白雪姫と林檎の魔女ー7
重力には従わなければならない。
決して疚しいことではない。
そう。
これから行う行為は、重力に従うだけなのだ。
何度も何度も自身に言い聞かせる。
りんごは、彼女自身の髪を可能な限り耳にかけた。
これから行うことに邪魔にならないようにする為である。
そして、美姫の髪を整えながらゆっくりと自身の顔を近づけていった。
彼女の鼻を刺激する柑橘系の仄かな香り。
ごくり。
思わず生唾を飲む。
「う、うーん……。」
「あっ、美姫起きた?おはよう。」
「うん、おはよう。」
ニッコリ。
笑みを浮かべる美姫。
つい寝てしまい、数分後に目を覚ました美姫。
寝ぼけ眼で頬笑む。
その姿は、絵画のような美しさであった。
りんごにとってはその瞬間の彼女の美しさに何百万、何千万払える。
りんごは、思わずそのような考えを抱いてしまった。
りんごの膝枕を十分に堪能したのか、いそいそと彼女から離れた。
何事もなかったかのように振る舞うりんご。
しかし、彼女の頬と耳は、真っ赤に染まり、熱を帯びていた。
「あー……ごめん、寝ちゃってたね。……そろそろ帰らないと……。」
未だ眠そうな美姫。
目を擦りながらポヤポヤと呟いた。
外はもうすっかり暗くなっていた。
街灯と、民家から漏れる光が周囲を照らしている。
「そっか、しょうがないよね。送ってくよ。」
立ち上がるりんご。
「いや、いいや。一人で帰るよ。」
「え、でも……。」
「大丈夫。……それより……。」
美姫がりんごの耳元へ自身の口を持っていく。
それは、彼女が数時間前にりんごにされたことを真似た行為であった。
される側に周ると、ここまで焦るのだな。
なぜか客観的な感想を持つりんごであった。
それは、りんごが焦り過ぎた故にであるのかもしれない。
「こ、今度はほっぺじゃなくてちゃんと口にしてね……。」
妖艶な吐息を混じらせて、紅潮した美姫が囁いくのであった。




