろアルミに」


「いや我にそれを言われても、魔界の神々がやっていることだし……」


「奴等め、攻め入った際にはそのことを十分に言い聞かせてからブチ殺してやる、以後気を付けろってな」


「おう勇者殿、ブチ殺されてしんだら気を付けようがないと思うのだがな、ところで仙人よ、この薄汚い、いや本来はそうではないと思うのだが、手垢などで薄汚れたグレート超合金サンプル、どこで入手したのだ? なおその付近を捜索すればまだ見つかると思うか?」


「そのサンプルはあの穴、世界のケツ穴と呼ばれる我のハウスで発見した……というか、あの穴自体がだな、魔界の神々がうっかり高空から落としたグレート超合金が、その強さゆえ大気圏で燃え尽きることなく地表に到達し、そのまま槍のようにめり込んだことによって出来たものなのだぞい」


「いや、どうしてあんな感じになったんだよ、普通はまっすぐ掘り進むんじゃなくて、もっとクレーターみたいになんだろ」


「それは我にもわからんが、とにかく地表に到達すると同時に、まるでカンチョーするかの如く地面を掘り進み、そして止まったと……今その穴には我が住んでいると」


「わけがわかんねぇよマジで……」



 とにかくもうこれ以上はグレート超合金が発見されることはない、もちろん魔界の神々がまたうっかりしていれば別だが、その可能性は極めて低いといえよう。


 であれば、やはりあの闇の勢力の連中から、交渉によってグレート超合金を手に入れる他に手段はないのだが、ここまでわかっていれば、こちらの『犯人情報』と引き換えに少しは融通してもらえるかも知れない。


 また、この世界においてはその存在自体が禁忌であることもわかったことだし、それを魔界の都合で持ち込んでいることを、女神の馬鹿に知らせてやればどうなるか。


 きっと大きな問題とされ、神界と魔界の間でこれまで燻っていた何かまで表面化するような、そんな一触即発の事態になる可能性まで秘めている。


 それをやられたくなければ、『共犯者』として俺達にもグレート超合金を寄越せと、またその分はキッチリ物体の回収にも協力してやるからと、そんな感じの脅迫兼交渉が出来るわけだ。


 その後もしばらくの間、ションベン仙人のおっさんからグレート超合金について耳寄りな情報をゲットしつつ、それを頭に入れて闇の勢力との交渉に備えた。


 かなり時間が経過したところで、今日はそろそろ良いであろうということとなったため、一旦情報収集を切上げ、おっさんは元居た世界のケツ穴なる洞窟へと戻って行く……



「じゃっ、我はこの辺りで失礼するぞい、また何かあったらここへ来るが良い、留守にしていない限りは対応しようではないか」


「……ホントにこんな狭い所に住んでいるのね、この中でどうやって動くのかしら?」


「さぁな、考え事ばかりしていて一切動かないんじゃないのか? と、次に来たときに留守だと困るな、どうにかして……」


「おう勇者殿、この巨大な岩石で蓋をしておくのはどうだ? あのヒョロヒョロの男であればこれは退かせまい」


「いや、それ普通に酸欠とかで死ぬんじゃ……まぁ良いや、どうせそんなこと言ってもわからないだろうしな、蓋をしておいてくれ」


「おうっ!」



 ゴンザレスがどこからともなく持って来た、というかどう考えてもズボンのポケットから取り出したように見えたのだが、とにかく俺のプレハブ城ひとつ分はあろうかという巨大な岩石。


 それをションベン仙人のおっさんが入って行った世界のケツ穴の唯一の出入口に、ズシンッと置いて蓋をしてしまったのである。


 こうなるともう奴は外出など出来ない、もちろんここを通る人間も、この物体事変の最中においてはまず居ないはずだし、もし万が一居たとしてもそれを退かすことなどパワー的に不可能。


 そもそも、意味不明な場所に置かれた岩の下から、何者かの助けを求める声が聞こえたらどう思うか。

 俺が一般の冒険者や、休憩のために立ち寄った商人などであれば、ノータッチでやり過ごすべきものであると判断してその場を離れるであろう。


 というように、ウ○コでしかないションベン仙人が逃げ出すのを防ぐことに成功した俺達は、そのまま王都へ帰還してその日の活動を終えた。


 王宮への活動報告については、ゴンザレスの方で全てやってくれるとのことであったので丸投げし、俺とセラ、ジェシカと、そして連行して来た魔王とで屋敷へ帰る。


 明日は早速闇の勢力が滞在している邸宅へと向かい、交渉に入ることとしよう。

 その際には魔王も連れて行った方が……いや、無駄に引き摺って行ったら、もうコレが犯人であるということがバレてしまうのでやめておくべきか。


 とにかく朝一番で、情報を携えてそこに行くことは確定、そして万が一情報の提供を拒絶されたときに備えて、全員で暴れられるように準備しておかなくては……



 ※※※



「……ということだ、こっちの犯人に関する情報をやるから、そっちの情報をくれ、もちろん魔界の方には許可を取ってあるんだろうな?」


「まだ魔界よりの返答がない、ゆえに易々と秘匿すべき情報を渡すわけにはいかないのだ、我慢するが良い」


「ざけんなオラ、てかお前執事のジジィだった奴だよな? どうして見た目が……面白いなお前」


「あの肉体は古ぼけていたのでな、あとベースが賢すぎて時折おかしくなる、支配し切れなかったのだ、だからその辺に居た若々しい、髪の毛も尖った生物に乗り移ったのだが……この姿はあまり良くないのか?」


「あぁ、それはクソみてぇなチンピラだよ、道端に落ちているリアルなクソとそいつと、俺だったらそいつの方を先に片付けるぐらいにはクソだな」


「そうか、では後程洗って綺麗にすることとしよう、それで、他に用がないのであればもう帰ると良い、我々はこの人間という生物の町で確保した物体を、○うパックで魔界に送る作業をしなくてはならないのだ」


「そんなもんゆ○パックで送ってんじゃねぇよ危なっかしいな、だがそんなお前達、俺達の話を聞いたらキモを抜かすぜ」


「……何かあるのか? 特に隠す理由がないというのであれば言うが良い」


「実はな、俺達の最終目標が『グレート超合金時空を歪めるコーティングエディション造陸屋根100階建非区分建物変形合体ロボビルディング機動作戦』の発動と、それに伴う物体の消滅となった、ここまで詳細な作戦名が出ている意味、バイトのお前等でも少しはわかるだろう?」


「なんと、魔界において最も警戒すべきだというその作戦、物体を消し去られ、回収が困難になり得ると、バイトに受かって最初に受けた法定講習で聞いたその作戦を知っているとは」


「それだけじゃねぇぜ、グレート超合金ってのはな、ああでこうでアレでソレで……」


「わかった、少し話を聞こうではないか」



 こちらの話に喰い付いた闇の勢力のバイトリーダー、モヒカン雑魚の姿をしているにも拘らず、そして所詮はバイトであるにも拘らず真面目腐った口ぶりなのは滑稽だ。


 だが情報を得るため、ブチ殺したくなるのを堪えて話を進めていくべき場面であろう……

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