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甘え嬢's  作者: あさまる
11/57

白雪姫と林檎の魔女ー11

カチン!

固い音と、鋭い痛み。

それは二人の歯と歯が勢い良くぶつかった音であった。


「痛っ!」


「いっ!?え、りんちゃん!?」


口を押さえる二人。

互いの目に写る姿は、涙目で口を痛そうに押さえている滑稽な姿だった。


美姫とりんごのファーストキス。

それは鋭く痛むものとなった。



痛みが引いた頃。

りんごに、後悔の念が押し寄せた。


美姫を見ることが出来ない。

どんな顔をして彼女と顔を合わせろというのだ。



「……りんちゃん?」

美姫の声。


その声に、どんな感情が宿っているのか分からない。

それほどまでに、りんごの心は追い込まれていた。


「りんちゃん?」

再度の美姫の声。


感情がまるで読めない。

しかし、これ以上無視するわけにはいかない。

りんごが美姫の顔を見上げる。


嫌われても良い。

もう一度。

せめてもう一度だけ彼女の顔が見たい。

この先視界に触れることが許されないのかもしれない。

だから、せめてあと一度だけ見ていたい。



ふわり。



その直後、彼女の鼻いっぱいに広がる柔らかな香り。

そして、唇には甘酸っぱい感触。

これまで食べたどの食べ物よりも美味で、これまで嗅いできたどの匂いよりも心地好く好みな香りであった。


それらはりんごの口と鼻を通り、伝わるものであった。

それらは、二つとも彼女の喉から手が出るほど欲しているものであり、決して手の届かないものだと思っていたものであった。


美姫と繋がることが出来た。

それは、彼女が無意識に避けていたことであり、悲願でもあった。


同性である彼女を愛することへの抵抗。

本来の道理から逸脱した、彼女らの気持ち。

それが今、世間の目や、自身の理性など、そんな些末なことを忘れてしまうほどの高まりにより、顕現してしたのであった。



「……ふふ、りんちゃんとキスしちゃった……。初めてなんだよ?」

そう言い微笑む美姫の顔は、真っ赤であった。


「……わた、私もだよ。」

俯くりんご。

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