人魚姫の歌声ー6
自身がいた教室を、ちらりと見る。
彼女のいた席。
こはくよりも後ろの席であった為、普段あまり見ない場所であった。
「はぁ……。」
ため息をつくこはく。
体育館へ到着すると、彼女を待ち受けていたのは、昨日言い争いになった彼女の先輩達であった。
昨日のことを謝罪しよう。
そう思ったこはくであった。
しかし、彼女らは、こはくの姿を見ると、昨日同様に彼女を責めたのであった。
多勢に無勢。
何も言い返せないこはく。
彼女一人へ、無数に降り注ぐ、言い返す隙の一切ない言葉の雨。
同級生は、少し離れた所で見ているだけで、誰も助けようとしない。
こはくの心に暗雲が立ち込める。
何か言おうにも、隙がない。
言えたとしても、一切彼女の言葉に耳を傾けなかった。
耳を傾けようともしなかった。
耐えられなくなったこはく。
昨日と同様の行動を取ってしまったのであった。
再び体育館を飛び出してしまったのだ。
昨日と同じ行動。
それは、今彼女が旧校舎内にいることも含まれていた。
「また探そう……。」
こはくは昨日よりも、より奥へ向かうことにしたのであった。
ギシギシ。
昨日のように、恐怖心を煽るような床が軋む音。
しかし、昨日ほどの恐さはなかった。
今日は二階へ上がろう。
そう思い、階段を昇っていくのであった。
歌声が聞こえる。
それは昨日同様に、こはくの好奇心を刺激するものであった。
昨日はなんとなくぼんやりと聞こえていた歌声。
しかし、二階を探索している今日は、昨日よりはっきりと聞こえる。
恐らく声の主のいる場所に近づいているだろう。
廊下を歩き、一つ一つの教室を見て周る。
もう少しで分かる。
声の主がどんな姿なのかが分かる。
自身でも分かるほど、こはくはわくわくしていた。
ダダダダダダ……。
こはくのいる廊下に突然響く音。
驚いてしまい、その場に立ち尽くしていると、背後に人の気配を感じた。




