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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1048 獲得

「……ということなんだ、闇の勢力と、それからグレート超合金について知っていることを話せ」


「グレート超合金について? 名前なら知っているし、それを変形合体ロボの構成材料にするべきだとは思うけど、あまり詳しくはないわよ……あと闇の勢力ってのはマジで知らない」


「そうか、じゃあ拷問が必要になってくるな、ルビア、あの正座させるギザギザのやつを持って来てくれ」


「ちょっと待ってっ! 知っていることは話すから、江戸時代のアレみたいなのはやめなさいっ!」


「ならグダグダ言ってないでとっとと喋るんだな、もちろん満足を得るような情報がなかった場合には……わかるな?」


「ひぃぃぃっ……」



 用意された拷問セットにビビる魔王をセラと2人で担ぎ上げ、そのまま俺達がいつも使っている2階の部屋へと連行する。


 魔王という身分である以上、魔界の神が関与してこの世界に召喚されたのは確実なのだが、やはり先程出会った『闇の勢力』とは一切関係のない部署なのか、それとも組織なのかがそれをやったようだな。


 運ばれながら本当に知らないと喚き散らす魔王であるが、闇の勢力だけでなく、グレート超合金とやらについても詳細を聞きださないとならないのだ。


 現在、あの場で外して持ち去り、その話題には触れないようにしてやり過ごしたグレート超合金製の扉を研究所で解析している最中だが、全容解明に時間が掛かるのは明らか。


 そしてそれについて調査に出ているゴンザレスを始めとした筋肉団の帰還もまだであるということは、現状で情報的に前進するキッカケとなり得るものはこの魔王の頭の中にしかないということ。


 こちらである程度調べを付けておいて、闇の勢力との情報交換に際して有利になるように取り計らうのだ。


 もちろん向こうも『物体をこの世界に召喚し、アンコントロールな状態にしてしまった元凶』について調べてくるであろうから、これによって一方的にこちらが優位に立てるわけではないが、少なくともフリにだけはならないようにしなくてはならない。


 ちなみに、魔王が一切知らないと主張するその闇の勢力に対して、『コイツが犯人です』ということで魔王を紹介することについてはまだ知らせていないのだが、それは嬉しいサプライズとして取っておくこととしよう。


 どうせたいした刑事罰は受けないし、物体回収費用に関する請求もたいしたものにはならないのだから、突然伝えたとしてもそこまで驚いて貰えるようなことではないと思うが……



「はい到着っと、それっ」


「いでっ、ちょっと置き方! もうちょっとソフトランディングしなさいよ人間なんだからっ!」


「そんなこと言ってもねぇ、一応まだ悪い奴として捕まっている状態なわけだし、我慢して欲しいわ」


「……クッ、もうちょっと扱いを考えて、人道に配慮したりしてくれても良いのに」


「魔王よ、もうとっくにわかっていると思うが伝えておく、この世界においては人道とか人権とか、そういったものはクソだから、むしろ生きる価値のないような奴が居たらブチ殺してやるのが最も道徳的な措置だと言っても過言でないレベルでやべぇから」


「まぁ、そうなるわよね実際、それで私に聞きたいことをもっと具体的に……言っておくけど闇の勢力とかについてはマジで知らないし、叩いても蹴っても何も出ないわよ」


「それは理解した、奴等は魔界関係の中でもちょっと特異な気がしなくもないからな、そもそもバイトらしいし」


「そうね、あの組織については今度暇なときに女神でも召喚して、叩いたり蹴ったりして情報を引き出すべきね」


「あぁ、それで知らないとか言われたらもうアレだ、魔界に直接乗り込んで聞くしかねぇ……それで、お前に聞きたいのはグレート超合金のことだよ、少なくとも俺達よりは詳しいだろう?」


「私はそんなに詳しくないわよ、ちょっとだけ、ホントに名前を知っているってぐらいなんだから、他の捕まっている子の方が詳しいんじゃないかしら?」


「他の捕まえている奴等か……例えば?」



 例えば? と問われたところで、すぐには名前が浮かんでこないのは良くあることだと思う。

 まぁ、少なくとも副魔王が魔王より詳しいのは確定であろうか、あとは……四天王クラスの2人になりそうだな。


 とはいえその2人共、今はすぐに呼び出して事情を聞けるような状況にはないし、ひとまず副魔王だけでも引き摺り出して、何か知っているのかと問い詰めておくべきか。


 それと、もう1人何か知っていそうなキャラとして、エリナも候補に挙げておくこととしよう。

 早速2人を無理矢理に引っ張って連行し、話を聞こうと魔王の横に並ばせた。


 もちろん、知っていることがあるのに答えないという場合には、自分ではなく魔王が酷い目に遭うということを認識して貰う必要があるのだが、それについてはポーズだけ取れば理解して貰えるであろう。


