二人のグレーテルー5
「なによもー、双子の姉妹なんだから隠さなくても恥ずかしがらなくても良いでしょ?」
まいの言葉。
まいが、湯桶で浴槽の湯を汲む。
そして、入浴中のあいに構うことなく自身の身体へバシャバシャと豪快に湯を欠けるのであった。
湯が飛び散り、目を瞑るあい。
そんな彼女に構わず自身に湯をかけ続けるまいであった。
いつも引っ張っていくのはまいではなく、あいの方だった。
それなのに、今主導権を握っているのは、紛れもなくまいである。
ザバーン。
飛び込むような勢いで、浴槽へ入るまいであった。
「ふー気持ちいいー。」
それほど大きくない浴槽。
必然的に、二人の肌と肌が触れ合う。
無理をしている。
あいは、すぐにそれに気がついた。
「ありがとう……まい……。」
謝罪ではなく、感謝の言葉が出た。
「……いいよ。だって私達、双子だもん。死ぬまで一緒でしょ?」
まいが言った。
体育座りしているあい。
そんな彼女を、後ろから包み込むように抱き締めるまいであった。
入浴後、二人仲良く互いの髪を乾かしあった。
その姿を見てニコニコと微笑んでいる彼女らの祖父母。
厳密に言えば、本当の家族ではないのかもしれない。
しかし、そこには本当の家族の愛が確かに存在した。
自室に一人きりになるまい。
一人になれば、当然今の今まで考えまいとしていたことが、嫌でも脳裏に浮かんでしまう。
そして、もう一つ思い出してしまった。
「お腹空いた……。」
空腹とこれからへの不安で、切なくなるあい。
涙が込み上げてくる。
駄目だ。
我慢しろ。
一度決壊してしまえば止まらなくなってしまう。
「こんこんこーん。」
がちゃ。
あいの部屋の扉が開く。
その声は、まいのものであった。
そして、声の意味は、恐らくノック音なのだろう。
「あいー、お腹空かない?ポテチ食べよー?」
ニコニコ。
その笑顔にあいの沈んでいた心は救われた。
「うん、食べよう。一緒に行かない食べよう!」
不安はある。
しかし、あいはもうくよくよするのは止めた。
まいが隣にいてくれる。
それだけで良いではないか。
そう、他の者などどうでも良い。
彼女がいてくれれば良いのだ。




