表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘え嬢's  作者: あさまる
14/57

人魚姫の歌声ー2

あぁ、この人達には何を言っても仕方がない。

悲観的になるこはく。



気がつくと、こはくは駆け出していた。


こはくは旧校舎へ来ていた。

老朽化から使われなくなった場所であり、間もなく取り壊しが始まるような所だ。


バスケ部の彼女が、肩で息をしている。

どれだけ思いきり走ったのだろう。


調度良い。

少し建物内で涼みながら休んでいこう。

立ち入り禁止のコーンを無視し、こはくが旧校舎内へ歩を進めた。


カビから発せられる独特の臭いが、こはくの鼻を刺激する。

若干の不快感。

それでも、先ほどまでいた体育館に比べれば何倍もまともだった。


ギリギシ。

木の軋む音が響く。

それは、そのまま床が抜け落ちてしまわないか心配になるほどであった。


こはくは、少し恐くなってきた。

立ち入り禁止とされている場所で何か問題を起こすこともだが、事故に合うこともだ。

万が一、床が腐っていてそのまま足が落ちていってしまえば怪我をしてしまうかもしれない。


そろそろ戻ろう。

こはくが踵を返そうとした時、それは聞こえてきた。


誰もいないはずのそこから、音がした。

耳を澄まさなければ聞こえないような小さな音。


それが聞こえた時、こはくの心臓は飛び出てしまいそうなほどに高まった。

何かがいる。

正体の分からないものがいる恐怖。

どうすれば良いか分からず、その場に立ち尽くしてしまった。


その音が、声だと気づいたのは、少ししてからだった。

そして、その声が歌声であると分かったのは、すぐのことであった。


儚くも力強い。

影を帯ながらも、ひだまりに包まれているような暖かさ。

そんな不思議な感覚になる歌声だった。

それは、一言でいってしまえば、魅力的なものであるということであった。


ギリギシ。

さらに奥に進むこはく。

何かの魔力にとりつかれたのだろうか。


帰らないと、戻らないと。

そう思っている。

そう思っているはずなのに、こはくはずんずんと奥へ進んで行ってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