二人のグレーテルー7
「あい、ごめん。やっぱ私この子と食べるね。あいも自分の友達と食べた方が良いんじゃない?仲直りしたし、話すことあると思うよ?」
「……え?ま、まい?」
あいの顔は、驚きに染まっていた。
目を見開き、瞬きすることも忘れてしまっていた。
まいは、友人を選んだ。
「……まいちゃん?」
「なに?」
「い、良いの?その……結城さんのこと……。」
恐る恐る言う。
そう言う彼女の顔は、心配そうに眉を垂らしていた。
結城さん。
あいのことだ。
双子の二人であるが、彼女にとっては、まいは友人であり、彼女の呼び名はまいちゃんである。
しかし、あいは単なるクラスメイトであり、まいの双子の姉妹である。
要は親しくない知り合い程度なのだ。
それ故、彼女は結城さんであり、距離のある人物なのである。
そっくりな顔でも彼らにとって、あいはあいであり、まいはまいであったのだ。
そんなことは、当たり前のことではある。
しかし、それは重要なことであった。
だからこそ二人は自身の友人は大切にするべきなのだ。
そして、二人は互いの交遊関係に干渉すべきではないのだ。
それが、まいの考えであった。
「うん、大丈夫だよ。家に帰れば話出来るもん。心配してくれてありがとう。」
にっこりと笑う。
「う、うん……。」
彼女は、まいの汚れのない笑みを見て、恥ずかしそうに耳まで真っ赤にして目を逸らすのであった。
せっかく仲直り出来たのだ。
彼女は彼女の友人といた方が良いだろう。
これは、まいなりのあいへの優しさであった。
しかし、その優しさは、あいに届くことはなかった。
それは、その日の夜のことであった。
帰宅したまい。
いつものように、夕食を済ませ、入浴をし終え、後は寝るだけとなっていた。
不思議とあいと話すことはなかった。
まいが、彼女へ話しかけたり、祖父母が心配そうにしていた。
それらに対し、彼女は上の空、適当な返事をするばかりであった。




