表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘え嬢's  作者: あさまる
31/57

人魚姫の歌声ー19

「あはは、ですよねー。」

それでもこはくはこう言うのであった。


ここまで思ってくれるのだ。

ここまで理解してくれているのだ。

少しくらいは良いだろう。

もう身を引くのだ。

だから少しくらいのわがままならば、きっとこはくも許してくれるだろう。



私が惚れた相手なのだ。

きっと大丈夫だ。


「……せ、先輩?」

こはくの表情が、困惑に染まっていく。


大丈夫。

これは拒否ではない。

私が何をするか分からずに困っているだけだ。

大丈夫。

私がただキスするだけだと分かれば安心するだろう。

もう正常な判断をすることが出来ずにいた。


「大丈夫。大丈夫だから、ね?」


二人の顔が近づく。

嫌な予感のしたこはくが離れようとする。

しかし、それは叶わなかった。

いつの間にか肩を掴まれ、逃げることが出来なかったのだ。


ここで、こはくはようやくこれから目の前の彼女が何をしようとしているのか分かった。

こんなこと間違っている。

早く断り、そして離れなければならない。

しかし、彼女の喉から声が出なかった。


誰か助けて。

なぜだか分からない。

その言葉がこはくの脳内に浮かんだ時、一緒にある人物の顔が浮かんだ。

一緒にいた時間など少しだけだ。

しかし、こはくは彼女のことを思ったのだった。



あと少し。

あと少しで二人の唇が触れる。

その時であった。


何かが落ちる音。

二人はその音に、びくっと反応した。

そして、その音がした方を向く。


「あっ……その……。」

一人の少女。

彼女は、目の前の光景に何と言って良いのか分からないようであった。


「あはは……ごめんね、恥ずかしいところ見られちゃったね……。気にしないでね、あと出来れば内緒にしておいてほしいな。」

前半はこはくへ、そして後半は目撃者である少女へ向けて言うのであった。


「ご、ごめんなさいっ!」

少女は走り出してしまった。


「ま、待って海野さん!」

こはくの言葉が虚しく響くのみであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