白雪姫と林檎の魔女ー1
※この作品は、フィクションであり、記載されている物は実在する団体や個人等とは、一切関係ありません。
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2018年12月3日
あさまる
夏。
それは、絡み付く暑さにうんざりする季節。
夏。
それは、学生ならば、大型の休日である夏休みに、胸を踊らせる季節。
蝉の鳴き声がうるさい。
グラウンドからは、運動部の掛け声が聞こえる。
校舎には、吹奏楽部の部員達のチューニングの音が響いている。
これは、そんな夏休みのある日のことである。
二人の女子高生が、自身らの通う高校の教室にいた。
彼女らは、補修や部活で校内にいるわけではない。
二人ともが、自分の意思だけでそこにいたのだった。
カーテンに包まり、その中で二人が抱き合っている。
身長の都合で、片方の少女は、膝立ちでもう片方の少女の胸元に顔を埋めている。
「はぁー幸せー。」
額に汗が流れるのも気にせずに、胸元に顔を埋めている少女が言った。
白雪美姫。
すらりと伸びたモデルのような手足。
そして、整った顔。
その容姿端麗で、大人びた見た目から、道を歩けば誰しもが彼女に釘付けである。
端的に言ってしまえば、高嶺の花で美少女だ。
そんな容姿から、彼女の知らないところでは、彼女のことを白雪姫と呼んでいる者達もいる。
そして、彼らは美姫の許可なくファンクラブも設立していた。
「そう?良かった。私も嬉しいよ。」
自身の胸元の美姫の顔を見つめる少女。
にこっ。
優しく微笑む。
こちらも額から玉のように大粒な汗が頬を伝っている。
黒森りんご。
小柄で幼い見た目の少女だ。
その可愛らしい見た目から、中学生に間違われることもある。
また、酷い時には、小学生に間違われることもあるような少女であった。
スタイルのよさと、大人びた美しさ、それら魅力の塊である美姫。
まるで、子どものまま時が止まったような見た目のりんご。
林檎に魅了され、虜となった白雪姫。
そして、それを受け入れ、自身の甘い果肉を分け与える林檎。
真逆な二人。
しかし、彼女らの繋りは、深く固いものであった。
そして、それは、何人たりとも侵せないものであった。