二人のグレーテルー9
その言葉とそれらの痛みを最後に、まいの意識は途絶えた。
ドサリ。
その場に倒れるまい。
「……ふふふ。」
両手首の痛み。
身体中の痛み。
それらの刺激でまいの目が覚める。
ゆっくりと目を開いた。
「……ひっ!?」
ギシッ。
グググッ。
何かに捕まれ両手が動かない。
奇妙な感覚。
目の前に、自分の顔。
思わず悲鳴を上げるまい。
「ふふ、びっくりした?」
目の前の自分が笑いかける。
違和感。
なぜ自分からあいの声がするのだ?
その答えはすぐに分かった。
「な、なんで私の真似してるの……?」
「やっぱすぐに分かるか……。でも本人でも一瞬は騙されるんだね?やっぱ私達似てるんだ……。」
そう言うあいの顔は、どこか嬉しそうだった。
色々聞きたいことがある。
言いたいことがある。
しかし、まいにはあいへ、何よりも先に言うべきことがあった。
「これ……なに?取り敢えず外してもらって良いかな?」
まいが言うこれ。
それは、彼女の両手首を固定しているロープであった。
それらはそれぞれベッドの骨組みにしっかりと固定されていた。
このせいで手首に痛みがあったのだろう。
また、寝返りが打てず、身体中が痛んだのだろう。
「あっ、ごめんね。痛い?」
心配そうにまいに言う。
それは、普段彼女が心配する時に見せる表情と全く同じであった。
「いや、痛いけどそれよりこれどういうことなの?」
何かの冗談なのだろう。
この時のまいは、まだ余裕があった。
「ならちょっと弛めるね。」
あいが微笑んでで言う。
動けずに仰向けでモゾモゾとするまい。
そんな彼女の上に覆い被さりながら手首に繋がれているロープを弛める。
「い、いやいや、そう言うことじゃなくてね……?……あ、あい?」
焦り始めるまい。
自身の声が、あいに届いていない。
そんな気がしはじめていた。
「……ふふ、今から良いことするから見ててね?」
そう言うあいの表情は、妖しくもおぞましかった。




