1話 元 終
前書きってなにかけばよいのでしょうか?
そんなことを思いながらかいてます。
暇な時間にと、かきはじめましたが結構没頭しますね。
─人気がでなかったのはテーマが飽きられていたからだ。
ならば異世界ファンタジーをやめればいい。やめて現実に目を向けてやればよい。
─社会での経験がない。
家にいる時間が長すぎて、外での経験値を得たことがない。つまり、書けない。
経験を積むにはどうする?画面の向こう側の世界が見せてくれるのは、現実世界の虚像、偽りの真実に溢れた地域社会が広がるだけ。
ならば、自分が今まで遠ざかっていた世界へ身を投じるしかない。
明日から行くしかない…
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と言いつつ、結局行かなかった。
3年になって初めて学校へ行っても、無意味であると気づいた。しかし、残された学校生活は半年ちょっと。かなり濃い生活を送っても、対した経験にならないだろう。
だが…形だけでも行くしかない。
俺は人生で初めて学校へ積極的に行くことにした。
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「あなたは1年生ですよ」
理解するのにかなりの時間を要した。脳の情報処理が追い付かず、オーバーヒートしそうな感じが俺を襲う。
「テストを5回受験放棄、例外を除く30日以上の休学は留年対象ですよ」
名前は不明だが、女性の教師らしき人物は笑顔で俺に説明してくれた。茶髪のボブカットでスーツが似合う、お姉さん系。笑顔が怖い。「どんな人にも笑顔で」みたいな接客マニュアルが教師にもあったのか。営業用スマイルとは実に気分が悪い。人に安心感を与えぬ笑顔などこの世にあってはたまらない。
「今からなら、手続きとかすれば1学年からやり直せますよ。もっとも、それしかないんですが…」
実質選択肢は1つ。「学校に通わない」ルートを辿ることもできる。しかし、その答はここまで来た意味を全て否定してしまう。時間の無駄になってしまう。何年も棒に振った俺はもう無駄にはしたくはない。
「どうします。げんさん?」
教師とて間違うことはある。わが名は元 終だ。何処の誰だか知らんが、名を間違えるとは失礼極まりない。ふと彼女の小脇に抱えられた黒い名簿張をみる。
「1-A…しの…のめ…?」
大声で叫んだ。声帯の退化を確認できた。喉がはち切れんばかりに声を出したが、虚しくも距離1mほどの彼女の耳にも届かず、
「え?」という音に変わって己の耳に返ってきた。
仕方なく指でその名簿張を示す。
「あ!あぁ。私は1-A担任の東雲 雅。あなたがやり直すなら担任になりますよ」
この人が担任なら、やっていけそうだ。確信までは行かないが、心の中になにか感じるものがあった。ただ、顔が好みだった。
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自己紹介とは残酷でこのイベントをミスれば、学校生活開始3秒で終わりを迎える。
クラスの人に高評価されるなら、第一条件で容姿端麗、眉目秀麗。これが無理なら面白いヤツ。これは低確率でしか成功しない危険な選択肢。次に冷静さ。自己紹介中に冷静さを欠けば、低評価どころでは済まない。
ではどうするか。答えは簡単だ。事実だけを淡々と短く語る。ネット上の意見を何万も見てきた俺の結論。
しかし現状、自己紹介経験のない俺に欠いているもの。それは冷静さ。つまり緊張。手足が複雑に上下左右に振動して冷や汗が滴り、口の制御が効かなくなる。
今その状態だ。
地獄に蠢く鬼の如く、生徒達が俺を睨む。差別の眼差し。
耐えがたい。
死にたいなんて今までに何回も思ってきた。腐って腐りきった感情にも敏感な部分が少しある。しかしそこに負の力が加わる。貪られてなくなりそうになって。
「は…………じめ」
「始めまして」なんて初歩的な挨拶に何分もかかる恐怖。
「は…………じめ」
「元 終です」。挨拶と出だしが同じで、言葉をはっきり言えないから、鬼どもからは「同じことを繰り返している」とさらに冷たい視線に。
10分を経過した時点で、東雲女教師が遅すぎる助け舟をだした。助け舟をだされる情けなさ。気まずいのは鬼も然り。教師の苦笑いには傍観している鬼も微妙な気分になる。
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やはり異世界は素晴らしい。そこにいるだけで逃げ出せて、自分自身をいくらでも強化できる。つまらない法則や常識、洗脳の果てにあるおかしな共通認識をすべて白紙に戻して書き直せる。
しかしそれは逃避行の果てに、逃げ続けることを正当化しようと自らを欺いた結果、見える虚像だ。
俺は学校からの逃避、本来学術に割かれるべき時間を無駄にしたことを正当化しようとしていた。
異世界に興味を持ったのもその時だ。以来時間を有効に使おうと異世界にしがみついた。
でも結局それも正当化しようとする行為で、何にもならなかった。
だから俺はその虚像を壊す。つまらない幻想を打ち払う。青春して現実を謳歌し、健康な文章を書く。それくらいしか虚像を壊す方法はないのだから。
俺、元 終はここに宣誓する。異世界を終わらせる。現実を舞台にし、自らの経験を生かした小説で。それが世間に認められれば、そのとき、俺は俺の甘えた異世界に終止符を打てたことになる。
「俺は異世界を終わらせる」
その声に誰もが冷ややかな目線を俺に向けた。
授業中に。
次回、元はコミュニケーションをとることを決意する。予定です