白雪姫と林檎の魔女ー2
「みーちゃん、そろそろ新しいクラスに慣れた?」
りんごの問い。
胸元の美姫。
平地に顔を埋め、もごもごと声を出していた。
聞かなくても分かる。
しかし、りんごは、彼女自身の、美姫自身の口から答えを聞きたかった。
「まだ慣れないの?」
もう一度、少し違った聞き方をする。
「む、無理だよぉ……りんちゃん以外とお友達になれないよぉ……。」
見た目とは裏腹な甘ったい、語尾を伸ばした声。
それは、美姫から出たものであった。
ファンクラブの人間も、況してや両親すらも知らないような美姫の姿。
それは、普段の彼女からは想像もつかないような醜態であった。
それが、りんごの目の前にあった。
あぁ、愛おしい。
りんごはそんな彼女の頭を優しく撫でた。
ピクリ。
一瞬反応を示した後、りんごを見つめた。
そして、すぐに彼女の手を受け入れ、気持ち良さそうに目を細めた。
幼馴染で、隣に住んでいる二人。
今のような二人の関係は、小さな頃、りんごが起こしたあることがきっかけとなり、始まった。
そして、それ以来、二人の今の関係は、途切れることなく続いていた。
小さな頃から歳不相応な美しさを持っていた美姫。
当然周りとの違いに困惑もした。
そしてなにより、周囲の対応にも悩まされていた。
男子からは不快な視線を送られていた。
その正体が分からなかった当時の美姫。
そんな彼女にとって、それらは幽霊や妖怪のような不明瞭なものへの恐怖に近いものがあった。
そして、女子からは嫉妬されていた。
スポーツが得意で、いつもクラスの中心にいるような男子。
頭が良く、テストでは常に高得点を取っている男子。
彼らが皆、美姫の虜のように、美姫のことしか見ていなかった。
当然、そんな状況を良く思わない者もいる。
そして、彼女達から連鎖する美姫への攻撃。
周りには、敵しかいない。
美姫はそう思っていた。
ただ一人、りんごを除いて……。