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異世界を、終わらせようか。  作者: 宗ゆさ
第一章 現実の青春
4/6

3話  学校生活はギャルゲーじゃないんです

選択肢って本当に怖いです。先日私も人と話しているとき選択肢ミスって嫌われました

 ───放課後


 全く理解できなかった。俺の過去を知っている人物が目の前に現れる確率なんて、ゼロに等しいからだ。


 「小説大賞小学生の部で優勝したしたのは君だ。間違いない!」


 その根拠は?もしそうだとするなら、明確な根拠を持ってきてくださいよ。という台詞をぐっと飲みこみ


 「そうです」


 「やはりか。ここで次のステップに進める。元さん、あの小説は我々後輩たちにはとても好評だった。最も元さんと同年代は、あなたの性格や学校でのカーストを考慮して酷評ばかりだったけど」


 あったなあ、そんなこと。俺が初めて純粋な気持ちで異世界ファンタジーをかいた小説だ。あの頃からスクールカースト下位層の俺はいじめられてたなあ。


 「異世界をという誰も目を向けないであろう店に気付き、執筆したのは、とても我々にとって尊敬に値するのです。想像力のない私たちに新たな世界を見せてくれた」 


 そんな大層なもんじゃねーよ。主人公が突然異世界召喚されて無双する話しだろ。ありきたりも何も、根本がつまらなそうだよ。


 「しかしあれは、その時用の1話完結。続きをよみたい、そう切に願ってきた。それは元さんが卒業してからも同じです。だからお願いします、続きを書いてください」


 こんな風に自分の事を尊敬してくれる人がいたのは、嬉しいよりも以外だった。家に引き込もっていた俺なのにそんなことが起こるんだろうか。でも、そんな彼の願いだが無理なことだと最初からわかっている。それじゃ、俺が学校に来た意味が皆無になってしまう。


 「無理だ」

 

 慈悲なき言葉は沈黙の空を切る。いつしか練習していた者達も手を止めてこちらを見ている。


 「俺はもう異世界を描かない」


 声はあまりにも小さかったが、拒絶を表すには十分な大きさだった。


 「なんでですか?すごく面白かったって後輩たちは…」


 「後輩たちが何だよ。俺はそんな近くの人に求められたい訳じゃない。もっと多く遠い人達に求められたい。だから書けない」


 俺という人間が異世界にどれだけお世話になったかは、誰も知らない。異世界は時間が止まっていた。自分を正当化して逃げ続けられる異世界自体はいいものだ。だが、ずっとそこにいても周りの時間は進んでいて自分は置いていかれる。


 「すまんな。無理なものは無理だ」


 ボソボソと呟く俺の声はその場を凍らせた。


 「俺は帰る」


 スッと方向変換し早足で体育館を出る。渡り廊下を行きの2培の速さで歩き、荷物を取りに教室へ急ぐ。


 教室へ着くやいなやため息を吐く。


 赤い夕焼けが校庭と校舎をいっぱいに照らす。窓から差す光が教室全体へ染み渡り、誰いない虚しさをまぎらわしてくれる。


 「書きたくねぇよ。もう」


 そう言って自分の机まで歩く。


 「現実を見なきゃ」


 重い鞄を肩に掛ける。


 「他なんて見られない」


 教室の扉を閉めて下駄箱まで向かう。


 「何がいいんだか」


 門をでる。2日目は濃かったなあと、感じながら自宅を目指す。


 ───今に至る


 いろいろ考えに耽って、人生これからだ、と思ったとき重要な事に気づく。


 「友人制作イベント、失敗した?」


 明らかな選択ミス。もっと柔和に接していれば。込み上げる敗北感と馴れたはずの孤独感が同時にこの身を包容する。


 高校生活なんてギャルゲーみたいなもの。中学生のとき「不滅のゴールデンウィーク」と称してその月いっぱい学校休んだ。そのときに大量のギャルゲーを消化した俺にとっては何一つ間違うはずはなかったはず。


 「現実はそう甘くないのか…」


 暗い部屋はやっぱり落ち着く。


 「あー学校だりいなあ」


 登校2日目にして、学校へのマイナスイメージが強すぎる。


 「今何月だっけ」


 パソコンの前では時間は気にしない。時間を気にしないから朝も夜も俺にはない。もちろん日付なんて知る由もない。


 「他の奴とでも話してみるか」


 そう呟いて久しぶりの睡眠をとった。


 ───────


 「まずはギャルゲー主人公みたいに心のなかで自己紹介だ」


 顔を洗い鏡の前の自分に言う。自分の顔なんて何年も見てないからその変貌に震える。


 肩までかかるボサボサの灰色の髪の毛。前髪はかろうじて横に分けているが、その他は全く手入れしていない。虚ろな目。白すぎる肌。ああモヤシってこうやってできるんだ。と、知識が1つ増える。


 着古した黒いTシャツ。親が大量に送ってくる消臭剤のお陰で、臭いだけはましになっている。風呂は本当にやばいと察したときだけ入るようにしている。


 細すぎる手足。遅すぎる挙動。これが数年間動かなかった者の末路。


 「髪の毛直すか」


 あと20分は家にいられる。親が置いていった櫛と寝癖直しで適当に整える。長すぎる髪はだらしないので輪ゴムで適当に止める。


 「おし。大丈夫だ」


 制服に着替え玄関の扉を開ける。


 ───────


 俺の名前は元 終。18歳、なんだけど訳あって国際調和学園東京校に通う高校1年生。中学のときに悲惨な過去と黒歴史を背負ったため、中学3年生のときはほとんど行かなかった。


 親が大学進学率ナンバーワンを謳う塾の家庭教師だったから、勉強にも困らなかったし第一に学校にいかなくても大丈夫だと言ってくれた。


 そのお陰もあり、都内で偏差値が上位の学校へ入ることができた。ま、学校をろくに通わなかったの人が、校内でも1人しか入れなかった高校に内申の補助もなく点数だけで合格した事実で教師一同面子丸つぶれ。3人が辞職した。


 しかし、今まで勉強一筋だった秀才たちが高校デビューを果たし、たちの悪い陽キャラと化した。俺はいじめを受けた。周りの成績が怪物級の人だらけだったから言い返すこともできなかった。


 だからある日休んだ。それからずっと布団に潜りっぱなしの日が続いた。親は掌を返したように、「学校に行け」と激を飛ばすようになった。俺は拒絶し続け、ついに親は出ていった。


 そんな重い過去を持つ俺だけど、ちゃんと今では学校に通ってる。すべては無駄にした時間を相殺するため、現実と向き合うためだ。





 心のなかでブツブツと自己紹介。そんな事でも幾分か気分が楽になった。


 上野には悪いことした、という罪悪感が足枷のように体を束縛していたが、それも今日でけりをつける。


 雑色にも感謝を伝えていない。今日はやることが沢山ある。それらをこなしてから、俺の学園生活は始まる。


 きっと、やってみせる

学園生活はギャルゲー。そう心に刻んだ元だったが…

次回、学校生活はギャルゲーじゃないんです2

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