第一章 その2
「あーなんか詰んだ。詰んだ気がする。詰みゲーだ。」
今日もいつものように川内さんと幽霊の2人と1柱ばしらで眩しい日差しの中電車に乗り込んだのだが、今日はあまりにも負の空気が流れ、いつもは電車で揺られつつも話しながら帰るが何も話さず無言がずっと続いていた。
最初に交わした言葉が川内さんと駅で別れた時にに発した「じゃあね。」という言葉。
以上である。
僕はただただ小さく手を振っていた。なんか今になって選択肢を間違えた気がして後悔している。
ふと思った僕はスマホで霊感テストなる物で試してみたが、やはり霊感は無いらしい。
じゃあここに見えている奴は何なんだという話になるのだが…。
自宅の最寄り駅に降り立ち、しばらく無言で歩いていてふと思い立ち「なあ、」と、俺は口を開いた。
「ん?」と返事が帰ってきたがすぐに「何でもない」と言ってしまった。
家に着くと僕はそのままベットに入り、疲れからか制服のまま寝てしまった。
トゥルルルルル…トゥルルルルル…
空間のなか電話が鳴り響きわたる音で僕は起きた。
ん~何だよ…といらだちを見せながら携帯を見てみるとそこには『葵』という文字が映し出されていた。その文字で僕は目を覚ました。
「も…もしもし?」
『もしもし?天城くん?』
「うん。何?何か用?」
『あのさ、夏休みはいつ暇?』
そう言われて脳の中の記憶をたどっていく。
「基本的にお盆以外ずっと暇なんだが、」
帰宅部だから特に何もない。
『あのさ、都合合わせてなんか遊びに行ったり、食事したいなって思って。』
「全然いいよ。」
『ついでに勉強会もするから。これ強制ね。誰かいないと天城くんやんないだろうから。』
図星だった。もう1年ぐらいの付き合いだからお互いなんとなく性格とかが分かるのだろうと僕は思う。
電話越しでも相手が笑っているのが分かった。
そういって僕たちは夏休みのスケジュールを8月31日まで組んだ。夏休みの宿題は出来るだけ早く済ませようという話になり、7月と8月の前半に取った。後は夏祭りとか、プールとか、その他諸々。
『あのさ…夏夜ちゃんは?』
「あー夏夜?」
話せば長くなるが、実は川内さんも何故か霊感は無いのに夏夜が見えるらしい。鳥取から転校して、一番最初に僕に話しかけてきたと思ったら「そこにいる女子って誰?」なんていい、夏夜が見えることが発覚。その後夏夜のお陰もあり超スピードで距離が縮まった。こう仲が親密なのも夏夜のおかげだろう。これだけはあの幽霊に感謝する。
で、夏夜はというと、俺のシングルベットですーすーと寝息を立てながら眠っていた。俺と同じく疲れてしまったのか、それともまた別の意味でベットに入って眠りに入ったのか…
どちらにしろこのベッドシングルで、マジで狭いからやめてほしい。てか、布団用意してるからそれ使えという話なのだが。
「寝てる。僕のシングルベットで。」
『そう。ならいいや。』
「伝言なら伝えておくぞ。」
『いや、今じゃないと困るという話じゃないから後でで大丈夫。』
「じゃあ、切っていいか?」
『うん。分かった。ごめんね。遅くに。』
気付けば深夜0時を回っていた。それの面も考えるといつまで寝ていたのだか。
「うん。おやすみ。」
『おやすみなさい。』
そういって僕は電話を切った。