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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1010 久方ぶりの解放

「おいっ、鍵がないぞ鍵が、このクソババァ、途中で手に入るってのはガセネタだったのか?」


「わしゃ知らんわい、古より伝わる伝説をそのまま伝えただけじゃ、おぬしが誤ってスルーしたのであろう」


「チッ、鬱陶しいな……しょうがない、女神この扉を破壊しろ」


「勇者よ、そんなことをしたらここも亜空間に飲み込まれてしまうかも知れませんよ」


「まぁ、それはそうよね、どうにかして普通に開く方法を考えるしかないわ」


「やれやれって感じだな……」



 最後の最後、この扉の先には目的地が、古の国立おっぱい図書館が存在しているはずの所。

 そこで気が付いたのは、途中で入手することが出来るはずであった扉の鍵を持っていないということであった。


 もちろん扉の封印は強固で、女神であってもその鍵がないと、というか鍵を差したうえで相応の『儀式』をしないと、この扉をオープンすることが出来ないということがわかるような雰囲気だ。


 とりあえず話し合いをするが、戻って鍵をゲットしに行くのが良いのではないかという意見については暗黙の了解で誰も出さない。


 総務大臣のババァだけはそれを言いたそうな顔をしているのだが、さすがに足腰の関係で戻るのはイヤらしく、どうにかして『自分以外の誰か』がそのミッションをこなすという流れに持っていくことが出来ないか、必死になって考えている最中のようだ。


 だがもちろんそのような上手い話があるわけではなく、戻るなら全員で力を合わせて、そしてこの場でどうにかしたいのであれば、全員の知恵を振り絞って考えなくてはならないのである。


 周囲を見渡しても非常用の解錠装置のようなものは見当たらないし、巨大な扉の隣にある守衛小屋……ダンボール製だが、とにかくそこには誰も……何か居るようだが気にするところではないな。


 そもそもここはかなり昔に閉鎖され、封印された場所であるから、もし何か居たとすればそれは霊的な現象であって、これに気付いてしまうと厄介な反応をする仲間も出てくる、少し黙っておこう。


 いや、もしそうだとしたら霊感ゼロ、霊的センスゼロの俺に感じ取ることが出来ているのは不思議だな……まぁ、こんな世界のしかもこんな場所なのだから、少しぐらい不思議なことがあっても特に驚くべきではないか……



「はてさてどうしたものか、おい女神、何かこう、グッとくるような解決策を提示しろよ」


「そんなことを仰いましても……というかあの段ボールの小屋、何か居ませんか?」


「気にするな、じゃあ多少時間が掛かっても良いから、鍵ナシでどうにか扉を開ける方法を預言しろ」


「いえ、ですからそういうのは……ホントに何か居るんですが……出て来ましたし」


「……見るな、目を合わせたら負けだと思え」


「でもご主人様、あの人こっち来てますよ」


「・・・・・・・・・・」



 荘厳な雰囲気の巨大扉、その隣に設置されたその場に似つかわしいとは到底思えないダンボールの小屋、その中から知らないおっさんが出現して、どうやらこちらへ向かって来ているらしい。


 ミラやルビア、ジェシカなどがビビらないことを考えると、奴は霊的な何かではないということか。

 そして霊感ゼロの俺と、同じくその次元らしい魔王にも、その存在が感知されているということが、その仮説を裏付けてくる。


 おっさんの方を見てガヤガヤとし出す仲間達に、危険だから少し離れろと言って、俺は遂に気付かない振りをやめ、おっさんの姿をキッチリ肉眼で捉えた……普通の小汚いおっさんではないか……



「……おいおっさん、何だお前?」


「は~い、いらっしゃいいらっしゃい、占いの館だよ~、久しぶりのお客にはサービスするよ~」


「館って、ダンボールじゃねぇか、てかこんな場所で何やってんだ? どうやってここへ入ったんだ?」


「わしは、ず~っと、それこそず~っとここに居ったのじゃ、誰もやって来ない占いの館と一緒に、占い師として」


「意味がわからないわね、この場所はず~っと昔に封印されたのよ、あんたはどうして……」


「いや、ここが封印される前から、この場所で(違法に)占いをしておったのじゃ、まさか大人気じゃったこのおっぱい図書館が封印されるとは知らんでな、そのまま閉じ込められてしまったのじゃよ、いや~、全然気付かんかったわい、誰か教えてくれれば良いものを」