 で、念のため最初に聞くのは、魔王が一切知らないと答えた闇の勢力についてなのだが……



「知りませんねそんな組織」

「私も、魔王軍で事務担当をしていたけど、一度も名前が挙がったりしたことはないです」


「そうか、本当に知らんというのであればこれ以上は聞かないつもりだが……ルビア、魔王に関節技を掛けてみろ」


「わかりました、さぁギチギチしましょうね~」


「ひぎぃぃぃっ!」


「あっ、ちょっとやめて下さいっ、魔王様が変な方向に曲がってしまっているじゃないですかっ! 本当に知りませんからっ!」


「……マジなようだな、じゃあもうこの話は良い、ルビア、あと30秒経ったら攻撃をやめて構わんぞ」


「す……すぐにやめなさいよ……ゴキョッ」



 魔王の体のどこかからおかしな音がしたようだが、逆に関節が良い感じになって体調が良くなるということも考えられるため、特に問題はないものとして取り扱う。


 そして魔王がここまでの目に遭っていたというのに、その間に何も言い出さなかったということは、副魔王もエリナも、2人共例の勢力については何も知らないと考えて良いはず。


 だがまぁここまでは想定内だ、肝心なのはグレート超合金とその精製方法等についてであるから、こちらは重点的に聞き出していきたいところである。


 で、2人に対してその『グレート超合金』という名前を出した瞬間に、どちらもが何か知っているような顔をしたのだが、あまり詳しくはないのではないかといった印象だ。


 ひとまず名前だけを知っているところは確定か、あとはもう、少しでも良い情報を持っていないかどうか、頭を開封して脳味噌を引っ張り出してでも追求していく必要があるな……



「……どうだ、副魔王、お前グレート超合金そのものを見たことはあるか?」


「それはさすがにないですが……存在しているらしいということは知っています、知っているというか聞いたことがあるというか、その程度ではありますが……」


「そうかそうか、役立たずだな、ちょっとこっちへ来い、そういう奴は尻をこうだっ!」


「いたぁぁぁっ! 何で叩くんですかっ? 知らないものはしょうがないと……いえ、そのおっぱいを捻じ切ろうとする手の動きはやめて下さい」


「まぁ、そうなるということでだ、エリナは……尻をこちらに向けているということは、副魔王と同程度の知識しかないということだな?」


「……そうなります……ひぎぃぃぃっ!」



 役立たず共を強烈尻叩きの刑に処しつつも、まだ何か引き出せるのではないかと期待する。

 ここは魔王にも同じ目にあって貰う、いや更に激しい罰を与えてやろうと、そう思ったところで……何やら外から凄いオーラ。


 それも1人や2人ではない、大軍勢が屋敷の前までやって来ている、そんな感じがひしひしと伝わってきたのである。

 これはただ事ではないと、そうも思ったのだが……大丈夫、特に問題はない連中であった。


 かなり急いだ様子で筋肉団が出現しただけであったのだ、いつもなら風のように颯爽と現れ、気が付いたときにはもうその目的が達成されているのだが、今回はかなり急ぎの用事であるらしい。


 ゆえにここへやって来るということだけに全力を投じており、全員が光の数倍のスピードで移動しつつ、その際に生じたソニックブームによって破壊された街並みを復元しつつ、ズッタズタになってしまった人々を、どうやったのかは知らないが完全に蘇生させつつ接近して来たのだ。


 これは何か大事であるに違いない、屋敷の前に出現し、残像などではなく本当にその姿が目視出来るようになったゴンザレスが、初めて見る息を切らせた様子でこちらに手を振っている。


 気付いたのか、そう言わんばかりの表情なのだが、コレで気が付かないような奴が居るなら顔を見てみたいし、親の顔までも確認しておきたいところ。


 で、そのゴンザレスが断りもなく、汗だくの状態で2階のテラスへ繋がる階段を登って来たのである……



 ※※※



「おう勇者殿、遂にグレート超合金とやらの手懸かりを見つけたぞ」


「あ、名前覚えたんだグレーと超合金の……なお、俺達は現物らしきものを発見した、情報の方は全くなくて、今探っている最中だがな……で、どこでそんな情報を仕入れたんだ?」


