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第二十三話 真の黒幕

ゆるく頑張りますので、ゆるくよろしくお願いします。

『エラ・シスト・ロジオール! 前へ!』



 場は騒然としていた。


 この国唯一の王立学園。卒業を控えた三年生を送る、壮行会を兼ねたパーティー。一年生から三年生まで学園の生徒全員が集う、実質的に社交界のような華やかさと思惑が渦巻くホールの中心。


 まずパーティーのはじめからおかしかった。


 この国の第二王子。現騎士団長の嫡子であり幼い頃より殿下に使える騎士見習い。国の重鎮たる宰相の嫡子。大公閣下の御落胤と噂される問題児。そして、彼らに守られるように立つ一人の少女。チェリーブラウンのフワフワとした髪と、薄いピンク色の瞳。誰もが認める美少女の目にはうるりときらめく涙が浮かんでいる。


 子爵令嬢ルモナ・ダート。見事第二王子の心を射止めたと噂の彼女は、数々の好奇と悪意に晒される波乱万丈な学園生活を送ってきた。


 彼らと対面するは公爵令嬢マリステラ・シートン。青みがかった黒髪に薄い水色の瞳を持つ涼やかな美人。第二王子の婚約者であり、ルモナに対して良からぬ感情を持っている筆頭人物であった。


 婚約者にすり寄る卑しい娘。そう嘲っていた相手に第二王子の心を奪われたことを理解し、絶望し、暴走した。結果が、この華々しいパーティーの中心での見世物のような断罪劇である。


 ルモナは気丈にも涙を堪えながらマリステラから目を逸らさない。わざとではないとはいえ、彼女にはマリステラの婚約者に横恋慕してしまった負い目があった。しかし第二王子は厳しい眦をそのままに、ホール全体をぐるりと見渡している。そしてようやくその姿を見つけ、厳しい眦をさらに厳しく釣り上げた。


 呼ばれた名は、教会のシスターを意味するシストを持つ者。しかし、エラ・シスト・ロジオールという名と顔を一致させられた者は、両手に収まる数の令嬢たちのみだった。



『はい、エラ・シストはここにございます』



 人垣の中からしずしずと一人の少女が歩み寄って第二王子の御前で膝をついた。彼女と同じ学年の生徒はハッとした顔でマリステラと彼女を見比べている。


 白というには鈍く、銀というには味気ない灰色の髪。薄い黄色の瞳を伏せた少女。地味なネイビーのドレスを身に着けてシスターらしく露出は極端に少ない。この会場にいる他のどんなシスターとは名ばかりの貴族令嬢たちよりも真っ当にシスターという聖職を務めあげようとする気概が見える。それ故に、彼女の顔に見覚えのある者たちは目を白黒させていた。


 伯爵令嬢エラ・シスト・ロジオールは、マリステラの取り巻きとして彼女に付き従う者の一人であった。ルモナに直接手を下すことはなかったが、助けることもしなかった。マリステラの悪行を後ろで幽霊のように眺める様子。見る者が見れば分かる。あれはまるで地に落ちた羽虫を眺める幼子のソレだった。


 ルモナは彼女の視線を思い出して震えが抑えられない。その肩に第二王子の腕が回る。力強く、なれど痛くない程度に優しく引き寄せられ、ルモナにあたたかな勇気がみなぎった。



『エラ様、全部あなたの仕業だったんですね』



 その時、エラは……


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