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甘え嬢's  作者: あさまる
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人魚姫の歌声ー26

土曜日。

大会会場となる体育館へ来ていた。

一人で来てしまった為、あっちへふらふらこっちへふらふらしてしまった。

しかし、なんとか館内に入り、席に座ることが出来た。



ユニフォームを着たこはく。

校内でも何度か見たことがある。

しかし、今日の彼女はいつもよりも断然格好良く見えた。


顔が熱い。

心臓がうるさい。


こはくへ黄色い歓声が浴びせられる。

普段なら、ただうるさい、ちゃんと試合を見ろとしか思わないだろう。

しかし、こはくも今日ばかりは彼女らと同じくこはくへ応援の声を上げるのであった。



「……ごめん。」


「謝らないでよ。……格好良かったよ。」


数時間後。

目を真っ赤にし、大粒の涙を流すこはく。

それを慰める姫華。


全日程が終わった。

すでに人はほとんどがいなくなっている。


そんな館内の隅。

そこに二人はいた。

ベンチに腰かけ俯くこはくとその隣に腰かけている姫華。


彼女らの態度から分かるだろう。

こはくの健闘も虚しく優勝を逃したのであった。


決勝戦まで進んだ。

そこまでは良かった。

そこまでは良かったのだが、決勝は対戦相手のレベルが違った。

有り体に言えば、ぼろ負けだ。


「ごめん……。ごめんなさい……。」


どうすれば泣き止んでくれるだろう。

途方に暮れる姫華であった。


結局何もすることが出来なかった。

こはくが泣き止むまで隣にいることしか出来なかった姫華。

自分の無力さを実感し、胸が痛んだ。



「な、泣き止んだ?」


「……ごめん。」

ポツリ。

隣にいる姫華にすらギリギリ聞こえる小さな声を出すのであった。


「良いよ。……大丈夫?」


「……うん。」



再度二人の間に会話がなくなる。

しかし、そこには先ほどまでの気まずい雰囲気はなかった。



「……ね、ねぇ。」

静寂を破ったのは、姫華であった。


「うん?」

ズビビと鼻をすするこはく。

顔を上げ、姫華を見た。

その目は真っ赤に充血し、鼻もすすりすぎてうっすらと赤くなっていた。

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