白雪姫と林檎の魔女ー6
「えっと……ひ、膝枕……お願いしたいなぁ……。駄目……かな?」
モジモジ。
目が合うわけがない。
美姫が羞恥からわざと視線を落としているからだ。
それは彼女の予想の範囲内であった。
断る理由などない。
りんごは、笑顔を崩さずソファーに腰かける。
そして、自身の太ももをパンパンと叩いた。
サッと凄まじい勢いで彼女の太ももに頭を乗せて寝転ぶ美姫。
その身体を動かす速さは、彼女の動きの中でも上位に入る速さだろう。
「ひんやりしてて気持ち良いなぁ……。」
目を瞑り、幸せそうに頬を緩ませる美姫。
「気に入ってもらえてなによりです、お嬢様。」
美姫に褒められたりんごがおどけてみせる。
余裕そうに見えるりんごであった。
しかし、内心ではほっとしていた。
この太ももを維持するのにいくらかけただろう。
美姫に隠れ、トレーニングしたり、美容クリーム等を使用してきたのだ。
言うなれば、これは彼女専用の太ももにする為に努力したものである。
気に入ってもらえなければ困る。
そのままで過ごす二人。
何をするでもなく、ただ掛け時計の秒針の音だけがリビングの中で、彼女らの耳を刺激していた。
二人の身体の境目がなくなり、解け合っていくような感覚。
それも悪くないな。
そう思う二人であった。
安心し、目を瞑っていた美姫。
それは次第に寝息に変わっていったのであった。
美しい。
それ以外の感想を、りんごは持つことが出来なかった。
今なら何をしても気づかないのではないだろうか。
りんごの中の濁った欲望が大きくなっていく。
それは、りんご自身にも十分に分かっていた。
そして、それが止めることが出来ないということも分かっていた。
ゆっくりと美姫の頬に触れる。
頬にかかる髪が揺れ、流れに沿い、重力に従うように落ちていく。
美姫の寝顔がよく見える。
家族以外、誰にも見せたことのないであろう無防備な表情。
理性の限界を迎えた。
りんごには、それが分かった。




