二人のグレーテルー15(完)
「おはよう、まいちゃん。」
「……。」
聞こえていないのだろうか。
まいは無反応であった。
「おはよう?……ま、まいちゃん?」
「……。」
翌日の朝。
既に疎らに生徒が集まりかけている教室内。
まいは既に自身の席に腰かけていて、いつも通り大人しくしていた。
教室内が、どこかおかしい。
しかし、それが分からない。
教室に着くと、すぐにまいへ挨拶をしたのであった。
しかし、そんな彼女の挨拶に対し、まいは無視するのであった。
どこか彼女の様子がおかしい。
聞こえていないだけだろう。
そう思い、再度挨拶をした。
結果は同じだった。
まるでまいには自分が見えていないようであった。
違和感の原因が分かった。
あいを取り巻く彼女の友人達が、いつもと違い、少し離れた所にいたのだ。
あいと話すまい。
いつも通りな彼女。
違うのは、あいがいる場所は、今まで自分がいた所であることだけだ。
二人の様子を見つめるまいの友人。
なぜいきなり?
なぜあいつが私の場所を奪った?
なぜ私は拒絶された?
頬を伝う涙。
そこで、彼女に対し、友情以外の感情があることに気づくのであった。
必ず取り返してやる。
どんな手を使ってもだ。
彼女の身体に汚くこびり着く無数の赤い痕を睨みながら決意するのであった。
「ねぇ、まい?」
「……なに?」
「死が二人を別つまでって、あるじゃない?」
囁くあい。
「……そう……だね。」
「でもそれって長くても精々百年そこらでしょ?」
「……そうだね。」
「でも私、それだけじゃ満足出来ないんだ。まいもそうでしょ?」
「……。」
「……まぁ、良いや。私はそれが嫌なの。だから、死んでもずっと一緒にいよう?」
背中に当たる固いもの。
一度経験したまいには、それの痛みが分かっていた。
短く小さな悲鳴を上げる。
そんなまいの情けない声に対し、あいはまるで赤子をあやすように頭を撫でた。
「そ、そうだね。……死んでも一緒だよ。わ、私も一緒にいたい。だ、だから止めて……。」
震えが止まらない。
彼女の涙は既に、枯れ果てていた。
もう逃げられない。
彼女の叫びは誰に届くこともなかった。