「占い師なのにですか? 占えば良かったんじゃ……」


「てか何で生きてんだよこんな場所で、早く死ね」


「まぁ、そう言いなさるな、おぬし等がここへ来ることぐらい、わしも占いで知っておったんじゃて、だから待っておったのじゃ」


「おせっかいなおじいさんね、待ってないで寿命を迎えれば良かったのに」



 全く理解不能な、ツッコミ所満載の怪しい占い師、そもそも古の封印されし図書館にずっと居て、それで死んでいないというのはどういう了見だと、怪しんだ仲間達から問い詰められるのは普通のこと。


 それを全く気にせず、自分の喋りたいことだけを喋り続ける鬱陶しい占い師は、その間にこちらで確認した限りではれっきとした人族。


 ぼんやりと突っ立っていた女神に耳打ちし、どういうことなのかと問うてみたのであるが、この件については特に問題に思っていなかった様子で、しかも疲れ切っていたらしく、話し掛けられたことにたいしてハッとしてしまうような反応。


 ボーっとするなと脇腹を抓り、現実世界に引き戻したところで改めてこの占い師の件に関しての質問を行う。

 すると女神の馬鹿はしばらく考えた後に、亜空間によって『時空が歪んだ』ことが、人族の寿命に作用してしまったのではないかと、そういう見解を示す。


 となると、おそらくこのおっさん占い師を外に連れ出したとしても、それからしばらくの間、おそらく通常の人族におけるここから先の寿命分程度、普通に生きてしまうことになるのではなかろうか。


 だとすると色々とあるべきこと、そうでなくてはならない原則に違反してしまうな。

 コイツはここから出さず、どうにかしてこの場でサッサと朽ち果てるように仕向けることとしよう。


 で、そんな考えを巡らせている間に自分語りを終えた占い師だが……どうやら俺達に占いの館を利用して欲しいという主張はそのままらしい。


 ダンボールで造っておいて何が館なのかと、その点においてもツッコミ入れたいところではあるのだが、いちいち言及するのが面倒なので、サッサと占いをさせるべきか。


 そうすれば、本当にもしかしたらではあるが、俺達が求めているおっぱい図書館の鍵の在り処を知ることが出来るかも知れないからな……



「え~っと、ちょっと俺達、失せ物があってだな、それを占いで探してくれないか? てか見つけないと殺す」


「よかろう、わしが占ってしんぜよう、どれどれ……ふむふむ、そういうことであったか……」


「あら、何かわかったのかしら?」


「うむ、ぼんやりとは見えおるのじゃが……ここから先は『水晶玉利用オプション』のご契約が必要となります……じゃ」


「ブチ殺すわよ、何でも良いから早くしなさいっ!」


「よかろう、ではちょっと失礼して……このっ、久しぶりに股間の水晶玉を……」


「どっから出してんだオラァァァッ!」



 パンツの中からそこそこのサイズの水晶玉を取り出す占い師のおっさん、どれだけ汚いというのだ、もし封印されし図書館で出会った謎の人物としてでなければ、もうこの時点で通報して憲兵に引き渡す、或いは直接抹殺するようなムーブである。


 しかしその水晶玉はホンモノのようであって、股間の何かが長い年月を経て変化したとか、そういうアレなタイプの存在ではないようだ。


 魔力を帯びた水晶玉が、おっさんの力によって光輝き、その透き通った球体の中に確かな未来を映し出す……



「ふむ、ふむふむふむ、なるほどそういうことであったか……」


「今度こそ何かわかったのね?」


「うむ、では占いの結果をお伝えしよう……今回は爆発オチです……じゃ」


「そんなこと聞いてねぇぇぇっ!」


「ほげろぱっ!」


「……おっと、うっかり殺してしまうところだったぜ」


「りょ、料金は銅貨3枚になります……じゃ」


「誰が払うってのよこんな占いに……」



 こちらの要望と全く関係のない内容を一方的に占い、それで正規の料金を要求してくる占い師。

 もしやここに封印されてしまう前もこんな商売をしていたのであろうか、だとしたら『館』がダンボールなのも頷けるな。


 しかしこの占い、確かに水晶玉に映し出された未来を元に伝えられたものであって、その内容が真か偽かと言われれば、それはまさしく真なのである。


 ということは今回の結末、それが爆発オチであるということは確定してしまったということだ。

 どうにかして否定してやりたいのだが、それが占いの結果である以上はもう曲げようがない。


 問題はどんな感じの爆発オチが俺達を迎えるのかということだな、小規模な、目の前の扉だけの爆発なのか、それともこの世界全体を巻き込むような、大規模で破滅的な爆発なのかということだ。


