【台本】『異端ノ黒』
台本名/『異端ノ黒』
作者名/キサキシノ
台本URL/https://ncode.syosetu.com/n4322ff
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上演時間目安:約5分
【登場人物】【配役表】
・魔女[女性]or魔法使い[男性]:
・N(ナレーション)[性別不問]:
※魔女or魔法使いとナレーションを一人でこなす事も可能です。
★希望の性別によって「魔女(女性)」か「魔法使い(男性)」をお選びください。
★本編セリフ内で<魔女or魔法使い>となっている箇所はそのご希望の方でお読みください。
★一人称の変更が可能性です。ご希望でしたら変更して使用してください(私→僕、俺など)
【使用方法】
台本を使ってくださる場合、説明欄などの所に
1.台本名
2.作者名
3.台本URL
の表記をよろしくお願い致します。
※注:著作権は放棄していません。
金銭の発生する使用方法/商用利用の場合、作者にご相談ください。
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▼本編スタート
01/N:足元から立ち上る炎が、その呪われし<魔女or魔法使い>の長い黒髪を先端から照らし侵食してゆく。
02/N:ルビーの様な瞳が炎の禍々しい赤を歪んで映し飲み込んでゆく。
03/N:人々から憎悪され、その存在の終幕を望まれた<魔女or魔法使い>は、最後に何を思うのか――。
04/魔:「ある時代――私は王を支え、国を支え、人々へ幸福を与えた」
05/魔:「次の時代――私は異端とされ、追われ、狩られる身となった」
06/魔:「最後の時代――呪われたこの体は燃やされ、灰と散る」
07/魔:「人間達よ、私の灰は世界へ降り注ぐ。
呪いは終わらない。永久に」
08/N:艶やかな黒髪がふわりと舞い、纏いつく赤い炎は宝石の粒の様に煌く。
09/N:絹の様な毛先が、灰と、散る。
10/N:灰は風に乗り、人々の頭上へと次々に舞い上がる――。
11/魔:「私は――<魔女or魔法使い>」
12/魔:「愛しき私の子ら、あぁ、愛しき私の世界よ」
13/魔:「お前達の事が愛おしいから。お前達が愛するこの肉の身体をくれてやろう」
14/魔:「私を恐れ敬うがいい」
15/魔:「私の姿を、そして――私が朽ちる、その瞬間を目に焼き付けて……くくっ、ふふふ」
16/魔:「私の絵を描き、私の像を彫り、毎夜のごとく私をその悪夢に映すといい」
17/魔:「私が最初に愛した人型よ。
どうかお前にも、この私の愛しき呪いが届くよう」
18/N:縛り付けられた<魔女or魔法使い>の足元から、闇が這いずり出てくる。
19/N:闇は炎と絡み合い、<魔女or魔法使い>の身体を蝕み、崩してゆく。
20/N:瞬く間に闇は空気に溶けて、人間達の瞳を染めていった。
21/N:<魔女or魔法使い>はその光景を眺めて、快感に打ち震えた。
22/魔:「世界が、私に、染まってゆく」
23/魔:「やっと――あぁ、やっと、私に染まる」
24/魔:「世界の全てが、私に、染まる」
25/魔:「何度強く望もうとも、絶対に私に屈服しなかった愛しき――あぁぁ……愛しき子よ」
26/N:<魔女or魔法使い>は顔を上げ、前方を見据えた。
27/N:その瞳からは嬉々として闇が躍り出る。
28/N:闇は鋭く空気を切り裂き、風に乗り、黒々とした豪風となり世界を走った。
29/魔:「さあ――今から、お前は、お前達は、私のものだ」
30/N:<魔女or魔法使い>の体が、折れる。
31/N:音を立てて人形の様に、力の抜けた<魔女or魔法使い>の体。
32/N:そこにもう<魔女or魔法使い>は居ない。闇となって愛しい者を食らうべく飛び立った。
33/N:闇はその灰を散らし、空を黒く染めながら、やがて一つの城へと辿り着いた。
34/N:城の人間を闇がなぎ倒してゆく。
35/N:真っすぐに闇は玉座を目指す。
36/N:玉座に座っていたその人物は、何事かに気が付いたように立ち上がる。
37/N:動きに合わせて、体に沿った純白の髪が波打つ。
38/N:何かを探す様に辺りを見渡している。
39/N:そこにそっと、闇の香りが漂い――勢いよく白い髪の人物の心臓を貫いた。
40/N:ふわりと<魔女or魔法使い>が姿を現す。
41/N:ゆっくりとくずおれる白い髪の人物を、優しく抱きとめるようにその頬に手を伸ばした。
42/N:するりと頬に指を滑らせ、満足そうに微笑む。
43/魔:「私が愛したのはお前であったか、それともお前の親であったか、そのまた親であったか?
それとも前世のお前か?」
44/魔:「そうだ――その目だ」
45/魔:「決して私に屈せぬその瞳。死するこの瞬間ですら私を拒もうというのか」
46/魔:「世界が、黒に染まろうとも」
47/魔:「お前以外の全てが、ひとつ残らず、私に染まろうとも?」
48/魔:「そうか――それがお前の答えか」
49/魔:「あぁ……つまらぬ、つまらぬ」
50/魔:「呪いはお前を貫き、その身は私の闇に染まった。なのに」
51/魔:「お前の瞳は濁らない」
52/魔:「憎らしい」
53/魔:「その曇りなき宝石のような瞳を染めたかった」
54/魔:「お前達の世界には、私の様な闇の居場所が無かったから」
55/魔:「残念だ――あぁ、いや、ふふふ――とても嬉しく思う」
56/魔:「だって、そうだな。
お前を、お前の世界を染めるまで、私の遊びはまだまだ終わらないのだから」
57/N:<魔女or魔法使い>に抱き留められた白い髪の人物が顔を上げた。
58/N:命が潰えたはずのその体がゆっくりと動き出す。
59/N:それと同時に<魔女or魔法使い>の姿は淡く空気に溶ける。
60/魔:「さあ、再び遊ぼう」
61/魔:「お前が私に染まるまで。私という世界と――戦え!」
62/N:黒く染まった世界が、白い髪の王を嘲笑った。
63/N:闇と化した人間が一斉に立ち上がる。
64/N:その世界を目にしてなお――王の瞳は曇ってはいなかった。
-END-