「うむ、現物があるとは都合が良い、それでだ、俺達はこのすぐ近くにある、誰も知らないにも拘らずなぜか『世界のケツ穴』と呼ばれているらしい狭く深い洞窟へ行って来たのだ」


「すぐ近くにとんでもねぇもんがあるんだな、しかも誰も知らないとは……何でその状況でそんなかわいそうな呼ばれ方をしているんだ?」


「それは俺達にもわからない、だがその洞窟から、1日1回程度のペースで姿を現す、というか出て来るらしい仙人が居るという情報を得てな」


「それ、ウ○コなんじゃねぇの?」


「わからんが、とにかくその仙人、名前を『激クサのブラウン』といったか、そいつがグレート超合金の情報を持っているという話なんだ」


「いやだからそれ、ウ○コなんじゃねぇの?」


「これから一緒にその仙人に会いに行こうではないかっ!」


「イヤだよ、それ普通にウ○コだかんね、ケツ穴から出て来る『ブラウン』でしかも『激クサ』なんだろう? 考えなくてもわかるよね? それウ○コだってば」


「その可能性はあるし、凄まじいリスクだとは思う、だがグレート超合金について知っているのはこの世界でそのブラウン師だけだというからな」


「もっと他の奴を当たってみたいと俺は思う……」



 常軌を逸した提案であるのだが、ゴンザレスは基本的にこちらの話を聞くタイプではない。

 つまりそのウ○コらしきブラウン師と面会し、情報をくれるよう依頼するのはもう確定ということだ。


 本当にイヤであり、このクソ暑い中そんな臭そうな奴、というか『激クサ』の名を冠したような輩に会いに行くのは衛生的にも最悪だと思うが、今からとやかく言っても仕方がない。


 ゆえに、自分だけが犠牲になるのではなく、誰かを道連れにするのが今最もやっておくべきことだ。

 すぐに逃げ出そうとしたセラをガッチリと捕まえ、ついでにササッと退室しようと試みたジェシカも捕まえる。


 セラはともかく、ジェシカに関しては先程馬車をぶつけたという『罪』があるのだから、そう簡単に逃げ出せるとは思わない方が良い。


 2人を諦めさせ、ついでにそ知らぬ顔をしていた魔王にも声を掛けたうえで縛り上げ、結局3人プラス1人のメンバーで、ゴンザレスの言うそのヤバそうな奴の居る場所へ向かうこととした。


 わけのわからない名前の洞窟は王都の西側、物体はそこにも存在しているはずだが、北側や東側よりはまだマシだと考えて良いであろう。


 また、魔王以外は全員が戦闘員であり、それぞれが単独で大サイズの物体を容易に消滅させることが可能な力を持っているため、戦闘面では問題など生じない。


 問題が出るとしたら間違いなくそのブラウン師だ、おそらくブチ殺したくなるようなトンデモやろうであるということはもう間違いのないことであって、まともな人間が登場するなどとは、最初から誰も思っていないのである……



「よしっ、では出発することとしよう、現地までは『走り』で行くか? それとも腹筋ローラーを手と足に固定して、尺取虫のように進むか?」


「どっちもNGだわ、熱中症不可避だぞそんなもん、だいいち歩きじゃなくて走りとか、人間のすることじゃないねこの時期に関しては」


「そうか、ならそちらのペースに合わせよう、早速出発だ!」


「テンションが高い人ねぇ、まぁ、しょうがないから行くとしましょ」



 諦めの早いセラが立ち上がると同時に、俺とジェシカも嫌々ながら立ち上がって……断固拒否する構えの魔王は、そのまま担ぎ上げて屋敷を出るしかなかった。


 副魔王については牢屋に片付けておくよう精霊様に依頼し、肩に担いだ魔王が暴れるごとに尻を引っ叩いて黙らせ、俺達はその『世界のケツ穴』なる洞窟へと向かう。


 もちろん移動手段は徒歩だ、そんな所へ馬車で行ったらスタックしてしまうし、そもそも馬がかわいそうだからである。

 何が出現するのかさえわからないというのに、臆病な動物を連れて行くわけにはいかないのだ。



「ちょっとっ、もう諦めて自分で歩くから降ろしなさいっ」


「ダメだな、お前は絶対に逃げるだろう、そうなったらいちいち走って捕まえるのがダルいからな……と、もう到着したらしいぞ、すげぇ小さい洞窟だ」


「勇者様、そろそろ魔王を降ろしてあげたらどうかしら? 町中では王都民にパンツを見られまくっていたみたいだし、ちょっとかわいそうになってきたわ」


「だな、ほら、最後まで歩かずに到着出来て良かったな、その温存した体力をここから十分に使って欲しい」


「何を言っているのかしらこの勇者は……」



 王都の西、少しの範囲に木々が生い茂ったようなエリアのど真ん中に、まるで何かを突き刺したかのような縦穴が開いている。


 人間が1人、どうにか通ることが出来るかどうかといった感じの広さなのだが、ここに居るメンバーで言えば俺とジェシカがギリ、セラと魔王なら普通に入ることが出来そうな感じだ。


 そしてもしゴンザレスが、その筋肉塗れの巨体でこの中に入ろうとすれば、入口で詰まってしまって完全な蓋となってしまうことであろう、そんな広さしか有していない穴である。


 で、その小さな穴から出てくるという仙人、明らかにウ○コとしか思えないブラウン師とやらの姿は……穴の奥から何やら呻き声のようなものが聞こえるではないか。


 地獄の苦しみを味わっているかのような、地中深くから聞こえるその呻き声……珍しくジェシカがビビッているな、大嫌いな幽霊に通ずるものがあったのかも知れない。


 それは徐々に大きく響き、いや接近して来ているのか、とにかく何者かが、穴の入口を囲んで立つ俺達に向かっていることはもう間違いがない、そして……



『うぅぅぅんっ! 出たぁぁぁっ! 今日も出たぞいっ、開通したぞいっ!』


「何なんだこのおっさんは……臭っせぇなおいっ!」


「ん? 我か、我は知っての通りブラウン師だよ」


「知らねぇよお前なんかっ! てか風呂とか入ってんのか?」


「風呂など入れるわけなかろう、こんな狭い洞窟の中で水を使ったら溺れ死んでしまうわい、それで、この仙人である我に何の用だ?」


「ホントに仙人なのかしらこの人?」

「その辺の浮浪者にしか見えないんだが……」


「うむ、我は仙人としてはまだまだ修行が足りん方でな、まぁ数百年の修行を経た者からしたらションベンみたいなものだよ」


「ウ○コじゃねぇのかよ、それで、その駆け出しションベン仙人のお前が、俺達に何を教えてくれるんだ?」


「我が専門分野であるグレート超合金のことであろう? あれは我のウ○コだ……というのは冗談なので殺害しないで欲しい、あれはな……と、こんな悪しき者が居る場所でそんなことを言って良いのかどうか……」


「あ、この魔王なら大丈夫だ、既に俺達が身柄を確保した状態だからな、調子に乗ったら痛い目に遭わせられることぐらい本人も理解しているはずだ」


「いや、そっちじゃなくてお前……」


「……マジで殺すぞこのウ○コ野朗、勇者様を何だと思っているんだ一体?」



 やはり鬱陶しかった駆け出しションベン仙人のブラウン師、完全にウ○コ野朗である。

 だが何も聞かずとも、俺達がグレート超合金について聞きに来たのだと判断する辺り、やはり仙人であるというのは本当らしい。


 もちろんコイツの言う『悪しき者』というのが俺であることについてはどうにかしないといけないし、ムカつくので用済みになったらブチ殺す所存だが……と、なぜだか穴の中に引っ込んでしまったではないか……



「おい、何か知らんが帰って行ったぞ、時間切れとかか?」


「いや、勇者殿が脅したのでビビッたのではなかろうか、もう一度呼んでみようか?」


『その必要はないぞ、我はブツを取りに戻っただけであるからな』


「ブツとは?」


「よいしょっ、また出たぞいっ、今日は快腸、じゃなくて快調じゃぞいっ……で、これがそのグレート超合金のサンプルだぞ、持って行くが良い」


『現物出たぁぁぁっ!』



 早くも現物が登場したグレート超合金、どうしてこの薄汚い仙人を自称する異常者がそんなモノを持っているのかということについては、もうどう考えても答えに辿り着きそうにない。


 だがその手にある小さな金属の塊は、間違いなく先程ゲットしたあの扉と同じ輝きを放っている。

 つまりそれがレプリカなどでない限り、グレート超合金そのものであるということだ。


 わけがわからない事態ではあるが、ここで現物と情報を同時に得ることが出来るというのであれば、今しばらくこの鬱陶しい奴を殺さずに様子を見よう。


 何かわかれば万々歳だし、結果としてそうなる可能性が極めて高いのが現状、ここからは少しばかり質問をして、コイツが専門にしているというこの金属について話を聞いていくこととしよう……

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