第一章 その3
ジリジリと肌が痛いほどに日が射す太陽。周りの木々からアブラゼミの大合唱が聞こえる。
夏休みしょっぱなから勉強会。しかも一番大嫌いな数学。
数学に関する不満や不満はいっぱいある。
何故点Pは動くんだ!じっとしといてくれ!!
何故学校に行くのに兄と弟同時に出ない!同時に出ろよ!!
お菓子とかちゃんと人数分用意しとけ!!
とまあツッコミどころ満載な数学。それは算数という科目も同じなのではないだろうか。算数はどんな感じの問題だったか忘れてしまったが。
この前、妹の遥から『時速60kmで走ったら1時間後には60km先に着いてんだよ。車ってすごいよねぇ~』なんて言っていたが、実際60km保つのは難しいし、それに信号、加速、渋滞、その他色々あるから1時間後に60km先に着くのはまずない。
…我が妹よ。今高1だよな…。
電車を待つのに暇なのでちょっと(いらない)│保護者《夏夜》に質問をしてみた。
「ところでお前は何が好きなのか?」
しかし何で夏夜は付いて来るのだ。家で留守番してくれないか。頼むから。
「私ですか?英語ですよ。」
「あーあれ単語のスペルミスでよく点数おとしてしまうんだよなあ。文法はギリギリ出来るけど。」
「あれは書いて書いて書きまくって覚えるか、ひたすら声に出すしか方法は無いですからね。」
そう英語について語り合っているうちに独特な音を出しながら止まり、それに乗り込む。
ゆっくり揺られる車内。この揺れはたまらない。座ると寝そうになってしまう。
「立ってると疲れないか?」
ふと疑問になったので聞いてみる。
「姿が見えなくとも触ることは可能なんです。ここが厄介やっかいなんですよ。なので立っていた方が夏夜も人間も平和的だと思うんです。」
「へえー。」
平和はよく分からないが、普段知っている幽霊とかいうと見えていても触さわれないとかだが、│こいつ《幽霊》の場合は触感とかそういうのが分かるらしい。中々興味深いものだ。
駅に着くと改札口で川内さんが待っていてくれていた。
「おはよう。あ、夏夜ちゃんも一緒なんだ。」
「そうなんです。何故だかよく分からないけれど夏夜ちゃんも一緒なんです。」
「はいはーい。皆のアイドル夏夜ちゃんでーっす♪」
幽霊は周りにハートを撒き散らしていた。
「…いこ。」
そんな幽霊を背に僕は川内さんに道案内をお願いし一緒に駅構内を出た。