二人のグレーテルー11
「私達ってさ……声はちょっと違うけど、見た目ってほとんど同じなんだよね。まいも知ってると思うけど、まいには右目のとこに黒子があって、髪の分け目が逆ってことしかほぼ差はないんだよ。私はまいのこと他の奴らより知ってるから私と違うとこなんていっぱい知ってるよ?でもそいつらから分かる違いって悲しいけど、その二つだけなんだよね……。」
いつにもまして饒舌なあい。
「……。」
口の回るあいとは違い、何も言葉が出ないまい。
彼女には、今この場において、最も適切な言葉が浮かばなかったのだ。
「その上で聞くね?……これ、誰?」
まいへ再度、画面を見せる。
目の焦点が合っていない。
笑っているのに恐怖心しか湧かない表情をしていた。
普段とは逆の分け目。
そして、右目の目尻には、アイライナーで描いたのか、それともペンで描いたのかは分からない。
しかし、そこにははっきりと黒子のようなものがあった。
そんな彼女と共に写された学生証は、まいのものである。
被写体は、間違いなくあいだ。
しかし、写し出された彼女の姿はあいではなく、まいであった。
自分だ。
「……私……に見える……。」
まいは震える声で言った。
「まい、これネットに流して良い?」
「……え?」
まいは、自身の耳を疑った。
今あいは、何を言った?
ネットに流すと言ったのか?
「あ、あい?嘘……だよね?や、止めてよ……お願い……。」
「……それはまい次第かなー……。」
楽しそうに微笑んでいるあい。
それは、子供がおもちゃで楽しく遊んでいるような無邪気な笑顔であった。
「何がしたいの!?どうしちゃったの、あい!」
まいの問いかけに、無言のあい。
まいを見ると、ゆっくりと近づくのであった。
怖い。
今まで一緒に過ごしてきた彼女とは別人のようであった。
ギシッ。
ベッドの軋む音。
両手を縛られて動けないまいの上に馬乗りになるあい。
「あいっ!ねぇ、あい!聞いてるの!?」
叫び声。
それは、彼女の端正な顔が崩れるほど激しいものであった。




