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白雪姫と林檎の魔女ー12(完)
涙がりんごの頬を伝う。
それは悲しみではない。
悲願が成就し、歓喜した彼女の気持ちが表れた結果のものであった。
再びりんごの目が美姫の顔を捉える。
もう何をするか、何をすべきなのか、二人には分かる。
実践したことはない。
しかしお互いの心が通じあった今ならきっと大丈夫だ。
床に映し出される彼女らの影。
それらは、ゆっくりと、それでいて滑らかに、互いを求めながら一つに重なっていった。
ぴちゃぴちゃと水分の含んだ音が鳴る。
それは、激しく大きな音であった。
汗だくになりながら、互いに貪り合う。
教室から漏れ出した喘ぎ声は廊下にも響き渡っていた。
それは、欲望のままに動く獣のようだった。
永遠なんてものは、この世に存在しない。
始まったものは、いつか終わりを迎えてしまう。
出会いがあれば、別れがある。
誕生があれば終焉がある。
二人はいつか離れ離れになってしまうだろう。
しかし、今は、今だけはそんなことは忘れていたい。
そう思うのであった。
白雪姫と林檎の魔女完。
次回、2019年1月2日からは、「人魚姫の歌声」をお送り致します。




