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甘え嬢's  作者: あさまる
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二人のグレーテルー3

カラオケに、友達数人と来ていたあい。

いつも通りに歌う順を決め、歌っていた。


「それにしてもさー。」

クラスメイトの一人。


聞き取りずらいだろうとやや大きめの声。

それは、あいを見ながら発したものであった。

その為、あいも聞き逃さないようにと集中して聞いていた。


「あんたの家ってお婆ちゃんとお爺ちゃんの家なんでしょー?」


「そうだよ、まいと二人で住ませてもらってる。」


「いいなー。二人とも優しいでしょ。」


「まぁね。」

嘘偽りのないことだ。


二人はあいとまいを、大切に育てた。

そして、それはこれからも変わらないだろう。


時に厳しく、時に優しく接してくれたのだ。

ただ甘いだけでない。

そこには、本当の愛情がある。

あいはそう思っていた。


「うちなんて親がうるさくてさー。」


「あー、そうなんだ。」

少しの苛立ちを感じるあい。


この年頃なら親を疎んでも仕方がないか。

あいは自身に言い聞かせ、話を聞いていた。


「あいが羨ましいなー。」


耐えろ。

彼女には悪気はないんだ。



「あんたの双子の片割れの……名前なんだっけ?まぁ、いいや。雰囲気違い過ぎじゃない?」


「あー確かに。顔はあんたに似て綺麗なのにあんな暗かったらもったいないよねー。」



こいつらは何を言っている?

目の前が真っ赤になるような感覚。

頭が沸騰しそうなほど熱い。


考えるよりも先に身体が動く。

気がつくと、手の平に痛みを感じる。

そして、両肩にはずしりとした重い痛み。



それらから自身が、彼女を叩いてしまったと分かってしまった。

両肩の痛みは、彼女を押さえ込んでいることによるものであった。

手の平の痛みは叩いてしまったせいであった。


「あい!落ち着いて!」


「あい止めて!止めてって!」


緊迫した今の状況に不釣合いな愉快なBGM。

そして、場所にそぐわない彼女らのいざこざ。

あいを必死に止めようとするクラスメイト達。


一方のあいは、我に帰ると立ち尽くしていた。

そして、叩かれたであろうクラスメイトは、あいを涙目で見ている。

その目は悪意に満ちた、睨むようなものではなかった。

ただ、恐怖に怯えているように見えた。

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