白雪姫と林檎の魔女ー10
りんごの胸元に顔を埋めていた美姫。
そんな彼女が突然立ち上がった。
りんごよりも身長の高い美姫。
彼女が目の前で立ち上がるのだ。
りんごの目の前には彼女の胸しか視界に映らなかった。
急に立ち上がって、どうしたのだろう。
りんごがそう思っていると、美姫が彼女の両肩を、自身の両手を置くように触れた。
「み、美姫……?」
初めての感覚。
困惑するりんご。
「いいよ。」
そんなりんごとは対照的に、落ち着いた声色の美姫。
しかし、彼女の心臓はそれとは真逆に暴れまわっていた。
「え?い、いいよ?」
それは、どういうことなのだろうか。
聞き返すりんご。
「ゆっくりでいいよ。りんちゃんの言いたいこと、ゆっくりで良いから教えて?」
ぐいっ。
不意に引っ張られる感覚。
りんごは美姫の胸元に倒れこんでしまった。
そんなことをされては、我慢出来るわけがない。
もう知ったことか。
彼女が良いと言ったのだ。
彼女が言えと言ったのだ。
美姫の腰をガシッと掴む。
ビクンと反応する美姫。
りんごには、もう迷いなどはなかった。
「ど、どうしたの?りんちゃん……。」
「美姫が悪いんだよ?ずっと我慢してたのに……。」
目が据わっているりんご。
「り、りんちゃん……?」
美姫は、ヒヤリと嫌な感覚がした。
後退りしようとした。
しかし、りんごに腰を掴まれて動けない。
小柄な彼女からは想像もつかないような力。
怖い。
それが、今の美姫がりんごに抱く正直な気持ちであった。
「美姫が嫌がることをしないって我慢して……私達が二人とも女の子だから我慢して……それなのに……それなのに。」
ぶつぶつ。
俯くりんご。
「り、りんちゃん……?」
再度の呼び掛け。
もうどうにでもなってしまえ。
背伸びし、爪先で立つりんご。
プルプルと震える身体。
美姫の胸元を掴み、美姫の顔を自身の顔へと近づける。




