帰路
話しは終わり、恵美のためにも早めの御開きとなった。
綾人と恵美は館をあとにして帰路に
ついていた。
恵美は俯いて何かを考えているようだ。
「恵美さん、大丈夫?闇人のこと?」
「うん、なんだか一気に色んなことが
あってまだ実感がないなぁって。
私自身もまだ力をうまくだせないし」
うーん、と両手を組んで考えている。
「綾人くんはどうやって力を使えるように
なったの?」
「僕の場合は、あの事件をきっかけに
いつのまにか当たり前のように風を
感じるようになって、そこからかな」
「あ、ごめん。嫌な事思い出させたかな」
「いや、大丈夫だよ。他の皆もいきなり
最初から使いこなしたわけじゃないし
ゆっくり自分なりのやり方を探せば
きっと大丈夫だよ」
綾人は笑顔でそう答えてくれた。
恵美はなぜかそれをみて自然と安心できた。
「うん、ありがとう。みんなの力になれる
ように頑張る」
うん、と両手をぐっと構える。
すると後ろから声が聞こえてきた。
「恵美ちゃーん、お兄ちゃーん、待ってよー」
小走りで追いかけて来たのは妹の
彩だった。
「彩、話しは終わったのか?」
「うん、これ以上の情報はまだないから
各自注意していき何かあったら共有する
ことになったよ」
えへへーと笑顔で話をする彩。
彩の笑顔をみて恵美は感心していた。
「彩ちゃんは笑顔が素敵だね。私も見習わ
ないと」
「ほんと!ありがとう恵美ちゃん。
生きてると楽しいこといっぱい感じちゃう
からね」
なんでも楽しめそうな純粋な笑顔。
綾人も彩の様子を見て微笑んでいた。
「ところでお兄ちゃん、いつの間に彼女
つくったの?ちゃんと教えてよね」
「彼女?なんのことだ?」
「もーとぼけてー、妹の前だからって
恥ずかしいの?恵美ちゃんのことだよ」
「え?私?…えぇ!ち、違うよ彩ちゃん!
まだ私達そんな関係じゃないよ⁉︎」
「あれ、違ったんだ。でもまだってことは
いずれかなぁ」
あははと笑いながら走っていく。
恵美は耳まで真っ赤になっていた。
「まったく、彩のやつは。ごめんね
恵美さん、きにしないでやって」
「う、うん。私は大丈夫だから!」
そのまま賑やかな状態で
3人揃って楽しく帰っていった。
彩も加わり賑やかになった帰路。
この楽しさも失わないようにせねば。