 ……まぁ、せっかく占い師のおっさんがまだ存命であるから、もう一度、今度はもっと詳細に占いをさせて、どういう内容の結末になるのかを具体的に話させることとしよう。


 床に転がっていたおっさんの胸ぐらを掴んで立ち上がらせ、薄汚い水晶玉を足蹴にして近くへ転がす。

 先程の『ツッコミ』によって大ダメージを受けてしまったおっさんは、フラフラしながらもどうにか水晶玉を拾い上げる……



「おいオラッ、その爆発オチとやらの詳細について占え、死にたくなかったら早くしろっ」


「う、うむ、では占ってしんぜよう……うぐっ、そうか、そうであったと……」


「1人でブツブツ言っていないでこちらにも情報を下さい、さもないとこの場で殺しますよ」


「うむ、実はわし、最初の最初からずっとウ○コを我慢しておってじゃな、これが次に加えられた衝撃によって堰を切り、尻の穴が大爆発を起こすでしょう……じゃ」


「爆発オチお前のケツ穴かよぉぉぉっ!」


「っと、勇者様、殴っちゃダメよ、このおじさんのお尻が爆発して、きっと悲惨なことになるわ」


「あぁ、こんな所まで汲み取り馬車はやって来れないからな、きっと扉の周辺が溢れた便所みたいになるぞ……おいおっさん、プルプルしてねぇでちょっと便所行って来い」


「無理じゃ、無理なのじゃ、この地には便所などない、古の図書館においては、あの本屋とか入るとやたらウ○コ行きたくなる現象に当たってしまった利用者が、ダッシュで外の公衆便所へ行っていたほどなのじゃ、それゆえ……」


「それゆえ……おっさん、お前この封印されていた期間のウ○コは……」


「ず~っと我慢しておったのじゃ、食べるものはなくとも、どういうわけかウ○コがしたくなる謎の空間じゃったでな、これまでの分が全て蓄積されておる」


「ざっけんじゃねぇぇぇっ!」



 いきなり大変もない事実が発覚してしまったではないか、これには女神も、そして魔王も俺達も驚き、そしてその事実に恐怖して後退りするのみ。


 この占い師のおっさんの中には、この図書館が封印されて以降の数万年、いやもっとなのかも知れないが、その期間における『毎日のウ○コ』が蓄積されているということなのである。


 それがどうやって収納されているのかもわからないのだが、女神の見立てによると、やはり長時間亜空間の近くに封印されていたことによる作用である可能性が高いとのこと。


 だがそれが爆発、つまりおっさんの言う『堰を切る』状態になってしまったとき、それがどのような姿でこの場に具現化するのか、全く見当も付かないらしい。


 これは大変に危険なことだ、おっさんはもう限界を迎えてプルプルをさらに強くしているのだが、ここでもうひと頑張り、自分と、それから無関係の俺達を救うための占いをして頂きたいところである……



「おじさん、ちょっとどうにかしてよあなた、ねぇ、このままじゃ作戦どころか、私達の全身が台無しになるわ」


「というか普通に生きていけませんね、そのまま女神様と共に神界へ向かうことを希望します、もしそうなってしまったらですが」


「ということだ、早くその水晶玉を使って、最低限俺達だけでも助かるための方法を確認するんだ、早くっ!」


「うぅぅぅっ、うっ、占ってしんぜよう……ふむ……扉、この国立おっぱい図書館の扉の前に……これはわしであるな、わしが立っておる、それから……消えた、わかったぞいっ、この結末は少女のひと振りによって、閉ざされた扉も、ウ○コの詰まった古の占い師も、歪んだ時空の狭間に磨り潰されて消えてしまいました……じゃ、あと何か爆発しておる……これは、大爆発は時空の向こう側でした、厳正に影響はありませんでした……じゃ」


「もっと具体的に言えよな……しかしだいたいわかった感じがするんだが、それは俺だけか?」


「えぇ、今の話の中で登場していたのはまず『少女』、つまり魔族で言えば300歳、人族で言えば18歳に達していない者のことですわ」


「うむ、つまりは本来この国立おっぱい図書館にも、あと魔王城の書庫にも入ることが出来ない年齢の……とりあえず全員ピックアップしよう」



 占い師のおっさんが見たのは確かに少女であったとのこと、つまりこのメンバーの中で18歳未満というと、ギリギリのミラと、それからどんな種族かを問わず、普通に未成年のリリィである。


 その2人を未成年チームとして分けて……どういうわけか魔王がそちらに移動しようとしていたため、引っ叩いて削除しておいたのだが、とにかく対象となるのは2人だけだ。


 次いでもうひとつの情報、少女の『ひと振り』についてなのだが、ここにもわかり易いヒントが存在していたではないか。


 扉にしろウ○コを我慢し続けて大変なことになっているおっさんにしろ、消え去るのは時空の歪みが生じたことによってなのである。


 つまりその『ひと振り』によってそんな事態を巻き起こすことが可能なのは……例の時空を歪める棒切れを所持しているリリィのみということになるではないか。


 これで完全に謎が解けた、もうおっさんの方は限界を迎えて久しく、今は古の時代より生き続けたことで培った精神力のみでケツ穴の爆発を抑えている状態だが、もう少しだけ我慢して、自分の死に場所となる扉の前へ移動して欲しい……



「ほらおじさん、もう少しだから頑張って下さい」


「うぅぅぅっ、うっ? もしかしてこの状況、わし、死ぬ……殺されるんじゃなかろうか……」


「チッ、そこに気付きやがったか、だがなおっさん、お前は本来もうとっくに死んでいるはずのゴミクズ野郎なんだ、今ここで、俺達が引導を渡してやることに感謝しろ」


「ひぃぃぃっ! こっ、ここまで生きておいて死にたくなどないわいっ、わしは便所を探しに行くっ、ここから出せっ、出すのじゃっ!」


「あっ、逃げやがったぞこのウ○コ野郎! リリィ、タイミングを合わせて一気にいけっ!」


「わかりました……今だっ、とりゃぁぁぁっ!」


「あっ、ここは……あぁぁぁっ、そんな……」



 少女によるひと振り、それは確かに扉の前に立った、走り回る最中にうっかりそこを通過してしまったおっさんを巻き込むかたちで実現したのであった。


 音もなく消滅してしまうおっさん、その最後の瞬間に見えたのは、死への恐怖によってウ○コを我慢しなくてはならないということを忘れてしまい、完全に『決壊および大爆発』する瞬間の、何とも言えない複雑奇怪な表情であった。


 だがそのおっさんも、そして長きに渡って蓄積され続けた大量のウ○コも、歪んだ時空によって生じた亀裂か何か、その人間には理解不可能であって、少なくともここではないどこかにおいて、きっと新たな宇宙の始まりとなるビッグバンを成し遂げていることであろう。


 その新しい世界の誕生は、いつの日か神界の知るところとなり、そしてこの世界のように、神や女神が統治することによって発展していくに違いない……まぁ、ベースとなったのはおっさんとそのウ○コであるのだが。


 で、肝心なのはその『脅威』についてではなく、後ろに存在している閉ざされた扉の方だ。

 リリィの一撃がどういうわけか効果を発揮し、扉は徐々に徐々に、下から順に光の粒となって消滅している……



「……あの、勇者に少しお聞きしたいのですが、ホントにいくつかです」


「何だ女神、つまらない内容だったら尻を蹴飛ばすぞ」


「えっと、まずあの武器は何なのでしょうか……あいたっ、お尻を蹴るのはやめなさいっ」


「知るかよそんなもの、武器屋で手に入れたんだ、全く何だかわかっていないがな、で、他には何かあるのか?」


「それとですね、この先は確かに封印された不正に亜空間を用いる図書館なのですが……何か別の亜空間と繋がってしまっていませんか?」


「そうなのか? 良くわからんが……精霊様、どうだ?」


「う~ん、おそらく別の亜空間とどこかで衝突……いえ、もしかしたら今の衝撃で亜空間が伸びて、それでぶつかったのかも知れないわ、で、くっついて行き来出来るようになったみたい、とにかく別の力で造られた空間が繋がっているのは事実よ」


「そうなのか、ということは……作戦の方もいけるんじゃねぇのかコレ?」


「だと思うわ、この変な武器の力があれば、亜空間の切り貼りなんて楽勝なのかも」


「あの、だからそのおかしな武器は私も与り知らない……いえ、何でもないです、はい」



 扉が開いたうえに、この先に広がっている国立おっぱい図書館とどこか別の、無関係の者が違法に生成したと思しき亜空間とが接続されてしまったことも確認された。


 女神はかなり困っている様子だが、俺達にとってはこの棒切れが非常に有用で、かつ期待を越える働きをしてくれることも判明したことになる。


 で、それの増産についてはまた研究所の方で、ついでに女神にも共犯者として参加させるかたちで解明していこう。

 今はこの先、図書館のある亜空間と、魔王城の書庫である亜空間の接続について考える時間だ……

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