二人のグレーテルー2
「あいー、今日カラオケ行こうよー。私久々にストレス発散したーい。」
あいへ向けられた、クラスメイトのそんな言葉。
それは、ストレスなどと無縁に聞こえる、何も考えてないような能天気な声色であった。
特に断る理由のなかったあい。
二つ返事で彼女の誘いを受けた。
そして、ある場所へ向かった。
それは、一人で自身の席に座り、本を読んでいるまいの元である。
「今日カラオケ行ってくるからおばあちゃんに言っておいて。」
「……分かった。晩ご飯は?」
あいと一切目を合わせないまい。
その微動だにしない目は、本よ中の活字を追っているように見えた。
「いらない。多分皆で食べてくるから。」
「……分かった。」
未だあいを見ない。
話をしている彼女ら。
しかし、視線が合うことは一度もない。
「ま、まいあのさ……。」
「あいー、話終わったー?」
あいが、まいへ話しかけようとした。
しかし、それは彼女へ話しかけるクラスメイトの言葉によって遮られてしまった。
最近二人の間での会話がめっきり減った。
それは、あいもまいも思っていたことであった。
あいは、友達と話すことの方が多くなった。
双子である二人は、今までどこへ行くにも一緒だった。
しかし、歳を重ねていくにつれ、それは常ではなくなっていった。
一人で歩く通学路。
成長し、身体が大きくなったはずなのまい。
しかし、彼女にはなぜだか、あいと二人で帰っていた小さな頃よりも、道幅が広く思えた。
寂しいと思うのは、一人だからだろうか。
それとも、夕日に照らされた街がそういう気持ちにされるのか。
「……どっちも……だよなぁ。」
ポツリ。
独り言を呟くまい。
「あい……今頃友達と遊んでるんだろうな……。」
自然とため息が溢れる。
トボトボと歩いていると、家にたどり着いた。
いけない、いけない。
暗いままだと心配させてしまう。
あいは、パチンと両頬を叩き、その後に玄関の扉を開けた。
「お爺ちゃん、お婆ちゃん、ただいまー!」
今出せる一番明るい声。
まいはそれとともに家の中へ入っていった。




