人魚姫の歌声ー24
「あはは……。自撮りってのは自分の写真を自分で撮るってことだよ。」
こはくはそう言うと、姫華の携帯電話を取り、カメラアプリを立ち上げた。
そこから慣れた手つきで自分と姫華が上手く写るように写真を撮るのであった。
「お、おぉ……これが自撮り……。」
感動する姫華。
「……写真送ってほしいな。」
「あ、そうだね。ごめん、住所教えてもらって良い?現像したらちゃんと送るから。」
その素っ頓狂な姫華の返しに笑わずにはいられなかったこはく。
大声で笑ってしまうのであった。
一方何が可笑しかったのか分からない姫華はキョトンとしてしまうのみであった。
「ごめん、ごめん。送るってのは画像を送信してほしいってことだよ。あはは、写真郵送されても困るよー。」
こはくが笑いながら言う。
姫華は恥ずかしさでどうにかなってしまいそうであった。
耳が真っ赤になり、只でさえ火照って熱い身体が更に熱くなっていくのが分かった。
逃げたいのにがっちりと捕まっていて逃げることが出来ない。
姫華が唯一抵抗出来るのは、下に俯くことだけであった。
「こうするんだよ。」
再びギュッと姫華を抱きしめる。
そして、驚いている姫華から再度携帯電話を取り、こはく自身とのメッセージボックス開いた。
「あ、あれ?えっと……どうするんだっけ?えっと……。」
先ほどまでの余裕はそこになかった。
こはくは友人や部員と文字でのやり取りはしたことがある。
しかし、写真を受け取ることはあったが、送信することはなかったのだ。
その為、彼女はそのやり方を知らなかった。
触っていれば何となく出来るだろう。
そんな甘い考えは目の前の小さな機械に打ち崩された。
彼女もこのアプリの操作に慣れていない。
それは、姫華にもすぐに分かった。
「……一緒にやろ?」
「……うん。」
二人で試行錯誤すること数分。
二人の間で写真を送り合うことが出来るようになっていた。




