二人のグレーテルー12
「……がっ!?あっ、ぐうっ!?」
騒ぐまいであったが、死にそうな苦しみに言葉が出なかった。
苦しい。
息が出来ない。
まいの首を両手で絞めるあい。
その顔は、今まで見たあいのどの顔よりも恐ろしかった。
「あぁ……可愛い……。私とほとんど同じはずなのに私なんかと比べ物にならない……。なんで気づかなかったんだろ……。もっと、もっと見せて……。もっと、もっともっともっともっともっともっと……。」
興奮し、笑顔のあいの頬は真っ赤になっている。
息が上がり、肩が揺れていた。
ポタリポタリ。
あいの口から涎が垂れる。
彼女の下でもがくまいの顔にそれが落ちていく。
それは、常軌を逸した姿であった。
「あぁ、ごめんね、まい。汚しちゃったね。」
あいはそう言うと、まいの顔に自身の顔を近づけるのであった。
ペロリ。
長く滑らかに動く舌。
それは、蛇などの爬虫類を思わせた。
そんな舌を、まいの顔に這わせるのであった。
このまま死んでしまうのだろうか。
こんな形で両親に会いに行くことになるなど、まいは夢にも思わなかった。
ふわふわとした浮遊感に包まれる。
意識が遠退くまい。
ゆっくりと目を閉じるのであった。
気絶しかけるまい。
あと少しで意識がなくなる。
その瀬戸際で、あいが彼女の首から手を離すのであった。
「ごほっ、ごほっ。」
咳き込むまい。
「苦しい?ごめんね。でも、まいが可愛いのが悪いんだよ?」
そう言うあい。
彼女はなぜか制服を着ていた。
確証はないが、まいには彼女の身を包んでいるそれが自分のものであると思えた。
事実あいが着ているそれは、まいの制服であった。
怖い。
あいの大きい目に、自分が反射する。
そこに写るのは、涙とあいの唾液でぐしゃぐしゃになっている自分の姿だ。
彼女の瞳に閉じ込められた自分は、そこから逃げ出せずに助けを求めているようだった。
普段は大きく愛らしい印象のあいの瞳。
しかし今は、違う。
それはまるで、まいを逃がさないようにと、しっかり捉えている肉食動物のようであった。




