二人のグレーテルー1
その知らせを聞いたのは、病院に向かう車の中であった。
ゴールデンウィーク。
それを利用し、母方の祖父母の家へ遊びに行っていた中学生の双子の姉妹。
結城あいと、まい。
二人は瓜二つな見た目をしている。
パッと見では、彼女らの両親ですら一瞬考えるほどに外見は似ていた。
まいの右目の目尻には、黒子がある。
そして、分け目が左右が逆である。
その二点しか、目立った違いはなかった。
そんな二人が聞いた知らせ。
両親が交通事故で、緊急搬送された。
急いで祖父の運転する車に乗り、地元の病院へ向かう二人。
数十分走行した。
そして、そこで聞いたのだ。
もう、急いでも意味がないということを。
「……あいちゃん、まいちゃん……。落ち着いて聞いてね。」
涙を堪える彼女らの祖母。
言わなくても分かる。
「駄目、だったん……だね……。」
あいの言葉。
涙を堪えている為か、声が上擦っている。
無言の祖母。
俯いたままであった。
運転席にいる祖父の顔は見ることが出来なかったが、何も言わなかった。
それらから、結果を察したまいは、両手で顔を押え、震えていた。
その後のことは、二人はあまりよく覚えていなかった。
ただ無情に時が進んでいった。
数年後、あいとまいは、母方の祖父母の家に住んでいた。
少し大きめな制服に身を包んだ二人は、同じ高校に進学したのだった。
見た目は相変わらず瓜二つ。
しかし、性格は、真逆になっていった。
明るく、運動神経抜群なあい。
そんな特徴から、彼女の周りには、常にクラスメイト達が溢れていた。
一方のまいは、良く言えば大人しく、悪く言えば暗い性格になっていた。
その為、彼女の周りには、数人の友人がいるのみであった。
そっくりな見た目で、対極的な成長をした二人であった。




