二人のグレーテルー13
ガチガチガチガチ。
何かが小刻みにぶつかる音。
それが、自身の歯の音であると、まいはまだ気づいていなかった。
それほど余裕がなかったのだ。
「私の目的が知りたいんだよね……?ふふ、良いよ、教えてあげる。」
自身の髪を耳にかけ、まいの耳元まで顔を寄せる。
近づくあいに、目を瞑り無意識に防御反応をするまい。
「私もまい以外と仲良くしないから、他の奴らと仲良くしないで。」
依存。
あいがまいへ抱いているそれの名前であった。
しかも、それはかなり重度なものであった。
呆気に取られるまい。
目の前の彼女を捉えられず、ピントの合わないカメラのように景色がぼやける。
「返事っ!返事しなさいよっ!」
あいが声を荒らげる。
まいの肩を掴み、力を込める。
頭の中がぐちゃぐちゃになっていたまい。
なぜこんなことになってしまったのだろう。
もし普段からあいともっとコミュニケーションを取っていれば違ったのだろうか。
そうすれば、自分は今も呑気に寝息を立てていたのではないだろうか。
そんな無意味な妄想をしていた。
あいに叫ばれ、一気に現実に引き戻される。
もう訳が分からない。
言葉にならない叫び。
ただただ感情が爆発しただけのもの。
まいは、そんなものを目の前にいるあいへぶつけた。
鉄の味。
喉から鋭い痛み。
まいは堪らず咳き込んだ。
今まで聞いたことのない大声まいを上げるまい。
そんな彼女に、一瞬怯むあい。
しかし、すぐさま頬笑み余裕を見せた。
「……どう?落ち着いた?」
あいの言葉。
その顔は、慈愛に満ちた優しいものであった。
こんな状況でなければ安心することの出来るようなものだ。
しかし、今そんな表情をされようが、まいの心は穏やかになることはない。
それどころか、より一層荒れ狂ってしまった。
なぜこんなことになってしまったのだ。
なぜこんなに苦しい思いをしなければならないのだ。




