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【台本】『異端ノ黒』

作者: キサキシノ

台本名/『異端いたん()くろ

作者名/キサキシノ

台本URL/https://ncode.syosetu.com/n4322ff


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


上演時間目安:約5分


【登場人物】【配役表】

・魔女[女性]or魔法使い[男性]:

・N(ナレーション)[性別不問]:

※魔女or魔法使いとナレーションを一人でこなす事も可能です。


★希望の性別によって「魔女(女性)」か「魔法使い(男性)」をお選びください。

★本編セリフ内で<魔女or魔法使い>となっている箇所はそのご希望の方でお読みください。

★一人称の変更が可能性です。ご希望でしたら変更して使用してください(私→僕、俺など)


【使用方法】

台本を使ってくださる場合、説明欄などの所に

1.台本名

2.作者名

3.台本URL

の表記をよろしくお願い致します。

※注:著作権は放棄していません。

金銭の発生する使用方法/商用利用の場合、作者にご相談ください。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇



▼本編スタート


01/N:足元あしもとからのぼる炎が、そののろわれし<魔女or魔法使い>の長い黒髪くろかみ先端せんたんかららし侵食しんしょくしてゆく。

02/N:ルビーの様なひとみが炎の禍々(まがまが)しい赤をゆがんでうつし飲みんでゆく。

03/N:人々(ひとびと)から憎悪ぞうおされ、その存在の終幕しゅうまくを望まれた<魔女or魔法使い>は、最後に何を思うのか――。


04/魔:「ある時代――私は王をささえ、国を支え、人々へ幸福こうふくあたえた」

05/魔:「次の時代――私は異端いたんとされ、われ、られる身となった」

06/魔:「最後の時代――呪われたこの体は燃やされ、灰とる」

     

07/魔:「人間達よ、私の灰は世界へそそぐ。

   呪いは終わらない。永久とわに」


08/N:つややかな黒髪くろかみがふわりとい、まといつく赤い炎は宝石のつぶの様にきらめく。

09/N:きぬの様な毛先けさきが、灰と、る。

10/N:灰は風に乗り、人々の頭上ずじょうへと次々(つぎつぎ)い上がる――。


11/魔:「私は――<魔女or魔法使い>」

12/魔:「いとしき私の子ら、あぁ、いとしき私の世界よ」

13/魔:「お前達の事がいとおしいから。お前達があいするこの肉の身体からだをくれてやろう」


14/魔:「私をおそうやまうがいい」

15/魔:「私の姿を、そして――私がちる、その瞬間しゅんかんを目に焼き付けて……くくっ、ふふふ」

16/魔:「私の絵をえがき、私のぞうり、毎夜まいよのごとく私をその悪夢あくむに映すといい」


17/魔:「私が最初にあいした人型ひとがたよ。

   どうかお前にも、この私のいとしき呪いがとどくよう」


18/N:しばり付けられた<魔女or魔法使い>の足元から、やみいずり出てくる。

19/N:闇は炎とからみ合い、<魔女or魔法使い>の身体からだむしばみ、くずしてゆく。

20/N:またたに闇は空気にけて、人間達のひとみめていった。

21/N:<魔女or魔法使い>はその光景こうけいながめて、快感かいかんふるえた。


22/魔:「世界が、私に、まってゆく」


23/魔:「やっと――あぁ、やっと、私にまる」

24/魔:「世界の全てが、私に、まる」

25/魔:「何度強く望もうとも、絶対に私に屈服くっぷくしなかったいとしき――あぁぁ……いとしき子よ」


26/N:<魔女or魔法使い>は顔を上げ、前方ぜんぽうえた。

27/N:そのひとみからは嬉々(きき)としてやみおどり出る。

28/N:やみするどく空気を切りき、風に乗り、黒々(くろぐろ)とした豪風ごうふうとなり世界を走った。


29/魔:「さあ――今から、お前は、お前達は、私のものだ」


30/N:<魔女or魔法使い>の体が、れる。

31/N:音を立てて人形にんぎょうの様に、力のけた<魔女or魔法使い>の体。

32/N:そこにもう<魔女or魔法使い>はない。やみとなっていとしい者をらうべくび立った。

  

33/N:やみはその灰をらし、空を黒くめながら、やがて一つの城へと辿たどいた。

34/N:城の人間をやみがなぎたおしてゆく。

35/N:っすぐにやみ玉座ぎょくざ目指めざす。

  

36/N:玉座ぎょくざすわっていたその人物は、何事なにごとかに気が付いたように立ち上がる。

37/N:動きに合わせて、体に沿ったじゅんぱくかみなみつ。

38/N:何かをさがす様にあたりをわたしている。

39/N:そこにそっと、やみかおりがただよい――いきおいよく白いかみ人物じんぶつ心臓しんぞうつらぬいた。


40/N:ふわりと<魔女or魔法使い>が姿すがたあらわす。

41/N:ゆっくりとくずおれる白いかみ人物じんぶつを、やさしくきとめるようにそのほほに手をばした。

42/N:するりとほおゆびすべらせ、満足まんぞくそうにほほむ。


43/魔:「私があいしたのはお前であったか、それともお前の親であったか、そのまた親であったか?

   それとも前世ぜんせのお前か?」


44/魔:「そうだ――その目だ」

45/魔:「けっして私にくっせぬそのひとみするこの瞬間しゅんかんですら私をこばもうというのか」

46/魔:「世界が、くろまろうとも」

47/魔:「お前以外の全てが、ひとつ残らず、私にまろうとも?」


48/魔:「そうか――それがお前の答えか」

49/魔:「あぁ……つまらぬ、つまらぬ」

50/魔:「呪いはお前をつらぬき、そのは私のやみまった。なのに」

51/魔:「お前のひとみにごらない」

    

52/魔:「にくらしい」


53/魔:「そのくもりなき宝石のようなひとみめたかった」

54/魔:「お前達の世界には、私の様なやみしょかったから」

55/魔:「残念ざんねんだ――あぁ、いや、ふふふ――とてもうれしく思う」

56/魔:「だって、そうだな。

   お前を、お前の世界をめるまで、私のあそびはまだまだわらないのだから」


57/N:<魔女or魔法使い>にめられた白いかみ人物じんぶつが顔を上げた。

58/N:いのちついえたはずのその体がゆっくりと動き出す。

59/N:それと同時に<魔女or魔法使い>の姿はあわく空気にける。


60/魔:「さあ、ふたたあそぼう」

61/魔:「お前が私にまるまで。私という世界と――たたかえ!」


62/N:黒くまった世界が、白いかみの王を嘲笑あざわらった。

63/N:やみした人間が一斉いっせいに立ち上がる。

64/N:その世界を目にしてなお――王のひとみくもってはいなかった。



-END-


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