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僕、なぜか幽霊と同居しているんです  作者: 三峰時雨
第四章
24/25

See you again

あの頃の風景とかを思い出した。

「なんであの時『夏奈』なんて呼んだんだろうな。」

「悠君が言ったんですよ。」

「いやーごめん。ほんとあの時の自分に聞いてみたいわ。ついでに殴っておきたい。」

そういうと夏夜はクスクスと笑った。

そして夏夜はあるものを見つけると指さしながら僕に「悠君!売店だよ!売店!!悠君何か買おう!!!」と言ってきた。

それはそれはもう子供のようにぴょんぴょんとしながら。

「夏夜。まだ午前4時前だぞ。開いてるわけないじゃないか。」

そういうと1拍間をおいてクスクスと小さな笑いが周りの空位を包んだ。

「わあ!見てこれ!懐かしいなぁ~。」

また夏夜が声を上げた。

赤い屋根の小さな家。子供サイズで高さは大体僕と同じぐらい。そこそこ長身の夏夜の方が少し高い。

「そういえば夏夜が作ってくれたサンドイッチをこの小さな家で食べたなぁ~。レタスが瑞々(みずみず)しくて…。あれは美味しかった。」

「そうなんですか?言ってくれればまた作ったのにー。せっかくこんな姿でも物触れるんだから」

「そうだったな。早く気づけって話だな。」

そう言いながらあの赤い家に入ってみた。コンクリ製の屋根に頭スレスレだ。普通に当たりそう。

「うわー。こんなに低かったんだ。」

「そうなんですよ。スレスレでした。特に夏奈なんか長身でしたからちょこんと座る程度がやっとでしたから。」

「そうだよな。確か僕の身長が169cmぐらいだったからそのプラス10か20cm?」

ほんと背が高い。

そして知らぬ間のうちに昔話が始まった。勿論生前の話。とにかくあの時は本当に楽しかったのを覚えている。

「ねえ、夏奈さ。――」

急に声のトーンが変わった。

「夏奈、あの時あなたに会えてよかったと思ってる。死なないでよかったと思っている。

1日違ったら私は間違いなくここにはいなかったし、多分幽霊の状態で復讐とかしかけていたのかもしれない。だけどあなたに会えてなんかすごい変われた。私にとっては特効薬だったのかもしれない。

私さ、最初の頃は突き放してたじゃん。普通だったらそれで「ああ、この人はダメだ」ってなるかもしれないけど、君の場合は私が嫌って言いたくなるぐらい異常に話しかけてきた。そのおかげかなんか少しはスッキリできた。

でも轢かれて死んじゃったそれが唯一の悔いでもあるけどそれと同時に君を守れてよかったって本当に心から思えたんだ―――。」

俯く夏夜の目から涙が一筋、また一筋と流れてきたのが分かった。

「だからね、夏奈…いや、私、夏夜は悠君に私の残りの寿命を全部上げます。だから私の分も含めて精いっぱい人生を楽しんで。

一杯笑って、一杯はっちゃけて、一杯バカなことして、一杯怒られて、一杯…苦しんで……、一杯………いっ…ぱい……。」

夏夜の涙の量が段々と増えてくる。

「夏夜は……夏夜…は…。」

その時月光が周りを明るくした。

「ああ……。もう時間…なんですね。」

そう言って家から出ると一言、

「葵ちゃん。いるんでしょ。」

そういうと木の裏から川内さんがゆっくりと姿を出した。

そして振り返ると夏夜が光に包まれていた。

「私からの。最後のお願いです。

さっきも言ったように一杯笑って、一杯バカなことして、…一杯いっっっぱいこの人生を楽しんでください。私の分も一杯楽しんでください。そして楽しんで楽しんでお腹が膨れるぐらい楽しんだ後私に報告してください。これ、宿題です。あと、悠君。最後に葵ちゃんの願いを聞いてあげてください。貴方に言いたいことが一つあるみたいですよ。」

夏夜が…夏夜が消えかかっていた。

「宿題忘れないでくださいね…。私、あっちの世界で待ってますから。あと最後に1つ。

私は……夏夜は………君達に会えて本当に…よかった…。

悠君。葵ちゃん。君たちは―――」



「―――私の誇りです。」



そう言って夏夜は月に向かって光となって消えていった。



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